富士浅間山

天気:
メンバー:T
行程:南牧中学校 9:20 …展望岩 10:40 …富士浅間山(899m) 11:10〜11:50 …焼山峠 12:25 …下底瀬 13:05 …南牧中学校 14:05
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

先月、ぐんま県民ハイクに参加したとき、「 なんもくトレッキングガイド」(以下、NTG (=Nanmoku Trekking Guide)と略)というパンフレットを貰った。これは今春、南牧村役場が作成したもので、村内の13の山が簡単なガイド付きで紹介されている。そのうちの10の山には既に登っているが、まだの山が3つある。未踏の山の一つ、富士浅間山は次のように紹介されている。

決して目立つ山でも展望に優れた山でもありませんが、静かな信仰の山で、心休まる故郷の山の一つです。展望の開ける冬枯れの時期が適しています。

NTGの地図には、富士浅間山の登山ルートとして、西麓の下底瀬から焼山(やきやま)峠を経由するもの、南麓の大日向から尾根を登って「展望岩」を経由するものと谷を登るものの計3コースがコースタイム付き赤線で記載されている。これを参考にして、大日向から展望岩、富士浅間山、焼山峠を周回して歩いてきました。実際には整備された登山道は全くと言ってよいほどなく、ルートを探しながらの山歩きとなりました。

南牧中学校の駐車場に車を置き、県道を西に歩いてすぐの大きな新しい橋(日向雨沢大橋)で南牧川を渡る。正面に見えているのが、NTGの地図で赤線が記された尾根だ。集落を抜けて尾根の取り付きに向かうと、民家の庭にいたおじさんが登山の格好をした私を見かけて、声をかけてきた。

「どこに登るの?」
「富士浅間山に。そこの尾根から登れますよね?」
「うーん、登れるかなあ。猪除けの電柵がぐるっとあるんですよ。この道を真っすぐ行くと炭焼き小屋があって、その先から右に入ると登れると思うけど、子供の頃に登ったきりだからなあ。」
「わかりました。行ってみます。ありがとうございました。」

というやりとりがあって、貴重な情報をゲット。尾根には取り付かずに(実際、取り付けそうな個所もなかった)沢の右岸に沿って地形図にない林道を歩くと、伺った通り炭焼き小屋があった。

日向雨沢大橋から
富士浅間山の南尾根を仰ぐ
林道を辿ると炭焼き小屋がある

炭焼き小屋を過ぎ、小さな橋を渡って沢の左岸に移る。このあたりから山に入るのかな?橋の右側のガードレールの終端から、沢に沿って戻る方向に踏み跡を発見。これを辿ると支流の小沢を登り、やがて左に登って小尾根の上に出た。小尾根の上にもはっきりとした道型が続いている。これは良いルートかも。

しかし、傾斜が強まるとともに道は怪しくなり、ついに岩場に突き当たる。中央突破できそうな気もするが、その先はどうなっているか判らない。やっぱり巻くのが安全か。岩場を左から巻き、雑木林の急斜面を登ると再び尾根の上に戻ることができた。

尾根上は明るい雑木林となり、右側は高い崖となって落ち込んでいる。振り返ると烏帽子岳あたりの山並が見える。この先は西上州の山らしく岩場が続く。次の第2の岩場は、踏み跡を利用して左から越える。

小尾根に取り付くと
はじめは杉林の中の登り
第2の岩場は左から越える

第3の岩場を右から巻いて越えると、小さな鞍部に出る。尾根を左に進んで第3の岩場の上に立ち寄ってみると、樹林が疎らになっていて眺めが開ける。尾根を見上げれば、すぐ先に高い岩壁を巡らせた岩峰がある。あれがNTGに「展望岩」と記載されている810m標高点の岩場に違いない。しかし、あの上にはどこをどうやって登るんだろう?

今日は穏やかで雲一つない青空が広がり、西上州の山々の素晴らしい展望が楽しめる。展望岩の左には帯状に岩壁が続き、その向こうに毛無岩付近の稜線やローソク岩、立岩、大屋山が見える。また、大岩・碧岩から三ッ岩岳にかけての眺めも良い。

第3の岩場から「展望岩」を見上げる
第3の岩場から大屋山(左)を望む
大岩、碧岩をズーム
大屋山と立岩、ローソク岩をズーム

展望岩は、岩壁の基部から左へトラバースする山道があり、案ずる程のこともなく稜線に出た。稜線を右に進んで岩峰の突端に行くと、こちらからも展望が良い。少し標高が高い分、第3の岩場から見えなかったトヤ山まで見える。また、南には大日向あたりの集落を見おろすことができる。ということは、山麓からも展望岩が見えるに違いない。

展望岩の基部を左に巻いて登る
展望岩から三ッ岩岳の眺め

展望を楽しんだのち、富士浅間山に向かう。疎らで明るい雑木林の尾根で、陽射しを浴びながら歩くのは気持ち良い。途中、東側の林が切れた個所があり、小沢岳や稲含山の展望が得られる。

富士浅間山の頂上へ
雑木林の尾根を辿る
途中で小沢岳と稲含山(奥)の
展望が開ける

少し急な坂を登り、TV中継の簡易アンテナを過ぎる。右が雑木林、左が杉の植林となっている尾根を登り詰めると、富士浅間山の頂上に着いた。

頂上には三等三角点、柱に「県民ハイク」と書かれた標識、別名の「月形山」が記された小型山名標と二基の石祠がある。展望は木の間越しに四ツ又山方面が見えるくらいで、静寂に包まれたピークだ。風はなく、日溜まりに腰をおろせばポカポカと暖かい。缶ビールを飲み、鍋焼きうどんを食べる。

二基の石祠のある
富士浅間山頂上
この冬初出動のガソリンストーブで
鍋焼きうどん♪

富士浅間山からは、稜線をさらに北に辿る。疎らな雑木林が続き、落ち葉を搔き分けて下る。右手後方の斜面でガサガサという音がしたので、振り返ると大きくて黒い動物が背を向けて去って行くのが見えた。あれはもしかしてクマ(@_@;)。距離があったし、逃げてくれたので助かった。

焼山峠へ続く雑木林の尾根を歩く
木の間から幕岩を望む

雑木林の間から幕岩の帯状の岩壁を望みながら、尾根を下って行く。焼山峠の直前は急な斜面になっているため、稜線上は直進できない。右側から巻いて、焼山峠に降り立った。

焼山峠は頭上に幕岩が聳え、意外と狭い峠だ。峠道はどちらの側も消えていて、ここが峠であることを示すものは、杉の幹に螺子止めされた小型山名標があるだけだ。

焼山峠付近から見た幕岩
焼山峠

焼山峠から西へ、下底瀬に向かって降りる。踏み跡を辿って急坂を下ると、すぐに杉林に覆われた暗い沢に着き、あとは沢を歩く。沢沿いに残る石垣は、かつての蒟蒻畑の跡らしい。ところどころに道型が残っているが、辿るとすぐに消えるので、とにかく沢に沿って下る。

途中、沢を横断して2本のワイヤーが張られた個所を通る。土石流検出センサかな?信号線が下流に向かって延びている。やがて、沢が開けて土石の河原と化した個所に出た。これは昨年の台風の爪痕らしい。油圧ショベルもあり、(今日は日曜日で休みだが)災害復旧工事中のようだ。工事現場を抜けると九十九谷の分岐で、団体のハイカーさんが九十九谷がわらわらと降りて来たところだった。

焼山峠から下底瀬へ沢を下る
災害復旧工事現場を通り
九十九谷登山口に出る

工事用の新しい砂利道を辿ると、すぐに下底瀬の集落に着いた。民家の軒先に下がった干し柿の橙色が鮮やかで、おいしそう。ここからは県民ハイクでも歩いた道だ。紅葉はとうに終わって、渓流を眺めながらのんびり下る。六車大橋を渡り、県道を南牧中学校に向かう。途中、かたくりの里の入口(駐車場とWCあり)から、稜線上にポコッと飛び出た展望岩が見えた。日向雨沢大橋を渡って、尾根の取り付き付近を再度探ってみたが、やはり登山道はなさそうな感じだった。

下底瀬の集落と鷹の巣山
南麓の大日向付近から見た
展望岩(奥)

今日は一日、ルートファインディングが楽しめた。しかし、藪山歩きに慣れていない場合は、NTGの赤線はあまり頼りにしない方が宜しいかも(^^;)。帰途、信濃屋嘉助で和菓子を買い、3週連続のかぶら健康センターかのはらのお風呂に入って、桐生に帰った。