高戸山
前の日も桐生の山を歩いて来たばかりですが、この日も快晴だし、新緑も一番きれいな時期なので、また出かけて来ました。穴切(あなぎり)の集落から、小滝が多いと聞く穴切川沿いの道を穴切峠へ、そこから稜線を辿って高戸山(たかどさん)を周回するルートを歩きました。
穴切川に架かる橋のたもとに車を置き、穴切川に沿って穴切林道を歩き始める。穴切川は水量の多い大きな渓流で、岩盤を掘り込んで小さな滝が連続している。林道は未舗装だが、小型車ならば奥まで入れる。しかし、渓流を見ながら歩く方が断然楽しいだろう。
林道を歩き始めて少しのところには、左手の岩場に2基の庚申塔がある。林道脇から水がしみ出している個所が多く、そういう所ではカエルがクックッグァグァと犬に似た甲高い声で盛んに鳴いている。林道から渓流美を探勝しつつ上流に向かうと、一番見事な五の滝が現れる。滝壺のさざ波立つ水面に木漏れ日が反射してきれいだ。
県境に到達して少し進んだ所に、林道の脇にぽっかり開いた横穴があった。これは鉱山跡?中を覗くと、岩をくり抜いたトンネルの奥はかなり深い。ヘッドランプをつけて中に入ったが、泥が厚く堆積していて足首まで潜るので、すぐに断念。どれくらい奥があるかは判らなかった。靴に着いた泥を川で洗い流す。
さらに林道を歩くと、左手の杉林の中に苔むした首なし地蔵があり、その先で谷が広くなって小さな平地が現れる。平地が終わると、右に県境の沢が分かれる。この沢は三角山(623m)付近を源流としていて、出合から見る限り、広くゆったりとした流れだ。これを遡行するのも面白いかも(MHCの県境歩き隊が歩いている)。
穴切峠へは木橋を渡り、左の沢に沿って林道を登る。ここを歩いたネットの記録によると、この辺りに百庚申があるとのことだが、見つけられなかった。林道の次の分岐は右、その次は左に進み、ほぼ東に向かう。
やがて林道が北東に向かい、穴切峠の方向から離れ始めたので、峠を目指して伐採された枝が散乱する斜面を登る。斜面に足を踏み入れたとたん、足元からヘビが逃げ出して肝を冷やす。ガサゴソと騒がしく杉林の斜面を登ると、また林道に出て、これを右に辿ると林道終点から山道になった。これがかつての峠道だろうか。
山道を辿ること僅かな距離で、鳥居と石祠のある穴切峠に登りついた。石祠の傍らには、木の棒に「穴切峠 田辺○○ 07.12.24」とペン書きした標識が立てられていた。イブに渋い山に登る人もいるんだなぁ、と思ったが、後から考えたら、私もゴシュウ山に登っていた日だ(^^;)
穴切峠からは稜線伝いに高戸山に向かう。最初は杉林の中の登りだが、雑木林も現れて新緑がきれいだ。右が伐採地(といっても年月が経っているらしく、若い木が繁茂している)の急斜面になると展望が開けて、行く手になかなか尖った高戸山(実際に見えているのは頂上の肩)、北には県道桐生田沼線や皆沢の集落を見おろし、その向こうにのたーっとした山容の野峰や、丸岩岳が見える。
小さなピークを上下して進む。灌木の小枝が多少うるさいが、藪というほどではない。テープや目印の類いが珍しく少ない。アカマツの生えたピークを越えてがっくり下り、高戸山への急登となる。肩に登り上がって、緩い稜線を気持ちよく歩くと、高戸山の頂上に到着した。
頂上には三等三角点と石祠、二つの山名標が括り付けられた鉄柱がある。山名標の一つには、表に「点名 高倉山 / 高戸山 624.8 / 高塔山(下野国地誌取調)」、裏に「桐生山研」と記されていた。樹林に囲まれて展望はないが、 新緑が鮮やかで気分が良い所だ。ここで、缶ビール、鰯の缶詰、ラーメン+レトルト煮卵の昼食にする。
帰りは西へ尾根を下り、453m標高点を経て穴切の集落に下るルートをとる。踏み跡らしきものはあるが、どうもけもの道のようだ。藪もなく緩い下りのいいルートだ。新緑の中にヤマツツジの赤い花がハレーションを起こしそうなくらい鮮やかだ。杉の植林帯が現れたら、それを左に見るように(右は自然林)尾根を下る。所々、木の間から桐生川沿いの集落が見おろせる。453m標高点には桐生市基準点No.118があった。
やがて杉林の中を下るようになる。踏み跡もないので、穴切の集落を目指して勘で下る。最後はどの辺に出るかなと思っていたら、集落の裏手の墓地に着いた。鉄パイプの手摺のある階段を降り、金襴織物工場と民家の間から車道に出て、車に戻った。新緑とツツジを満喫し、また桐生の山のいいところを見つけた山歩きでした。