奈良部山

天気:
行程:駐車地 7:40 …723m標高点 9:40 …第3の岩場 10:25〜11:10 …奈良部山 11:45〜12:20 …岩場 13:20〜13:35 …送電鉄塔 14:15 …駐車地 14:55
ルート地図 GPSのログを地理院地図に重ねて表示します。

ハイトスさんから、奈良部山の南南東尾根を歩きませんか、というお誘いを頂いた。彦間川上流の黒沢から南南東尾根を経由して奈良部山に登り、頂上からは南南西尾根を下って周回するという計画だ。ハイトスさんは、以前、奈良部山から南南東尾根を下ろうとして、途中の岩場が通過できず引き返したことがあり、今回はそのリベンジを期しているとのこと。ネット上には、オッサンの山旅など、少数だが同コースを歩いた記録があり、件の岩場の通過は可能なようだ。私も以前から興味を持っていたコースなので、参加させて頂くことにした。桐生みどりさんも加わり、3人パーティで出かけて来ました。

桐生市街の某所に集合し、ハイトス号に乗り合わせて登山口の黒沢東川・西川の二俣に向かう。二俣には既に県外ナンバーの車が2台あり、猟銃を抱えたハンターさんが2人いた。彼らはど派手な蛍光オレンジのベストを着ていて、非常に目立つ。片や我々の服装は、紺、薄茶に濃緑と、全く目立たない。銃猟解禁中の山域に入山する際は、蛍光色のジャケットとかが欲しいかも。ハンターさんとお互いの行動予定を交換したのち、出発する。

車両立ち入り禁止の立て看板を横目に見て、黒沢東川沿いの林道を歩き始める。まだ早朝で谷底まで陽が差し込まず、杉林の中の林道は薄ら寒い。20分程歩くとススキ原が一面に広がる伐採地に出て、奥に奈良部山の南南西尾根が眺められる。右に分岐する作業道に入る。入口にはカラーコーンが並べられ、土砂崩れ通行止の掲示があるが、問題ないだろう。行く手には送電鉄塔が見える。送電線の下には多分、巡視路があるので、それを利用して南南東尾根に上がろうという算段だ。


黒沢東川・西川の二俣から出発


送電鉄塔を見上げて登る

作業道は支尾根を回り込み、新しい堰堤が連続する荒れた谷に沿って登っている。堰堤の銘板を見ると「平成20年度復旧治山事業 東川水ノ木 No.〜 谷止工」とある。谷は徐々に傾斜を増し、最後は急傾斜の伐採地となって主稜線に突き上げている。まるで擂り鉢の底にいるようだ。周囲の山肌はあちこちで土砂が崩壊し、この谷の直登は出来れば避けたい。


東川水ノ木の作業道を登る


堰堤から主稜線を見上げる

堰堤に突き当たって左折した作業道は、山腹をトラバースして植林帯の中で終点となる。巡視路の入口は見落としたようだ。ファイト一発、藪っぽい植林帯を突っ切り、杉林に覆われた支尾根に取り付く。急登となるが、藪はないので歩き易い。ひと汗かいて、送電鉄塔に登り着く。鉄塔の周囲の樹木は切り開かれて、飛駒方面の眺めが良い。飛駒三山の一座の「のこぎり山」も見え、頂上稜線のギザギザが目を惹く。


支尾根に取り付く


新栃木線170号鉄塔から
のこぎり山と飛駒方面を望む

ここからは尾根上に立派な巡視路が続いている。巡視路の標識があり、下から登って来る巡視路もある。巡視路の入口はどこだったんだろう。尾根を登ると、杉林から雑木林に変わって、南南東尾根の主稜線に登り着く。展望が開けて、冠雪した富士山を遠望する。眺めが良い分、風当たりも強くて寒い。周囲には安蘇山塊の山並みが延々と広がるが、その中でも岳ノ山と大鳥屋山のピークが顕著だ。この二山は未踏なので登りたいな。


送電線巡視路を辿る


南南東尾根に登り上げ
岳ノ山と大鳥屋山を望む


明るく開けた尾根を登る


新栃木線171号鉄塔

尾根を登ると2本目の送電鉄塔があり、巡視路はここから東側に下っている。奈良部山へはさらに尾根を進む。疎らな雑木林に覆われ、藪も薄くて歩き易い。小さなピークを越えると、行く手に奈良部山が意外と遠くに望まれる。奈良部山は丸岩岳からの往復で登られることが多く、丸岩岳の衛星峰と思われがちだが、こちらから登ると独立したちょっと大きな山で、登り応えがある。


行く手に奈良部山を望む


尾根上には雪が薄く積もる

尾根上には雪が薄らと積もっている。もうスパッツが必要な季節だ。鞍部に大きく下って登り返すと痩せた尾根となり、天然の檜が生えている。尾根の右側は岩場を交えた急斜面となって、山深さを感じさせる。723m標高点は檜に囲まれて、展望はない。


痩せ尾根を行く


723m標高点

痩せた尾根を進むと、第1の岩場が現われる。岩場の先端は崖で、降りられそうにない。ルートを探してうろうろし、少し戻った所から右の窪みを下る。ここも雪が積もってスリップ注意。前を下るハイトスさんが立ち木を摑んだところ、朽ちていて何の抵抗もなくポッキリと折れ、バランスを崩したハイトスさんはもんどりうって倒れてしまった。幸い無事だったが、太い幹でもあっさり折れるので要注意。この岩場はまだ初級だそうで、この先に難度が高い第2、第3の岩場があるという。最初から手こずり、先行きが不安だ。


第1の岩場
通過後、振り返って見たところ


「井上」と書かれた岩

第1の岩場の下には「井上」と落書きされた露岩がある。第2の岩場は登りとなる。立ち木が多く、傾斜も崖という程ではないので直登できそうな感じだが、イザ取り付いてみると難しい。桐生みどりさんはそのまま登っていったが、ハイトスさんと私は左斜面から巻く。微かな踏み跡があるが、多分けもの道だ。急斜面を這い上がって、稜線に復帰する。


第2の岩場は左から巻く


尾根上から奈良部山を見上げる

黒木に覆われた尾根を小さく上下して進むと、問題の第3の岩場の上に出る。先端はすっぱりと切れ落ちて、降りるのは無理だ。左斜面には黄色テープが巻かれた立ち木があり、何かの目印かも知れないと思ってルートを探す。しかし、その下はかなりの傾斜で、降りた先がどうなっているか見えない。一方、右斜面は何とか下れそうだ。雪で滑り易いので、ハイトスさんにザイルを出して貰って、桐生みどりさんを先頭に一歩一歩慎重に下る。


第3の岩場の上
左の斜面を偵察


右の斜面を下る
(撮影:ハイトスさん)

下ったところは、小尾根の鞍部で、ここからさらに檜林の急斜面を下る。下は高さ30mくらい切れ落ちて、肝が冷える。ザイルで降りるのは良いが、行き詰まると大ピンチだ。狭いバンドがあり、そこからさらにトラバースする。ザイルを張って、慎重に進み、なんとかこの難所を通過して、岩場の下に出た。やれやれ、ひと安心。オッサン一行はここをノーザイルで通っているが、実地を歩くと、良くぞ通過できたものと思う。凄過ぎ(^^;)。


断崖絶壁のトラバース
(撮影:ハイトスさん)


第3の岩場
通過後、振り返って見たところ

岩場を通過後に振り返って観察すると、斜め右上に向かう広いバンドがある。これを登ってみると、1mくらいの岩場の段差に突き当たるが、容易に越えられそうだ。また、その先は急斜面だが、岩場の上で見た黄色テープまで登れそうだ。あのテープは、やはり先達が目印につけたのだろう。しかし、上から見たときは、ここがルートとは判らなかった。結局、この岩場の通過に30分もかかってしまった。やはり、ここは上級の難所でしょう。

この先は明るい雑木林の尾根で、急登だが頂上まで難所はない。頂上直下で、先月歩いた小戸川からの尾根(山行記録)を合わせる。雪の上には多数の足跡があり、小戸川から団体さんが登って来たようだ。僅かな登りで、奈良部山の頂上に着く。団体さんは既に丸岩岳に向かったようで、頂上は無人だ。前回は紅葉が見頃の時期だったが、今はもうすっかり冬枯れ。風が強いので、頂上から少し下った日溜まりで風を避けて昼食とする。


奈良部山への登り
(撮影:ハイトスさん)


奈良部山頂上

昼食後、南南西尾根を下る。疎らな雑木林に覆われた明るい尾根だ。藪もほとんどなく、快適に下る。左手には、苦労して通過した南南東尾根の難所が眺められる。黒木に覆われた稜線のところどころにV字の切れ込みがあり、なかなか険しい様相を呈している。一方、右手は樹林に覆われて展望に恵まれないが、木の間から黒沢西川の深い谷を隔てて野峰を望むことができる。このあたり、標高の割には険しい。


奈良部山から南南西尾根を下る


南南東尾根の第1〜3の岩場を望む


黒川西沢の深い谷を隔てて
野峰を望む


明るく快適な尾根を下る

小さな瘤を越えると、脆い岩場の上に出る。ここは右の斜面を下って岩場を大きく迂回し、岩場の基部を這い上がって稜線に戻る。私はショートカットして岩場を降りようとしたが、降りられなくなった(^^;)。下にいたハイトスさんからザイルを受け取り、ザイルに摑まって降りた。ちょっとした岩場でも、素で下るのは難しい。


岩場に差し掛かる
(撮影:ハイトスさん)


岩場を右から巻いて通過後
振り返って見上げる

岩場を過ぎれば、あとは広く緩い尾根をのんびり下る。右手の野峰に続く尾根には、黒木の鋭峰が望まれる。先日、やまの町桐生関係者が登った鍋岩山神のピークだ。如何にも神さびた雰囲気の峰で、興味を惹かれる。


鍋岩山神(中央の鋭峰)を望む


新栃木線169号鉄塔

杉林に覆われた尾根を緩く下ると、送電鉄塔に出た。尾根はまだ東川・西川の間を二俣まで続いているが、この先に面白いところはないだろう。送電線巡視路を右の西川側に下る。ところどころにプラ板の階段が設置された良い道で、すぐに西川沿いの林道に出た。あとは林道を辿るのみ。まだ15時前だが、もう薄暗くなって底冷えのする林道を歩いて、駐車地の二俣に戻った。


送電線巡視路を下る
(撮影:ハイトスさん)


黒沢西川の林道脇の石祠