八紘嶺
所用で東海地方に出かける機会があり、そのついでに安倍川奥の八紘嶺に登って来ました。
前夜は静岡駅近くホテルに宿泊し、当日の朝、静岡駅前7:02発の梅ヶ島温泉行きの静鉄バスに乗る。乗客は10人位。広大な河原を持ち、大河の趣きがある安倍川と両岸の急峻な山肌を眺めながら、1時間50分の乗車で終点の梅ヶ島温泉に到着する。青空が広がり、今のところ天気は良い。梅ヶ島温泉は、山間のどん詰まりに10数軒の旅館が寄り集まる閑静な温泉だ。バスに乗っていたハイカーさんはほとんどが途中で降り、終点で降りたのは3人だけだった。山登り以外の荷物を、今晩泊まる宿に預けてから、八紘嶺に向かって出発する。
安倍峠に向かう車道を少し登ると安倍峠・八紘嶺登山口の道標があり、ここから山道に入って急峻な山腹の杉林の中をジグザグに登る。途中、間伐展示林という案内板があり、そのとおりに綺麗に手入れがされた杉林が続く。また、今日も間伐の作業中で、辺りにはチェーンソーの音が響き、杉の木の香りが充満していた。急斜面での林業の作業は大変そうだ。
杉林の中の急坂を登り詰めると、大きく迂回して登って来た車道に合流する。合流点のすぐ近くには広い駐車スペースがあり、大勢のハイカーさんが出発準備中だった。ただし、このグループにはその後全く行き会わなかったので、大光山の方に行ったのかも知れない。
八紘嶺の稜線に向かうショートカットの登山道を左に見送って、車道を安倍峠へ辿る。眼下にはサカサ川が大きく蛇行して流れている。地形図を見ると分かるように、つづら折れで3回180度ターンして流れる変な川だ。実際に見ても、細く小さな尾根を回り込むように流れて、面白い地形を示している。登り始めは晴れていたのに、稜線に近づくと雲に覆われ始めて、風が冷たい。周辺の樹林は、一部で紅葉が始まっていた。
車道の途中に安倍峠への旧歩道入口の道標があり、ここからサカサ川に沿って山道を歩く。U字の小さな谷はほとんど平坦で、ヒタヒタと流れる谷川の脇に道が通じている。先行するハイカーさんの後について、のんびり歩く。
やがて水流が途切れ、地面から水が染み出している地点に着く。ここが安倍川の水源らしい(標識があった)。しばらく水の無い窪を歩くと、旧道の安倍峠に着く。オオイタヤメイゲツというカエデの一種が群生しているのをはじめ、樹林が美しい峠だ。紅葉の時期にはまだちょっと早かった。ここから大光山(おおぴっかりやま)への登山道が分岐する。この面白い読みがなの山にも、大いに興味を惹かれる。
安倍峠の左手すぐ上に車道が通り、八紘嶺への登路は車道を梅ヶ島温泉の方に少し戻る。駐車スペースとWCがある場所が新しい安倍峠で、数台の車があった。相変わらずガスに覆われて、周囲の展望はほとんどない。
新安倍峠から山道に入り、稜線上を急登する。樹林に覆われたピークを越えると稜線から下がって、山腹をトラバースする道となる。下から登って来たショートカット道と合流して稜線に出ると再び急登となり、尾根を絡んでジグザグの登りが続く。ところどころザレた斜面を横切る箇所があり、滑落しないように注意。
急登が終わり、もうすぐ頂上かなと思ったら、小さなピークがポコポコあって、何度も騙される。意外と登り応えがあるなあ。稜線はほとんど樹林に覆われ、晴れていたとしても展望はごく一部からに限られそう。一度、大きく下って登り返すと、ようやく八紘嶺の頂上に着いた。
頂上も樹林に囲まれ、展望は元から期待できない。ご夫婦のハイカーさん一組と単独行の男性一人が休憩していた。単独行の方はサカサ川で先行していた人で、話を伺うと、最近山歩きを始めたばかり、面白くてはまっているとのこと。先々週は毛無山、先週は山伏に登ったそうだ。彼らが先に下山すると、静かな頂上となった。静岡駅前のコンビニで買ったパンを食べて、軽い昼食とする。
下山は往路を戻る。ガスは一様に真っ白で、晴れる気配はなかったのだが、稜線上の小さな笹原にさしかかったところで幸運にも一瞬ガスが切れて、遥か下に梅ヶ島温泉近くの安倍川の河原が見えた。
帰りはショートカット道を下る。安倍峠経由より、こちらの方が歩き易い。一気に下り、梅ヶ島温泉には14時少し過ぎに到着した。早速、宿にチェックインする。
今晩の宿のさつき苑は外観・設備はかなーり古いが、山小屋と思えば無問題(^^;)。早速、お風呂に入る。少し硫化水素臭、少し白濁した肌触りがぬるぬるの泉質だ。大変良い。そして風呂上がりの缶ビール。最高にうまい!泊まり客は私の他に1名のようだ。この二か月間は非常に忙しく、ようやく一段落したところなので、こういう静かな温泉でぼーっと出来るのは、本当に休養になる。酔いが回ってしばらくひっくり返ったのち、もう一度温泉に浸かり、その後、ノートPCでこの山行記録を執筆中。で、ここまで書けた。もうすぐ18時、夕食の時間だ、腹減ったー。
いよいよ食事が部屋に運ばれて来ました。どひゃー、すごいご馳走!美味しい。もう大満足。明日はもうひと山登る計画だったが、予報によると雨が降るそうなので、始発の朝9時台のバスでおとなしく桐生に帰るつもりだ(10/2の晩に記す。予定通りに帰桐。推敲してアップ)。