剣山・石鎚山
仕事で高松に行くことになり、その後に休暇をとって、四国の日本百名山2座に登って来ました。
9月17日(月)に桐生をJRで発ち、高松に夜9時頃到着。瓦町の繁華街近くのホテルに投宿し、遅い夕食で讃岐うどんを食べに出かける。つるつるの麺、透明なあっさりスープがうまい。
18、19日は仕事。その合間に栗林公園を見学する。広大な庭園の中に池あり松あり山ありで、なかなか見事だ。お勧め。しかし、この間の高松は強烈に蒸し暑く、さすが四国は南国だ。と思っていたが、西日本一帯が異常な残暑だったようだ。
朝8時、高松駅前のレンタカーでカローラを借り、荷物一式を積み込んで、剣山登山口の見ノ越に向う。カーナビを頼りに高松から貞光へ、さらに貞光川の奥へR438を辿る。この道は、一昨年にも剣山を目指して走った所だが(そのときは雨天のため、登山は断念)、見通しを遮るカーブが連続し、集落を通り抜ける所は車一台分の幅、対向車や飛び出しに神経を使う。とても国道とは思えない険しい道だ。
桑平からジグザクに登って夫婦池を通ると、祖谷川の谷を隔てて剣山が優美な山容で現れる。見ノ越の駐車場に車を置く。剣山登山リフトは運行しているが、剣神社にお参りして、そこから登ることにする。
山道に入り、モミやヒノキ、カエデなどの樹林の中を緩々と登る。道端には、葉の下にぶらさがった提灯のような一風変わった花がたくさん咲いている。後で図鑑で調べるとハガクレツリフネという花らしい。
リフトの下をくぐってなおも登ると笹原の斜面が広がり、リフト終点の西島駅に着く。行く手には剣山山頂の雲海荘がすぐそこに見えている。
9月の平日とあって登る人は少ないが、それでも頂上からぱらぱらと降りて来るハイカーさんと行き会う。大剣神社への道を右に分け、鹿除けのネットをテキサスゲートで越える。刀掛の松で道は三方に分かれる。右は大剣神社へ。左はキレンゲショウマの群生地を経由する道だが、今は花の時期ではないので、頂上への最短コースとなる真ん中の道を通る。
キレンゲショウマはまたの機会になったが、その他の花を幾つか見ることが出来た。なかでもリンドウは道端や笹原の薄い場所にたくさん咲いていて、青紫色の花が鮮やかだ。
ところどころから左手に見える穴吹川流域の谷は、深い森林に覆われている。木の鳥居をくぐると剣山本宮と剣山頂上ヒュッテが並んで建ち、その間の階段を登ると剣山頂上の一角に出た。
頂上は平家の馬場と呼ばれる平坦な笹原で、その中に(今は使われていない?)測候所が建つ。測候所を廻り込んで、笹原の中に設置された立派な木道で三角点まで歩く。笹原の中には現役を引退した気象観測用鉄塔が点々と残存し、シュールな眺めだ。
三角点は砕石を土俵のように積み上げた中に鎮座していて、ご丁寧に注連縄まで土俵俵のように巻かれている。頂上はガスに覆われていたが、やがて青空が広がって、隣りの次郎笈へ続く緑のビロードのような稜線が垣間見えた。
木道の脇にたくさん設置されているベンチの一つに腰を掛けて、パンの昼食にする。高知県側から気持ち良い風が吹き上がって来る。ちょっと寒いくらいで、長袖シャツを取り出して着る。時間があれば次郎笈とか一ノ森まで、笹原の稜線を散歩してみたいところだが、今日は時間が限られているので、頂上の笹原を一周して帰ろう。
復路は大剣神社に立ち寄る。ジグザグに山腹を下ると、石灰石の岩塔があり、大剣神社はその基部にある。社務所に宮司さんがいらしたので挨拶をして、本殿で手を合わせる。看板にご利益が書いてあり、「天地一切の悪縁を断ち、現世最高の良縁を結ぶ」とのことなので、珠子ちゃんのような人とゼヒ、思いっきり高め狙いのお願いをしてみる(^^;)
大剣神社からさらに下ると環境省選定名水百選のひとつ、剣山御神水(おしきみず)がある。説明板によると、この付近は石灰岩質のためミネラル分に富んでいて、病気を治す若返りの水として知られているそうだ。岩穴から水を汲み出して飲んでみると、まろやかな味のような気がした。
御神水から僅かに下ると西島へのトラバース道に出て、これを辿る。祖谷川の深い森林と丸笹山あたりの明るい稜線を眺めながら歩く。このあたりはトリカブトの花が非常に多い。リフト西島駅からは往路を下って、駐車場に戻った。
見ノ越から、再びR438を通って貞光へ。美馬ICから徳島道に乗り、松山道を経由して、伊予西条ICで高速を降りる。この日は、JR石鎚山駅近くの湯之谷温泉に泊まる。観光向きと言うよりかは、地元の人が日帰り入浴で利用する所という感じで、設備も老朽化しているが、まぁそんなことは無問題。温泉に入って汗を流したあとは、晩酌に生ビール。これがあれば最高です。
翌朝、天気予報では晴れと言っていたが、雲行きが怪しい。湯之谷温泉を発ち、まず、近くの石鎚神社本社・口之宮に立ち寄る。実は、本社のことは昨日まで知らなかったのだが、湯之谷温泉から巨大な鳥居が見えたので、気になって地図で調べて見つけた次第。
本社の境内に入ると、2階建ての社務所、3階建ての会館の立派なビルがあってビックリ。石鎚神社=石鎚本教という宗教法人で信者数公称100万人。役小角による開山以来1,300年の石鎚山の修験道は今も現役ばりばり、ということをこういう所で実感する。
本社にお参りした後、加茂川に沿って、登山口の石鎚登山ロープウェイ下谷駅に向う。加茂川は大きな川で、周囲の山は標高差が大きく急峻、南ア南部の大井川を連想させる。黒瀬湖から上流は民家も少なく、海から少しの距離を入っただけなのに、深山の雰囲気が横溢する。
ロープウェイ駅に到着し、京屋旅館の駐車場(500円)に車を置く。平日のせいか、駐車はほとんどない。シャッターが降りたままの土産物屋の並びを通ってロープウェイ駅に行き、往復乗車券(1,900円)を購入して、9:00発のロープウェイに乗車する。このロープウェイは全国でも有数の急勾配のものだそうで、確かに上の駅を見上げると首が痛くなるような高さだ。
ロープウェイ山頂成就駅に着くと、小雨が降っている。道端には、剣山でも見たハガクレツリフネが雨に濡れて群生していた。門前に宿が立ち並ぶ成就社に到着して、WCを済ませて出て来ると、あ〜ら嬉しや、何時の間にか晴れ間が広がっていた。成就社でさらなる天気の回復を祈願する。
成就社の登山口の山門をくぐると、樹林の中の緩い下りが八丁まで続く。途中で石鎚山遥拝の鳥居をくぐる。木の間越しに石鎚山の山頂を伺うが、まだ雲の中のようだ。八丁からはいよいよ本格的な登りとなるが、石鎚山の表参道だけあって、木の階段が良く整備されていて歩き易い。
やがて前社ヶ森の前の分岐に着く。右は試し鎖道、左は近道で「体力に自信のない方は近道へ」と書いてある。ここは試しに右へ。長い鎖場で前社ヶ森の岩峰に登る。石鎚山の他の鎖場もそうだが、一個一個の鎖の環は鉄アレイになりそうなくらい大きいので摑みやすいが、とにかく距離が長い。へばって、頂上に着く。
前社ヶ森の頂上は切り立った岩峰で、地蔵と石祠が建つ。眺めが良く、振り返ると成就社や遠くにはうっすらと瀬戸内海の島影が見える。石鎚山の方向はまだ雲の中だ。前社ヶ森からは反対側(進行方向)に下る。ここも長い鎖場で、下に着いたときは体力をだいぶ使っていた。
前社ヶ森から下り切った鞍部には売店があるが、平日なので休業。再び樹林の中の登りとなり、一つピークを越すと笹原の尾根になって、夜明(よあかし)峠に着く。標高差でちょうど半分のところだ。行く手には石鎚山の頂上稜線が屛風のように立ちはだかる。かかっていたガスも徐々に晴れて、頂上社や途中の小屋も見えて来た。
笹原の尾根を登り、樹林に入ると一ノ鎖の下に出る。試し鎖で疲れたので、ここはパスして捲き道を登る。小さなピークを越えると、頂上がぐっと近づいて、二ノ鎖から頂上社に至るルートや小屋が良く見える。気力体力が回復したので、二ノ鎖にはチャレンジ(捲き道もある)。やはり長くて、登り切った時には息が上がっていた。
続いて、三ノ鎖(ここも捲き道あり)。垂直の岩場に見えて、ちょうど先行している人が鎖場上部を登攀中だ。ちょっとビビる。鎖場の下には売店があり、今日は開店していないが、営業していたらお茶して落ち着きたい所だ。
三ノ鎖に取り付くと、鎖が岩から浮いている所があり、どうやって登るんだ?となるが、鎖の輪の部分に足先を入れたり、ところどころにぶら下がっている鐙を利用して登る。
三ノ鎖を登り切ると、頂上社の裏手に直接這い出た。頂上社にはたくさんのハイカーさんが居て、ちょうど晴れ間が広がって見えて来た周囲の景観を楽しんでいた。頂上社の裏手には奇麗な頂上山荘がある(H15年7月リニューアル)。宿泊には通常は予約が必要なようだが、今日は予約なしで可との掲示があった。山岳リゾートには絶好のポイントで、ちょっと泊まりたくなった。
南側の面河渓の谷は深く、樹林に覆われている。稜線直下の斜面は一面の笹原で、開放的な景観だ。頂上社から見る石鎚山最高峰の天狗岳は、北面(左側)が垂壁となって、人を近づけないような威圧感がある。天狗岳頂上には人影はなく、頂上社で寛いでいるハイカーさんも誰も行こうとせず、みんな様子見のようだ。
そのうち、一人、二人と天狗岳に向う人があり、私も行って見る。案ずる程のことはなく、石祠のある天狗岳に辿り着く。頂上から北面を見下ろすと、歩いて来た表参道コースが尾根の上にうねうねと続いている。成就社は遥かに遠い。結構な距離を歩いて来たものだ。
天狗岳の頂上で昼食のパンを食べ、頂上社に戻る。後は危ない箇所はないので、缶ビールを空けた後、往路を捲き道経由で戻る。
八丁から成就社へは登りで堪えたが、無事、ロープウェイ山頂駅に到着し、15:00の便で下る。下山後の楽しみは温泉。麓の京屋旅館に入る(300円)。沸かし湯だが、ぬるぬるの泉質がなかなか温泉らしくて良かった。
汗を流してさっぱりしたのち、高松駅まで高速経由でドライブし、レンタカーを返却する。駅ビルの名店街で讃岐うどんを賞味した後、JRに乗車。この晩は新大阪に宿泊し、翌日、大阪での仕事を済ませて、桐生に帰った。