鋸山

天気:
メンバー:T
行程:花立登山口 6:50 …長陵尾根の水場 7:55 …鋸山(765m) 8:40〜9:30 …花立峠 9:50 …花立登山口 10:35
ルート地図 GPSのログを地理院地図に重ねて表示します。

新潟県長岡市の東部にある鋸山に登って来ました。標高765mの低山ですが、豪雪によって削られた険しい山容をもち、自然が素晴らしい山でした。

桐生を深夜3時半頃に車で出発し、赤城ICから関越道に乗って、長岡ICで降りる。長岡は大都会だが、市街を抜けて鋸山山麓の栖吉の集落を過ぎると一気に山奥の雰囲気となり、緑に覆われた栖吉川の渓谷に沿ってR352を走る。R352の終点(この先は未開通区間)が鋸山の花立登山口で、ハイキング用の広い駐車場がある。驚いたことに早朝にも関わらず、既に約20台の車があった。大半が長岡ナンバーで、地元での鋸山の人気の程が窺える。

駐車場のすぐ隣りの天狗清水でポリタンに水を詰め、今日は蒸し暑くなりそうなので、ついでに冷たい水をたっぷり飲んで出発する。沢に沿って付けられた登山道を歩く。周囲は一面緑の自然林で気持ちが良い。


天狗清水


沢に沿って登る

やがて、沢を橋で渡ると、岩の下に「烏滝」という道標がある。沢の中を指しているようなので、しばらく沢を遡ってみたが、本当の沢登りになって道はなさそうなので、元の登山道に戻る。登山道は、放棄されて草原化した棚田の横を、湧き水の流れに沿って緩く登って行く。


沢を橋で渡る


ナルコユリ


ミズタビラコ


棚田の跡地に咲くキショウブ

登山道をこのまま行くのがいわゆる花立コースで、花立峠経由で鋸山に至るが、今日はネットで調べて知った長陵尾根コースを登ってみようと思う。ネットの情報によると、この辺りの杉林に入口があるらしい。特に道標はないが、杉林の中に続く明瞭な踏み跡を発見。これを辿ると、先程遡って途中で引き返した沢の上流に出た。沢に沿って断続的に山道があり、つい最近、苅り払いもされたようだ。長陵尾根コースに間違いない。ところどころ沢の中を歩く区間もあるが、ルートが分かりにくい所はなく、ちょっとした沢登り気分が楽しめて面白い。


沢の中を歩く


沢に沿う山道を登る

山道はやがて沢から離れて、左側の緩い斜面を登る。樹林の間から鋸山の頂上稜線が眺められ、稜線直下の急峻な斜面が目を引く。山道は段々になった斜面を登って行く。集落から遥かに離れた山中だが、かつては棚田があったらしい。現在は湿原化して、アシ、シダ、樹木が生い茂っている。ここも幅広く刈り払われていて、よく整備されている。


鋸山の稜線を仰ぐ


棚田の跡地を登る

尾根に近づいて明るく開けた斜面になり、右側に急峻な斜面と岩場が現われると、滾々と冷たい水が湧き出す水場がある。


フタリシズカ


長陵尾根の水場

水場の直ぐ上にはキハダ?の大木があり、幹に「長陵尾根」という標識とハンモックが架かっている。木の下には背負子やザックなどがデポしてあるが、人はいない。ここを根城にして、どこか近くに出かけているようだ。

細い尾根に出ると左右に踏み跡が通じている。左は風谷山に続く道だろうか。右は見上げる様な急角度の尾根となり、その奥に僅かに覗いているのが鋸山の頂上らしい。右の尾根に取り付く。急坂にはステップが刻まれ、トラロープが下がっていて大変助けになるが、かなりの傾斜が続くので、下りコースにとるのは避けた方が良さそうだ。


登って来た谷を振り返る


鋸山への急登が始まる

一直線の登りが続き、ようやく肩のような所に出て傾斜が緩み、一息つく。鋸山から花立峠に連なる稜線が眺められる。下って来る単独のハイカーさんとすれ違い、さらに頂上直下の急坂に取り付く所で、鉈で刈り払いをしている年配の男性に出会った。この方が長陵尾根コースの整備をしているらしい。挨拶をして、笹原の中のトラロープを摑んでよじ登ると、ひょっこりと鋸山頂上に飛び出た。

頂上は意外と広くなく、一等三角点の標石、展望盤のほか、台座に湯殿山霊社と刻まれた石祠がある。山名標柱に小さな鐘が下がっていたので、鳴らして到着を告げる。今日は霞んで遠方の展望はないが、東西に眺めが開ける。守門岳の稜線がうっすらと眺められた。


急斜面を連ねる鋸山の稜線


鋸山頂上から風谷山(中央)と
長岡方面の展望

展望を楽しんでいると、先程の刈り払いの方が上がって来たので、いろいろ話を伺った。長陵尾根コースは5年位前から切り開いて整備しているそうだ。私は杉林から長陵尾根コースに入ったが、橋を渡った所から沢伝いに来ても面白いとのこと。また、ヤマビルは出ないらしい。積雪期の1月に鋸山から風谷山に縦走した話も伺った。あの急坂を積雪期に下るとは凄い。大変面白いコースを切り開いて頂いたお礼を述べる。ひとしきり話をしたあとで、再び作業に戻って行かれた。

その他に数パーティのハイカーさんが頂上にやって来た。登山口の車の数からすると少ないように思える。みんなどこに行ったのかな。

カステラとゆで卵の軽い昼食を済ませたのち、花立峠に向かって稜線上を進む。稜線の右側は急崖になっているが、ブナ林に覆われているので危ない所を歩いている感じは全くない。途中に石仏が2基あり、お賽銭が供えられていた。東山麓の半蔵金への道を分けると、花立峠に着いた。杉の大木に囲まれた峠には石仏と、石の台座に埋め込まれた花立峠のプレートがある。台座には「長岡工業高校創立100周年記念改修竣工2000年8月」とあった。

ここにあった案内図によると、さらに稜線上を進むコースを長工新道といい、萱峠を経由して花立登山口の近くに降りるコースがあるらしい。今回は花立峠から直に下ることにする。


花立峠への稜線


花立峠の石仏と石碑

花立峠からジグザグに下る。途中に昭和29年3月の遭難碑がある。展望が開けて、左に長工新道の尾根の崩壊した斜面が眺められる。見返り清水跡という標識がある地点に着く。かつては水場があったようだが、中越地震の影響で枯れたらしい。ここから見る鋸山は急峻な雪崩斜面を巡らせて、低山とは思えない見応えのある山容だ。


見返り清水跡から仰ぐ鋸山


緩い下りが続く

大モミジを過ぎると杉林に入り、長陵尾根コースの入口を通る。あとは往路と同じ道を歩いて、登山口の駐車場に戻った。全行程4時間弱の短い山歩きだったが、その割にはなかなか険しい山で変化に富み、十二分に満足した。


花立登山口の駐車場に戻る


長岡温泉湯元館

帰りは長岡湯元館に立ち寄る(400円)。建物は昭和初期のレトロな雰囲気が漂う。浴室には誰も居なくて、楕円形の深い湯船を独占してとっぷりと浸かった。加熱しているがかけ流しだそうで、なかなかいいお湯でした。