尼巌山〜奇妙山
春分の日から始まる3連休を、長野県・地獄谷温泉に2泊して過ごして来ました。地獄谷温泉は、野生のニホンザルが猿専用露天風呂に浸かるのを間近に見ることができることで有名な地獄谷野猿公苑があり、また、駐車場から数十分歩かないと辿り着けない秘境の一軒宿の温泉なので、以前より行ってみたかった温泉です。連休2日目には好天に恵まれ、松代まで車で移動して、表題の山に登ってきました。宿の温泉と料理、一か月振りの山歩きでリフレッシュして来ました。
連休初日の20日(金)は桐生を車で発ち、高崎駅にて新幹線で来たS&Sをピックアップ。R18を走って、軽井沢で昼食にそばを食べたのち、小諸ICから上信越道に乗る。正月に登った井上山と雁田山を車窓から懐かしく眺めて、信州中野ICで高速を降り、地獄谷温泉入口の上林温泉に向かう(渋温泉からのルートはまだ冬期閉鎖中)。
地獄谷温泉入口には広い駐車場があるが、人気スポットなので車も多い。入口の看板によると、ここから地獄谷温泉までは遊歩道を歩いて1.6km、20分の距離だ。最初だけ短い急坂があるが、あとは杉林の中の平坦で幅広い道を歩く。遥か下だった横湯川の流れが近づいて来ると、対岸に今晩の宿の地獄谷温泉・後楽館が現れる。峨々とした峡谷の雰囲気がいいねぇ。
宿泊手続きを済ませて荷物を部屋に置いたあと、野猿公苑に出かける。すぐ対岸には地獄谷の噴泉がある。破裂したような勢いで蒸気が吹き出していて、凄まじい。
野猿公苑(500円)に入場すると、あっちにもこっちにもサルがいる。ここにあった看板の注意書きが面白い。「ヒトはサルをご先祖様だと思って親近感を持つが、サルはヒトに親近感を持っていないので注意。」
しかし、ここのサルは人間にとても慣れていて大人しく、目を合わせたりしない限りはこちらを意識している様子がない。あまり寒くなかったせいか、露天風呂に浸かって暖をとるサルは2、3匹だが、周囲には数十頭のサルがいる。観光客の数も多く、国際的にも有名な場所だけあって、外人さんの姿もちらほら。皆、熱心に写真を撮っている。中でも小ザルは可愛くて、女の子グループの格好の被写体になっていた。そのうち、係員の人がエサを撒いたら、さらに山から夥しい数のサルがわらわらと到来。ヒトとサルが混ざってカオスな状況に(^^)
サルをたっぶり観察したのち、宿に戻る。居室は角部屋で、窓からも噴泉と横湯川が見下ろせる。そして、見える範囲にもサルがうろうろ、宿の屋根の上で蚤取りとかしている。こんなにサルとの距離が近い場所は初めてだ。
さて次は温泉へ。浴室は7人程でいっぱいになる広さだが、山中の温泉という感じで野趣満点。源泉が熱すぎるので、水を加えて温度を調節する。露天風呂(混浴)もあるが、野猿公苑へ向かう観光客から丸見えなので、暗くなってからもう一度入りに行った。川に面した湯船は灯りから遠い。のんびり湯に浸かって、峡谷の底から夜空を見上げると、たくさんの星が瞬いている。明日は天気が良さそうだ。
夕食は鴨鍋をメインに、茶碗蒸し、鯉さし、岩魚塩焼き、山菜天ぷらなどが食卓に並んだ。ビールを飲みながら、大変美味しく頂く。うーむ、極楽。
2日目の21日(土)は、予想通りの快晴で、絶好の山歩き日和になる。この近くの山歩きとしては高社山などが候補に上がるが、まだ山麓のスキー場が営業しているくらい雪が残っているので、ガイド本『信州日帰りでゆく山歩き 北信・東信』を参考にして、奇妙山(きみょうざん)に登ることにする。この奇妙な名の山は、これまた奇妙なことに長野県内の須坂市と長野市のそれぞれにあるが、今回登るのは長野市松代にある奇妙山である。
宿で朝食を頂いたのち、高速を使って松代に向かう。3連休中日で好天とあって、車が多い。長野ICで降りて松代市街を抜けると、扇状地に田園風景が広がり、その真ん中にプリンのような山容の皆神山(みなかみやま)が鎮座している。皆神山は、太平洋戦争末期には大本営の移転が計画されて長大な地下壕が掘削されたり、1960年代には松代群発地震の震源になったり、山の形から「太古に作られた世界最大のピラミッド」というとんでもな説があったり、と、いろいろ興味を引かれる山だ。
今回の目的地の奇妙山は、皆神山の左手のゆったりとした山容の山だ。りんごやあんず畑、石垣や蔵が立派な民家の間を縫って狭い車道を登り、登山口の駐車場に着く。ところが、2〜3台分の駐車スペースは既に満杯。道を少し戻って、邪魔にならないように道端に車を置いて、歩き始める。
幸い、駐車地点から登山口へは歩いてわずか5分の距離だった。登山口にはポストがあり、中に「尼巌山・奇妙山トレッキングコース」という詳細な地図付きのパンフレットが置いてあったので、ありがたく1部頂く。後日、ネットで調べると、地元NPOがコースを整備し、先月にパンフレットが完成したそうだ。同じものは長野市HPの「長野市内のトレッキングコースのご案内」からもPDFファイルで入手できる。
当初はここから奇妙山だけを往復する予定だったが、このパンフレットを見ると、尼巌山に登って奇妙山へ縦走するコースもあるようだ。面白そうなので、尼巌山にも登ることにする。なお、尼巌山は「あまかざりやま」と読むそうな。日本百名山の雨飾山と同じ読みの山があるとは、実はこのパンフレットを手に取るまでは知りませんでした(^^;)
駐車場の奥に進むと、すぐに尼巌山と奇妙山の分岐があり、左の尼巌山への山道に入る。雑木林と杉林の混じる山腹を登って行くと、「天の岩戸」への道が分岐する。天の岩戸に立ち寄ってみると、岩壁の下に洞窟が半円状の入口を開けていた。奥はあまり深くない。
分岐点に戻り、尼巌山への山道を辿る。ダンコウバイの黄色い花がぽつりぽつりと咲く明るい雑木林を登る。途中から道型が少し怪しくなるが、とにかく上へ向かうと道標があり、池田の宮登山口からの山道と合流したことがわかる。
さらに、お助けロープが張られた急坂を登ると、立見岩という露岩に着いた。岩の上に立つと、松代のほぼ全景が見渡せる景勝スポットで、特に皆神山の山容は一望の下だ。
尼巌山の頂上は立見岩のすぐ上だ。頂上は明るい雑木林に囲まれた長い広場で、木の間から善光寺平や飯綱山などが展望できる。ここには鎌倉時代以前から尼巌城と呼ばれる山城があり、戦国時代には武田信玄も防衛の一拠点としていたそうだ。ハイカーさんが一組、休憩していた。我々もここでお湯を沸かしてスープを作り、パンやコンビニのおにぎりなどで昼食とする。風もなく穏やかで、暑いくらいの良い天気だ。
腹拵えをしたのち、二組目のハイカーさんが縦走路から登ってきたのと入れ違いで、奇妙山へ縦走を開始する。尼巌山の直下は急坂だが、手摺のロープもあるので問題ない。
尾根上の小さなアップダウンを進む。案内図には笹やぶと書かれた箇所もあるが、藪はなくて、問題ない。鞍部に下ると、右に岩沢登山口への道が下っている。直進して、杉林と雑木林の間の急な尾根を登る。途中で三組目のハイカーさんとすれ違う。出会いの石という標識が掛かった岩があり、左にJA総合研修所へのコースが分岐する。
ここからは明るい雑木林の尾根道が続く。やがて、高見岩と呼ばれる大きな露岩が現れる。転落注意という標識を見て、注意して上がると、尼巌山や松代の平野、千曲川の展望が開ける。遥か遠くには鹿島槍から五竜、唐松あたりの北アの山々が白銀の峰を連ねている。霞がかかっているのがちょっと惜しいが、これはいい眺めだ。
奇妙山へはさらに雑木林の尾根を辿る。「もう目前ガンバレ」という標識を見てからも結構距離があり、S&Sがギブアップしそうになったが、頂上まであと少しだからと励まして、ようやく頂上に辿り着いた。
奇妙山は信仰の対象となった山のようで、頂上には二等三角点と山名標の他に「蠶養神」等と刻まれた石碑や石祠があった。「蠶」は「蚕」の旧字体らしい。小広い頂上の広場を囲む樹林は一部が切り開かれていて、北側の眺めが良い。飯綱山を先頭に、黒姫山、妙高山が奥へ並び立ち、左隣にはつんと尖った高妻山が見える。これだけの展望が得られるとは思っていなかったので、とても得した気分だ。頂上まで頑張って登って来て良かった。
展望を楽しんで暫く休憩したのち、下山にとりかかる。往路を尼巌山との鞍部まで戻って、そこから岩沢登山口に降りた。岩沢登山口の駐車場には16時近くに到着。もう他の車はない。当初の予定より長いコースを歩いたので、下山がちょっと遅くなった。急いで宿に帰って、17時15分頃に帰着。温泉に入ったあと、腹を減らして夕食へ。この晩は鹿鍋でした。
3日目の22日(日)は、天気があまり良くないとの予報なので、ドライブ&観光とする。まず、小布施に行き、北斎館で葛飾北斎の肉筆絵を中心とする展示を見た。これは一押しのお勧め。昼食を食べ、名物の栗関係のお土産を買ったのち、天気もまあまあ良さそうなので戸隠高原に立ち寄ってみる。さすがに雪が残っているので奥社参拝はパス。中社にお参りしたのちに長野駅に向かい、そこで新幹線で帰るS&Sと別れた。