南平山
この週末の天気は、土曜日に晴れるが師走らしい厳しい寒さになるとの予報。寒い時の山歩きは、下山後に温泉に入って温まるのが何よりの楽しみ。温泉と山の組み合わせをいくつか考えて、今回は川治温泉から登る南平山(なんだいらさん)に決定。栃木百名山の未登の一座でもある。
桐生を朝、車で出発。朝、行くの止めようかとちょっと思うくらい寒くてウダウダしたため、予定より出発が1時間遅れたが、今日の山歩きは行程が短くて余裕があるから大丈夫。桐生からR122、日光市街を経由して川治温泉に向かう。途中で見える赤城山は、上部が真っ白になっている。いつの間にか雪が降ったようだ。途中、鬼怒川温泉の背後に聳える高原山も上部が白くなっている。
川治湯元駅から日光市営の共同浴場「薬師の湯」へ降りて、薬師の湯のすぐ手前の川治テニス場の駐車場に車を置く。先行者のものらしき車が1台。天気は快晴。外に出ると寒いことは寒いが、風がないのは幸い。頭上高く野岩鉄道の橋が架かり、全山が冬枯れの樹林に覆われた南平山も仰ぐことができる。南平山の頂上付近には白い雪が薄らと見えている。今日は軽アイゼンやスパッツ等の雪山道具は持って来ていないが、大した積雪ではなさそうなので何とかなるだろう。動けばすぐに温まるから、ULDジャケットはザックにしまって、厚手の長袖シャツで歩き出す。
薬師の湯の手前から鬼怒川に架かる黄金(こがね)橋を渡り、龍王峡に至るハイキングコースに入る。橋名は南平山に伝わる黄金埋蔵伝説に因んでいる。橋上からは鬼怒川と男鹿川の合流点や、男鹿川を挟んで薬師の湯と温泉街が眺められる。薬師の湯の背後の山は浅間山といい、登山道があるそうな。小さいながらも岩山で、ちょっと興味を惹かれる。
橋を渡った先は鬼怒川右岸の段丘面上の平地で、あじさい園と称する園地となっている。疎な樹林に芝地が広がり、大岩やベンチが点在して、なかなか雰囲気が良い。
園地を通り抜け、左手に鬼怒川の小網ダム上流部の幅広い水面を眺めながら、落ち葉が深く積もったハイキングコースを辿る。野岩鉄道の高架橋の下を潜ると、程なく南平山登山口に着く。ここにはベンチや道標の他、日光市が設置した「南平山登山口案内」の看板がある。案内によると頂上まで約3km、登り2時間となっている。
登山道は薄暗い針葉樹林を抜けると冬枯れで明るい雑木林の斜面に入り、急斜面をトラバースして登る。幅狭い山道で、落ち葉に覆われているが道型ははっきりしている。なかなか野趣に富む楽しい道だ。高度が上がると、木立を透かして川治温泉駅付近の街並みが俯瞰できる。
急斜面をジグザグに登り、尾根の左斜面をトラバースする。行く手には木の間に南平山の頂上部を仰ぐ。程なく尾根上の平坦部に登り着く。尾根の反対側には、すぐ下に川治ダム・川俣温泉方面に向かう県道川俣温泉川治線が通じているのが見え、そちら側から上がって来る踏み跡もある。
尾根道をゆるゆると登り、送電鉄塔の脇を通過。頂上まで2.4kmの道標を見て、尾根の右斜面のトラバース道を進む。この辺りから、日陰に薄く積もったザラメ状の雪を見る。北側の斜面に入ると北風が吹き上がって来て、一段と寒い。
0.2km毎に旧藤原町が設置した道標があり、次は頂上まで2.2kmの道標を見る(後日調べると、藤原町は2006年に合併して、現在は日光市の一部)。どの道標も文字が掠れて、白字の距離と「砂金」と記した巾着の金色でペイントされたイラストだけがくっきりと読み取れる。
一面に落ち葉が積もった斜面に入り、大きくジグザグを切って登る。振り返ると木の間に川治温泉を見おろし、その背後には高々と聳え、冠雪した鶏頂山の頂を望む。登るにつれて雪が多くなる。傾斜が緩んで頂上まであと1500mの道標を見ると、一面の雪景色となる。雪は深くて数cmだから、スパッツがなくても今のところは無問題。雪面には先行者の足跡が一続き、くっきりと残っている。おかげで道を追うは楽だが、足跡がなくてもテープ類のマーキングがあり、迷う心配はなさそう。途中でその先行者さんが下って来るのとすれ違う。
急斜面をジグザグに登ると東屋に着く。傍らに石を積み上げた自然の物か人工物か不明な塚があり、これが黄金塚らしい。東屋を過ぎると頂上まで距離0.8kmの道標があり、頂上直下の最後の急坂の登りとなる。小さくジグザグを切って急登すると、南平山の頂上に登り着く。
頂上には旧藤原町が設置した「南平山の黄金埋蔵伝説」の説明板がある。曰く、源平の戦いに敗れた平家の大将が南平山のどこかに軍資金を埋め、その場所を表すカギとして「朝日さす夕陽輝くこのおかに漆千杯黄金千杯」という歌を残した、とのこと。三角点標石はそのすぐ先にある。
頂上は小広く、樹林に囲まれているが、この時期は冬枯れで明るい。木の間を透かして川治温泉を俯瞰し、高原山も見えて、意外と展望が得られる。木立には懐かしいN氏山名標識が架かる。設置されてから、多分20年くらいは経っているのでは。手彫りの白文字も流石に消えた箇所が目立つ。
頂上の一角に腰を下ろして昼食休憩とする。風がなく、ULDジャケットを着れば寒くない。前回に続いてコープで特売していたカップ麺で、「九州三宝堂 高菜博多ラーメン」を食べる。細麺と高菜がうまい。ハフハフとラーメンを食べていると、女性のソロハイカーさんが到着。食事を終え、のんびり休んだのち、下山にかかる。
頂上直下の急坂の雪道を滑らないように注意して下る。東屋は下りも通過。雪が消えると少し安心して歩けるが、まだまだ急斜面のジグザグの下りが続き、気が抜けない。眼下の川治温泉に向かってグングン高度を下げる。
頂上から1時間ちょいで登山口に下り着く。あとは鬼怒川沿いの遊歩道を戻り、温泉へゴーだ。
川治テニス場の駐車場に帰着。登山靴を履き替えて、僅かの距離の薬師の湯まで車で移動。こちらの駐車場も空いている(入浴客以外駐車禁止)。入浴料は日光市民外は700円也。内湯と露天風呂があるが、後者は12/1〜3/31は残念ながら休館。しかし、内湯だけでも十分に素晴らしい。洗い場と浴室が引き戸で仕切られいるのが珍しい。浴槽は広くないが、客もシーズンオフなのか少なくて、ゆったりのんびり浸かれる。
今日の山歩きは、行程は4時間ちょいと短めだったが、急斜面の登降があり、雪も踏めたし、冬枯れの樹林越しに意外と眺めも得られて、とても楽しめた。そして、山行で冷えた身体を温めるのは、やはり最高に気持ちが良い。極楽、極楽。ホカホカに暖まり、往路を戻って帰桐した。