大萱山〜石倉山

天気:時々
メンバー:T
行程:駐車地点 8:15 …山道入口 8:25 …作業道終点 8:55 …1018m標高点 9:35 …1095m標高点 10:10 …大萱山(1154m) 10:45 …昼食地点 12:00〜12:30 …1106m三角点峰 12:50 …石倉山(1113m) 13:40 …1106m三角点峰 14:25 …山神参道 15:10 …駐車地点 15:45
ルート地図 GPSのログ(赤:登り、青:縦走、緑:下り)を地理院地図に重ねて表示します。

この週末は3連休となるが、年末の諸々の雑用があるので、天気が良さそうな2日目だけ、日帰りで出かけることにする。どこに登ろうかな。最近は軽い山歩きが続いたので、行程が長めの山がいいなと考えて、足尾の山でまだ登っていない大萱山と石倉山を思い付く。

大萱山は、わたらせ渓谷鐵道の沢入駅〜原向駅間で渡良瀬川の東岸に聳えている山である。沢入橋辺りから眺めると、ちょこんと尖った頂上と、そこから渡良瀬川に向かって急角度で落ちる稜線が印象的な山だ。一般登山道のないマイナーな山だが、ネットで検索するとその筋のハイカーさん達によっていろいろなルートで登られており、原向駅から北面を登るもの、渡良瀬川から群馬・栃木県境稜線を直登するもの、南面の黒坂石から林道を利用するものなどがある。

石倉山は、大萱山と地蔵岳を結ぶ県境稜線の中間から北に派生した稜線上のピークで、あまり目立たない山容の地味な山である。石倉山だけを目的に登る人は少なく、大萱山や地蔵岳と合わせて登られることが多いようである。

今回は黒坂石の林道奥小屋線から地形図上の破線路を辿って県境稜線に登り、大萱山と石倉山をTの字に結んで歩いて来ました。

桐生を車で出発。R122を走り、沢入で右折して黒坂石川沿いの車道に入る。多少は積雪があると思って、スパッツと軽アイゼンを持って来たのだが、周囲の山々を見渡しても雪は全くなさそう。冬期閉鎖中の黒坂石バンガローテント村を過ぎ、次の林道の分岐を左の奥小屋線へ入る。この林道は未舗装で雨裂が酷い。軽四駆等であれば奥まで入ることも可能だが、私のFreed Spike号では無理だ。分岐から少し入った路側のスペースに車を置く。

沢入橋から仰ぐ大萱山
林道奥小屋線に
少し入った所に駐車

準備を整えて出発。晴れの予報に反して雲が多い天気だが、幸いあまり寒くはない。林道を歩いていると、後ろから軽トラの隊列がやって来た。ハンターさん達のようで、そのうちの一台が止まって声をかけてきた。こちらがどの辺りを歩く予定なのか、一応、気にかけてくれているようだ。我々は稜線まで行くから、と言って追い越して行った。群馬県では11月中旬から2月末までが狩猟の解禁期間となり、この時期の山歩きは注意が必要だ。

(この日、桐生市黒保根町の山中で、狩猟中の誤射による死亡事故が発生している。)

そろそろ、左に地形図の破線路が分かれるはずだが、それらしい道はない。しかし、GPSで確認すると、やはりこの辺りが分岐点だ。杉林の斜面を注意して見ると、斜めに上がって行く微かな道型があり、どうやらこれが破線路らしい。

この道型に入ると、枝打ちされた杉の枝葉に埋もれているが、確かに山道が続いている。地形図を見ると、この道はこの先で等高線が詰まった急斜面をトラバースしている。道がないと通過が難しそうな地形で、計画段階から少し心配していたが、実際にその地点に差し掛かると明瞭な道型が残っていて安心する。ただし、下までかなりの高さのある急斜面で、万一滑落すると只では済まない。また、二か所ほど崩落している所があり、辛うじて通過する。今後、廃道化が進む一方と思われるので、この破線路の通行はお勧めしない。

山道分岐
左の杉林を斜めに登る
急斜面をトラバースする道型

沢床が近づいて高度感が薄れ、危ない区間が終わってやれやれと思っていると、沢の対岸に作業道が現れて合流した。破線路をヒヤヒヤして辿ってなんのことはない、ちょっとショートカットしただけに終わったようだ(^^;)

この作業道もすぐに終点となり、その奥の沢沿いに山道が続いている。この山道も進むにつれて道型が怪しくなり、最後は完全に途切れるので、その後は沢筋を忠実に登る。岩場や滝はなく、危険もないが、伐採された杉の木が谷を覆って歩きにくい。

作業道終点
沢を詰める

杉林の中の急な沢を詰め上がると、最後は傾斜が緩んで、ゆったりとした稜線に登り着く。稜線上は疎らな雑木林に覆われて藪もなく、明るい雰囲気だ。ここから北の県境稜線に向かうが、序でに南の1018m標高点に立ち寄る。稜線を辿るとシカ防護網を境とする広大な伐採斜面の上に出て展望が開け、氷室山から根本山、白浜山にかけての山々がぐるりと眺められる。これは寄り道してみて良かった。

稜線に登り着く
1018m標高点から白浜山を望む

1018m標高点で展望を楽しんだ後、県境稜線に向かう。尾根の左側には、シカ防護網を隔ててカヤトの斜面が広がる。伐採跡地の植林帯にススキが蔓延ったものだが、遠目には枯れ草原が暖かく気持ち良さそうに見える。カヤトが防護網を越えて侵入して来ているところは藪が小うるさいが、歩くのに支障はない。

雑木林の稜線を登る
伐採跡地に広がるカヤト

ゆるゆると登って、県境稜線に登り着く。疎らな雑木林に落ち葉がふかふかに積もった稜線が東西に続いている。まず、県境稜線を西(左)に辿って大萱山に向かう。歩きながら南面のカヤトの斜面を眺めると、ライトバンが停まっているのに気がつく。稜線直下まで作業道が上がっているようだ。ハンターの車に違いないのでぎょっとするが、付近に人のいる気配はないし、物音もしない。しかし、周囲に注意を払って進もう。

県境稜線を大萱山に向かう
1095m標高点付近の稜線

稜線を緩く登って東西に長い1095m標高点ピークを越え、短いが急な坂で西の鞍部に下ると、松の木の根元に石祠が祀られている。左右の側面には「安永八巳亥 仲冬吉日」「… 原村」と刻まれている。「…」は読めない。仲冬も読み難いが、陰暦11月の異称なので辻褄は合うと思う。以上の推測は後日デジカメ画像を睨みつつ、ネット検索も利用して愚考。

1095m標高点の西の鞍部の石祠
大萱山への稜線

雑木林の稜線を大萱山に向かう。細い稜線で小さな登降が連続し、鈍った足に結構応える。木立を透かして、真っ白に雪を頂く中禅寺湖南岸の山々や男体山、白根山、袈裟丸山が眺められる。南の1075m標高点に続く尾根を分けると、稜線の南側直下に作業道が現れる。稜線上には黒木が生えて深山の雰囲気があるのだが、眼下の斜面は作業道によってギタギタに切り裂かれて痛々しい。まだ雑木林は伐採前で残っているが、近いうちに皆伐されるのではないかと思う。

白くなった袈裟丸山を遠望
稜線直下に作業道が続く

稜線直下の作業道をしばらく辿ると、二本の高いアンテナが見えてくる。ちょっと藪っぽい踏み跡に入って電波中継所を過ぎると、そのすぐ裏手が大萱山の頂上だ。

頂上は樹木に囲まれて、展望は全くなく、三角点標石ともう一つの標石、二つの山名標があるだけだ。狭くて腰を下ろしても寛げる雰囲気ではないので、ミカンを食べて少し休んだのち、石倉山に向かう。

大萱山直下の電波中継所
大萱山頂上

ネットの情報によると、大萱山の東の県境稜線上のピークに石仏があるという。往路では見つけられなかったので、復路ではよく探しながら歩く。あちこち探し回って、檜が生えた小ピーク(というか瘤)の上でようやく見つけた。ピーク直下を巻いている作業道を通ったため、見逃していたようだ。しかも、高さ20cm位の小さな座像なので、すぐ傍を通ってもうっかりしていると石ころにしか見えない。それだけに、見つけたときはガッツポーズで喜んでしまった。石仏の背面には文字が刻まれているが、読み取ることは難しい。

石仏を訪ねることが出来て、満足して先に進む。往路の破線路への分岐を過ぎて、県境稜線を東に少し進んだところに風当たりの弱い日溜まりの平地があり、時刻もちょうど正午となったので、ここで昼食とする。缶ビール+鯖味噌煮缶詰+冬の定番の鍋焼きうどんで空腹を満たす。

小さな石仏
この辺で昼食

エネルギーを補充したら、先に進もう。小さくアップダウンを繰り返して県境稜線を東に辿り、軽く登って1106m三角点峰に着く。広場の中央に落ち葉に埋もれて三角点標石がある。樹林に囲まれて展望はない。ここから小さなギャップを越え、県境稜線から分かれて石倉山に向かう稜線に入る。最初は急な下りで、その後も細い尾根の登降が続く。

1106m三角点峰
石倉山への稜線(1)

やがて少し長めの登りとなり、雑木林と背の低い笹原に覆われた緩やかなピークに着く。左側は大萱山の眺めが良い。このピークには「次三角點」と刻まれた標石がある。

次三角点のあるピーク
次三角点の標石

さらに稜線を辿り、左に舳先の様に突き出たピークに登って石倉山の三角点に着く。ここも樹林に囲まれて展望はない。両側は急な斜面、頂上の先は岩場に松の生えた崖となっていて、ハイトスさんが降りられないので諦めたのも良く解る。

石倉山への稜線(2)
石倉山三角点

三角点のピークから戻って東に向かい、薄らと雪に覆われた稜線を辿って石倉山最高地点(1113m標高点)に着く。疎らな雑木林に覆われて雰囲気は明るいが、展望は木立を透かして地蔵岳や横根山が見えるくらいだ。標識の類いは見当たらない。山名標はベタベタあると邪魔に感じるが、全くないのもちょっと寂しいかも。残りのミカンを食べて喉を潤し、小休止したのち、来た道を引き返す。日の入りが早い季節なので、もう日差しが傾いている。あまりのんびりは出来ない。

石倉山(1113m標高点)
次三角点付近から大萱山を望む

次三角点のピークから下って、県境稜線へ登り返す急坂は足が重い。やはり、今日は久しぶりにがっつり歩いているからなあ。1106m三角点峰を越えて少し進んだ先に「六五四」と記された標石があり、ここで県境尾根から左に分岐して南へ尾根を下る。

下り始めは伐採された杉の木が折り重なって斜面を覆い、歩きにくいが、すぐに尾根上の広くて快適な山道に出る。こんな山奥にこんな太い山道がなんであるのか、ちょっと謎だ。道沿いに桜が植えられており、春先にはお花見もできそう。尾根を一直線に下り、左に下る林道の分岐点に着く。

傾いた陽に照らされる
1106m三角点峰の標石
1106m三角点峰から南尾根を下る

左の道が下山ルートだが、尾根の先の小ピークに向かって林道が続いているので、立ち寄ってみる。すぐに頂上に着くと、杉林の中に高い階段鉄塔が立っている。施錠されて残念ながら登れないが、4階建位の高さがあるので、天辺に立てたとしたら絶景だが怖いだろう。何のために立てたのか、これも謎の施設だ。

鉄塔の裏手には大山咋大神(おおやまくいのおおかみ)の石碑があり、裏面には「昭和五十一年十月吉日 家住春太郎建 日吉大社宮司有宮祐夫書」(一部不明確)と刻まれている。後日ネットで調べてみると、日吉大社は大山咋神を祭神とする山王信仰の総本社(滋賀県坂本)とのこと。

南尾根の末端に立つ階段鉄塔
大山咋大神の石碑

分岐に戻って山腹の林道を下り、沢に降りて林道奥小屋支線に合流する。合流点には「山神参道」と刻まれた三角形の石標がある。山神は大山咋神のことに違いないが、県境稜線近くまで立派な山道が続いているのも参道だろうか。終点には何もなかったがなあ。建設途中で中断したのかも。これまた謎だ。

ここからは、未舗装の林道をのんびり下るだけだ。途中、大春橋で林道奥小屋線を分ける。往路で終点を通りかかった作業道はここから通じているようだ。どんどん林道を歩き、日没まで余裕のある時刻に駐車地点に戻ることができた。山中では、ハンターさん以外、誰にも行き会うことのない静寂の山歩きであった。

山神参道の石標
林道奥小屋支線を下る
駐車地点は近い
草木橋から眺める
夕暮れの草木湖

帰りはサンレイク草木に日帰り入浴で立ち寄る(桐生・みどり市民は400円)。クリスマスディナーパーティ開催中とのことで、ロビーではソプラノ歌手がピアノ伴奏でコンサートを開催しており、大勢のお客さんが来場していた。湯船にゆっくり浸かって身体の芯まで温まり、とっぷりと日が暮れた中、桐生への帰途についた。

参考URL:ふーせんさんの「大萱山」、山が一番さんの「粕尾峠〜地蔵岳〜大萱山」、桐生みどりさんの「石倉山と大萱山」の記事など、多数。