三段の滝(赤城)
Mさんから、赤城山の猿川上流にある三段の滝に行きませんか、とのお誘いを頂いた。昨年、何度か沢登りでご一緒したHさんも来るとのこと。三段の滝とは如何なる滝か、実は良く知らなかったのだが(それもそのはず、地形図にも記載がなく、世間にもほとんど知られていない)、その名のとおり三段に落ちる滝で、落差の合計が100mを超す大滝と言う。今回は、未解明の滝の全貌を明らかにするための調査山行とのことで、大変興味深いので同行させて頂きました。
みどり市役所大間々庁舎横の駐車場に集合し、Hさんの車で二の鳥居に向かう。二の鳥居周辺には、手前と少し先に数台分の駐車スペースがあり、先着の車から山菜採り?の二人組(実はオッサンの山旅のオッサンのパーティだったことが後日判明)が出発するところだった。
入口にゲートのある工事用道路に入って鳥居川を渡り、尾根を回り込んで猿川に向かう。途中にサントリー「天然水の森 赤城」との看板があり、森林を周回する遊歩道が整備されているようだ。
猿川に出ると、広大な河原の奥に高々と長七郎山が聳え、なかなか雄大な景観が展開する。周囲の山々の新緑が綺麗だ。猿川には新しい自然石護岸と砂防堰堤が連続し、かなり奥まで工事用車道が通じている。
車道終点から猿川の河原歩きとなる。一応、沢登り用に渓流足袋は持って来たのだが、水量が少ないのでトレラン用シューズで歩いても靴を濡らすことはない。
猿川の両岸は火山らしい脆い岩肌が続く。やがてナメ状の岩盤が現われ、小さな滝がいくつか続く。このあたりは新緑を眺めながら容易に遡れて楽しい。
長七郎山の懐に近づくに連れて、谷も徐々に険しくなる。三段の滝はどこだろう、と右岸の山肌を見ながら遡ると、僅かに奥まった所に三段の滝の下段が現われた。岩石が散在する沢を登って滝下に立つ。岩壁の上を水がサラサラと流れ落ちる大滝だ。上に続く中段と上段の滝は見えない。
Mさん曰く、この滝を高巻いて中段に向かうという。ひえ〜。一応用意してきたヘルメットとハーネスを装着する(30mロープも持ってきたが、使用することはなかった)。
まず、滝の右側の笹の斜面を登ってみたが、脆い岩壁に突き当たり、Mさんが立ち木を頼りに登攀を試みるも根張りが心許なくて危険なので断念(ちなみに、立ち木が頼りになっても危険^^;)。猿川本流に戻ってしばらく遡り、高巻きルートを探索する。本流も源頭に近く、上方にはぼろぼろのガレ場が広がって、滝がかかっているのも見える。
右岸に比較的緩い笹の斜面を見つけて登ると、小尾根を乗っ越してあっさり下段の落ち口に着いた。GPSで滝下との高度差を測ると、衛星が急斜面で遮られて精度はあまり良くないが、約45mという値が得られた。
中段の滝はすぐ上流に落ちているが、岩壁から崩落したばかりと思われる角の鋭い巨石が不安定に山積し、その上を歩いて滝に近づくのは注意を要する。中段は上半分が固い岩盤、下半分が脆い岩盤の2層になっていて、幅広く簾のように水が落ちている。上段の滝は、ここからは見えない。
中段の滝は右側から高巻く。固い岩盤の下の脆い層が掘れて、大きな岩洞が出来ている。数人が楽に泊まれる広さだが、寝ている間に天井から岩が抜け落ちて直撃しないとも限らない。
岩洞を右から巻き、林を登って中段の落ち口に向かう。落ち口までの斜面のトラバースしているとき、眼鏡を木の枝に跳ね上げられて落とした。滝の下まで落としたかと焦ったが、足元から僅かに離れた所に落ちているのをHさんに見つけて頂いて、事無きを得る。
中段の滝の落差は、GPSによると約25mだった。緩くナメ状になった落ち口から下を覗き込むと、それ以上ありそうにも思える。落ち口近くの岩場には名残のアカヤシオが咲き、その向こうには猿川対岸の尾根が同じ位の高さに見えて、かなりの標高まで登ってきたことが分かる。
すぐ上に落ちている上段の滝は、下から一見するとあまり落差がありそうに見えないが、黒光りする岩盤の上を幾筋にも分かれた水流が流れ落ちていて、三段の滝の中では一番綺麗な滝だ。
上段の滝は、右も左も高い岩壁が続いていて、簡単には高巻けそうにない。比較的易しそうな右側に取り付いてみる。上段の滝を真横から見ると、岩壁から突き出た黒い岩柱の上を水が流れ落ちている。下から見た感じよりも、実際の落差があるようだ。
急峻な斜面が登れずに右へ右へとトラバースしていくと、本流源頭に近い岩壁に阻まれて、もうトラバースはできない。意を決して登り始める。木立に体重をかけて垂直に近い壁を強引に登って行くが、脆い岩肌に辛うじてへばりついている木は、いつ引っこ抜けてもおかしくない。トップを行くHさんは岩壁の弱点を縫って右へ左へと進路を変えるが、もし登れない岩壁に突き当たって行き詰まったらどうしよう。ここを降りるのは、登るより困難だ。ようやく傾斜が緩くなって、滝の上部に抜けた時はホッとした。
登り着いた所は上段の滝のさらに上流にある10m滝の上だ。この滝の下降は滑り易いので、左の尾根から巻いて下る。上段の滝の落ち口は、細い水流が断崖絶壁に向かってチョロチョロと流れていて、その先は虚空だ。落ち口間際の立ち木に摑まって下にカメラを向けるMさんを見ているだけで、こちらの背筋が寒い(^^;)
10m滝は登るのは容易だ。滝の上から先は笹原の緩い斜面なので、ヘルメットとハーネスを外して昼食とする。と思ったら、私の食料を入れたビニル袋を下段の滝の下に置き忘れたことに気がつく。パン1個を食べた後、しまい忘れたらしい。Mさん、Hさんから少々分けて頂いて腹ぺこは免れる。ビールは、今日はさすがに誰も持ってきていない。
ここから、コバイケイソウの生えた沢を登る。右寄りに登って行くと水流が消えて小尾根上の登りとなり、長七郎山の東面を横断する工事用道路に出る。見上げる長七郎山は崩壊した斜面が広がり、道路もあちこち崩れている。通行には支障はなく、緑に覆われた山麓を見おろしながら歩く。
鳥居峠の手前で利平茶屋へ下る歩道に入り、ジグザグに下る。途中、「← 利平茶屋1.4km 鳥居峠0.9km→」の道標がある地点から歩道をちょっと逸れて、小尾根上に付いている踏み跡を辿ってみる。そのまま利平茶屋に下れるかも、と期待して進むが、砂防堰堤を足元遥か下に見る断崖絶壁の上に出て、すごすごと引き返す。途中、見頃のアズマシャクナゲの群落があったのと、鳥居峠の展望が良かったのが道草の収穫でした。
道標まで戻り、後は素直に歩道を辿って、好天の休日で家族連れやBBQのグループが三々五々訪れている利平茶屋に着く。そこから車道を歩き、車を置いた二の鳥居に向かった。
帰りに下田沢にあるMさんお勧めの赤城豆腐すみれ屋に立ち寄る。名水「赤城源水」と国産大豆100%、天然にがりを用いた豆腐を販売していて、ざる豆腐のサイズ中(2〜3人用、460円)を買って帰る。コクがあり、とっても美味しいお豆腐でした♪
- 赤城良常さんのHP「猿川・鳥居川上流域散策(赤城山)」
- 桐生山野研究会「赤城の渓谷(猿川)」、「猿川・三段の滝」