清津川

〜26日(日)
メンバー:M,H,T

処暑を過ぎ、8月も終わろうとする時期だが、最高気温が35℃を越える猛暑日が続いている。この週は秋田に所用があり(秋田も暑かった)、ついでに週末まで滞在を延ばして秋田の大平山に登ろうかな、等と企てていたのだが、諸事情があって週末前に桐生に帰る。

秋田の山歩きを諦めた代わりに、Mさんからのお誘いで上信越の沢登りに同行することになった。赤湯温泉から入渓して清津川の本流を遡り、途中でテント泊。最後は白砂山に詰め上がって野反湖に下山するというロングコースだ。このところ天候が安定し、大きな渓谷の遡行には絶好の機会。Hさんも参加して3人パーティで出かけて来ました。

8月25日
天気:
行程:ゲート 7:05 …赤湯温泉 9:05 …西ノ沢出合 11:25 …赤土居沢出合 13:20(泊)
ルート地図 GPSのログを地理院地図に重ねて表示します。

桐生を車で午前4時に出発。途中でHさんの車と合流し、JR吾妻線金島駅の駅前のスペースにHさん号を駐車。私の車に全員乗り込んで赤湯温泉入口に向かう。下山後は野反湖からバスとJRを乗りついで金島駅に戻り、Hさん号で私の車を回収する計画だ。

金島駅から中山峠、三国峠を越え、苗場スキー場の前から赤湯温泉入口への林道に入る。すぐに未舗装道となり、曲がりくねった道を延々と走る。清津川を渡る小日橋で車両通行止めになっているが、工事用バリケードが置かれているだけなので、ちょいと脇にどけて進入する(もちろん、何かあっても自己責任で)。

路肩の崩壊や落石に注意して1km程走るとY字路があり、右が赤湯温泉道でゲートがあり、鎖が張られて通行止めになっている。Y字の左の道を少し下った所に駐車スペースがある。ここまで小日橋の駐車スペースも含めて1台の駐車もなく、人気の温泉があるのでもっと車が多いかなと思っていたが、この季節は意外と人の訪れが少ないようだ。


ゲート近くの駐車スペース


ゲートから赤湯温泉道に入る

赤湯温泉道を歩き始める。最初は平坦な林道だ。途中で、足の速いご夫婦に追い抜かれる。林道終点から山道となり、棒沢に掛かる鉄橋(棒沢橋)を渡る。下流には釜段ノ滝があるはずだが、橋からは落口しか見えない。ここから小尾根上の道となり、なかなか急な登りが続く。ヒメコマツの大木が立ち並んで見事だ。


棒沢橋を渡る


小尾根を登る

小尾根の登りが尽きた所が鷹ノ巣峠で、先行のご夫婦が休憩していた。話を伺うと今日は赤湯温泉泊とか。かなり羨ましい。ここから緑深い樹林のトラバースとなり、見返りの松という標識のある地点に着く。この地点では携帯が使えて(私のdocomoで確認)送迎のタクシーの案内看板がある(越後湯沢駅まで約50分、8,200円〜)。

道は下りとなり、最後は急斜面をジグザグに降りて赤湯一号橋で川を渡る。続いて二号橋で清津川本流を渡り、右岸に沿って進むと赤湯温泉の3つの露天風呂がある。褐色の温めの湯で、渓流に面して野趣満点。これはいずれ入りに来なくては、と皆の意見が一致する。


鷹ノ巣峠


赤湯一号橋


赤湯温泉付近の清津川


赤湯温泉の露天風呂

露天風呂から僅かな距離で赤湯温泉山口館に着く。ロケーションは想像以上に山奥だが、建物は意外と新しく瀟洒な感じだ。これは是非宿泊しに来なければ、と固く決意する。

赤湯温泉から河原を歩くと昌次新道入口の鉄橋があり、ここで渓流足袋に履き替えて遡行を開始する。対岸で何か採取中の男性がいたので、声をかけて話を伺うと、山口館の館主の方だった。夕食の天ぷらにする山菜を採っていたとのこと。美味しそうだなあ。


赤湯温泉山口館


遡行開始地点

清津川は広大な河原が続く。水流は少なく、せいぜい膝下くらいしかない。清津川に何回か来たことがあるMさんによると、今日は水がかなり少ないようだ。しかし、徒渉で緊張せずに済むのは楽だし、周囲の原生林の緑を眺めながらジャブジャブと川を渡るのは涼しくて快適だ。右から土砂を大量に押し出した赤倉沢が出会う。Mさんはこんな沢も登ったことがあるというのだから凄い。


広大な河原を歩く


赤倉沢出合

途中、川幅の狭くなるところもあるが、平坦な河原歩きがほとんど続く。左にセバト川を分け、一段と河原が広くなると正面から西ノ沢が出合い、本流は左に屈曲する。ここでパンを食べて一休みする。


浅い水流を徒渉する


西ノ沢出合

本流に入ると谷が狭まり、小さなゴルジュの様相を呈する。最初の小滝が現われ、簡単に越える。深い釜に流れ落ちる水が青い。谷は小さく屈曲を繰り返し、ところどころに岩床が露出して、景観に変化が出て来る。渓流足袋で水流の近くの岩床をペタペタ歩くのは楽しい。二つ目の小滝を過ぎると、程なく右から荒れた赤土居沢が出合う。Mさんによるとこの上流は地形的に幕営適地はないとのことなので、ここに泊まることにする。


川幅が狭まる


最初の小滝


二つ目の小滝


赤土居沢出合

小さな砂地を見つけて、まず、Mさんの2人用テントを張る。Hさんか私のどちらかはテントで寝れば良いのだが、今晩は雨は降らなさそうだし、ツェルト泊を一度やってみたいということで、2人ともツェルトを張ってみる。立ち木が利用できればツェルトを張るのは簡単で、エアマットを敷いてシュラフカバーに潜り込めば、結構快適だ。


テントとツェルトを張る


焚き火を囲んで宴会

ねぐらを整えたら次は流木を集めて焚き火を熾す。焚き木は良く乾いていて、すぐに盛大に燃え始めた。火を囲みながらワインと日本酒で宴会。夕食はMさんが飯盒で炊いた飯に麻婆春雨だ。食後もウィスキーをちびちび嘗めながら宴会。眠くなったところで、各自の寝床に潜り込む。夜半から冷えたが、薄手のフリースを着込めばOK。川音をBGMにぐっすり眠ることができた。

8月26日
天気:時々
行程:赤土居沢出合 5:15 …中俣出合 7:25 …二俣 9:15 …白砂山(2140m) 11:05〜11:30 …堂岩山(2051m) 12:30 …地蔵峠 13:50 …野反湖バス停 14:35
ルート地図 GPSのログを地理院地図に重ねて表示します。

翌日は手強い藪漕ぎがある根性日なので、早朝4時に起床。朝食にラーメンを食べ、快適だったテン場を撤収して出発する。まだ薄暗く、水も冷たい渓流を遡る。


遡行開始


岩床を行く

やがて膨大な土石に覆われた広い谷に出る。右岸の山腹が大規模に崩壊しており、これが谷を埋めてしまったようだ。半ば土砂に埋もれたナメ滝を越えると、大きな流木が絡まり合って谷を塞いでいる。この奥には、土砂と流木で塞き止められた小さな湖があった。


大崩壊地


大崩壊地のナメ滝

塞き止め湖の上流は一転して穏やかな流れとなり、小規模なU字谷の底の砂利の上を水が細々と流れている。すぐに左に東ノ沢を分け、次は右に沖ノ西沢を分ける。この辺り、両岸は岩壁を交えた急斜面だ。途中で新しい熊の糞を見た。

流木が引っかかってできた滝が多いが、深い釜を備えた綺麗なナメ滝もあり、なかなか美しい渓谷だ。途中、左の崖から赤錆色の水が湧いている個所がある。この水を嘗めてみると、鉄錆の味が強くした。このせいで、付近の河原は赤錆色に染まっている。


穏やかな流れ


深い淵


流木の滝


この付近に赤錆の鉱水が湧く

土砂が押し出した左俣、ナメ滝で出合う中俣を左に分けて右俣に入る。ようやく谷間にも朝日が差し込んで明るくなり、沢は傾斜を増して源頭の雰囲気となる。


中俣出合


右俣を遡る

やがて最初の滝らしい小滝が現れる。これは左から取り付き、水流中のガバホールドを利用して越える。この滝の上流の両岸はボロボロの草付きの急斜面で、沢には土石や流木が多く荒れ気味だが、ところどころにナメと小滝が現われ、沢登りらしくなってくる。


小滝


小滝を越える(撮影:Hさん)

ぐんぐん高度を上げると、4m程の滝が現れる。これは直登不能で、右から高巻くしかなさそうだ。ここで初めてヘルメットを被る。まず、Mさんが高巻きルートにチャレンジする。脆い急斜面で、登る足元から大石がガラガラ落ちる。間隔をあけて、次に私が登る。水が流れる溝を登ると低木の藪となり、木の枝と草を摑んでトラバース。滝の上に出て草付きを降りる。最後にHさんが無事に高巻き。小さく巻けて良かった。この高巻きが今回の沢登りの一番の難所となる。


直登不能な4m滝


右から高巻く

高巻き後も傾斜の強い沢を登る。次の小滝は登る途中で一歩のスタンスが遠い所があり、苦労する。ホールドをしっかり摑んでエイヤッと登る。ちょっと強引だったかな。さらに小滝が連続するが、いずれも問題なく登れ、水際に咲く花を愛でる余裕も出て来る。やがて水が少なくなって溝状の沢となり、もう滝はなさそうだ。振り返ると苗場山辺りの山が遠望できる。


小滝


トヨ状滝


ダイモンジソウ


水流が細くなり源流の様相

細い水流が合わさる二俣で一休み。ここで2ℓポリタンを満タンにしておく。右の水流を辿り、両側から草木が覆い被さる溝を登る。程なく笹藪に突っ込んで水がなくなったので、短靴(私はトレラン用シューズ)に履き替える。涸れた溝を頼りに深い笹藪を漕ぐ。ここが一番の頑張り所だ。


二俣を右に入る


溝を辿って笹藪に突入

気がつくと先頭を行くMさんも、しんがりを歩くHさんも笹藪の中で見えない。ヤッホーと声をかけながらペースを落として登る。と言ってもこんな笹藪、速く歩ける訳がない(^^;)。振り返ると、上越国境稜線上の山々がほぼ目の高さで、たいぶ高度を稼いだと慰められる。

最後は溝もなくなって、密笹藪漕ぎに突入。ようやく佐武流山への稜線上に出る。地形図には破線路が描かれているが、笹と灌木が密生して、人が通った痕跡は全くない。立ち休みしたのち、藪を漕いで少し登ると上信国境稜線に出る。こちらには笹原の中に微かな踏み跡がある。これを辿って白砂山の頂上に着いた。


振り返って上ノ倉山を遠望


上信国境稜線上の笹藪
(撮影:Hさん)

頂上には2人連れの登山者がいて、Hさんが面識があったことから、なんと「Tomoの奥利根山歩き」のtomoさんと「まきまきの写真集」のまきまきさんであることがわかった。よく見ていた山のHPなので、そのオーナーさんに山で出会ってビックリ。お二人は写真撮影を主目的に登られていて、とても立派なカメラをお持ち。あらぬ方向から笹を搔き分けて出現した我々には驚いたそうだ。キュウリの浅漬けと冷えた梨をいただいて、美味しさに感激。この後の下りも長いので、しばらく休憩する。


白砂山頂上


白砂山を下って堂岩山へ向かう

あとは野反湖へ一般登山道を下る。白砂山から堂岩山にかけては花が多いが、バスの発時刻に間に合わないといけないので、写真を撮っている余裕はない。堂岩山に登り返して、頂上で一休み。あとは概ね下りだが、小さな登りが意外と多く、疲れた足には応える。ハイカーさんが多数休憩中の水場もそのまま通過。地蔵峠で一服する。バスには余裕で間に合いそうだ。ハンノキ沢から最後の登り返しをヒーコラ登って、定刻の30分前に野反湖バス停に到着した。自動販売機で冷えたペットボトル飲料を買って喉の渇きを癒す。


地蔵峠


野反湖まであと僅か(撮影:Hさん)

野反湖15:06発のバスに乗車し、長野原草津口駅に16:22着。ここで約1時間の待ち時間があるので、風呂か食事が出来ればベストだが、駅周辺には全く何の店もなし。キオスクでアイスを買い、待合室で食べて列車を待つ。17:30発の列車に乗って金島駅で下車。ここに駐車して置いたHさんの車に乗り、日が暮れた道を走って、赤湯温泉入口に置いた私の車を回収。桐生への長い帰途についた。