金沢峠〜吾妻山
極楽とんぼさんのHPは、同じ桐生在住の方のアウトドア関係のHPということで、しばしば拝見していました。昨年12月に「やまの町桐生」で『極楽とんぼさんが大形山付近に山歩きに出かけたまま消息を断っている。情報求む』との第一報を見たときは驚いて、安否を心配しましたが、関係の方々の懸命の捜索を「やまの町…」からの状況報告を通じて見守るしかありませんでした。そして、その結幕は大変残念なものとなりました。
今回、「やまの町…」の代表幹事さんの呼び掛けで極楽とんぼさんの慰霊祭が遭難現場近くで行われると知り、氏と面識はありませんでしたが、同じく山歩きを愛好する者として参列させて頂きました。現地へは柄杓山の尾根から岡平経由が最短距離ですが、まだ歩いたことのない大崩(おおくずれ)の集落から金沢峠への峠道を経由して向かいました。
先週に続いて、桐生駅北口発吹上行きのおりひめバスに乗車する。今日は一本遅い8:10発のバスなので、ハイカーさん1人、その他1人と私の計3名の乗客がある。ハイカーさんは終点まで乗って、鳴神山に向かうようだ。私が終点手前の田中バス停で降車するときには、どこに行くのだろう?と怪訝そうな顔をしていた。
田中バス停から大崩へは、小さな名無しの峠を越える。宏愛会第二リハビリテーション病院の入口の前を通って、林道田中線を歩く。林道入口には「白滝姫伝説発祥の里」と記した案内地図があり、ハイキングコースを示す赤い破線が金沢峠へ繫がっていた(このハイキングコースはかなり怪しいことが後で判明した訳だが)。
名無し峠へは舗装された林道で少しの登りだ。峠のすぐ手前には年代不詳の古い道祖神があり、昔からの峠道であったことがわかる。切り通しとなった峠を越えるとすぐにT字路になり、左に進む。大崩の集落は杉林の間を通して下に見えるだけで、その佇まいまでは判らない。
行く手には金沢峠付近の稜線が高い所に見えて、意外に山奥深い感じがする。林道は舗装が途切れて、大崩林道と名前を変えて奥へ延びている。樹林に覆われた谷間に入り、林道が左に大きく曲がるところで、右に木橋を渡って山道が分岐する。山道に少し入った場所には、「左 御嶽 石尊宮」と刻んだ石碑があった。左は三峰山に通じる道で、『野山歩きのヒント』(桐生タイムス社)の「川内大崩から梅田忠霊塔」の項の記述によると、途中には宗教モニュメントが多いらしい。興味を引かれる。
その先の山道は藪っぽかったので、戻って林道を歩く。すぐ先に林道の分岐があり、右に進む。このあたりには山菜を採りに車で来ている人達もいた。
林道を詰め上がると、右にカーブする所で左に小さな沢に沿った山道が分かれる。林道はすぐ先で終点なので、この山道が金沢峠への峠道のようだ。道標の類いは全くない。峠道はあまり歩かれた形跡はないものの明瞭で、小沢を渡る個所には木橋が架かっている。しかし、小沢に沿って登るにつれ、だんだん道型が薄くなる。
木の幹に赤ペンキで「←孕八」と意味不明の文字が書かれている二股に到着。踏み跡を辿って、右の沢を登ってみる。しかし、道は落ち葉に完全に埋もれて、見失う。しかも、沢は大形山の頂上の方向に上がって行くようだ。これはまずそうなので、先程の二股まで引き返して左の沢を詰め上がると、金沢峠の僅かに北の稜線に這い上がった。最後は怪しいハイキングコースだった。なお、峠から下るときは、峠道を辿って落ち葉に埋もれた谷に降りたら、その谷を下ると件の二股に出るようだ。
金沢峠で汗を拭って一休みしてから、大形山へ急坂を登る。大形山の頂上は相変わらず展望はないが、ここから岡平にかけては雑木林の尾根で雰囲気が良い所だ。慰霊祭のピークは岡平への丁度中間にある。
現地には既に「オッサンの山旅」のオッサンご夫妻とお気楽マサちゃん、「クタビレ爺イの山日記」の爺イ先生がいらした。ほどなく代表幹事さんもいらして、ネットを通じて交流のあった山歩き愛好の諸先輩方に初めてお会いすることができた。本隊のご遺族、桐生地質の会、桐生山野研究会、楚巒山楽会の方々等も到着し、慰霊祭が始められた。周囲の木々の鮮やかな新緑がきれいで、桐生の山を愛した方の追悼に相応しい日だと思った。
慰霊碑の設置の後、参加者一同で、極楽とんぼさんが最後に歩いた尾根を滑落地点まで下った。滑落した斜面は思っていた以上に高く急峻だが、尾根の上は十分広くて特に危険な所ではない。ここで遭難したのは不慮の事故、不運によるものとしか言いようがないように思う。
慰霊祭終了後、城山駐車場に下山する代表幹事さん、「オッサンの山旅」ご一行、爺イ先生とは岡平で、本隊とは萱野山の手前でお別れして、吾妻山まで縦走する。途中、萱野山(568m)をピークハントして、三角点と山名標を確認。
吾妻山の山頂は去年の7月以来だ。今日も登って来る人が絶えない。頂上のこの白い標識の柱って、こんなに曲がっていたっけ?吾妻山の下り道には、ヤマツツジがたくさん咲いていた。水道山公園を経由して、自宅まで徒歩で帰った。