矢岳

天気:
メンバー:T
行程:清雲寺 8:20 …クタシノクビレ 9:50 …篠戸山(1040m) 10:35 …矢岳(1358m) 11:50〜12:50 …川浦林道への下降点 13:15〜13:40 … 川浦林道 14:25 …営林署事業所小屋 15:20 …国道140号 16:40 …清雲寺 17:05

4時に車で桐生を発つ予定だったが、少々寝坊して6時頃出発。昨晩の雷雲は高い山々に雪を降らせたようで、浅間山が初冠雪している。伊勢崎、児玉、皆野を経由して秩父に向かうと、武甲山から今日登る矢岳、そして熊倉山、和名倉山にかけての山々がすっきりとした青空の下に連なっている。

秩父市街を抜け、R140を武州中川駅の手前で左折。駐車スペースを探して、周辺の狭い路地を行ったり来たりし、結局、清雲寺前の駐車場に車を置かせてもらう(有料駐車場だが、軽と普通乗用車は無料)。今日はスタートが少し遅くなった。準備を整えて、さぁ出発。

今回登るルートはマイナーな矢岳の、さらにあまり登りには使われない旧荒川村・秩父市境尾根で、登山口に道標の類いがなく、取り付きでまずちょっと迷う。清雲寺から西へ車道を辿り、千手観音堂のすぐ手前で左折し(正解はもう一本手前の消防署のある四つ角を左折)、突き当たりを左に進んで本来のルートである車道に出る。杉林の中をジグザグに登ると若御子山遊歩道の案内図があり、山道が左に分岐している。ここが本来の登山口だが、付近の偵察のため、車道をもう少し進んだ漆平の集落から左折して(若御子山遊歩道の看板あり)、さきほどの山道に合流する。このあたりに駐車スペースはなかったので、清雲寺に車を置いて正解だったようだ。

清雲寺前の駐車場
右後方の山は若御子山?
千手観音堂

杉林の中を登ると、すぐに「若御子山遊歩道を経て浦山ダムへ」という看板のある分岐となり、矢岳へは右の道をとる(左下の写真)。暗い杉林の道が続き、沢を渡り、2.5万図の584m標高点付近を通って尾根上をジグザグに登る。男女3人パーティが休憩中のところに追いつくと、そこが大反山と矢岳の分岐だった。話を聞くと、矢岳→酉谷避難小屋(泊)→熊倉山という周回コースを歩くそうだ。それも面白そうだなぁ。先に行かせてもらって、右の矢岳への道に進む。以降は全く登山者に会わなかった。

山腹をトラバースして大反山を巻くと、クタシノクビレに出た。送電線巡視路の標識の他はなにもない鞍部だ。ここからは尾根上の道である。少し登ると大きな送電鉄塔に出て、振り返ると杉林に覆われた大反山の山頂が見えた。

若御子山遊歩道と矢岳への
登山道(直進)の分岐
送電鉄塔から大反山を振り返る

送電鉄塔から先は、登山道というよりも歩き易いところに僅かに踏み跡がある感じの道となる。藪は全くなく、尾根を辿れば迷うようなところはない。フナイド尾根のピークへは急登だ。登り着いたところは雑木と杉に囲まれて展望なし。ちょっと味気ない。さらに少し登ると1040mのピークだ。ここも同じような雰囲気。「篠戸山」と書かれた紙片が立ち木にビニールテープで貼付けてあった。

篠戸山から少し下ったところで、前方に奇麗な三角形の山容の矢岳が見えた。さらにちょっと先では、安谷川(あんやがわ)の深い谷を隔てて、熊倉山が見えた。今日の稜線からの展望はこれでおしまい。あとは杉林と雑木林の混交した里山の雰囲気の尾根をひたすら登る。

篠戸山山頂(1040mピーク)
篠戸山の少し先から矢岳が見えた

最後はかなりの急登となり、矢岳の頂上に到着する。頂上も杉林と雑木林に囲まれて、全く展望はない。矢岳から西へ下る道の入口には、この下山道は不明瞭で岩場や崖もありザイルがないと危険、と書いた埼玉県警察山岳救助隊が掲げた警告板がある。しかし、道自体はもう誰も通っていないのか、影も形もわからなかった。

ちなみに2.5万図に記載されている矢岳の正式な標高は1357.9m。故に矢岳は秩父の奇数峰と呼ばれている。ただし、この名が普及しているかどうかは知らない。奇数峰って何?と思った人は(私も最初、奇峰の間違いかと思った)、ネットで検索してみて下さい(2012-03-30追記:ネット上の情報源は削除されたが、2002年頃に秩父鉄道主催で「奇数峰矢岳へ」と銘打ったハイキングが企画されたそうである)

今日はじっとしていると寒いくらいの天気だが、まずは缶ビールをあけ、防寒具を着込んでベヤングソース焼きソバの昼食にする。デザートの柿をむいたりしているうちに、いつの間にか1時間が経過していた。

さて、下山のコースはどうしようか。当初は往路を戻るつもりだったが、あまりに展望がないし、頂上直下の急坂もあんまり下りたくない。ということで、南に尾根を少し進んだ所から川浦林道に下り、あとは車道を辿って清雲寺まで歩いて戻ることにする。車道からならば、もう少し眺めがあるだろう…。

矢岳の山頂から南へ、長沢背稜に繫がる尾根を行く。とたんにスズタケの藪が出て来て、秩父多摩の山らしくなる。20分ちょっと歩くと、「←矢岳」と書いた半分消えかかった道標が現れる。その下には別の古い道標が地面に転がっていて、次のように書いてあった。

牛首峠 ー 割谷ノ頭 ー トリ谷小屋方面
注意路なし(小屋まで約5ジカン

…(@_@;)。今日、酉谷避難小屋に泊まると言っていたパーティは大丈夫だろうか(山と高原地図では3時間となっているが、それでも結構大変…)

しかし、この道標に気を取られていた訳ではないが、ここではもっと周囲を注意深く見ておくべきだったのだ。実は、ここが川浦林道への分岐だったのだが、道にスズタケがかぶさっていて気づかず、先に進んでしまう。

次の小ピークに登ると、そこで「赤岩頂 1448」と書かれた消えかかったプレートを見つける。あれっ、分岐はこれの手前ではなかったっけ、と気が付いて引き返す。先般の道標まで戻ると、さっきは見落としていた、木に打ち付けられた小さなプレートが西へ下る微かな踏み跡の方を指しているではありませんか。


荒川村方面、林道がすごくくずれている為危険!(二か所)2002.4.14現在

うはー、やられた。久しぶりにこういう失敗をした。25分程時間をロス。林道がくずれているというのは昔のことなので大丈夫でしょう。ということで下り始める。

矢岳山頂
川浦林道への分岐点

スズタケがかぶってはいるが、道ははっきりしていて、急な斜面を電光形に下る。苔むした転石の斜面を下ると水流が現れ、後は沢沿いに下って行く。川浦林道に出ると、真新しい道標があった。

あとは林道をぽくぽく歩くだけである。矢岳〜酉谷山〜熊倉山に囲まれたこの谷間は峻険で、高いところには紅葉も見られ、なかなかの景観。途中、矢岳に直登するルートの入口があるはずだが、それらしい地点にはさっきと同じタイプの新しい道標があり、林道の方向を矢岳登山口と指示していた。

川浦林道に出た地点にある
真新しい道標
川浦林道から矢岳を仰ぐ

安谷川本流(川浦谷渓谷)に架かる橋を渡ってしばらくで、営林署事業所小屋を通る。山小屋風の建物で、矢岳の眺めも良い。ここから舗装道となる。車止めを過ぎ(駐車スペースなし)、岩壁を削った道(大きな岩が路面に落ちていた。車の通行不可)と素堀りのトンネルをとおって延々歩く。しかし、眺めは良いので、林道歩きも今日はあまり苦にならない。麓の集落から振り返ると、三角形の山容の矢岳がひときわ高く聳えていた。

営林署事業所小屋
R140の安谷川の橋から見た矢岳
手前の鉄橋は秩父鉄道

一旦、R140にでて、車を置いた清雲寺に向かう。着いた頃には日は暮れようとして、青空に浮かぶ雲が茜色に染まっていた。帰りは武甲に立ち寄り、夕暮れに冷えた体を温めて帰桐した。

注:「川浦林道」は別に正式名称がありそうですが、ここではこう呼ばさせて頂きました。2019-05-13追記:「川浦林道」は上部が秩父林道、下部が秩父併用林道と称するそうです。