秋山郷切明温泉
先月、鳥甲山に登ったときに初めて秋山郷を訪れ、鳥甲山や苗場山・奥志賀の山々に囲まれて流れる中津川の渓谷、そこに点在する村落と温泉といった佇まいがとても気に入りました。S&Sから、9月の3連休にどこか温泉に行きたい、という話が持ち上がって来たので、早速、秋山郷をお勧め。今度は切明(きりあけ)温泉雄川閣に2泊して、秋山郷とその周辺の見所巡りや、カヤの平高原から八剣山(はっけんざん)への軽い山歩きを楽しんで来ました。
桐生を9時半頃出発し、関越道赤城IC〜湯沢ICを経由して、11時半頃越後湯沢駅に到着。東京から新幹線で来たS&Sと合流する。駅前の商店街で昼食にそばを食べた後、R17、R353、R117を経由して、中津川沿いのR405で秋山郷切明温泉を目指す。
途中でまず、見玉(みだま)不動尊に立ち寄る。R405沿いに「見玉不動尊」の大きな案内看板と駐車場がある。数軒のお土産屋さんの前を通り、立派な山門をくぐって奥の石段を登り、本堂にお参りする。鬱蒼とした杉林に囲まれた石段の傍には水量がとても多い澄んだ流れが落ちている。この水で紙を濡らし、山門の阿吽の仁王像の、身体の悪い箇所と同じ所に投げて貼り付けると治るそうだ。
次は、大赤沢の蛇淵ノ滝へ。この滝は中津川支流の硫黄川にかかっている。山源木工の横から田んぼの間を通って小尾根を降りて行くと、滝を見下ろす展望台に出る。滝の名前の由来は、昔、猟師が獲物を追ってこの滝までやって来て、丸太橋で対岸に渡って振り返ると、橋だと思っていたものが実は大蛇だったとか。小さな蛇を見てもぎょっとするのに、これは想像すると怖い。
屋敷の秋山歴史民族資料館に立ち寄ったのち、鳥甲山の山裾を通る秋山林道をドライブする。途中、白沢の出合から見上げる白嵓の岩壁は素晴らしい。山腹をジグザクに下って中津川を渡ると、今日の宿の切明温泉雄川閣に到着。宿の前の広場では明日、「第1回切明温泉祭り」なるイベントが開催されるそうで、ステージやテントが準備されていた。
早速、温泉に浸かって、泊まりのときのみの特典、風呂上がりに缶ビールを開ける。うまー。夕食の時もお酒を頂いて、いい気分に。速攻で就寝する。
台風13号の影響で天気が心配されたが、朝起きると意外と良い。予定通り、カヤの平に向かう。切明から奥志賀に向かう林道は全面舗装で、雑魚川の険谷から遥かに高い山腹を巻いているので、展望抜群だ。奥志賀林道と分かれてカヤの平に上がると、一転して緩やかな森林が広がり、やがてカヤの平総合案内所に到着。周囲は牧場で、オートキャンプに来ている人が多い。
駐車場に車を置き、北ドブ湿原と八剣山を目指して出発。カヤの平高原ロッヂの横を通って、ダケカンバ林やブナ林の中を緩〜く登って行く。西コースと東コースがあるが、距離・時間ともほとんど変わらない。今回はいつの間にか西コースを登っていた。
西コースと東コースは途中で合流するので、その先は北ドブ湿原を通る東コースを歩く。緩く下って行くと、森が開けて北ドブ湿原の一角に出た。
湿原の入口には「8月〜9月にみられるお花」という説明板があり、湿原の周辺に咲いているのがヤマトリカブトやサラシナショウマであることがわかった。湿原の中は草紅葉だが、その中に咲いている黄色い花はミズギクらしい。湿原を木道で横断すると対岸に東屋があったので、ここで一休み。
湿原の奥から湿った道を登って行くと、再び西コースと合流。ここから八剣山へはブナ林の中のちょっと急な登りだが、長くはない。最後は緩い道を辿ると、ササの切り開きの中の八剣山の頂上に到着。展望がないとは聞いてはいたが、木の間から周囲の山が見えることさえも全くない。腰を下ろす場所も5人くらいでいっぱいになりそうで、あまり休憩には向かないが、まあ、それはさておいて、パンとナシで昼食にする。
復路は尾根伝いのブナ林の中の西コースを下る。ブナに巻き付いたツタウルシの葉が少し赤くなっていた。
カヤの平高原ロッヂの少し手前まで戻って来た所で、ちょっと寄り道して、ブナ原生林を一周(700m)する信州大学教育園の歩道を歩く。途中にはいろいろな解説板があって面白い。例えば、ブナ林は、林床にチシマササが生えている日本海型(カヤの平はこの型)と、スズタケが生えている太平洋型に分類されるそうな。
カヤの平から車で切明温泉で戻る途中、雑魚川本流にかかる大滝に立ち寄る。林道脇に駐車して、デジカメだけを持って登山道に入る。少し下ると、信濃路自然歩道(奥志賀渓谷コース)の雑魚川取入〜清水小屋入口の中間に出る。ここから下流に向かうと、支流の沢を渡り(橋がないので増水時は通過できない)、しばらく歩いて大滝への下り口に着く。なお、この先の渓谷沿いの道は倒木が多く、どうも荒れているようだ。少し下ると、大滝が見える場所に着く。水量が多く釜も深くてなかなか豪壮な滝だ。
大滝を見学した後は往路を車まで戻り、雄川閣へ帰る。祭りが開催されている間は雄川閣の前の広場には駐車できないので、少し上流の温泉宿「雪あかり」に車を置く。温泉に入った後、祭りの屋台で焼鳥をつまみに生ビールで乾杯。
夜中には日本海を進む台風13号の影響で風雨が強まったが、明けると台風一過の良い天気。予報によると、日中はフェーン現象で30℃を越える暑さになるらしい。今日は帰り道の途中でいろいろな見所に立ち寄る予定だ。
大赤沢でR405から分かれて、中津川右岸を通る東秋山林道を走る。見倉トンネルを抜けたところに立派な駐車場があるので、ここに車をおいて、最初の見所、風穴と見倉の大栃を見に歩く。
風穴は駐車場の直ぐ上で、近づくと山から冷気が降りて来る。さらに近づくと、岩が積み上がった隙間からとても冷たい風が吹き出している。まるで、ガンガンに効かせたエアコンの吹き出し口にいるようだ。これはかなり不思議で一見の価値あり。風穴の前の道は小松原湿原への登山道となっている。ここを登るのも面白そうだ。
大栃へは、駐車場から20分くらいの距離だ。途中もトチノキの大木の森で、足元には丸々とした大きな栃の実がゴロゴロ落っこちている。木の上からも落ちて来るので頭上注意。栃の実を割って少し齧ってみたが、舌先にいつまでも渋みが残った。栗のように茹でるだけで食べられるなら、大量に拾えて嬉しいのだが、食べるには水にさらすなど、大変手間がかかるそうだ。残念〜。
気温も上がってきた上に、結構登りがあり、一汗かいたところで、周囲に柵が設置されたひと際大きなトチノキに到着。これが見倉の大栃で、太い幹から横に張り出した枝もがっしりとして、見事な枝振りだ。往路を戻り、もう一度、風穴に立ち寄って、冷風で汗を冷やした。
秋山郷からの帰り道の途中で、次の見所の竜ヶ窪に向かう。竜ヶ窪は信濃川の河岸段丘の上の湧水池だ。駐車場に車を置いて奥へ少し歩くと、杉林に囲まれた池に出る。池のほとりの神社には泉があり、大きな容器に水を汲む人が多い。池に沿って奥へ歩くと、ここにも社があり、その後ろの崖からは冷たい水がこんこんと湧き出していた。
今回のおでかけの最後の見所は清津峡。R353の葎沢から分岐して清津峡温泉に向かう。川沿いの県道は現在工事中で、大きく高巻く迂回路を通行する。幅が狭く対向車が多いので、すれ違い注意。側溝に脱輪した車があった。清津峡温泉の入口には大きな無料駐車場がある。
清津峡沿いの歩道は、かつて落石事故があったために閉鎖され、代わりにトンネルで探訪できる(500円)。トンネルの途中の4カ所から、渓谷の壮大な柱状節理の岩壁を見ることができる。
渓谷沿いの遊歩道は閉鎖されているが、それとは別に清津峡温泉から上流の八木沢までは「上信越高原国立公園清津峡線歩道」が整備されている。登山口を見つけたので偵察。案内看板によると、距離13km、所要時間約9時間、急勾配で一部危険な箇所もあるとのこと。これは面白そうだ。
温泉と見所を楽しんだ今回の旅行もこれで終了。越後湯沢駅でS&Sと別れ、関越道経由で桐生に帰った。秋山郷周辺にはまだまだ歩きたい所があるので、また、出かけてみたい。