旭岳
今回登った旭岳は、那須連峰・三本槍岳から甲子温泉への縦走路の途中にある標高1835mの鋭峰。縦走路は東側山腹を巻き、地形図やガイドブックには頂上への登山道は記載されていない。しかし、ネットで調べてみると、稜線上に山頂に至るルートがあるとのこと。「福島の山々」の甲子山・旭岳の記事を参考にさせて頂いて、登って来ました。
桐生を車で5時発。東北道を白河ICで降り、R289で阿武隈川上流の甲子温泉を目指す。途中の新甲子温泉付近は緑豊かな高原リゾート地で、ドライブ目的に来ても気持ち良さそうな所。新甲子温泉を過ぎると渓谷は深く険しくなり、行く手には旭岳が▲な山容を見せて高い。
R289は新甲子温泉から新しくて道幅の広いトンネル区間となり、甲子温泉まで通じているのだが、現在は災害のため通行止め。狭い旧道を行く。災害復旧と、甲子峠を会津へ抜ける新トンネル(甲子トンネル)の工事でトラックの行き来が多い。
車道の終点が甲子温泉で、一軒宿の大黒屋がある。現在のR289は、ここから甲子峠を越える登山道となる。今日の計画は、このR289を経て旭岳に登ろうというもの。宿の前を通り、水量がとても多い阿武隈川本流を細いコンクリート橋で渡る。橋の手前と、橋を渡って少し登った所の二か所に、その筋には有名?な国道標識がある。なんでこんな山道に国道標識が設置されたか(全国でここだけらしい)は、「KOKUDOU.COM」のKokudou Quest '99No.84に紹介されているので、興味ある方は訪問して見て下さい。
(2017-10-15追記:2008年に甲子道路が開通し、R289の登山道区間は解消された。)
登山道は甲子トンネルの工事現場を左手の木の間越しに見ながら、ブナ林をジグザグに登っていく。トンネルの発破のカウントダウンが聞こえてくる。10、9、8、…。ドン、バリバリという大きな音が響き、靴の裏にビリビリと振動が伝わる。しばらくして、花火の臭いが漂ってきた。こんなに間近で発破に遭遇したのは初めて。
そのあとしばらくは工事の音が聞こえてくるが、ジグザグを登りきって、尾根が平らになり猿ヶ鼻と呼ばれる地点に到着すると、すっかり静かな山中の道となる。樹林に囲まれて展望は少ないが、緩い尾根の登りで、こういう国道歩きならば気持ちが良い。
甲子峠へ向うR289を右に分け、少しの急な登りで甲子山の頂上へ。ここで展望が開けて、これから登る旭岳が行く手に聳える。稜線上には頂上への道も見えるので、良く偵察しておく。このあたりの稜線は風の通り道になっているようで、灌木帯になっている。今も風が涼しい。
甲子山から少し下って、樹林の中の鞍部で坊主沼への新道を左に分ける。新道へは赤ペンキやテープの案内がたくさんあるが、旭岳へは尾根伝いの旧道にまっすぐ入る。ここから頂上までは一般登山道ではないので注意。
少し行くと、水吞場の標識があり、右に水場への道を分ける。雨水で少々掘れ気味の急な尾根道を上がると、旧道は尾根を左へはずれて坊主沼へ向う。旭岳へは右へ、あくまで稜線伝い。この分岐では旭岳への道の入り口はトラロープで塞がれているが、これをくぐって入るべし。
尾根をなお登っていくと、右の沢へ明瞭な踏み跡があるので引き込まれないように注意。ここは、左の稜線上の道を行く。アザミとササの藪の中のすごい急登となり、一部は完全にトラロープ頼りで登る。下りがいやん、な感じ。左斜面を見下ろすと、急な草付の斜面の下、深い樹林の中に坊主沼が見える。あまりの急登に少々ばてて頂上に到着。
シャクナゲに囲まれた頂上からの展望は抜群。南には三本槍岳、朝日岳、大倉山。北には大白森山、小白森山、二岐山が見える。頂上には山名標識があるので、結構登る人がいるようだが、今日は私だけだ。会津側から吹き付ける風が少し寒いくらいで気持ち良い。下り道が急なのでちと怖いが、急登の末に辿り着いた、こんなに眺めの良い頂上でビールを飲まない訳には行かないでしょう。飲んだ後は(アルコールを飛ばすために)ラーメンの昼食をゆっくり済ませて休憩し、もと来た道を下る。
急な下りもビールのおかげで大胆快調に下る。旧道を辿って坊主沼に寄ってみた。旧道は旭岳の東斜面をトラバースして行く。道型ははっきりしているが、ササ藪が深い。刈り払いされていないようだ。
新道と合流してすぐに坊主沼に到着。幽玄な感じの沼だ。沼のほとりには鐘と避難小屋がある。ポツリポツリと小雨が降り出し、坊主沼の水面に雨粒の波紋が広がり始めたので、小屋の中に入って一休みさせて貰う。中は綺麗にしていた。入り口に掲げられたプレートによると、1955年5月の白河高校山岳部の遭難を期に建設されたとのこと。
久しぶりに雨具をつけ、避難小屋を出て新道を甲子山へ戻る。坊主沼からすぐに旧道と新道の分岐だが、三本槍岳から縦走して来た場合、うっかり左の旧道に引き込まれそうだ。新道は右の窪地沿いの道である。新道はブナ林の中をほぼ水平に巻いていくので旧道よりはずっと楽なのだが、それでも小さな沢をいくつも渡ったりして、以外と登り降りが多い。旭岳への分岐に戻る頃には雨も上がったので雨具を脱ぎ、後は往路を大黒屋へ。
早速、大黒屋の♨で一汗流す(630円)。フロントで受付をした後、トンネルを抜けて橋を渡り、川向うの大岩風呂に入る。ここは泳げるほど深く広い湯船でゆーったり。秘境の湯に相応しい、訪れる価値ありの温泉でした。