安戸山
この週は仕事が集中し、なんとか終えたが、疲れた〜。週末は軽い山歩きでリフレッシュしようと考えて、男鹿山塊前衛の安戸山(やすとやま)に登ることにする。栃木百名山の一座。地形図を見ると山頂を囲んで林道が通じ、植林が進んだ低山かなと思って、これまであまり食指が動かなかった山だ。しかし、出かけてみると、頂上稜線は奥山の雰囲気があり、静かな山歩きが楽しめました。
桐生を車で出発。東北道を西那須野塩原ICで降り、R400を塩原温泉方面に向かう。この道は行楽シーズンの週末は非常に混雑するが、さすがに紅葉の時期も過ぎて、観光客の車は多くない。
塩原温泉郷の玄関口にある道の駅「湯の香しおばら」に着き、駐車場(200台)の一番隅っこに車を置く。駐車場から、目指す安戸山の頂が山並みの奥に見える。もっと寒いかと思っていたが、よく晴れて風がないので、結構暖かい。ULDジャケットや手袋は無しで、長袖山シャツで歩き出す。まずは蟇沼集落の登山口まで、山裾の車道を歩く。車の通りはごく少ない。那須野が原の樹林を切り拓いて畑地が点在し、長閑な農村風景が広がって、気持ち良く歩ける。
30分程歩いて蟇沼の集落に入り、「←安戸山」の道標のある十字路を左折。蟇沼公民館の前を通る。この辺りから、左手の山並みの間、谷間の奥に安戸山の鈍角三角形の山頂部が眺められる。公民館の先に立派な御影石製の「←安戸山」の道標があり、左折して路地を上がる。
集落を離れて杉植林の中の細い車道となり、石段道が分岐する。これはどっち?取り敢えず石段を上ると、すぐに車道に合流して、小さな神社が現れる。後日調べると、この神社はWikipediaの蟇沼の記事に温泉神社として記載されている。
ちなみに蟇沼のWikipediaの記事は非常に充実しており、山林の境界をめぐる争論や那須野が原を灌漑する用水路の開削の歴史について詳しく書かれており、興味深い。
神社の左脇の作業道を上ると、すぐに左に簡易水道の施設を見て、杉林中の細い山道に入る。谷間に入って右岸の山裾を進み、石組みの砂防堰堤の下で水の少ない渓流を跨いで左岸に渡る。
左岸の山腹を斜め右上に登ると「←安戸山へ」という道標がある。大きくジグザグを切りつつ、杉植林の山腹の高い所をトラバースして谷間の奥に入って行く。道型ははっきりしているが、枯れ杉の葉に覆われて、歩く人は多くない様子。日陰の道が続いて、歩いていても冷え込みを感じる。
小さな枝尾根を越える所に2本の杉の大木があり、その下に潰れた石祠がある。ガイド本に御神木と記されている杉の木で、その名に相応しい風格がある。
なおも山腹を斜めに登る道が続く。標高が高くなって植林の杉も小振りになり、木立の間から安戸山らしき山頂が垣間見える。ザレた斜面があり、少し下側を細い踏み跡で通過。程なく廃林道に登り着いて合流する。左手に安戸山の高みを望みながら、廃林道を辿る。道幅は広いが路面は荒れて、車が通らなくなってかなり久しい様子。
やがて、広く平坦な鞍部に出て、丈の低い笹原が現れる。少し先に「安戸山→」の道標があり、廃林道から右に分岐して笹原の中の踏み跡を辿る。この辺りから奥山の雰囲気が出てくる。
笹に覆われた緩斜面を斜上し、安戸山北面の急な斜面のトラバースに入る。道型は細く、足元は急斜面で切れ落ちて、なかなか高度感がある。木の間からの眺めになるが、安戸山から北西の弥太郎山方面へ緩く上下しながら延びる稜線が見えて、興味を惹かれる。
急斜面のトラバースを終えて稜線上に着き、左(南東)へ稜線を辿って安戸山に向かう。痩せ尾根を通過し、笹原の斜面を登ると、古いロープが張り流された急坂が現れる。ここはロープがなくても登れるレベル。再び笹原の道となり、ひと登りで安戸山の頂上に着く。
頂上はそんなに広くはないが小平地となっている。中央に三角点標石があり、一角の岳樺の幹に「Mt. Yasuto 安戸山 Elevation 1151.47m N36°58.688 E139°52.484」の文字が掠れた木製の山名標識が掲げられている。緯度、経度を度(degree)単位やDMS形式でなく、DM形式で書いてあるのが目新しい(後日調べると、航海や航空の分野では、国際的に標準で用いられているらしい)。
木立に囲まれて展望に乏しいが、木の間を透かして鴫内山、黒滝山辺りの茫洋とした尾根が見える。日差しがあり、ULDジャケットを着込めば寒くない。缶ビールを飲み、レトルト鯖味噌煮とコープで特売していたカップ麺「三宝だし本家 博多ごぼう天うどん」を食べる。これは出汁が美味いな。
のんびり昼食休憩をとったのち、頂上稜線を南東に下って道の駅に向かう。最初は笹に覆われ、少し急な尾根を下る。笹原の中の踏み跡は微かだが、樹林は疎で藪もなく、歩くのに支障はない。
1055m標高点峰へ少し登り返し、冬枯れの雑木林に覆われた稜線を辿ってピークを越える。再び丈の低い笹原が下生えの杉植林に入り、緩斜面を下ると林道に出る。この地点に道標はない。林道の路面にはキャタピラの跡が新しく、工事用車両の往来があるようだ。
ここから林道を左に辿り、U字ターンの箇所で左に安戸山北面の作業道を分ける。1055m標高点峰の南東面の山肌を、大きくカーブを描いて下る。杉植林の中の単調な下りが続き、些か退屈する。この辺りに、昭和天皇の安戸山登山を記念して建立された御野立所跡碑という石碑があるそうだが、それを知ったのは後日で、しかも林道から少し外れた所にあり、残念ながら見逃した。
林業作業現場(今日は休業)があり、道端に整然と積み上げられた丸太を横目に通過。左後ろへ分岐する林道に入る。この地点には送電線巡視路の「沼原線No.37 8」と記した標識がある。
分岐した林道を辿ると、程なく右に下る山道が分岐する。この地点には、山道の方向を指して「沼原線No.38」と記した標識がある。実はこの山道分岐を見落としてうっかり通り過ぎ、ヤマレコアプリにルート外れを警告されて気がつき、引き返した😅
この山道は、昔はよく歩かれていたようで、幅広く堀割り状となっている区間もある。冬枯れの雑木林の中、陽が差し込んで明るく、落ち葉をカサコソと踏んで気持ち良く下る。
左岸の山腹をトラバースする。右側の谷は小さいが、意外と深く険しい。薄暗い杉林の中に入って山麓に近づくと、他のいくつかの林道との合流点がある。下りで迷う個所はないが、登りの逆コースで迷いそうな分岐には、安戸山への登山道を示す古い案内プレートが設置されている。
涸れた渓流を渡り、舗装道を歩くと山麓の畑地に出て、鷹八幡宮の石鳥居の前の十字路に着く。十字路を右折して、畑地の中を歩く。車を置いた駐車地までは僅かの距離だ。振り返ると安戸山の頂や、山裾の鷹八幡宮の白い鳥居が見える。
肩切地蔵の標識があり、頭を垂れたような人型の自然石が祀られている。道の駅に到着すると、観光客で大賑わい。広い駐車場も8割方埋まっている感じであった。
帰りは近くで那須野が原の中にある「塩原あかつきの湯」に日帰り入浴で立ち寄る(土日祝1000円)。透明な少しヌルヌルする泉質で、温泉らしくて良い。客はそう多くなく、地元の人がほとんどの感じ。年配の方々がスキーの話で盛り上がっていた。ゆっくり湯船に浸かって温まったのち、桐生への帰途についた。