中野山〜五覧田城址
荒神山から眺める赤城山と袈裟丸山は、共にゆったりと山裾を引く雄大な山容を示して名山の風格十分だが、その間に広がる山地は、これはと言うピークに乏しく、一般的なハイキングの対象になっていない。私も群馬百名山の栗生山(くりゅうさん)に一度登ったことがあるくらいだ。しかし、私にとっては未踏の山々ばかりだし、静かな山歩きが期待できる。今回、hisiyama さんにご案内頂いて、ハイトスさんと三人パーティで中野山から五覧田城址(要害山)までの稜線を歩いて来ました。
川内のファミリーマートでハイトス号と待ち合わせて、車2台でR122を花輪方面へ走る。五覧田城址の高橋登山口に My Civic を置いたのち、ハイトス号に乗り換えて中野山の山麓に向かう。
途中、赤城御霊(ごりょう)神社に立ち寄る。かつては銅(あかがね)街道が社殿の前を通っていたのだが、現在は民家の裏庭のような所を通る狭い道なので、知っていないと多分辿り着けない。現在の街道(R122)は社殿の直ぐ裏手の高台を走っている。境内には一等水準点の柱石があり、立派な社殿と共に銅街道が主要道であったことを示している。
中野山へは御霊神社に車を置いて登っても良いが、hisiyama さんが地主さんから林道に車で進入する了解を得ているとのことで(許可がない場合は神社から歩くのが無難)、R122の御霊神社の裏手にあたる所から分岐する林道に入って車で登る。かなり急&狭い林道で、高級車で来るような所ではない。My Civic で来た方が良かった。と思ったが、下山後、車を回収する時にここを登ることになるから、いずれにしても同じことか(^^;)
林道を奥まで入ってハイトス号を置き、出発する。最初は大きく育った杉林の中の林道を辿る。谷間の林間なので、GPSの測位精度が悪い。15分程林道を歩いたところから右の斜面に取り付いて、急な斜面を登る。今日は風もなく穏やかな天気なので、登っている間はTシャツ一枚で丁度良い。
中野山から南南東に延びる枝尾根に上がったところで一服。雑木林の尾根を少し登ると、日溜まりの中に石祠がある。また、この辺りの尾根の左斜面には、材木を滑り落とした跡のルンゼ状の窪みが数か所見られる。昔は林業が盛んだったようだ。
枝尾根を登ると、やがてアカマツが生えた鋸状の痩せ尾根になり、小さな岩場を越える。山腹にはマンサクの黄色い花がぽわっと咲き、北には白い雪に覆われた袈裟丸山を遠望して、早春の山らしい雰囲気だ。
二つ目の石祠を見ると、中野山の頂上はすぐだ。三角点の標石と、木の幹に留められた小さな山名プレートが待ち受けている。雑木林に囲まれているが、冬枯れのこの時期は陽が差し込んで明るく、休憩にはもってこいの山頂だ。hisiyama さんの奥さんから差し入れて頂いた山椒のおにぎりやピリ辛のねぎ味噌などを大変美味しく頂く。
腹ごしらえを済ませたのち、頂上から北に進む。松と岩の尾根を歩くが、すぐに旧黒保根村と旧東村の村境尾根に出て西に方向を転じると、雑木林に覆われた緩やかな尾根歩きとなる。最近、数度の降雪があったが、雪はほんの一部にしか残っていない。
小一時間程歩くと、尾根を塞ぐ様な大岩が現れる。縦に割ったような面には水平に擦れた痕跡があり、光沢がある。鳴神山脈・金沢峠の鏡石と同様の成り立ちをもつそうで、岩の表面には小さな晶洞(水晶に覆われた穴)もあり、なかなか興味深い岩だ。
ぽつぽつとマンサクの咲く尾根を下ると、田嶋峠に着く。安永七年(1778年)と刻まれた石祠が祀られ、南北に明瞭な峠道が越えている(後日、hisiyama さんは南麓の中野からここを越して、沢入川沿いの観音堂に降りたそうだ)。
稜線を歩いて行くと、展望の開ける地点がところどころにある。南東には大畑山〜荒神山の稜線が横たわり、その向こうに鋭い三角形のピークを覗かせているのは鳴神山のようだ。北西には、山村が点在する田沢川の谷を隔てて、栗生山がぽっこりとしたピークを擡げているのが眺められる。間近で遮るものなく眺めると、栗生山もなかなか立派な山だ。
ふかぐな林道への道を左に分けると要害山も漸く近づいて来て、中山峠に着く。こちらもはっきりした峠道があり、石祠が祀られている。
中山峠から急坂を上がって空堀を越えると、アカマツに囲まれた平地に登り着く。ここが要害山の三角点で、右に関守、左に五覧田城址の展望台の道が分かれる。頂上には、赤城山鳥居峠のケーブルカー跡の展望を刻んだ石碑があり、実際、赤城山が見えるが、その他は松林に遮られる。展望台に行くと、2基の石祠と東屋、五覧田城址の由来を記した説明板がある。
こちらの展望は、北東が急斜面になっていて、その縁から見渡す渡良瀬川の景観が素晴らしい。北には中野山と辿って来た稜線が見え、袈裟丸山の銀嶺を遠望する。ここからの展望は一見の価値あり。
パノラマを堪能し、東屋で一休みしたのち、下山にかかる。登山道を下っていくと、行きたい方向とは別の方向に行ってしまうようだ。行きたい方向に下る道はないけど、どうする?下っちゃいましょう、ということで、怪しいショートカットルートに入る。あとでGPSの軌跡を見るのが楽しみだ。
かなり急な斜面だが、藪山のエキスパートのお二人はずんずん下る。良い子はついて行ってはいけません(^^;)。最後に林道に出る直前で、偶然にも庚申塔と青面金剛明王の文字塔を発見した。文字塔の側面には「享保十一丙午?」(1726年)と刻まれているから、八代将軍吉宗の時代だ。毎度のことだが、山の中にまで古い宗教モニュメントを残した昔の人の信仰心には感心する。
狙った場所よりちょっと西寄りで林道に出たが、僅かな距離で My Civic を置いた高橋登山口に帰り着いた。このあと、恐怖の林道を登ってハイトス号を回収し、帰途についた。静かな稜線歩きが楽しめて、思った以上に変化と展望に富んだ歩き甲斐のあるコースでした。