黒檜岳〜社山〜半月山
登るのはシャクナゲの咲く頃と考えていた黒檜岳に、時期を見計らって出かけて来ました。最初は菖蒲ヶ浜から往復の予定でしたが、天気が良かったので、社山、半月山まで足を延ばし、中禅寺湖北岸を歩いて菖蒲ヶ浜に戻りました。目当のシャクナゲは今年は不作?のようでしたが、中禅寺湖畔などでシロヤシオが満開でした。
午後にはにわか雨があるかも、という予報だったので、午前中に黒檜岳を往復するつもりで、夜3時少しすぎに桐生を車で発つ。4時前にはもう空が明るくなる。R122、いろは坂を経由して、菖蒲ヶ浜に到着。竜頭ノ滝の手前の駐車場に車を停める。天気は快晴とまでは行かないが、上々だ。
竜頭ノ滝には早くもカメラの三脚を広げて陣取っている人が2、3人いる。竜頭ノ滝駐車場でWCを済ませて、日光プリンスホテルへの道に入る。ホテルの手前に、今年3月に廃業が決まった日光菖蒲ヶ浜スキー場がある。トリプルリフト1本だけのごく小さなスキー場だが、リフトの設備やレストハウスの建物はまだ新しい。スキー人口が減っているんだなぁ、とちょっと寂しく思う。
スキー場の横から中禅寺湖周回線歩道に入る。湖に落ち込む山際を巻く道で、手摺や桟道がよく整備されている。トウゴクミツバツツジとシロヤシオが、ちょうど満開だ。樹林に覆われて展望は少ないが、赤岩からは静まり返った湖面を隔てて、黒檜岳がよく見える。
栃窪は水際に砂浜が広がる浅い谷で、カエデやミズナラの林の中を歩く。熊窪で高山への道を分ける。千手ヶ浜に近づくと、大勢の人の話し声が聞こえて来た。
千手ヶ浜はミズナラの大木に囲まれて明るく開けた砂浜と芝原が広がり、気持ちが良い場所だ。中禅寺湖を見渡すと、男体山が逆光の中に大きい。人声はツアーの団体さんのようだ。外山沢は水害の改修が完了し、立派な橋で渡る。西ノ湖への道を分け、柳沢川を吊り橋で渡る。川の水量は多く、澄み切っている。
小さな川を木橋で渡ると、千手堂跡に着く。ここは日光開山の祖、勝道上人が開いた湖畔の霊場で、昭和の年代まで御堂が残っていたそうだが、風雪のために倒れて、今は石垣に囲まれた小平地があるだけだ。千手堂跡から石段を下ったすぐ先が黒檜岳登山口で、新しい道標がある。
登山口で少し休憩したのち、黒檜岳への登りに取りかかる。鬱蒼とした樹林の中を緩く登ったあと、すぐに山腹の急登になる。シャクナゲの林が始まるが、花が少なくポツポツという感じ。そもそも蕾も少ないので、今年は不作なのかな。
ガレた沢を渡り、山腹をジグザグに登って小さな尾根に出ると、西から冷たい風が急に吹き付ける。ここから尾根上の急な登りとなる。シャクナゲの群落が続き、こちらの方はまだ花の数が多い。今回はこの辺が一番見頃のようだ。
やがてシャクナゲがなくなり、コメツガが尾根を覆うようになって、傾斜が緩くなる。ところどころに名残の雪を見る。平坦地でどこがピークかわからないような地点に「黒檜岳」という山名標と千手ヶ浜、社山への道標を見出だす。コメツガが密生して、展望は全然ない。
ここから西へ少し進むと、緩い登りとなって1976m標高点を越え、一旦、下って僅かに登り返した次のピークに「黒檜嶽1977m」と書かれた達筆標識、山部さんの標識、新しい標識、と三つの山名標がある。このすぐ先には黒檜岳雨量観測局のアンテナが立ち、ネットの情報のとおり、白根山から錫ヶ岳、宿望堂山、皇海山にかけての展望が開ける。ここでしばらく展望を楽しみ、頂上に戻って休憩する。
さて、これからどうしようか。当初は往路を戻る予定だったが、シャクナゲがいまいちだったので物足りない気もする。天気予報を確認してみようと携帯(FOMA)を取り出すと、おおっ、アンテナが立っている(^^)。確認の結果、天気は保ちそうと判断、時間の余裕も充分あるので、社山に向うことに決定。
千手ヶ浜、社山への分岐点に戻り、社山の方へ向う。コメツガ林の中の踏み跡は判然としないが、標識を頼りに進む。今日、初めてのハイカーさんとすれ違う。
コメツガ林を抜けると、笹原の尾根に出る。南には足尾の町並が霞んで見える。笹は鹿に食べられて(実際、鹿の糞が多い)、背が低く茎だけになっている。足尾銅山の煙害で作り出された風景ではあるが、展望が開けて気分も明るい。こっちに来て良かったー。
枯れ木の点在する笹尾根を縦走する。さらに4、5人のハイカーさんとすれ違う。行く手には、社山が黒木に覆われた三角形のピークを見せ、その奥には半月山も見える。幕営したいような浅い窪地の南側を通過し、遮る物のない笹尾根を辿る。風が強く、西から雲がどんどん流れて来るが、白根山の頂上が見えている間は、天気は大丈夫だろう。
社山の手前には、ここだけアカヤシオが咲いていた。振り返ると黒檜岳へうねうねと笹尾根が続いている。コメツガの幼木の間を登ると、露岩が点在する社山頂上に到着した。
社山は2回目の登頂。頂上の南側は笹原で、足尾方面の眺めが良い。北側は樹林の間から男体山が見えるくらい。時間は早いが、お腹も減ったので、ここで缶ビールとラーメンの昼食にする。阿世潟峠の方からハイカーさんが何組も登って来て、賑やかな山頂になる。
社山からの下りは再び展望の笹尾根となる。正面に半月山、左に中禅寺湖の湖面を見て、がっくり標高を落とす阿世潟峠への下りは爽快だが、登って来るハイカーさんにとっては、なかなかきつい所だ。右手にカラマツ林が現れ、社山雨量観測所を過ぎると新緑に覆われた稜線となり、阿世潟峠に到着する。
菖蒲ヶ浜に戻るには、ここから阿世潟に下って中禅寺湖沿いに歩くのが一番距離が短いが、今日は時間もあるし、脚の方もまだ大丈夫そう。半月山は登ったことがあるが、その先の茶ノ木平は歩いたことがない。この際、トレーニングもしてしまおう。ということで、中宮祠に向ってさらに縦走を続けることにする。
阿世潟峠から半月峠の間は、笹原と林がきれいな尾根道だ。ハイカーさんは見かけなくなる。右側は新緑のカラマツ林で、ハルゼミが鳴いている。途中でみたシロヤシオは、大きく広げた枝に花が満開で、この日、見た中で一番見事だった。また、陽当たりが良いせいか、たくさん花を付けたシャクナゲの株もあった。シャクナゲについては、これで満足。
1655m標高点まで結構な登りがあり、そこから半月峠に少し下ったのち、半月山へ最後の登りとなる。展望台には大勢のハイカーさんが休憩していて、中禅寺湖と男体山の展望を楽しんでいる。半月山頂上は展望台からすぐで、樹林に囲まれて展望はまったくない。休むような場所でもないので、先に進む。
半月山からの尾根道は、右側山腹の下の方を中禅寺湖スカイラインが平行に通っているので、なんとなく楽な道を予想していたが、結構本格的な山道だ。かなり下って、第一駐車場に出る。ドライブで来た人達が、中禅寺湖と男体山の展望を楽しんでいる。それにしても風が強い。
第一駐車場から尾根通しに狸山に登る。標高差は50mほどだが、さすがに脚が疲れてきた。ここから標高差130m程下ってスカイラインを横断し、同じくらい登る。車道からすぐのところにも展望台がある。この展望台からの中禅寺湖の眺めは見る角度が変わり、湖面の奥に白根山が見える。
笹とカラマツの尾根を登ると、ブナやダケカンバ、ウラジロモミなどの林に囲まれた茶ノ木平の平坦で広い尾根に出る。ベンチや自然観察教育林と書いた木製標柱がある。かつては中禅寺温泉ロープウェイが中禅寺温泉と茶ノ木平を結んでいたので、観光客のために整備されていたようだ。展望台と書かれた道標があったので、立ち寄ってみたが、樹林が成長して展望は良くなかった。
明智平への道を右に分けると、ロープウェイの茶ノ木平駅の跡地に出る。施設はきれいに撤去され、展望の良い広場になっている。正面に見える男体山が大迫力だ。
茶ノ木平から笹と樹林の緑がきれいなハイキング道を下ると、日光レークサイドホテルの裏手に出た。強風で波立つ湖面を眺め、観光客に混じって中宮祠の温泉・土産物店の通りを歩く。
温泉街のはずれから10分ほどの大崎より車道と平行して遊歩道があり、対岸に黒檜岳〜社山〜半月山の稜線を眺めながら歩く。釣り人が大勢いた。このあたりもシロヤシオが咲いている。最後は休み休み歩いて、ようやく菖蒲ヶ浜の駐車場に戻った。これで中禅寺湖を徒歩で完全に一周。いやー、よく歩いた。
早速、竜頭ノ滝の横にある龍頭温泉館憩いの湯に向かう(タオル付で800円)。湯元♨から引いた温泉なので、硫黄臭くて疲労回復に効果覿面(本当に疲れが取れてビックリ。温める効果もあるのだろう)。筋肉の凝りをほぐして、桐生に帰った。