戸神山
戸神山は、関越道で沼田IC付近を通るたびに間近に見ていた尖り山で、群馬百名山の一つということもあり、ずっと気にかけていた山でした。ごく短い行程で手軽に登れる山なので、逆にこれまで登る機会がなかったのですが、1月末にスキーで骨折して雪山シーズンを棒に振り、軽い山ならば登れるまでにようやく回復したMさんと、3月中は忙しくて2回しか山に行けず、すっかり脚力がなまってしまった私とで、リハビリのためにどこかに登ろうという話になったときに、行き先として戸神山の名前が急浮上。この時期ならば、残雪の山々の展望も期待出来そうです。という訳で良い機会なので、登って来ました。
Mさんの自宅を7:30に車で出発し、北関東道、関越道を経由して沼田ICで降りれば、もう戸神山の山麓だ。天気は予報に反して意外と良く、青空の中に戸神山の三角形の山容がくっきりと浮かぶ。玉原・迦葉山方面の道標に従って走り、県道上発知材木町線の岡谷上で左折。戸神山の南麓を暫く西に向かうと立派な道標があり、右折して狭い車道を登ると虚空蔵尊下の駐車場に着く。墓地の参拝用の駐車場のようだが、参拝の邪魔にならなければ駐車しても差し支えないだろう。既に4、5台の車があり、いずれもハイカーさんの車のようだ。県外のナンバーも見える。
駐車場から長い石段を登って、虚空蔵尊(戸神神社)にお参りする。今日の夕方からお祭りだそうで、地元の方7、8人が準備のために忙しそうに動いていた。石段を少し戻り、左手の林道を辿る。しばらく歩くと道標があり、山道に入る。小さな男の子を背負い紐で背負ったおじいさんが先行する。なかなかの健脚だ。一方、ダブルストックで登るMさんは、傾いた面に足を置くのがまだちょっと辛そう。この辺りの斜面に掘った跡が見えるのは戸神鉱山といい、昭和13年頃から終戦までの間に主として金を採掘していた跡らしい。
登山道はやがて岩場にさしかかり、小気味良く高度を上げて行く。振り返ると眼下に利根川の河岸段丘が広がり、その向こうに子持山や小野子三山が見える。良く晴れて、暑いくらいの陽気だ。
林道終点からの登山道を合わせると、道端に不動明王像があり、お賽銭をたくさん集めている。手摺にロープが張られた岩場を登ると、三基の大きな石尊祠が祀られる戸神山の頂上に飛び出た。
頂上には既に数組のハイカーさんがいて、360度の展望を楽しんでいる。春霞がかかっているものの、展望が売りの山だけあって素晴らしい。正午には間がある時間だが、折角の大展望なので大休止して昼食の時間にする。Mさんから頂いたおにぎり、卵焼き、バナナを頰張りつつ、山岳展望を楽しむ。
頂上から一番目立つのは、ゆったりと残雪の稜線を広げる武尊山だ。双眼鏡で覗いてみると、川場や玉原のスキー場で滑っている人々が点々と見える、視野を左に転じると、テーブル状の三峰山が長々と寝そべる。三峰山の右端に少しのぞいているのは谷川岳、左端の遠くの真っ白な山は白砂山か。西には山麓の長閑な田園風景が広がり、その向こうに子持山がゆったりと裾野を広げている。そちらにカメラを向けたら、おじいさんに背負われて上がって来た男の子がキメのポーズをとってくれた。キャッワィー!
このおじいさんともう一人の方は、海外の山にも良く出かけていらっしゃるそうで、Mさんとなぜか南米の登山の話で盛り上がる。すごい人達や(^^;)
往路の岩場を下るのは、Mさんにとってはまだちょっと無理ということで、北側から東山麓に下ることにする。北に稜線を辿ると痩せた尾根となり、行く手に高王山が見える。余力があれば高王山を往復することも考えていたが、リハビリにはもう十分ということで割愛し、途中から右に分岐する登山道を降りる。
赤松や雑木林の中を緩く下る登山道は良く整備されていて、足にも優しい。降り着いた所は立派な本堂を持つ観音寺で、ここからさらに陽当たりの良い開けた谷を下って下発知の集落を抜け、県道上発知材木町線に出る。しばらく県道を南下し、右手にチップ工場が見えた所で、工場前を通る林道に入る。梅林やオオイヌノフグリ、ホトケノザが群れをなす田園を歩いて、戸神山の山裾を回ると、ぴたり登山口の駐車場に帰り着いた。
帰りに、下発知町で見かけた利根錦の蔵本に立ち寄った。店内に入ると、お酒のいい香りが漂う。お土産に酒を買い求めて帰途についた。ちなみに私が買ったのは「利根錦ふくろしぼり雫 純米吟醸」。フルーティな生酒だが、飲み口は癖が少なく爽やか。うま〜い(^^)。桐生に帰ると、この日の半日間で桜は満開になり、新緑も市街から周囲の山へ一気に広がっていた。