日本平山
桐生を0時過ぎに車で出発。北陸道を三条燕ICで降りて、早出川(はいでがわ)ダムを目指す。4時過ぎにダムサイトの駐車場に到着。10数台分のスペースには他の車はなし。まだ暗く、周囲の山々にはガスがかかっている。
駐車場の脇に登山者向けの看板があり、「熊、蜂、ヤマヒル等に十分注意して登山して下さい」とある。早出川流域はヒルが多いことで知られている。ネットでヒル対策を検索すると、スプレーの制汗剤が効果があるという記述を見つけたので、予め薬屋で買い求めて持って来た。ズボンの裾を縛り、靴の上にたっぷりスプレーしておく。いい香りだが、これが効くのか、はなはだ不安。暗いうちに歩き出すのは嫌な雰囲気なので、WCをゆっくり済ませ、少し明るくなってから出発する。
ダム管理棟を過ぎた所に登山届のポストがあるので、登山者カードに記入する。6月中のカードを見ると、2、3日に1パーティの割合で登っているようだ。近くにダム湖から引き上げられた流木が山のように積み上げられている。これで焚火をしたら盛大だろうな(^^;)。
最初は湖畔の林道を辿る。ぬかるみ防止に流木のチップが敷き詰められていて歩き易い。15分程で林道が終わり、ガードレールのある細い歩道を経て、いよいよ登山道に入る。この道は元々ゼンマイ採りの道があったものを、ダム湖が出来たために付け替えたものということだ。
小沢を渡り、石祠のある山の神を過ぎ、湖に落ち込むスラブをトラバースする。周囲の山々は豪雪に磨かれて峻険で、1000m級の山地の景観とはとても思えない。道が林間に入った所は刈り払いされたばかりで、快適に歩ける。
道はやがて金ヶ谷(きんがたに)の深い谷に沿って、一旦高度を上げる。懸崖を削って作られた道はところどころで幅も狭く、崖から押し出されそうになりながら通過する。下を見てしまうと身がすくむような高さなので、足元だけを見ながら歩く。
金ヶ谷に向かって降りて行くと、谷の中に大きな雪渓が残っていた。飛び石伝いに流れを渡る。下流は見事なV字の谷だ。急斜面を登って、崖をトラバースする道となる。さっき歩いて来た対岸の道が深い谷を隔てて眼下に見える。
尾根の上に出ると、丸子方面と日本平山への道が分岐する駒ノ神だ。鵺鳥だろうか、「ピー、ピー、ヒィ、ピー、ピー、ヒィ」という甲高くか細い鳴き声が響く。ここまで意外と時間がかかり、ずいぶん山奥に来たなぁ、と感じる。松の大木の根元に腰を下ろして一休み、ヒルが付いていないかチェックしたが、今のところいないようだ。
駒ノ神から本格的な登りとなり、尾根の上を一直線に登って行く。大きな赤松が立ち並ぶやせ尾根に出ると眺めが開け、ようやくガスが上がって周辺の山々が見えて来た。行く手には日本平山の山頂が見えるが、まだまだ遠い。振り返ると早出川の深い谷と低く険しい山並が続く。一番奥に聳える粟ヶ岳には雪が残っていた。
ブナに覆われた緩い尾根を登ると、赤土が露出して小広く開けたトコヤに出た。変わった地名だが、昔は鉱山か何かがあったのだろうか。テントが張れそうで水場もあるが、染み出るような流れなので飲まなかった。
トコヤの先も緩い尾根に美しいブナ林が広がり、気持ち良い。ピークを越えると尾根の左側を巻く掘り窪んだ道を緩く下って行く。湿気が多いせいか、ギンリョウソウがたくさん咲いている。ブナの木の間から見える谷には雪が残っている。
再び登りになると今度はかなり急だ。登り切ったところがガンガと呼ばれるピークで、やせ尾根からの展望が素晴らしい。日本平山は深い緑に覆われて、あとひと登りのところに見えている。
最後の急坂を登り切ると、ササと灌木に覆われた緩い山頂の一角に出る。はんぺんのようなカエルの卵塊?でいっぱいの小さな池で谷沢川側からの道を合わせると、一等三角点のある頂上はそのすぐ先だ。
頂上はササが刈り払われた平地となっていて、蛙の像が鎮座している。ガスがなければ展望が良さそうだが、今日は谷沢川の方の眺めがわずかにあるだけだ。まずは缶ビールで喉を潤す。ヒルをチェックするが、OK。結局、このコースにはいないようだ。単独行の人が上がって来たので話を聞くと、谷沢川から登って来たそうだ。今回会った登山者はこの一人だけだった。ベヤングソース焼きソバを食べた後、往路を下山する。
晴れ間が広がり蒸し暑くなって、駒ノ神に下り着いたときには2リットルのポリタンが空になっていた。金ヶ谷で冷たい水を飲み、顔を洗って、青空が広がる湖岸の道をダムサイトに戻る。お出かけ日和になったので、駐車場には観光に来た人の車が5台程あった。
帰途、ここまで来たついでに、悪場(あくば)峠から水無平を経由して木六山へ登る道の入口を偵察するために、哺土原林道で悪場峠を越える。途中、国土地理院の地図にも記載されている視後平(しごへい)の滝に立ち寄る。林道脇の案内看板から10分程下ると、岩壁を優美に流れ落ちる滝があった。
悪場峠付近で路肩に車が2台あり、そこから雑草の生い茂る斜面を登る細い踏み跡があった。ちょうど登山者が降りて来たので、ここが登山口か尋ねると、そうということだった。いろいろ話を伺うと、銀次郎山の先まで行ってこられたらしい。さらに、私が日本平山に登ったと話すと、日本平山から北に尾根を歩いて、室谷川側の鍵取に降りるルートを教えてくれた。なんと、その方が道を拓いた(@_@)とのことだ。
(帰宅後、この方には思い当たることがあったので、最近読んだ高桑信一著「古道巡礼」を読み返すと、やはりこの本に登場している、川内山塊を隅々まで歩いている地元のEさんでした。)
悪場峠から杉川へ下り、さくらんど♨(700円)へ。汗を流した後、帰桐した。