大栃山・三方分山
この週末は甲府湯村温泉に一泊して、御坂山塊の二つの山に登って来ました。山はまだ冬枯れでしたが、両日ともポカポカと暖かい好天で、富士山、南ア、八ヶ岳など、残雪を高く頂く山々を眺めながら、日溜まりハイキングを楽しんで来ました。
横浜の実家からS&Sを車に乗せて出発。相模湖ICから中央道を走って一宮御坂ICで降り、R137を河口湖方面に向かう。途中から神座山川沿いの林道に入って、登山口の檜峯(ひみね)神社を目指すのだが、その分岐で少し迷う。若宮の交差点(直進するとR137の新道)で左折してR137の旧道を進むと、途中で檜峯神社前バス停を見るが、林道の入口は見過ごす。その先で新道と合流し、右折して新道を少し戻ると、檜峯神社の看板があり、林道入口を発見する。
細い林道をしばらく登ると獣除け用ゲートがあり、自分で開閉して通行出来るようになっている。檜峯神社の前まで車で入ると、谷間を鬱蒼と覆う鎮守の杉林の中に駐車スペースがあり、既に2台の車があった(WC、水場も有)。
檜峯神社の社殿は、こんな山奥に、と驚くほど大きく立派なもので、建立は1585年と伝えられているそうだ。また「ブッポウソウ」と鳴く鳥の正体がコノハズクであることが最初に実証された地でもあるらしい(残念ながら、この日は鳴き声は聞かなかった)。
最初の計画では、ここから釈迦ヶ岳(1641m)に登る予定だったが、着くのが遅くなったので、行程が短い大栃山を往復することにする。枯れ沢に沿って杉林の中の登山道を歩くと、すぐに葉の落ちた明るい雑木林の道となって、ゆるゆると登る。やがてジグザグの短い急坂があって、トビス峠に登り着いた。
トビスとは変わった地名だが、どういう謂れがあるのだろう。大きな木の根元には、鼻が長くおわす石像(天狗像?)が祀られていた。とうに正午を過ぎているので、軽くパンを食べて休憩する。釈迦ヶ岳方面からおじさん4人グループが降りて来て、大栃山の方に向かって行った。我々もその後から大栃山に向かって出発する。
峠からしばらくは尾根上の急な登りとなるが、これを登りきると、あとはほとんど平坦な尾根歩きとなる。ところどころに先日の雪が残っているが、風もなく暖かい。振り返ると、鋭い三角錐の山容を奮い立てた釈迦ヶ岳が木の間から見えた。
やがて尾根を突き当たった所が大栃山の山頂で、山梨百名山の標柱と展望盤がある。先着の4人パーティが展望を楽しんでいた。樹林に囲まれているが、甲府盆地とそれを取り囲む大菩薩連嶺、金峰山、八ヶ岳、南アなどの白い頂きを連ねる山々が良く見える。また、北アも遠望でき、双眼鏡で覗いてみると槍ヶ岳から穂高岳の辺りが見えた。
南側にも木立の間から少し展望があり、御坂山塊の節刀ヶ岳の稜線と、その上に浮かぶ真っ白な富士山が見える。双眼鏡で覗いてみると、富士山の斜面を覆って広大なアイスバーンがテカテカと光っている。スキーで滑るには、さすがにまだ時期が早い。
頂上でお湯を沸かしてココアを作り、パンで遅い昼食を取った後、往路を檜峯神社に戻った。
この日の宿は、湯村温泉の常磐ホテル。市街地にあるが、中庭には広い日本庭園があり、環境はとても静謐だ。皇室御用達だそうで、雰囲気もなにやら格式高そう。温泉の泉質はさっぱり系で特徴はないが、大浴場は広く明るくてのびのびできる。風呂上がりのビールは、やっぱり美味い。
次の日もいい天気だ。富士五湖・精進湖畔に聳える三方分山(さんぽうぶんざん)に登ることにする。
甲府から精進湖への最短コースは左右口(うばぐち)トンネルを経由するR358だが、3月10日に発生した土砂崩れで通行止めになっているので、身延線沿いに南下して、R300から本栖湖を経由して精進湖に向かう。かなり遠回りになるが、途中の山岳景観は素晴らしく、ドライブコースとして面白い。本栖湖に抜ける中之倉トンネルの少し手前には、南アの展望が良い休憩所がある。遠望する高峰の中に、南アで未踏の笊ヶ岳を見つける。今年こそ、登りたいな〜
本栖湖畔に出ると、今度はでっかい富士山に出迎えられる。昨日より霞がかかっているのは残念だが、今日も暖かく天気は良い。精進湖北端まで走って、湖畔の広場に車を置く。まだ観光シーズン前なので、この辺りも静かなものだ。
集落の中の車道を北の女坂峠に向かって歩き始めると、すぐに上九一色村(現在、北部は甲府市、南部は富士河口湖町に編入)が設置した周辺ハイキングコースの案内板がある。
精進の集落は沢沿いに家屋が建ち並んで、檜皮葺の民家、廃屋、売り家が点在する。古くからの村のようだが、例に漏れず過疎化も進行しているようだ。集落の中程には杉の巨木に囲まれて、これまた檜皮葺の立派な社殿の諏訪神社がある。杉巨木の中でも、精進の大杉(国の天然記念物)は樹齢1200年、目通りの周囲12m、樹高40mという見事な木だ。
集落を抜けると涸れ沢沿いの山道となり、大きな砂防堰堤を三つ程越えて行く。かつて往来繁くあった峠道らしく、道の脇には石垣が残っている。
やがて山腹の雑木林の中をジグザグに登り始める。冬枯れの林は下生えの笹原まで日が差し込んで、明るい雰囲気だ。登り着いた女坂峠は稜線上の最低鞍部ではなく、そこから東へ少し上がった所にある(理由は後で判った)。古い二つの石碑と三つの首のない石像があった。ここから東に向かうと五湖山を経て王岳に至る。木の間から見える王岳は端正な三角錐の山容で、なかなか高く遠い。あちらへの縦走も歩き甲斐があって面白そうだ。
今日は西の三方分山に向かう。最低鞍部へ下ると、北側の斜面は非常に急峻で崖に近い。峠道はこれを避けて付けられているのだろう。三方分山へはブナも混じる雑木林の尾根の急登になる。この登りにはちょっと汗をかくが、後方に富士山や王岳がよく見える地点に着くと傾斜も緩む。
最後はほとんど平らな尾根道で三方分山の頂上に着いた。雑木林とカラマツ林に囲まれ、錆びた道標と山梨百名山の標柱が立つだけのおよそピークらしくないピークだ。展望も乏しいが、一方向だけは樹林がきれいに切り開かれていて、精進湖と大室山を隔てて富士山がドーンと見える。今日は霞んでいるのがちょっと残念だが、富士山の展望台としてもなかなか良い頂上だ。乾いた枯れ葉の上に腰を下ろし、ココアとパンで昼食にする。
下山ルートには、山頂の道標によると往路の「女坂より精進湖」が4km、「精進峠より精進湖」が3kmなので、より短い後者を選ぶ。三方分山からのルートは、その他に四尾連湖まで通じるものがある。
しばらく緩く小さなアップダウンのある尾根を歩き、三角点のある精進山を過ぎると、尾根上の一直線の急降下が始まる。振り返ると、あっという間に三方分山が高い。下り着いて小さなピークを二つ程越えると、峠に着く。道標があり、左は精進湖畔、直進はパノラマ台、右は下部町となっている。ただし、下部町に下る道はカラマツから落ちた枯れ枝が道を塞いでいて、歩く人も少なく荒れている印象だった。
左の精進湖畔への道を下る。雑木林の中の枯れ葉が積もった急な斜面を下る。丁寧に小さなジグザグが刻まれていて、歩きやすい。
快調に下ると杉林の中の道となり、砂防堰堤を越える。ここには「←三ッ沢峠」という古い道標があった。集落を抜けると、精進湖畔を周回する道路に出た。ここに設置されているハイキングコース案内図によると、通って来た峠は三ッ沢峠となっている。精進峠と三ッ沢峠はどうも同じ場所なのだが、現地の案内板や道標で呼称がまちまちなので、ちょっと混乱する。
車道を北に向かうと、すぐに県営無料駐車場がある。車を置いた湖畔の駐車場までは、そこから10分程の距離だった。
帰りは「道の駅なるさわ」に立ち寄ってお土産を買った後、富士吉田、籠坂峠を経由して御殿場ICから東名にのる。途中、小田原道路との合流地点で事故渋滞に巻き込まれたりしたが、あまり遅くならずに実家に帰り着いた。