兜岩山
6時前に桐生を車で発つ。関東一円、雲が厚いが、浅間山の上空あたりには青い空が見えている。あの青空が南へ広がってくれれば良いのだが。上信越道下仁田ICからR254で内山峠を目指す。荒船山の艫岩は白い雲の中だった。内山トンネルを抜けて内山大橋を渡る。晴れていれば橋の上から今日登る兜岩山が見えるはずだが、こちらも雲の中だ。
そのうちに晴れ間も見えるだろうと期待しつつ、登山口の荒船不動尊に向かう。コンクリート舗装の狭い道を上がると、荒船不動尊の手前に20台位は入れる広い駐車場がある。先客は1台だけだ。ここに車を置き、準備を整えて出発。
少し先で御岳への近道を右に分けると、荒川不動尊はそのすぐ先だ。本堂の前には「浩宮様荒船山登山御休息場所」と書かれた標柱が立っていた。社務所の前で何かの作業中の管理人さんに挨拶して、星尾峠への道に進む。落ち葉の散り敷いた広い道を緩く登るにつれて、霧の中に入って行く。肌寒い天気だ。こういう晩秋らしい雰囲気も落ち着いていて好きではあるが、稜線からの眺めも欲しい。時間をかけて、ゆっくり登る。
大した登りもなく、星尾峠に到着。霧に包まれて湿った落ち葉の感触が柔らかい。クッキーを食べて暫く休憩し、兜岩山への稜線の道に入る。
最初は小さなアップダウンの続く尾根道だが、荒船不動尊からの近道を合わせて注連縄をくぐると、御岳への急な登りとなる。しかし、この急登も短い。登りきって右に折れると、ちょっとユーモラスな表情をした石像二基のある小さなピークがあり、その先に樹林に囲まれた御岳の山頂があった。
山頂には御神体の銅像があり、その前には由来の説明が掲げられていた。それによると、昔、木曽の御嶽神社まで行く代わりにこの山頂に来て木曽に向かって手を合わせたら、いつの間にか御神体の分身が立っていたそうな。私も木曽の御嶽山にはまだ登ったことがないので、いつか登る機会が来ますように、と手を合わせる。
主稜線上の道に戻り、先に進むと一旦大きく下る。このあたりから嬉しいことに稜線上の霧が晴れて、行く手には木の間越しに孫ローソク、子ローソク、ローソク岩の三つの岩峰が重なるように見える。一番手前の孫ローソクの基部を右に巻き、子ローソクとの鞍部に上がると、反対側はオーバーハングした断崖絶壁だ。眼下には色付いた樹林が広がり、その向こうには去年の秋に登った立岩が見えた。
鞍部から孫ローソクの頂上へは簡単に上がれる。頂上からは展望が良く、行く手には子ローソク、ローソク岩の岩峰、その右手には兜岩山が見える。兜岩山と御岳の間の谷の紅葉がきれいだ。また、振り返ると御岳の紅葉もなかなか。その向こうには行塚山がひと際高く丸いピークを覗かせていた。
孫ローソクを降り、岩尾根を慎重に登って、子ローソクとローソク岩を右から巻く。ここでは急峻なルンゼ状のところを何カ所か横断する。ネットでの記録によると春先には残雪が残っている所で、凍結していると通過が困難とのこと。確かにここが凍っていたら、アイゼン、ピッケルくらいではちょっとイヤそう。もちろん、今の時期は何の問題もなく、紅葉を愛でながらの良い道だ。
少し登り返すと、田口峠と兜岩山との分岐に到着。兜岩山への枝尾根の道に入るとササが出ているが、藪というほどのことはない。今日はまだ誰にも会っていないけれど、訪れる人が結構いるのだろう。辿り着いた兜岩山の山頂は樹林に囲まれて、展望なし。落ち葉が敷き詰められた小平地の真ん中に三角点の標石がぽつんとあって、山名板の類いもなし。静かすぎる山頂だ。
西に少し行くと見晴らしの良い岩場があるそうなので、行ってみる。眼下の斜面の紅葉と田口峠から佐久方面にかけての眺めが得られた。しかし、遠くの方はまだ霧の中。腰を落ち着けるにはちょっと狭い場所なので、三角点に戻って昼食にする。まずはビールを開けるが、今日はちょっと寒くて無理に飲んだ感じだった。2005年の缶ビール@頂上は、今日が飲み納めかも知れないなぁ。
ベヤングソース焼きソバとカップスープの昼食を済ませ、デザートに林檎を剝いていると、単独の男性が頂上に到着。岩場の展望のことを話すと見に行った。しばらく戻って来なかったので、ゆっくり展望を楽しんでいるのだろう。後片付けをして、静かな山頂を後にする。
往路を戻る途中で、ローソク岩の基部を巻く熟達者ルートに入ってみる。しかし、ローソク岩を根元から見上げる地点からのトラバースを危険に感じたので、戻って往路と同じ巻き道を歩く。
この頃になると、ハイカーがぽつぽつ登って来る。孫ローソクの頂上で休憩中の人もいた。御岳を越えて、荒船不動尊への近道を下る。この道もカラマツ林を通ったり、小沢を横切ったり、結構変化があって楽しい。最後は駐車場のすぐ上に出る。車の数は4台になっていた。
帰りは初谷(しょや)♨に立ち寄る。ここは山間の一軒宿の鉱泉で、建物や設備が新しく立派だ。風呂は内湯だが、広い窓から渓流の眺めが良く、露天風呂の雰囲気でgood。源泉(14.3℃)は宿の裏手にあり、宝明水と名付けられて飲用することができる。左下の写真の金属の蓋の下にぷつぷつと透明な水が湧いている。柄杓でコップに注いで飲んでみると…なんと、微炭酸入り鉄錆の味!こんな水が自然に湧いているなんて、びっくりである。おすすめ。
温泉の後、内山大橋の上からくっきり見える兜岩山をデジカメに収めて帰桐した。