胡桃ヶ岳・荒雄岳・禿岳

〜12日(月)
メンバー:S,S,T

体育の日の3連休は鳴子温泉郷に2泊し、『新・分県登山ガイド 宮城県の山』を参考にして、周辺の山々を歩いて来ました。

10月10日
天気:
行程:潟沼 13:35 …登山口 13:40 …胡桃ヶ岳(461m) 13:55〜14:00 …登山口 14:15 …潟沼 14:20
ルート地図 GPSのログ(復路)を地理院地図に重ねて表示します。

JR桐生駅から両毛線に乗り、小山駅で東北新幹線に乗り換えて、東京から乗車して来たS&Sと指定席で合流する。仙台駅に10:00着。駅前のレンタカー営業所で事前に予約していた車を借り出し、カーナビの目的地をJR鳴子温泉駅にセットして発進する。連休初日のためか、仙台市内はかなり渋滞していたが、R4から分かれてR457(羽後街道)に入ると、東北らしい緩やかな山並みと田園風景を眺めながら、快適なドライブとなる。江合川沿いのR47を走り、ホテルや旅館が立ち並ぶ鳴子温泉に到着した。

まずは、JR鳴子温泉駅前で昼食。蕎麦屋で蕎麦を食べる。名物の温泉卵やしそ巻きもあって美味そうだが、今夜の宿でも豪華な夕食が待っているので、ここは我慢。

既に正午を回っているので、今日は極々軽い山歩きにする。車で温泉街を抜けて裏山に登り、ローカルなスキー場、ゴルフ場、テニスコートの傍を通って、山上の潟沼(かたぬま)に着く。湖畔にはレストハウスや広い駐車スペースがある。湖に面してぽっこり盛り上がった山が、今日の山歩きの対象の胡桃ヶ岳だ。

湖畔に掲げられた説明板によると、潟沼は鳴子火山の火口湖で、837年にこの地方で起きた火山活動が続日本後記に書かれていることから、約1100年前に出現したと考えられているそうだ。世界でも有数の強酸性の水質のために魚は棲めず、セスジユスリカだけが棲息しているという。実際、夥しいユスリカが煙がたなびくごとく集って来て、血は吸わないけれど鬱陶しいことこの上ない。湖畔のクレー射撃場から連続して響く発砲音もちょっと気に障る。しかし、そんなことも含めて、実にユニークで興味深い湖だ。


潟沼


潟沼湖畔から見た胡桃ヶ岳

胡桃ヶ岳へはごく短い行程なので、デジカメだけを携えて出発。北へ向かう緩い坂道を登る。坂の入口には「みづうみの岸にせまりて硫黄ふく/けむりの立つは一ところならず」という斎藤茂吉の歌碑が建つ。この歌は、表現が即物的過ぎて詩情は薄いが、潟沼の特徴を端的に言い表している。

湖畔から5分も歩くと峠を越え、R47古川方面と鳴子町内の分岐の案内標識を見る。この右の杉林の中の踏み跡が胡桃ヶ岳への道だ。意外と明瞭な踏み跡で、藪漕ぎもない。やがて紅葉した低木の中の登りとなり、なかなか好ましい。


案内標識の向かいが登山口


明瞭な踏み跡を辿る

最後はササの切り開きを登り、湖畔からわずか20分程で胡桃ヶ岳の頂上に着いた。ササに埋もれた頂上は灌木に囲まれて展望は限られる。錆付いた鉄骨の櫓に掠れて読めなくなった山名標が掛かっているのが、あまり見向かれないマイナーな山の雰囲気を醸し出している。ササの中の踏み跡を少し進むと潟沼の湖面を見おろせるが、錆びた鉄パイプが2本、ササに隠れて地面から突き出ているので、躓かないように注意(Sが転んで顔面を切った。幸い、軽い切り傷で済んだが…)。


胡桃ヶ岳頂上


頂上から潟沼を見おろす

頂上には三等三角点の他に、片面に「宮城縣」と刻まれた石柱がある。他の面にも「B第拾號」のような文字が刻まれているが、判別できなかった。往路を戻って下山する。


頂上にある「宮城縣」の石柱


頂上付近より花渕山方面の展望

湖畔に降り、胡桃ヶ岳の麓の硫黄噴気口や射撃場近くで盛んに水蒸気を上げる温泉井戸など、面白い火山活動を見て歩いたのち、車に戻る。それにしても、湖畔のユスリカの数と密度は物凄い(^^;)


潟沼から胡桃ヶ岳を仰ぐ
右下の白い崖に噴気口がある


潟沼湖畔の温泉井戸

今夜の宿は、鬼首温泉郷の一つ、吹上温泉の峯雲閣だ。すぐ手前には有名な間歇泉があるので、観光して行く(400円)。僅かに湯気の立つ間歇泉の前に陣取って待つことしばし。突然、ドラゴン花火の様に熱湯が高く吹き出した。これは見事。


鬼首間歇泉「弁天」


吹上温泉峯雲閣

峯雲閣は観光客で賑わう間歇泉から少し奥まった谷間にあり、森に囲まれた閑静な一軒宿だ。玄関に入ると、赤絨毯、黒光りのする太い柱、高い天井のロビーがあり、年代を感じさせる。

部屋に荷物を置いたら、早速へゴー。男女別の内湯から屋外に出ると、谷間に混浴の大露天風呂と天然の滝壺が湯船となった湯滝がある。先日の台風Melorで増水したため、湯滝を流れ落ちるお湯は温めだが、野趣満点!

夕食は牛肉とキノコの陶板焼き、鯉こく、鮎の塩焼き、いろいろな山菜料理と、期待通りの美味しさ。ヘルシーでイイ。地発泡酒の「鳴子の風」の山ぶどう、ブルベリーも美味かった♪

10月11日
天気:一時
行程:八ツ森コース車止 10:20 …荒雄岳(984m) 11:25〜12:00 …八ツ森コース車止 12:45
ルート地図 GPSのログ(往路)を地理院地図に重ねて表示します。

翌朝の朝食には温泉卵としそ巻きも出て、食べたかった名物も味わえて満足、満足。

今日はまず、峯雲閣のすぐ近くの地獄谷(別名、地獄沢)に向かう。朝早いにも関わらず、地獄谷遊歩道入口の駐車場には観光客の車が集まり始めていた。木道を下ると、吊り橋の架かる小さな渓谷がある。これが地獄谷だ。川岸の崖のあちこちから湯気が上がり、熱湯がゴボッ、ゴボッと間歇的に湧出している。珍しい景観だ。源泉にはそれぞれ雷の湯、紫地獄などと名前が付いている。木道脇の源泉で、卵を入れた籠を熱湯に沈めて温泉卵を作っている人もいた。沢を遡り、木道の終点から引き返した。


地獄谷遊歩道入口の吊り橋


地獄谷巡り(1)


地獄谷巡り(2)


紫地獄

今日の山歩きは、鬼首カルデラの中央に鎮座する荒雄岳に八ッ森コースを往復して登る。車で吹上高原キャンプ場から観光道路を上がる。途中、雌釜・雄釜の間歇泉へ道が分かれるが、現在は全く噴出していないらしい。

八ッ森コースの入口には道標があり、路側に車が1台停まっていた。ここから杉の植林帯の中の未舗装の林道に進入する。道が右に曲がる角にもう1台が車があり、2組のハイカーさんが登っているようだ。さらに真っすぐ延びる林道を上がると終点の車止めに着き、道標と登山案内の看板がある。僅かに1台分の駐車スペースがあり、運良く空いていた。

車を置いて登山道を歩き出す。杉林の中を真っすぐに登り、ブナ林に入って山腹をジグザグに登る。緩くて歩き易い道だ。


八ッ森コース車止め


ブナ林の斜面を登る

ブナに覆われた尾根に出ると、木の間から荒雄岳の頂上が見える。しばらく平坦な尾根を歩く。ブナの黄葉が綺麗だ。


荒雄岳を垣間見る


ムシカリの実と紅葉

再びブナ林の斜面をジグザグに登り、山腹をトラバースすると、道標のある稜線上に登り着く。稜線の向こう側に木立を通して見えるピークは、この山塊の最高峰のツクシ森(989m)のようだ。荒雄岳の頂上へは、ブナ林の中を緩く登って僅かの距離だ。


古色蒼然とした道標


頂上へのブナ林の稜線

荒雄岳頂上には山神と刻まれた石碑と二等三角点がある。登りの途中で2組のハイカーさんと既にすれ違っていて、頂上には他に誰もいない。樹林に覆われて、切り開かれた北側にかろうじて栗駒山の展望が得られる。その栗駒山の頂きも雲に覆われていた。お湯を沸かして紅茶を飲み、パンを食べているうちにポツリポツリ雨粒が落ちて来た。

下山は往路を戻る。途中で単独の女性の他、数組のパーティとすれ違う。雨がやや強くなったが、樹林の下では雨具が要らない程度の降りだ。


荒雄岳頂上


山麓に架かる虹

車に戻り、林道を下ると、入口から少し入った所に広島ナンバーの赤いフィットが停まっていた。先程の単独の女性の車らしいが、もしかして広島から来たのかな、とちょっとびっくり(広島出身仙台在住かな?)。

観光道路に出て、ついでに荒雄岳の地獄を巡る。まず、鬼首地熱発電所のある片山地獄。白い砂地が広がる谷間から蒸気がもうもうと立ち上がり、ゴーという轟音が響く。発電所の展示館(無人、無料)を見学した。

次は荒湯地獄。こちらも谷間のザレ地から硫化水素ガスが吹き出す。凹地にはガスが溜まって危険なので、立ち入り禁止の看板がある。谷に沿って右手の下流側に行くとお湯が噴出し、仮設の湯船がいくつもあった。オートキャンプしているグループがいたが、ここに入るのが目的らしい。野湯として有名だそうな。周囲の紅葉と、白いザレのコントラストが美しい。


鬼首地熱発電所


荒湯地獄

地獄巡りを終えて、今夜の宿の中山平温泉琢秀(たくひで)に向かう。こちらの宿は近代的でデラックス。部屋も広い。うなぎ湯と呼ばれるぬるぬるの泉質温泉が名物だ。風呂は3つもあるので、まずは長生の湯へ。男女別の内風呂から外に出ると混浴露天風呂がある。お湯は確かにぬるぬる。しかし、風呂上がりはさっぱり。板前が腕を振るった夕食を美味しく頂いた。

10月12日
天気:時々
行程:花立峠 10:10 …禿岳(1262m) 11:45〜12:15 …花立峠 13:30
ルート地図 GPSのログ(往路)を地理院地図に重ねて表示します。

鳴子温泉郷の山旅の最終日は、鬼首カルデラ外輪山の禿岳(かむろだけ)に花立峠からの最短コースを往復して登る。宮城・山形県境の花立峠には、宮城県側の鬼首から山形県側の最上町へ越える車道が通っている。鬼首は既に訪れているので、最上町から花立峠に上がることにする。

中山平温泉を発って、R47を山形に向かう。途中のJR堺田駅付近には、太平洋と日本海の分水嶺が平地にあるという珍しい場所があるのだが、気づかずに通過。残念!赤倉温泉を通り、最上町で右折して黒沢川沿いの道を上がる。行く手には禿岳が聳え、登高意欲をそそる。

つづら折れの狭幅な道を上がって花立峠に着いたらびっくり、峠の駐車スペースは20台以上のハイカーさんの車でほぼ満杯。花立峠から眺める禿岳の稜線は亜高山的な景観で、大人気なのも頷ける。僅かなスペースに車を置いて出発する。峠周辺は日本海からの強風に吹きさらしになる風衝地帯なため、笹原と低木が広がる。今日も風が強くて寒いので、手袋を着けて歩き始める。


西麓の最上町側から仰ぐ禿岳


花立峠から禿岳(右奥)を目指す

樹林に入って、ようやく風が弱まる。8分程歩くと1合目、さらに8分程緩く登ると2合目の標識がある。この調子なら頂上まで1時間半くらいかな(実際にそれ位だった)。黄葉したブナ林の尾根を登って3合目を過ぎると、再び禿岳の頂上稜線を望むことが出来る。東麓に広がる牧場やゴルフ場、昨日登った荒雄岳の眺めも開ける。


2合目を行く


禿岳を仰いで登る

4合目から5合目の間は、お助けロープを摑んで急坂を登る。ここを上がり切ると見晴らしの良い痩せ尾根となる。振り返ると、花立峠からの稜線も一望だ。


5合目へは急登となる


花立峠を振り返る

尾根上の小さな露岩を下ると、8合目に向かって開けた尾根の一直線状の登りとなる。先行する団体ハイカーさんの列も見える。山形側には遠くになかなか峻険な山並みが見える。どこの山だろう。後日調べたら、神室山地の火打岳から小又山にかけての稜線が見えていたようだ。


ミヤマアキノキリンソウ


8合目


火打岳〜小又山を遠望


開けた稜線を登る

小ピークに登り着くと、右(宮城)側は無木立の急斜面が山麓まですっぱり爽快に落ちていて、その向こうに荒雄岳や遠く栗駒山が望める。9合目の標識のある南峰には小広い平地と不動明王の石祠がある。休憩中の団体ハイカーさんでいっぱいなので、先に進もう。


荒雄岳(中央)と
栗駒山(左奥)を遠望


不動明王の石祠がある
9合目(南峰)

草原が広がる平坦な稜線を歩くと、僅かな距離で禿岳頂上に到着した。頂上からは360度の展望が得られ、大きな石柱の山名標識と、展望を解説した案内図がある。ただし、この案内図は概略過ぎて、どれがどの山か判らない(^^;)。北には栗駒山、須金岳、虎毛山辺りの山が見えているようだ。西には最上町の平野を見おろす。風を避けてパンを食べたのち、頂上を辞す。下山は往路を戻る。


緩い頂上稜線を歩く


禿岳から北方の稜線を望む


禿岳頂上


頂上より火打岳
〜小又山方面を望む

午後になって風も弱まり、暖かい陽も射して来た。光が当たって紅葉が輝く。写真を撮りながらのんびり下る。


往路を花立峠に戻る
後方はオニコウベスキー場


荒雄岳(中央奥)を望む


紅葉の禿岳を振り返る


東麓の町営牧場から仰ぐ禿岳

花立峠に戻って、この3連休の山歩きは終了。鳴子温泉郷には気になる山や見所がまだまだあるので、いつかまた来たい。

帰りは鬼首側に下る。こちらの車道は広くて走り易い。スパ鬼首の湯(500円)に立ち寄って汗を流したのち、仙台駅に向かう。連休最終日なので多少渋滞したが、古川IC〜仙台宮城IC間は高速を使って、予定の新幹線の発車1時間前に着いた。レンタカーを返却し、お土産にずんだ生クリーム大福、夕食に牛タン弁当と缶ビールを買い込んで、仙台18:13発の新幹線の指定席に着席した。