巣立山・破風山・岩井堂砦
毎年恒例の正月温泉&山歩き。2011年は中之条のたんげ温泉美郷館に宿泊し、群馬300山を参考にして、周辺の里山3つに登って来ました。いずれも短時間の軽いハイキングですが、洞窟を訪ねたり、雪道を歩いたり、岩稜を登ったりと変化があって、それぞれに楽しめました。
高崎駅に10時台の新幹線で到着したS&Sを車で迎えて、R406を東吾妻町方面に走る。途中の蕎麦屋で昼食を摂ったのち、R406の大戸交差点を郷原方面に直進せず左折。宿の夕食とビールを美味しく頂くため、行きがけに腹減らしの軽い運動をする魂胆だ。簡単に登れそうな巣立山に向かう。
国道の右側には、民家にのしかかるように岩峰群が聳え、西上州の様な景勝を見せている。すぐにR406から右に分岐して、県道377号川原畑大戸線に入る。民家が点在する開けた谷に幅広い立派な車道が続き、現在も拡幅工事が続いている。登山口となる佐奈坂林道は、車ですれ違うのが困難な細い道だ。一旦、入口を見落として通り過ぎてしまったが、引き返してきてようやく発見。宮谷戸バス停が目印になる。
佐奈坂林道に入って集落を抜けると、すぐに林道終点の看板があるが、林道は佐奈坂峠とその先まで通じている。峠の手前の路側のスペースに車を置く。
ガスコンロ、コッヘルは車に残して、軽装で出発。峠から稜線に取り付く。藪はなく、微かな踏み跡が続く。稜線北側の直下には新しい林道が通じ、雪で真っ白に覆われた路面が延びている。
すぐに、稜線上を南北に横切る道型に出合う。ここが昔の佐奈坂峠かな。南側には杉林の中に明瞭な道型が残っているが、北側は林道で途切れている。
新しい林道は、稜線直下をばっくり削って続いている。林道自体は殺風景だが、伐採されたおかげで北面の展望が開け、岩櫃山から薬師岳、吾嬬山にかけての山並みや、中之条の町並みが一望できる。
やがて、小高いピークにぶつかって、急な坂に差し掛かる。雪がなければどうということはない登りだが、固く凍った斜面は滑り易く、立ち木が疎らで手掛かりも少ない。ここで、S&Sは登るのを断念。頂上まであと僅かの距離なので、二人にはこの坂の下で待って貰って、私だけ往復する。
急坂を登ると、奥にもう一段の急登があり、巣立山の頂上に登り着いた。頂上は冬枯れの樹林に囲まれ、木の間を透かして榛名山が見える。三角点の標石と小型山名標の他は静けさだけがある頂上だ。写真数枚を撮って、すぐに引き返す。
二人の待つ場所に戻り、急いで往復して来たので、ちょっとだけ休憩。汁気の多いミカンが美味しい。あとは往路をのんびり戻る。往復1時間強の短い山歩きだったが、腹減らしにはなったかな。
宿に行く前にもう一箇所、以前から気になっていた仙人窟に立ち寄る。大戸から県道を郷原方面に少し北上すると、仙人窟の案内看板がある。仙人窟の入口には約2台分の駐車スペースがあり、ここに車を停める。
入口から杉林の中の長い石段を登ると、行く手に岩峰と岩壁がぐるりと立ちはだかる。まず、右側の岩壁に行くと、その基部に洞窟がぽっかりと大きな口を開けている。
案内板によると、仙人窟の大きさは入口高さ8m、幅14m、深さ26m。洞内に入ると、両側に十八羅漢の石像がある。新しい物に見えたが、延宝六(1678)年の作とのこと。奥には吾妻三十三所観音第八番札所の聖観世音像が祀られている。
次に左側の岩峰に向かう。中腹に胎内くぐりと称する岩穴があり、くぐり抜けると反対側の岩屋(三体の石像がある)に詣でることができる。
仙人窟と一帯の岩壁、岩峰は、想像していたよりずっと規模が大きく、一見の価値あり。お勧めのスポットだ。入口に戻って案内看板をよく読んでみると、気になることが書いてあった。曰く、仙人窟の山頂には獅子窟があるが、径が険しく、土地の人でも所在が知られていない、とのこと。これは興味を惹かれる。
仙人窟の探訪を終えて、たんげ温泉に向かう。宿に到着する頃には上空を灰色の雲が覆い、雪がちらほら舞い始めていた。美郷館に入ると、まず木造の広いエントランスにビックリ。置かれている一枚板テーブルもでかい。泊まった部屋には掘り炬燵のある広縁があり、窓の外にライトアップされた渓流と滝を眺めることが出来る。
まずは、温泉へ。一番大きな瀬音の湯に入る。浴室も立派な木造だ。天井が高いので空気が冷たいが、ぬるめの湯船にゆっくり浸かるとよく温まる。風呂上がりにビールを飲み、夕食時に熱燗を飲んだら気持ち良く酔いが廻って、紅白も見ずに眠ってしまった。
明けて新年。昨夜は雪が舞う天気だったが、元旦は穏やかに晴れた。今日は、高山村と旧新治村の村境稜線にある破風山に出かけることにする。
中之条からR145で高山村に向かい、判形交差点で左折。林道西五領線を走って、登山口の一本松に向かう。冬期休業中のゴルフ場の入口を過ぎると、路面を雪が覆う。途中の林道の要所に「破風山」の緑色の道標があるが、これは北山本線林道経由で破風山に登る最短ルートを案内しているらしい。それでは歩きが短過ぎて物足りないので、予定通り一本松に向かう。
枯れ草色の山野に分け入って、一本松に到着。松を中心に林道がロータリーになっており、駐車スペースには事欠かない。
今日はコンロとコッヘルも持って出発。入口に鎖が張られた左の林道を進む。冬枯れの雑木林は、陽が差し込んで明るい。雪の上には兎の足跡が続いている。そういえば、今年は卯年だった。こいつは春から縁起がいい、ってことはないか(^^;)
送電線の下を通ると、薄暗い杉林に入る。右手のすぐ上に稜線が近づく所で、林道から稜線に乗り換える。稜線上に山道はないが、赤テープの目印が続く。ちょっと急な登りがあるが、ここは凍ってはいないので、S&Sも何とか登る。やがて稜線が平らになると、あとは頂上まで登り降りはほとんどない。
北側が小さな崖になった細尾根を進み、破風山の頂上に着いた。頂上には電波反射板があり、少し南の林間に三角点の標石と石祠がある。
頂上からの谷川連峰の展望を期待していたのだが、今日は真っ白な雪雲に覆われて、吾妻耶山の山裾辺りしか見えない。少しでも良い眺めを得るために、頂上北西側の雪の載った小さな岩場に行ってみる。岩場の下は崖なので、私は端まで近づかなかったのだが、雪の上に新しい足跡があり、崖っぷちに足が半分かかっているのに気がついた。こわ〜。
(後日、ネットでこの足跡の主の山行記録を見つけた。)
風を避け、反射板のコンクリート基礎に腰掛けてお湯を沸かし、パンと温かいコーンスープで昼食にする。その後、往路を車まで戻る。宿に14時ちょっと過ぎに帰着し、一風呂浴びて、天皇杯サッカーを後半から観戦した。
正月温泉&山歩きの最終日。若女将に見送られて、たんげ温泉を発つ。今日も天気は上々だ。
中之条からR353を渋川方面に走り、岩井洞ドライブインの先で左に分岐する車道に入ると、すぐに左の沢に赤い鋼鉄の桁橋が架かっている。ここが岩井堂砦の登山口で、見上げると険しい岩峰がそそり立つ。岩稜には道らしきものが見え、どうもあそこを登るらしい。橋の手前に車を置いたが、渡った先にも広い駐車スペースがある。
登山口には、ペンキが剝げかけた案内看板と「←岩井堂砦登山道 山頂200m」という道標がある。200mなら、楽勝か?
登山道に入り、林間の階段を急登して、右手の岩稜に取り付く。鎖が手摺に張られているので、摑んでいれば問題はないが、登って行くとぐんぐん高度感が出て来る。
振り返ると↓こんな感じ。小さなギャップを越えて、さらに急角度で登って行く。
登り着いた砦頂上は柵に囲まれた平地にベンチや小さな休憩舎があり、安全地帯なのでホッと一息つける。展望は抜群で、眼下を流れる吾妻川を上流から下流まで見渡せる。お隣りには、2つの岩峰が突き出た古城台が眺められる。余裕があればあちらにも登ろうと考えていたが、岩井堂砦だけでもう充分満足だ。背後には岩井堂山がごつごつと聳えている。これはエキスパート向きで登るのは難しそう。
展望を堪能し、充分に休憩して気持ちを落ち着けたのち、下山にかかる。岩稜から梯子で降りて、急な岩の斜面をジグザグに、手摺の鎖を頼りにしてそろそろと下る。
麓に降り着いた所には、見学用バッタリ小屋(水車小屋)がある。車道に出て振り返ると、見上げた高みに岩井堂砦の休憩舎がある。小さな山だが、面白かったー。
すぐ近くに作間神社があるので、参拝する。境内には誰も居らず、静まり返っていた。
神社の鳥居の脇には「作間神社の双神」がある。説明板によると、寛保元歳酉四月吉日(1741年)邑中とある。風化が進んでいるが、素朴な感じの石仏だ。野仏めぐりPOINT 1だそうなので、次回は古城台と野仏めぐり(全部で七か所)をセットで歩くと面白そうだ。
お昼前に下山したので、帰りは食事処を探しながら高崎駅に向かう。渋川市のバンビーノというイタリアンレストランでスパゲッティを食べたあと(美味かった。繁盛していて、地元では人気の店らしい。)、高崎駅で解散してS&Sと別れた。