白馬岳〜雪倉岳〜朝日岳

〜14日(火)
メンバー:T

1998年8月上旬に、親不知から栂海新道を歩いて白馬岳を目指したことがある。今から振り返って考えると、我ながらほえ〜と思うような難コースを計画したものだが、案の定というか、そのときは大雨(平成10年8月上旬豪雨)のため、途中の朝日岳でギブアップして北又小屋に下山した。残りの朝日岳〜白馬岳は、それ以来、宿題となった。

2000年8月には蓮華温泉に宿泊して、白馬大池まで往復した(山行記録)。蓮華温泉から眺めた朝日岳と雪倉岳の山容は雄大で、機会があればここを起点に白馬岳から朝日岳へぐるっと回って歩いてみたい、と思った。

そして今年の夏。まとまった休暇を取ることができ、ようやく念願のコースを歩いて来ました。

8月12日
天気:
行程:蓮華温泉 5:00 …天狗の庭 6:45 …白馬大池 8:00 …小蓮華山(2769m) 9:35 …三国境 10:25 …白馬岳(2932m) 11:10 …白馬山荘 11:30

泊まりがけの山行は久し振り。用意しなければならない物(衣類、食料、燃料等)が多いので、前日の11日は買い出しに充てる。早めに寝て、12日0時頃に桐生を車で出発。北関東道、上信越道、白馬長野有料道路(夜中は無料)を経由して、まだ暗い4時過ぎに蓮華温泉に到着。お盆休みとあって蓮華温泉の駐車場は満杯で、橋を2つ戻った所の路側に駐車し、蓮華温泉まで歩く。

ようやく明るくなり始めた空と朝日岳のスカイラインを眺めながら、コンビニおにぎりで朝食を済ませる。蓮華温泉の宿泊者もそろそろお目覚めで、窓からこの山岳景観を眺めているようだ。宿舎右手の水場で2リットルポリタンを満たし、さあ、出発。


蓮華温泉から朝日岳(中央)


白馬岳蓮華温泉ロッジ

露天風呂巡りの遊歩道をすぐに分け、沢に沿ってしばらく歩いた後、樹林の中を登る。「蓮華の森」という標識のある立派なクロベの木を見て、ジグザグに山腹を登る。岩がゴロゴロ積み重なった斜面に出ると天狗ノ庭だ。小蓮華山から雪倉岳、朝日岳にかけての展望が遮るものなく広がる。


天狗ノ庭


天狗ノ庭から雪倉岳

ここからは日陰となった山腹のトラバース道を歩く。白馬大池に泊まった?登山者が降りて来るのに行き会う。樹林が切れて広がる斜面には、モミジカラマツが一面に咲いていた。


モミジカラマツ


ゴゼンタチバナ

緩く登って、明るく開けた白馬大池に出る。南からの風がものすごく、水面も波立っている。白馬大池山荘の前の広場では、団体さんが朝食?にお弁当の食べているところだった。私もその横でちょっと休憩する。

ここから先は初めてのコースだ。雪倉岳と朝日岳を眺めながら、小蓮華山に向って緩く登る。砂礫の道の脇にはいろいろな花が咲いていて、撮影のためにしばしば足を止める。途中、船越ノ頭のピークに立つと、杓子岳や大雪渓の一部も見えて来る。


白馬大池と小蓮華山への稜線


船越ノ頭から小蓮華山への稜線
奥は杓子岳と鑓ヶ岳


チシマギキョウ


ハクサンフウロ

小蓮華山の山頂は、今年6月に3mほど陥没しているのが発見されたため、山頂一帯に立入禁止のロープが張られている。なので、厳密な最高点には立てなかったが、360度の展望に変わりはない。特に、険しい岩壁を見せる白馬岳と、そこに続く緩やかな稜線の眺めが素晴らしい。

稜線の右側は砂礫の緩い斜面、左側はところどころに雪渓を残す急峻な崩壊壁で、稜線を緩く登降しながら進む。左(南)側からの風が相変わらず強く、高山植物も激しく揺れて撮影が難しい。砂礫の斜面をトラバースすると三国境に到着する。

三国境からは急な登りになる。右側の砂礫の大斜面は、盛りは過ぎているが、一面、コマクサのお花畑だ。ウルップソウもとても多いが、トウモロコシの芯状態になっていた。もう少し時期が早ければ見事だったに違いない。振り返ると、三国境付近の二重山稜の様子が良く判る。砂利採石場?と思うような不思議な地形だ。


小蓮華山より白馬岳


白馬岳への登りより三国境と
小蓮華山(奥)を振り返る

大勢の登山者が憩う白馬岳山頂に到着。東側はすっぱりと切れ落ちた岩壁となっていて、高度感がすごい。荒々しい山肌を見せる杓子岳との間には、意外と急な大雪渓が見える。北アのほとんどの山が見える大展望で、展望盤を見ながら、剱岳、立山、槍、穂高、黒部湖、遠くに白山を指呼する。


白馬岳山頂


白馬岳より白馬山荘と剱岳(奥)

頂上直下の白馬山荘には、昼前に到着。展望と高山植物を楽しみながらゆっくり歩いたので、蓮華温泉から標高差1400m、歩行時間6時間30分の行程の割には疲れを感じなかった。

早速、1泊2食付で宿泊の手続きをする。まだ昼食を摂っていなかったので、山荘のテラスでラーメンを作って食べる。その後、夕食(1回目5:00〜)までたっぷり時間があるので、もう一度頂上に登ったり、テラスで缶ビール(自販機あり)を飲みながら、双眼鏡で北アの峰々や、バテバテで登って来る登山者の様子を観察して(^^;)、過ごす。


白馬山荘のレストラン
スカイプラザ白馬


白馬山荘のテラスにて
気分は山岳リゾート

公衆電話(カード式)から、翌日の朝日小屋の宿泊予約を入れておく。夕食は良かった。ごはんを3杯おかわり。8人部屋に7人で就寝。布団がちょっと湿気っていたが、こんなもんでしょう。

8月13日
天気:
行程:白馬山荘 5:40 …白馬岳 5:55 …三国境 6:40 …雪倉岳避難小屋 8:10 …雪倉岳(2611m) 8:55〜9:30 …赤男山水場 11:10〜11:30 …水平道分岐 12:15 …朝日小屋 13:45

今日も良い天気だ。5時に朝食を美味しく頂く。小屋の外に出ると北アの峰々が朝焼けに染まっている。白馬岳の頂上に登ると、昨日にも増して展望が効き、杓子岳、鑓ヶ岳の後方には折り重なるように唐松岳、五竜岳、鹿島槍ヶ岳、遠く槍穂高連峰も見える。


朝日の当たる杓子岳と鑓ヶ岳
遠くに富士山を望む


白馬岳より槍穂高連峰を遠望

白馬岳から大勢の登山者の列に混じって、ザクザクと三国境へ下る。大部分の登山者は白馬大池方面に向うようだが、雪倉岳に向う人も結構多い。広い砂礫の斜面を下り、緩やかな尾根を辿る。蓮華温泉への鉱山道を分け、鉢ヶ岳の右を巻く巻道に入る。


三国境より鉢ヶ岳、雪倉岳
朝日岳


鉢ヶ岳の巻道を行く
奥は雪倉岳

雪の消えた斜面には、アオノツガザクラ、ハクサンイチゲ、シナノキンバイ、イワウチワ、ハクサンゴザクラなどの花が咲き揃っている。途中には小さな雪渓が残っていて、冷たい水が流れ出している。


シナノキンバイ


ハクサンイチゲ

鉢ヶ岳と雪倉岳の鞍部は、ちょっと荒涼とした感じの広い平地となっている。雪倉岳への登り口に避難小屋があり、内部を見ると、なかなか奇麗にしている。避難小屋のWCを拝借し、雪倉岳への登りにかかる。小尾根上の一直線の登りで、一見大変そうだったが、ここも花が多く、カメラを向けているうちにいつの間にか頂上に着いた。


カライトソウ


雪倉岳避難小屋


雪倉岳のお花畑


雪倉岳頂上より頸城三山(中央)
高妻山(右)を遠望

雪倉岳の頂上も360度の展望だ。蓮華温泉の赤い屋根が見下ろせる。その向こうのスカイラインは、頸城三山と高妻山だ。南には白馬岳が高く聳え、北にはこれから向う朝日岳がゆったりと稜線を広げている。ナシを食べて、ゆっくり休憩する。


雪倉岳頂上より白馬岳


雪倉岳頂上より朝日岳

雪倉岳からは大きく下る。まず、砂礫の広い尾根をゆるゆると下り、主稜線を離れて支稜をさらに下る。右手の斜面には大きな雪田が残っていて、この辺もいろいろな花が咲いている。


タカネマツムシソウ


タテヤマウツボグサ


イワシモツケ


ハクサンシャジン

支稜から雪倉岳と赤男(あかおとこ)山の鞍部を目指して、トラバース気味に下る。逆コースを登って来たパーティはかなりつらそう。そろそろシャリバテしかかっていたので、鞍部のすぐ先の水場(水はちょろちょろ)で昼食にする。

棒ラーメンの昼食を済ませ、赤男山の巻き道を進む。これまでの砂礫とお花畑の道から一変して、樹林の中の細い道となる。ボロボロに崩れた岩壁(燕岩)の下を通過してしばらく行くと、木道のある草原に出て、水がバンバン流れている。しまった、こちらで昼食にすれば良かった。正面には白馬岳支稜の清水(しょうず)岳が雪渓を抱いて聳え、良い眺めだ。

この先の湿原と木道が続く辺りが小桜ヶ原だろうか。行く手には朝日岳を見る、佳いコースだ。


雪倉岳と赤男山の鞍部へ
朝日岳(奥)を見ながら下る


小桜ヶ原付近より朝日岳

赤男山を巻き終わり、朝日岳山頂に登る道を分けて、水平道に入る。等高線にほぼ平行な線状凹地(豪雪による地滑り地形らしい)をうまく利用して道が付けられている。凹地の中はお花畑になっていて、木道が整備されている。


水平道分岐


水平道に残る雪渓

一回大きく下って、谷を横切って登り返す箇所が、ちょっとしんどい。急な山腹をトラバースする道になると、行く手に朝日小屋が現われる。朝日平のすぐ手前の沢では大勢の登山者が休憩していて、水を浴びたり飲んだりしていた。私も頭から水をかぶり、濡らしたタオルで上半身を拭く。あー、さっぱりした。これで今晩は気持ち良く眠れそうだ。

ここからわずかで朝日小屋に到着。このころにはガスがかかってきた。宿泊の手続きをすると、夕食は1回目4:45〜ということなので、それまでは例によって缶ビール500mlをゲットして、小屋の前のベンチで飲み始める。同席の方といろいろ話をしたが、中身は酔っぱらって忘れた(^^;)


朝日平手前の沢


朝日小屋に到着

夕食は食前酒(ワインなど)がサービスで出るほか、肉じゃがをはじめ、大変美味しかった。御飯は4杯くらい食べた気が。宿泊者は多かったが、多すぎるということはなく、布団はふかふか、スペースも余裕があって、ぐっすり眠れた。

8月14日
天気:
行程:朝日小屋 5:20 …朝日岳(2418m) 6:05〜6:15 …吹上げのコル 6:40 …青ザク 8:15 …花園三角点 8:50 …白高地沢 9:40〜9:55 …瀬戸川鉄橋 10:50〜11:00 …蓮華温泉キャンプ場 12:15

今日も良い天気だ。予定より少し早い4時45分から朝食を美味しく頂き、出発する。昨日、ここからは雲がかかっていた雪倉岳、白馬岳も、今日はすっきり見える。


朝日平から早朝の
雪倉岳(左)と白馬岳(中央)


朝日岳に向う

朝日岳への登りは、お花畑や小沢を縫うように登って行く。傾斜が緩くなると頂上だ。

山頂は背の低いハイマツと砂礫地のお花畑に囲まれた平地で、360度の展望が得られる。北側には長栂山、犬ヶ岳などの山々が延々と連なっている。前回、あちらから来たときは豪雨の中で、頂上の展望はゼロ。急いで通過しただけだった。こんな場所だったのかー。この景色を見なければ、登ったことにはなりませんね。


朝日岳頂上より
白馬岳を遠望


朝日岳頂上より長栂山(中央)
犬ヶ岳(左奥)

朝日岳からの下りでは残雪が現れ、その回りにはチングルマ、ハクサンコザクラ、コバイケイソウなどが一面に咲いている。下り着いた吹上げのコルのベンチで一休み。先行していたパーティは栂海新道に向ったようだ。こんな良い天気の下で、もう一度歩いてみたい気もする。


朝日岳頂上下の残雪と
ハクサンコザクラ


吹上げのコルへ下る

蓮華温泉へは、八兵衛平の斜面をトラバースする道を下る。残雪が点在し、流水が豊富で、草原と湿原のお花畑を通って行く楽しい道だ。ところどころの木道は滑りやすいので注意(余所見をして、一回こけた)。


八兵衛平より朝日岳を振り返る


ヒオウギアヤメと雪倉岳

樹林の中の「五輪の森」という標識を過ぎると山腹のトラバースは終わり。少し下ると広い草原の尾根の最上部に出て、「青ザク」という標識がある。眼下には木道が延々と続いて、谷を隔てた遥か向こうに蓮華温泉が見える。ひえ〜、これを下って、あれを登るのかいな。

ここもニッコウキスゲやカライトソウ、シモツケソウなどの花が多い道だが、標高が下がって陽射しを遮る物がなく、暑い。花園三角点の少し手前にベンチと水場がある。ここの水は冷たくて美味く、本当に助かった。


五輪高原を下る


花園三角点より
朝日岳を振り返る

花園三角点から急な木道を下り、樹林に入ってひたすら下り、ようやく白高地沢に出る。河原が広い、大きな沢だ。休憩して、最後のナシを食べる。

上流に少し戻り、大岩の間に架けられた鉄パイプの仮橋で激流を渡る。対岸を少し下ると、木陰にベンチがあって水場もあるので、こちらで休んだ方が良かったかも。濁った「ひょうたん池」の横を通り、深い森の中を下って行くと、瀬戸川に架かる立派な鉄橋に出る。この川も流れが激しく、橋の上流は岩壁が迫る渓谷になっている。橋の袂で休憩していたら、ずっと前後して歩いていたご夫婦からゼリーをご馳走になった。


白高地沢
大岩の所に仮橋が架かっている


瀬戸川に架かる鉄橋
(蓮華温泉側から撮影)

ここから樹林の急な斜面をジグザグに登り返すと、森の中にポッカリ開けた兵馬ノ平に出る。秋の気配の漂う草原を横断し、さらにだらだらと登ると、ようやく蓮華温泉キャンプ場に到着した。


兵馬ノ平


蓮華温泉キャンプ場

テントを張る場所を決めてザックを置き、財布と車の鍵だけを持って蓮華温泉へ(キャンプ場から距離600m)。さらに車道を歩いて、車に戻る。幸い、駐車場に空きができていたので、車を移動。蓮華温泉の受付でキャンプ場利用料300円を払い、テント道具一式と食料をキャンプ場に運んで、テントを張る。すぐそばの小川で缶ビールを冷やしておいて、蓮華の風呂に入りに行く。日焼けに湯がしみた。さすがに疲れたので、露天風呂巡りはパス。キャンプ場に戻って、冷えた缶ビールをぐいっと飲む。うまーい。

久し振りにテントで寝て、翌朝、帰宅の途についた。

P.S. 桐生には15日の正午頃帰着。なんなんだー、この暑さは!この日、桐生の最高気温は39℃に達した。