高尾山
高尾山と言えば、東京都民にとっては昔から山歩き入門の山として人気の山だ。近年は、ミシュランガイドに最高級三つ星の観光地として紹介されたおかげで、知名度が一気に高まり、それはもう大変な人出らしい。
私が最初に高尾山に登ったのは、東京に住んでいた頃のことで、1978年1月という大昔のことだ。そのときは藤野駅から陣馬山に登り、高尾山へ縦走して高尾山口駅に降りた。その後、桐生に移ってからも、高尾山〜陣馬山のトレランで度々訪れたが、三つ星取得以降は登っていなかった。今回、東京在住の友人S氏との間で、軽い山歩きに行こうという話が持ち上がり、それなら高尾山に登ってみようか、ということになって出かけて来ました。
ネットで調べると、高尾山口の駐車場はすぐに満車になるらしいので、早めに桐生を発って8時頃に到着。首尾よく高架下の駐車場に車を置けた(1日1,000円)。電車が到着する毎に改札口から吐き出される大勢のハイカーさんで駅前は溢れかえり、何か祭りでもあるのかと思う様な賑わい。久し振りで懐かしい駅周辺をぷらぷら散歩して、時間を潰す。
10時に電車でやって来たS氏と合流して、予定通り出発。土産物店が立ち並ぶ門前街を通り抜け、ケーブルカー清滝駅の左脇から自然研究路6号路に入る。今日は6号路を登り、1号路を下りにとって高尾山を周回する計画だ。
ハイカーさんの多くはケーブルカーに乗って山頂に向かうが、下から歩いて登ろうという殊勝な人(我々もそうだが)も多く、車道をぞろぞろと歩いて行く。山ガール風ファッションの人も見かける。さすがメジャーな山だ、私が普段行く山とは段違い(^^;)
日影になった小さな谷の底は、空気がひんやりと冷たい。車道から渓流沿いの細い山道に入ると、ハイカーさんが一列縦隊となって歩いて行く。まるで小学校の遠足に混じったみたいだ。途中には琵琶滝がある。水垢離場のある小さな滝で、夏ならば滝行も涼しくていいかも?頂上へ直接向かうルートを分けて、ハイカーさんの数もようやく落ち着く。
6号路は渓流に沿って、ゆるゆると奥へ続いている。周囲の樹林はちょっと色付いたくらいだが、水際のアジサイはきれいに黄葉し、木洩れ日が当たって輝いている。ところどころに立つ自然観察の説明板には、ここに棲む動物がイラスト付きで紹介されている。渓流には、サワガニもいるらしい。今の時期はいないと思うけど、サワガニは唐揚げにすると美味しいんだよねー、と、昔、食べたことを回想する。
左に稲荷山コースへ繫がる山道を分け、小さな沢を詰める。昨夜の雨で道全体が沢のようになっているが、飛び石が置かれているので歩き易い。やがて沢を離れて尾根を登る。木の間から周囲の谷と尾根が眺められて、明るい雰囲気だ。それにしても今日は無風快晴のいい天気で良かった。
木の階段が続き、最初は元気良く登っていた小さい子供連れの家族も、道端で休憩している。我々ものんびり登り、途中のベンチに座って、甘栗を食べて休憩する。
ベンチからちょっと登ると、人の列が続くメインストリートの1号路に合流し、ほどなく高尾山頂上に着いた。頂上はさらに人、人、人で大賑わい。広い山頂広場も、シートを敷いて昼食のハイカーさんで埋め尽くされている。頂上周辺には数軒の食事処がある。その内の一軒を覗いてみると、タイミング良く席が空いていたので、さくっと昼食にする。私は暖かいとろろそばを注文。麺がうどんの様に太いのが特徴で、なかなか美味しかった。
頂上に着くなり、眺めも見ずにお昼にしてしまった(^^;)。食事も済んだし、ゆっくり展望を楽しむとしますか。樹木に囲まれているが、富士山と丹沢山塊は良く眺められる。富士山は5合目以上が真っ白だ。左に見えているきれいな三角形の山は、大室山らしい。大展望の写真を撮ろうとしたところで、デジカメのバッテリが予備も含めて空っぽに。なので、以下の写真は携帯電話で撮影したものです。
頂上から往来の絶えない1号路を下る。途中の薬王院奥の院では、お堂の前に立つ大天狗と烏天狗の銅像の筋骨隆々の格好良さに感嘆。後日で知ったことだが、薬王院は信州飯綱山から勧請した飯縄大権現を本尊とし、天狗はその眷属として篤く信仰されているらしい。
薬王院の山門前のお店で、ごまだんごを買い求めて賞味してみた。仄かに胡麻の甘みがあって、なかなか美味しい。どの店もお客さんが多くて繁盛している。まるで初詣のような賑わいだ。
ケーブルカー山頂駅を過ぎ、1号路を麓まで歩いて下る。こちらはずっと舗装道なので下りには良いが、登るのはあまり面白くないだろう。尾根上を歩いて金比羅台まで行くと、澄みきった青空の下に都心方面の眺めが開け、紅葉した山麓や八王子市街、遠く都心の高層ビル群が望まれる。
金比羅台からは谷に下って、渓流沿いの舗装道を歩く。なかなか急坂で、足元が覚束ない観光客の中にはこけちゃう人も。のんびり歩いて車を置いた高尾山口駅まで戻った。
約4時間の軽いハイキングだったが、初めて歩いた6号路は意外と山らしい雰囲気だったし、頂上からの展望、薬王院など見所が多く、S氏も登山熱が復活したとか。楽しさの1日となった。