黒滝山〜トヤ山

天気:
メンバー:T
行程:九十九谷橋 9:50 …鷹ノ巣山(767m) 10:20 …観音岩(880m) 10:55 …黒滝山不動寺 11:40〜12:00 …トヤ山(1230m) 13:20〜14:10 …上底瀬 15:15

南牧村の底瀬川沿いに車を走らせて、下底瀬の集落まで来ると、行く手に鷹ノ巣山の岩峰が青空高く聳えている。なかなかの眺めに車を停めて写真を撮る。民家の軒先の柿の木には明るい橙色の実が撓わになって、長閑な山村風景にぱっとした彩りを添えている。

しかし、その先の上底瀬に着くと、今年9月の台風9号の爪痕が残っていて、300mに渡って流出したという車道は砂利道で補修されているが、道路脇には土砂や瓦礫が積まれ、擁壁は歪み、一階部分が流されてがらんどうになった民家がある。上底瀬の登山口近くには駐車場があるという情報をネットで見たのだが、水害で流されたのか、土砂で埋もれたのか、それらしい場所はないので、九十九谷(くじゅうくたに)橋の一つ下流の橋(約500m戻る)のたもとの路側の広くなった場所に車を置く。

九十九谷橋の登山口から登山道に入る。入口は水害で深く抉れたままで、この先の道は大丈夫かちょっと不安を感じたが、歩き始めると問題はない。沢を渡る箇所が出水で荒れた様子ではあるものの、しっかり道標がある。


下底瀬の集落から仰ぐ鷹ノ巣山


九十九谷登山口
台風で手前の車道が流出した

沢を渡ると、杉林の中の尾根の急登になる。途中で右に分岐する道(鷹ノ巣山への直登ルート?)は危険・立入禁止の標識がある。尾根を真っすぐ上がり、登り着いた鞍部から稜線を右へ少し辿ると、鷹ノ巣山の頂上に着く。眼下に下底瀬の集落を見る。鷹ノ巣山から岩稜を下る道は、やはり入口にロープが張られて、立入禁止になっていた。


鷹ノ巣山への急な登り


鷹ノ巣山から下底瀬の集落を俯瞰

稜線を鞍部に戻り、その先へ登って行くと、左側に九十九谷の岩壁を見おろす岩稜になる。細かい襞のような支稜と谷が幾重にも入り組み、上底瀬の集落を見おろす絶景ポイントだ。周辺の紅葉は既に終盤だが、紅葉の名所というのも頷ける。


九十九谷を左に見ながら岩稜を登る


九十九谷より上底瀬の集落と
大屋山(左奥)

ちょっとスリルのある岩稜を登る途中で、下りのハイカーさん数パーティーとすれ違う。その中の一人のおばさんに、ここを登っているということは、馬の背を下るの?怖いわよ〜、と言われる。ひぇ〜、今更、脅かさないで欲しいなぁ(^^;)

五老峰の主稜線に登り着き、右の観音岩に向かう。観音岩は小さな岩峰で、その名の通り、岩の上に観音像が祀られている。実に柔和なお顔の像だ。隣りの小岩峰の岩穴の中には石祠も祀られている。360度の展望が素晴らしく、先週登った四ッ又山と鹿岳が大きい。そこから木々岩峠、ゴシュウ山、トヤ山と続く稜線も目を引く。山中には黒滝山不動寺の赤い屋根も見える。


五老峰観音岩より鹿岳と四ッ又山


観音岩の観音像
後方のピークはトヤ山

主稜線を戻って、北に向かう。見晴台の岩峰を右から巻くと痩せ尾根の下りとなり、鎖と鉄梯子で岩稜を降りる。木が根こそぎ倒れて足場が失われた箇所があり、歩きにくい。

そしていよいよ、恐怖の?馬の背に着く。馬の背の向こうにハイカーさんが丁度現れて、お先にどうぞと声を掛けられたので(馬の背ではすれ違えないので)、先に渡らせて頂く。鉄梯子を降り、肩幅もないナイフリッジの上を、鉄の杭に張り渡された鎖を手摺にして渡る。足場はそこそこ良いのだが、杭が細くグラグラして、なんとも頼りない。

馬の背を渡り切ると上底瀬と不動寺を結ぶ峠に出る。不動寺に立ち寄ることにして、右に杉林の中を下ると、さほどの距離はなく到着する。まず、鐘楼があって、正面に稲含山がよく見える。宿坊と山門を通ると、岩壁の麓に本堂や開山堂などのお堂がある。人里離れた山中にあって、静かな場所だ。


馬の背


黒滝山不動寺

不動寺から峠に戻り、峠のすぐ手前の「荒船山」への道標から登山道に入る。最初は林道のように広い道で、不動寺の裏手に登って行く。道が小さな尾根を巻いて左にカーブするところで、右へ尾根の出っ張りに立ち寄ってみると、「黒滝山 870m 南牧村」という道標があり、石祠や「大天狗 小天狗」と刻んだ石碑もある。しかし、黒滝山の頂上がここのはずはないと思って、道標の形状をよく見ると、どうも谷を隔てた向こうのピークを指し示しているらしい。うーむ、紛らわしい。

道は暗い杉林の中の浅い谷に入って、緩く登って行く。谷を詰めて緩い尾根に上がると道標があり、左は「六車」、右は「荒船山」を指している。帰りは「六車」の方に降りる予定だが、そちらの道はどうも雰囲気が怪しい。まあ、その件は帰りに考えることにして、荒船山の方に向かう。

しばらく、落葉した明るい雑木林の尾根を歩く。道は幅が広くて緩く、木の間からの眺めだが行く手にはトヤ山らしいピークが見えるし、右手には鹿岳、四ッ又山も見えて、気持ち良いハイキングコースだ。しかし、山腹のトラバースに入ると道は荒れ始め、通過に困難はないが、登山道がすっかり崩壊した所がいくつかある。そして、この崩壊は9月の台風に依るものだけではなさそうな感じだ。

大きな崩壊地を越えると、高原分岐に到着する。右の高原への道も、入口から見た限りは荒れ気味に見える。左の荒船山の方に進む。


尾根の上の幅広い道を歩く


高原分岐

尾根の上を通る登山道は木の階段があって、かつては良く整備された道だったことがわかる。今は枯れ葉に埋もれて、かさこそと搔き分けて歩くのが楽しい。このあとも道が崩壊している箇所を通過し、傾斜の増した尾根の道を登る。13時を過ぎ、お腹が減って来た。この辺りで昼食にしようと思うこと数回。そのたび、頂上まであと少しと我慢。今日は、余裕があれば毛無岩まで行く算段だったが、出発がちょっと遅過ぎた。トヤ山に行き着ければ御の字だ…

トヤ山のピークを左に巻いて、稜線に近づいた所に「←荒船山 黒滝山不動寺→」の道標があり、ここから稜線に上がって、踏み跡を右に辿る。


山腹を巻く箇所ではあちこちで崩壊


トヤ山頂上への分岐点
右へ登る

痩せ尾根を辿り、小さな瘤をいくつか越えると、トヤ山頂上に到着した。やったー、腹減った。

頂上にはご夫婦のハイカーさん1組がいらして、食事と展望を楽しんでいた。物語山から縦走して来られたらしい。それはまた、エキスパートなコースだ。迷う箇所が1つあったが、あとは大丈夫とのこと。挨拶を済ませたら、展望は後回しにして、まずは昼食。今日は温麺に余り物のレトルト豚汁の素を投入。豚汁の具は美味いが、汁は薄くなって、いまいちだったかも。

さて、エネルギーも補充したところで、ゆっくりと展望を楽しむ。頂上からは一部が樹木で遮られている他は、ほぼ360度の展望だ。鹿岳と四ッ又山は見おろす形になり、その向こうには関東平野が広がっている。南には、黒滝山の九十九谷や馬の背の灰色の岩壁が見える。黒滝山の向こうの富士浅間山は穏やかな山容だ。遠くには両神山のギザギザの稜線が霞んでいる。

一方、北側の展望はクリアだ。送電鉄塔の列の先には道平ダム湖の水面が見える。その奥には中景に八風山、日暮山、高岩など西上州北部の山々が連なり、遠景に冠雪した浅間山がひと際高い。


トヤ山頂上


トヤ山より鹿岳、四ッ又山


トヤ山より黒滝山、富士浅間山
中央奥は両神山


トヤ山より北の展望
左奥に浅間山

北東には雑木林に覆われて、一見、穏やかな稜線が物語山に繫がっている。目立つピークはなく、落ち葉を踏んでの山歩きが楽しめそうか。その向こうには妙義山や、遠く榛名山の山々が見える。

展望を堪能し、日も短い季節なのでそろそろ下山にかかり、往路を戻る。トヤ山からの下りでは、荒船山への稜線が眺められる。ピークが重なって判然としないが、毛無岩はどのあたりだろうか。


トヤ山より物語山への稜線


トヤ山より荒船山へ続く稜線

往路は空腹で登っていたせいか、妙に長く感じたが、下りは速い。「六車」の道標のある分岐は右に降りる。道は跡形もなく無くなっているが、開けた雑木林を適当に下ると、すぐ下には畑と農作業小屋があり、モノラック沿いに踏み跡がある。この踏み跡を辿ると、不動寺と上底瀬を結ぶ峠道の途中に出る。車道に出た所には豚小屋があり、中には健康そうに丸々と太った豚が沢山…。帰ったら今晩はトンカツを喰いに行こう(^^;)

車道を下ると、上底瀬の集落に出た。車道の分岐にある二十三夜の石碑(元治年代の物)も瓦礫や材木の山に半ば埋もれていた。ここが元の風景と生活を取り戻すことを願うばかりだ。


上底瀬への近道分岐
六車への道標がある


台風の被害を受けた上底瀬の集落

帰途、先週に続いてかぶら健康センターかのさとのお風呂で温まって、桐生に帰った。