白峰三山
昨年の秋に塩見岳に登ったときに眺めた間ノ岳のでかい山容に惹かれて登って来ました。
間ノ岳に登るとなると、普通は広河原から北岳に登って縦走ということになりますが、広河原〜北岳は歩いたことがあるので、今回は奈良田から入って池山吊尾根を登り、白峰三山を縦走して奈良田に戻るコースをとりました。
横浜の実家から車で中央道甲府南ICを経て、早川へ。早川流域の山々、特に笊ヶ岳は高く急峻だ。いつか登りたいなぁ、と眺めつつ奈良田に向かう。
県道37号南アルプス公園線は、奈良田〜広河原間の通行が時間によって制限され、途中に駐車することも不可である(制限時間内に通過しなければならない)。
奈良田温泉の数100m先、丸山林道との合流点手前にゲートがあり、監視員が常駐している。どこに駐車できるかを尋ねると、ここには長時間駐車できないので、温泉の駐車場に停めて下さい、とのことなので、奈良田の里温泉の駐車場に車を置く。ちょうどWCやベンチ、水場もあり、朝食にレトルト赤飯と味噌汁を食べて出発。
吊尾根登山口へは早川の豪壮な流れや、いくつもある支流の滝を見物し、たくさんのトンネルを抜けて県道を延々と歩く。鷲ノ住山の絶壁を見ると発電所がある荒川の出合。長い吊尾根隧道を通り、次の赤垂隧道を出ると歩き沢橋で、その手前が吊尾根登山口だ。
登山口には、いにしえのバス停「深沢入口」が残っていた。かすれた時刻表の文字を読むと、かつては1日に往復2便あったようだ。登山口の手前に水が流れている所があるので、ここで昼食に棒ラーメンを食べ、2リットルポリタンを水で満タンにして出発。
登り始めは枯れたスズタケが藪っぽく、あんまり良い雰囲気ではないが、次第にブナとシダの鬱蒼としたいい感じの森林の道となる。それにしてもすごい急登。転落注意。対岸の南アルプス林道の高さまであっという間に上がる。
樹林にツガが増えるとようやく傾斜が緩くなり、展望のない池山の三角点を越えて御池へ。乾燥化した御池の湿原の向こうに、木々に囲まれて池山小屋がある。
小屋の外観は痛んだところもあるが、中は割と綺麗だ。誰もいないだろうと思っていた小屋になぜか背負子や荷物があり、人影はなし。水汲みかな(水場は往復1時間)。しかし、夕食のレトルトのビーフストロガノフを食べ終わっても、戻ってこない。
夕方、暗くなりかけた頃、ようやく2人組で戻ってきた。話をすると、北岳山荘のスタッフの方で、チェンソーを持って上がり、この先の登山道の倒木を処理していたとのこと。本当にお疲れ様ですm(_ _)m。一人の方は、明日、大樺沢から山荘に上がるとのこと。明日は山荘にお世話になりますので宜しく。
2人が下山するのと入れ替わりに、今度は単独行のお兄さんが小屋に到着。話を聞くと、以前に吊尾根を登ろうとして道に迷って敗退したので、再挑戦とのこと。
夜になると、ちょっと冷えてくる。この小屋は中で焚き火が出来る造りになっていて、枯れ木も豊富なので、焚き火をして暖をとる。夜は長く、シグボトルに満タンにしてきたウィスキーが半分ほど空いた。
朝食を食べて出発。いきなり笹藪で道が分かりにくいが、すぐに樹林の中のはっきりした道となる。少し急な登りがあり、登り着いた城峰の小ピークで一休み。木の間から鳳凰三山が見える。
ここで道は左に折れ、わずかに下ったタル沢のコルから再び急な登りとなる。木の間越しだが、間ノ岳も見えてくる。森林限界を抜けると這松と砂礫の尾根となり、展望が開ける。森林限界直下のダケカンバの黄葉がきれいだ。
最後の一歩でボーコン沢の頭の頂上に出ると、それまで隠れていた北岳が目の前にいきなり出現。でかい。でかさにびっくり。頂上はだだっ広く、方向を指示するケルンがある。360度の展望だ。大樺沢を見下ろすと、はるか下に白根御池小屋があり、テントや登山者が見える。こちらは既に高いところにいるので、いい気分だ(^_^)。
気持ちが良い場所なので、ここで昼食をとって1時間以上のんびりする。着いたときは晴れていたのだが、そのうちにガスが出てきて北岳を隠してしまった。早く到着して良かった。
ここからは吊尾根という名のとおりの緩い尾根だ。とは言っても意外と上下がある。八本歯の頭に着くと、大樺沢から八本歯のコルへ登山者が行列を作って登っているのが見える。コルでは大勢の人が休憩中だ。
コルへの下りは岩稜でスリルがある。コルでは奇遇にも昨日の北岳山荘の人と再会し、言葉を交わす。それから北岳の山頂を踏むが、展望は全くなかった。
北岳山荘は定員の5割増の登山者で混雑した。やはり3連休だからねー。私はシュラフ持参なので、大部屋の一角の寝具なしスペースを割り当てられる。自炊部屋で夕食を食べ、部屋に戻ってウィスキーを空ける。食堂はそんなに広くないので、3交代で食事をしていたようだ。8時消灯。鼾に悩まされつつ就寝。
今日は朝から雨混じりの強風。ゴアを着て出発する。何も見えない稜線を辿り、間ノ岳の頂上を踏む。天気が良ければなー。うらめしい。
強風に吹かれ続けて寒気を感じてきたので、農鳥小屋で軒先借りて長袖シャツをもう一枚着込む。靴の中も微妙に濡れて来て気持ち悪い。これからさらに農鳥岳を越えなければならない。
他の登山者総勢約10人程と相前後して農鳥岳を目指す。途中の西農鳥岳は良く判らず通過。農鳥岳は岩が積み重なった頂上で、晴ていれば気分良さそうな所なのだが…。でも、ここまで来れば「ヤマ」は越えた。
頂上から岩がゴロゴロした緩い尾根を下り、鐘のある大門沢下降点で主稜線から離れ、深い樹林をジグザグに急降下する。風が収まって来たので、途中の小平地で遅い昼食とする。
さらに下ると樹林を抜け、両側に沢が流れる小尾根を辿る。正面に櫛形山の眺めが良い。青空も出てきた。
大門沢小屋に到着すると、なかなかレトロで良さげな山小屋。ちょっと泊りたくなったが、まだ十分時間が早いので、無謀にも頂上で飲もうと思って北岳山荘で仕入れていたビールをここで飲んで休憩した後、奈良田に向かう。
長い下りだが、歩きやすい道だ。八丁坂というつづれ折れの急坂を過ぎると、発電所取水口と吊橋が出現。この吊橋は高い・長い・細いで、見たとき思わず出た言葉が「まじかよ」。さらに吊橋が続き、最後は砂防ダムの工事現場の上を渡る長〜い吊橋。
吊橋を渡りきって車道に出たときは、無事に下山したなー、とほっとする。頂上では眺めが全くなく、通りすぎただけで登った実感がいまいちだったが、ようやく長いコースを歩き通した達成感が出てきた。
あとは車道を歩いて奈良田に置いた車まで戻るだけだ。奈良田の里♨(500円)に入る。入浴客でちょっと混んでいたが、ぬるぬるの泉質で温泉らしくて良い。汗を流してサッパリした後、雁坂トンネル経由で桐生に帰った。