外山
3月上旬はとても暖かく、4日には桐生で最高気温20℃という4月下旬の陽気になった。今年は雪も異常に少ないので、もしかして雪山はもう店じまい?と考えていたら、中旬になって寒さが戻り、奥日光から情報発信しているいくつかのブログによると、かの地では30〜50cmの積雪があったとのこと。久しぶりに湯元♨にも浸かりたいし、雪山を歩きに出かけてこようかな。
ということで、今回は外山に登ることにする。日光にはもう一つ、東照宮の北東にも外山(とやま)という標高880mの山があり、毘沙門天が祀られているそうだが、こちらの外山は日光白根山の一般登山道から少し外れたピークで、訪れる人は稀。実は、私も「日光連山ひとり山歩き」で外山の記録を読むまでは、ほとんど気に留めていなかった。
しかし、興味を引かれて眺めてみれば、戦場ヶ原や湯ノ湖から見た山容は端正な金の字だし、山頂から湯ノ湖に一直線に落ちる東尾根には雪が帯状に付いていて、楽しく歩けそう。この東尾根から登って来ました。
桐生を車で発つ頃は雲の多い天気だったが、戦場ヶ原を過ぎる頃には、高い山に懸かっていた雲も消えて、青空が広がる。湯ノ湖南端・湯滝上の駐車場に車を停めて外に出ると、国境稜線を越えた風がもろに吹き当たって、強烈に寒い。湯ノ湖の凍った湖面を隔てて、東尾根がすっきりと見える。雪の状態が判らないので、アイゼン、ピッケル、スノーシュー、ストックを全て携行し、つぼ足で出発する。
湯滝上の木橋を渡り、湖岸の遊歩道を少し辿ってから、左の尾根に上がる。しばらく鹿除けのネットに沿って歩く。雪は、吹き溜まりがあったり、地肌が見えていたりとまだら模様だ。
ネットが尾根から離れた先は、疎らな樹林の中の気分の良い登りとなる。しかし、雪は相変わらず少なく、背丈が低い笹がパサパサ出ている状態だ。標高1800m付近では雪が少し積もった笹原の急な登りとなり、ちょっと苦労する。急坂を登り切ったところで一休み。行く手には外山が高く、振り返ると湯ノ湖、戦場ヶ原、男体山の眺めが良い。
雪は徐々に増えて来るが、スノーシューを履く程ではなく、つぼ足で登って行く。時々、踏み抜くことがあり、息が切れる。雪がもう少しあって締まっていれば快適なんだがなぁ。しかし、展望は素晴らしく、立ち休みを兼ねた写真撮影にしばしば足を止める。
標高2000mあたりから雪も増え、一度スノーシューを履くが、新雪の下にカリカリの層があって、スノーシューでは後戻りする。すぐにアイゼンに履き替える。以降、下山するまでアイゼンで歩く。今回はスノーシューは不要でした。
麓からも見えていた尾根上の雪の帯に到達したようで、尾根の左側に雪がずっと続くようになる。しかし、ここは庇のようにはっきり張り出してはいないので判りにくいが、急な斜面に付いた大きな雪庇で、この上を歩くと危ない。実際、一度踏み抜いたら、深さ1mくらいの穴がぽっかり開いた(@_@;)。痩せ尾根なので、雪庇を避けて歩くには右側の密な針葉樹林の中を歩くしかない。雪庇の上に小動物の足跡が点々と続いているのが、羨ましい。
最後の登りはきつかったが、背後に広がる湯ノ湖や太郎山、男体山の展望に励まされて、ようやく外山の山頂に到着した。山頂には山名標が付けられた小さなシラビソの木を中心に針葉樹林に囲まれているが、東と南の眺めが効いて、意外と雰囲気が良い。
南側にはラクダのコブのような湖上山への尾根が続いている。痩せ尾根の両側の山腹は険しい斜面だ。西側には樹林越しに前白根山方面の稜線が見えるが、雪煙で霞んでいた。
一通り展望を写真に収めて、テルモスのホットココアとパンで昼食にする。のんびり休んでいるうちに、外山の山頂にもちらほらと粉雪が舞い始めた。
外山頂上から日光白根山の登山道へは、シラビソやシャクナゲの幼木が密生した緩い下りだ。雪があまり締まっていないので、なるべく踏み抜かないようにそろそろ歩く。外山鞍部に着くと、2人パーティーがスノーシューからアイゼンに履き替えている所だった。
ここから前白根山への尾根は広く緩くてスノーシューで歩くと楽しそうだ。時間があれば前白根山まで行ってみたかったが、既に13時半を回っているので、今日はここから湯元スキー場に下ることにする。
湯元スキー場への道は樹林の中を急降下する。トレースがしっかり付いているので気楽だ。ところどころ凍っているところはアイゼンを効かせて下る。途中、キックステップで上がって来る単独行の人に行き合う。今日は避難小屋泊かな?眺めのない樹林帯の急坂を下ると、湯元スキー場最上部の今は閉鎖されているバーンに出る。雪斜面の真ん中を真っすぐ下り、後はスキーヤーの邪魔にならないようにゲレンデの端を歩いて、スキー場を抜けた。
湯元から、今日登った外山を眺めながら、湯ノ湖の湖畔を歩いて湯滝上の駐車場に戻る。ここは今朝と同じく風が強く寒い。今日は結局ここが一番寒かった。ザックを急いで車の中に放り込み、車をちょっと走らせて湯元の♨に急いだ。