多良岳〜経ヶ岳

天気:
メンバー:T
行程:黒木 10:40 …八丁谷 11:10 …西野越 12:00 …金泉寺山小屋 12:10 …国見岳(996m) 12:35 …多良岳 12:40 …中山越 13:45 …平谷越 14:15 …経ヶ岳(1076m) 14:30〜14:50 …つが尾 15:05 …黒木 16:00
ルート地図 GPSのログを地理院地図に重ねて表示します。

長崎に所用があり、せっかく遠出するので、帰り際に休暇を取って山歩きをして来ました。西九州の山というと雲仙に行ったことがあるくらいで、不案内。どこに登ろうかなー、と考えて、帰りは長崎空港から航空便に乗るのと、300名山に入っているので多良岳に登ることにし、多良山系最高峰の経ヶ岳も合わせて登って来ました。

前日の晩は長崎に単身赴任中の知人の案内で、浜勝という店で長崎郷土料理の卓袱(しっぽく)を食べる。4,500円のコースを注文したが量も十分、家庭的でヘルシーかつ美味しくて大満足。この晩は市内のホテルに宿泊する。

翌朝、ホテルをチェックアウトし、路面電車でレンタカー営業所まで移動する。ちなみに、長崎の路面電車は全線100円均一運賃で、運転間隔が短くて非常に便利。利用客も多く、黒字経営らしい。レンタカーに乗り込んで、登山口の大村市黒木(くろぎ)を目指す。大村市街からR444(愛称「しあわせ街道」)に入り、多良岳の山懐に入って行く。多良山系は古い火山だそうで、山裾はゆったりと雄大だ。

広い谷に沿って奥に進むと、両岸の山は徐々に高く険しくなる。途中、萱瀬ダムのダムサイトから、経ヶ岳の鋭峰を仰いで、ほぇ〜、意外になかなかの山でないの、と感動。佐賀県に抜けるR444から分岐して黒木に向かう。黒木はぐるりと急峻な山並に囲まれた山村だ。U字に折り返した所に広い駐車場があり、ここに車を置く。他の車はないが、平日だから当然か。

黒木より五家原岳(右奥)
多良岳へは左の谷を行く
黒木の駐車場(P3)

少し戻って、郡川に沿って上流へ車道を歩く。黒木バス停を通って集落を抜け、五家原岳(ごかはらだけ)への道を右に分ける。五家原岳は標高1057mで、多良山系第2の高峰だ。頂上には電波塔が林立し、車道が通じている。しばらく行くと、左手に経ヶ岳の鋭峰を高く仰ぐ。頂上からの展望が楽しみだな。

黒木バス停
経ヶ岳の鋭峰を仰ぐ

林道を辿ると最奥の駐車場に着く。今日は誰も登っていないと思っていたら、こちらには車が多く、大型バスまで来ている。ここで車両通行止めとなる。杉林の中の林道を進み、小さな流れを渡ると八丁谷の分岐に着く。ここには案内看板とWCがある。車道から別れて、薄暗い杉林の中の登山道に入る。

最奥の駐車場(P1)
八丁谷の分岐

空はどんよりと曇って、林の中にも湿気が立ち込めている感じだ。ポツポツと咲いているヤブミョウガの花も水気をたっぷり含んでいる感じ。展望のない登山道だが、小尾根をひとつ越えると、経ヶ岳が垣間見える。見る方向が変わるともっこりとした山容だ。

ヤブミョウガ
経ヶ岳を望む

山腹をトラバースして沢を渡ると、転石の多い道になる。稜線に上がる直前の斜面にはオオキツネノカミソリの群落があり、開花の時期には大勢のハイカーが訪れるそうだが、今は実をつけた茎が林立しているだけだ。すぐ上が西野越で、右に五家原岳への縦走路が分岐する。

西野越への登り
西野越

西野越から左に金泉寺へ向かう。山腹を巻くと、ちょっと古いが立派な金泉寺山小屋が建つ。テラスのベンチではハイカーさんが2人程、お弁当を使っているところだった。正面には林間に五家原山の大きな山容が見えていて、そこそこ展望がある。私もお腹が減って来たので、ここでカレーパンを齧る。

山小屋の玄関には頑丈な南京錠がかかっていたが、しばらくすると大荷物を背負った人がやって来て鍵を開けた。この方が管理人さんで、荷揚げのため下山していたようだ。

山小屋の隣には無人の金泉寺がある。今はかなり古いモルタル造りの小さな本堂があるだけだが、かつては真言宗の修験場として隆盛を極めていたそうだ。老朽化した寺を再建するための募金を呼びかける看板があった。

金泉寺山小屋
金泉寺の本堂

金泉寺から稜線に上がると、立派な石鳥居があり、その奥には急な石段が続いている。鳥居の傍らには江戸時代中期の1712年作と伝えられる役の行者座像があり、どういう信仰なのか、下駄がたくさん供えられていた。緑に囲まれた古い石段は結構長く続き、ジャングルに覆われたマヤ文明の遺跡を連想する。と言っても、行ったことはないですが(^^;)

多良岳の鳥居と役ノ行者石像
石段を登る

石段の途中にはホトトギスの仲間の花が咲いていた。ネット上ではしばしば写真を見ているが、生で見たのは初めて。変わった形をしているなー、とまじまじと観察する。物体Xを連想するのは私だけ?石段が終わり、山腹をジグザグに登ると、高い岩壁に梵字が刻まれた梵字岩がある。梯子や鎖場が現れるが、問題ない。

ヤマジノホトトギス
ちょっとした鎖場もある

稜線の上に出ると、左は国見岳、右は多良岳を指す道標がある。左に稜線を僅かに辿ると国見岳で、標高は多良岳より少し高いが、樹林に覆われて頂上は狭い。五家原岳を眺めて、すぐに引き返す。

多良岳に向かう途中で、(多分バスで来た)団体さんとすれ違う。石仏の横を通り、石段を上ると小広い多良岳の頂上に着いた。頂上には太良獄神社上宮の石祠がある。樹林に囲まれて展望は乏しいが、木の間からすっかり形を変えた経ヶ岳を見る。ここから稜線をさらに東に進むと三角点のある983mのピークだが、結構遠くに見えたので割愛する。

多良岳頂上
太良獄神社上宮の石祠
多良岳から経ヶ岳を望む

石鳥居まで引き返し、「経ヶ岳 笹岳」という古い道標に従って稜線上の踏み跡に入る。金泉寺からの道を合わせて、西岳の北東山腹を巻く登山道に入る。苔むした転石の道はなかなか歩きにくい。ハイカーさん数名と行き会う。

西岳の巻き道に入る
巻き道は転石が多い

笹原を登ると、笹ヶ岳の西鞍部に出た。木の枝に「笹ヶ岳→」という道標が下がっているが、そちらは道草になるし、第一、道があるように見えないので、先に進む。常緑樹に覆われた稜線上の道を辿り、大きく下ると中山越に着く。ここから登り返して、経ヶ岳の東山腹を斜めに登って行く。樹林が深い上に曇り空で、登山道は薄暗く、気が滅入る行程だ。ようやく経ヶ岳の北の鞍部の平谷越に着いた時にはホッとした。

中山越
平谷越

平谷越からは一転して稜線を小気味よく登る道となる。岩場があり、ロープが下がっているが、なくても登れるレベルだ。岩場を登り切ると傾斜が緩み、経ヶ岳の頂上に着いた。

ちょっとした岩場もある
一等三角点のある経ヶ岳頂上

頂上は期待通り展望が開け、多良岳から五家原岳にかけての主稜線が一望出来る。その向こうには諫早湾を隔てて雲仙岳が見えるが、今日は残念ながらもやがかかっている。南西には、これもぼんやりだが、大村の市街と大村湾に浮かぶ長崎空港が見えた。空気の澄んだ季節ならば、海まで見える素晴らしい展望が得られそうだ。まあ、今日は多良山系の山々が一通り見えただけでも御の字としよう。

経ヶ岳より多良岳(中央左)
経ヶ岳より五家原岳

パンの残りを食べて、下山にかかる。稜線を急降下して、つが尾と呼ばれる分岐点に着く。縦走路はこの先にも続いていて、遠目山まで3時間、郡岳まで4.5時間、難路9kmという標識があった。面白そうだが、さすがにこのコースは歩く機会はないだろうなぁ。

稜線から山腹を下ると、岩がゴロゴロした半分ガレ沢と化した斜面を下る。道が分かりにくいが、迷いそうな個所にはロープが張られている。ちなみに、この山域には要所に「レスキューポイント番号 401」等と書いた目立つ看板があり、緊急事故発生時はこの番号を110番で連絡すれば、直ちに現在位置がわかるようになっている。良いシステムだと思うが、それだけ遭難が多いのかな。

つが尾
樹林帯のガレを下る

水流のある沢に下り着き、手を浸してみたらかなり冷たくて気持ちよい。やがて棚田の上部に出て、簡易舗装の道を下る。振り返ると、再び鋭峰となった経ヶ岳が聳えていた。雲が段々厚くなって、駐車場に置いた車に着いた直後にポツポツと雨が落ちて来た。途中で降られなかったのは運が良かった。

経ヶ岳を振り返る
平谷温泉山吹の湯

山歩きの後は温泉へ。R444を平谷黒木トンネルで佐賀県に抜けたすぐのところの平谷に入る。檜の香りのする広い浴室の窓から雨脚の強くなった山間の棚田を眺めていると、ホッとする。この日は長崎空港近くのホテルに宿泊し、翌朝の航空便に搭乗して桐生に帰った。