御堂山
内山峠からR254を下仁田の方へ下ると、途中の本宿辺りで左前方の稜線上に爪楊枝の頭のような岩塔が2本突き立っているのが見える。これがじじ岩とばば岩で、以前、ドライブの途中で初めて見たときは、思わず車を降りてしげしげ眺めてしまったくらい、大きくて奇ッ怪な形をしている。今回、この奇岩を訪ねて御堂山に登って来ました。
登山口の藤井関所跡を通り過ぎて、本宿の旧道に少し入ったところの右側のスペースに車を停める。登山口まで少し引き返すことになるが、僅かな距離だ。藤井関所跡の後ろには岩峰が控えていて、いかにも西上州らしい景観だ。下仁田から本宿を経て和美峠あるいは内山峠を越える道は中山道の裏街道で、女性でも容易に通れることから女街道あるいは姫街道と呼ばれていた。ここは信州に通じる要所ということで、1593年に関所が設けられたそうだ。
関所跡から細い舗装道に入ると、「群馬百名山・御堂山」と題してルートを解説した案内板がある。すぐに未舗装の道になり、暗い杉林の中を歩く。周囲は切り立った崖や岩峰で、ミニ渓谷といった様子。じじ岩ばば岩から落ちる尾根の末端で林道が二手に分かれるところには数台分の駐車スペースがある。車で入れそうなのはここまでで、この先は林道の崩壊が激しく、車での通行は問題外の外だ。
やがて明るく開けた谷の登りになる。枯れ草に覆われて夏には藪が凄そうな所だが、道は良く踏まれている。枯れ沢の転石を踏んで登ると、2mくらいの小滝に出る。右側にステップが刻まれ、ボルトが埋め込まれてトラロープが張られているので、これを利用して滝を越える。振り返ると、逆光の中に鹿岳が見えた。
左上にじじ岩ばば岩とその周辺の岩峰を見上げながら明るい沢を詰め上げると、最後は傾斜が緩くなって、明るい雑木林の中の鞍部に登り着く。ここからもじじ岩ばば岩が意外と近いところに二つ並んで見える。汗を拭って一休みしたあと、じじ岩ばば岩に向かう。
細い尾根の上の良く踏まれた道を通る。岩峰に突き当たって、その基部を右側から巻いて行くと、じじ岩ばば岩の真ん前の展望台に出る。まず、その大きさと形にびっくり。実物を間近で見ると、やはり迫力が違う。
展望台と書いたが、ここは枝ぶりの良い赤松が生えた岩場で、鹿岳から荒船山、浅間山にかけての眺めもあり、絶好の休憩場所だ。写真を撮ったりミカンを食べたりして、ゆっくり過ごす。岩場でちょっと危険があるが、じじ岩の基部まで行って、そこからばば岩を見てみた。妙義山のように岩場のあちこちに窪みがあるのは、やはり岩の種類が似ているからだからだろうか。
奇観を堪能して鞍部に戻る。丁度、御堂山から女性お二方が降りてくる所だった。そのまま降りそうな様子だったが、じじ岩ばば岩に行ったの?とのお尋ねになるので、道は気をつけて行けば大丈夫、絶景ですよ〜、と答えると、それじゃ行きましょ、ということでじじ岩ばば岩の方へ向かって行った。
鞍部から雑木林の尾根を急登し、杉林に入ると、高石峠への分岐に出る。ここの道標には「奴居出への下山路危険」と書いてあった。さらに登ると、冬枯れの雑木林に囲まれた御堂山山頂に到着した。
山頂には三角点がある他は、山名標識の類はなし。群馬百名山なのに意外な感じだ。木に囲まれて広い展望はないが、北側が開けて金洞山を中心とする表妙義の眺めが良い。丸太のベンチに腰を下ろして、まずは缶ビール、そしてお湯を沸かして昼食にする。妙義山を誰か歩いているかなと思って双眼鏡でしばらく覗いていたが、誰も見つからなかった。こう寒いと鎖を握るのがつらくて、登っても大変でしょうね。
頂上でものんびりしたあと、分岐に戻って高石峠に向かう。山腹を巻いて御堂山から西に延びる尾根と合流する。左に本宿へ下る道を分ける鞍部には比較的新しい道標があり、ここまではよく歩かれているようだ。
高石峠へは杉林の中の展望のない尾根道が続く。ピークは南側を巻いて行くので楽だが、一カ所雑木林の中の脆い斜面のトラバースがあり、ここは注意して通過。稜線通しに歩いた方が良かったかも知れない。その他は危険な箇所もなく、高石峠に到着。道標はないが、南側の根小屋に下る道の入口は明瞭だ。
高石峠から『私が登った群馬300山』に紹介されている雨宮山を往復する。三角形の端正な山容の山だが、植林に覆われてあまり登高意欲は湧かない。ま、トレーニングということで。
右に四ッ家へ下る道と分かれ、直進して稜線を登る。道はないが、杉林の中で藪はない。急登に息を切らせて頂上に登り着くと、杉林に囲まれて石祠がひっそりと祀られていた。
雨宮山から高石峠に戻り、根小屋に下る。植林の中にはっきりとした道型があるが、その上に刈り払われた杉の枝が積もっていて、最近ではあまり歩かれていないようだ。途中、現在間伐中のところがあり、道がはっきりしなくなるが、谷を下って行けば問題ない。しかし、ここを登ろうとすると、小さな谷が多数分岐しているので、かなり迷いそうだ。
谷を下ると小屋掛けされた簡易水道の水源に出て、そこからは舗装道になる。わずかの距離で根小屋の集落に到着。高石峠の入口には「向右中之嶽ヲ経テ妙義町」、裏には「大正十一年一月…」と記した石の道標があった。高石峠を越える道はかつてはよく歩かれていたのだろう。
根小屋から姫街道を歩き、宿場町の雰囲気が残る本宿を通る。街道からもじじ岩ばば岩が見える所があった。駐車地点に戻り、あとは♨へ。荒船の湯に立ち寄って、温まって帰った。