今倉山〜赤岩〜二十六夜山
この週末は土曜に所用があり、横浜の実家に車で帰る。翌日の日曜は天気が良さそうなので、桐生からは遠いが、横浜からならば比較的近い道志山塊の山に登ることを考える。
さて、どの山に登ろうか。①未登の山梨百名山で、②富士山の眺めが良く、③下山後に温泉に入れる山がいいなと思い、ネットで調べて、都留市HPの「今倉山・赤岩・二十六夜山」のページに辿り着く。このページによると、①今倉山は山梨百名山の一座で、②赤岩では富士山をはじめ360度の眺望が得られ、③二十六夜山から北麓に下山すると市営温泉「芭蕉月待ちの湯」がある、とのことで、希望が3つとも満たされる。これはいいな。
さらに調べると、芭蕉月待ちの湯から猿焼山を経て今倉山の北尾根を登り、今倉山、赤岩、二十六夜山を周回した山行記録がある。この周回ルートは歩き応えがありそうだし、車利用にも好都合だ。という訳で、出かけてきました。
実家を未明に車で出発し、八王子ICから中央道に乗る。富士吉田線に入ってリニア実験線の高架を潜ると、行手に冠雪した富士山が姿を現す。今日は快晴で絶好の山歩き日和だ。都留ICで高速を降りて都留市街を抜け、山間に入って芭蕉月待ちの湯に向かう。芭蕉月待ちの湯の奥の公園に広い駐車場があり、ここに車を置く。前日は横浜で初雪が降ったとの報道があり、私の車も慌てて冬タイヤに替えて来たのだが、周囲の山に雪が降った様子はない。一応、スパッツとチェーンスパイクを携行して出発する(結局、雪はなかった)。
公園の奥から未舗装道に入る。仮設橋で渓流の右岸に渡ると、檜林の中に道標があり、左の山道に入る。しばらく登ると、「猿焼山 70分 岩殿クラブ」と書かれたプレートがあり、右の踏み跡に入る。このプレートは小さくて危うく見落とす所だった。その後も要所にプレートがあるが、踏み跡は微かで分かり難い。まあ、檜林中はどこでも歩けるから、とにかく上に向かえば良い。
やがて明瞭な尾根の上に出て、松や檜、雑木が混じる林を緩く登る。サメの歯のような形の岩があると思ったら、裏手に「猿焼山鬼岩」と書かれたおもちゃの賽銭箱と鳥居が置いてある。ちゃんとした由緒のある名前かどうかは不明(^^)
露岩が現れ、傾斜を増した尾根を登ると、三角点標石のある頂に着く。「猿焼山」の山名標識もあるが、山と高原地図ではここを城ヶ丸、一つ東のピークを猿焼山と記している。
明るい雑木林の尾根を少し辿ると猿焼山の頂上に着く。「猿焼山」との古い山名標識が二つある。山名は何やら物騒だが、落ち葉に陽射しが降り注いで、明るい雰囲気の頂だ。
尾根道はここで南に方向を変える。行手の木立の間に今倉山の東西の双耳峰が高く眺められる。雑木林と植林の境の尾根を大きく下り、細尾根を登り返す。
雑木林の尾根を急登し、露岩のある細尾根を小さく上下しながら登る。左側の展望が開け、南大菩薩の山々や遠く飛龍、雲取が眺められる。登り着いたエビラ沢ノ頭の頂上は小広い平地となる。赤松に覆われて、展望には恵まれない。
エビラ沢ノ頭から、正面に木立を透かして今倉山を高く望みつつ、大きく下る。その後はしばらく小さなアップダウンが続く。やがて急斜面に突き当たり、正面の壁を避けて斜め右に上がって行く。途中の急な個所にはトラロープが張られている。登り着いたパラジマノ頭はここも小広く平坦な頂で、急坂の緊張が解けてホッと一息つける。
パラジマノ頭から緩く下る。行手の今倉山の頂上稜線はだいぶ近づいたが、まだまだ見上げる高さにある。斜め右方向の今倉山の山腹には新しくて白いコンクリート吹付の法面が断続して見え、林道が通じているようだ。この林道は地形図には載っていない。
西ヶ原ノ台(1246m標高点峰)への登りとなり、右斜面のすぐ近くに先程の林道の終点が見える(後日調べると、これは林道菅野盛里線で、今倉山北尾根を越える区間が工事未着手で残っているとのこと)。
尾根を左右に絡んで登り、西ヶ原ノ台のピークは右から巻く。雑木林に囲まれた小広い平地に着くと、荒廃したプレハブ小屋がある。ここから、落ち葉が深く積もった尾根を一直線に登る。一旦、平地となり、今倉山の稜線を近くにみる。
さらに傾斜が増し、低木藪の中のけもの道を霜柱を踏んで急登する。この時期は藪が枯れているから登るのに支障はないが、夏は葉が繁って煩いだろうな。
枯れ藪を搔き分けて、今倉山の頂上稜線に登り着き、縦走路に出る。木の幹に巻かれた赤テープが北尾根の下り口を示しているが、ここから見ると道型は全くと言って良い程ない。北尾根を歩いたことがないと、ここから下るのは躊躇われるだろう。
東へ僅かに進んだ地点が今倉山西峰の頂上だ。今倉山(東峰)より標高が10m高いが、縦走路の途中のような感じの場所で、道標と「御座入山」と書いたプレートがあるだけだ。
東峰へはなだらかな稜線を緩く辿って10分ちょっとの距離だ。頂上は小広い平地で、三角点標石や山梨百名山の山名標柱がある。ブナが混じる樹林に囲まれ、展望は木立を透かして富士山が辛うじて見える程度。お昼時だが、意外なことに誰もいない。手頃な倒木の上に座り、パンを齧って昼食とする。風もなく、陽に当たって居ればポカポカと暖かい。
日が短い時期なので、昼を食べたらサクッと出発。西峰に戻り、その先の雑木林の稜線に進む。小さな岩場を下り、鞍部で左に沢コースを分ける。登り返して小さな上下のある稜線を辿り、今日初めてハイカーさんと交差して、露岩と展望盤のある赤岩の頂上に着く。
頂上からの展望は正に360度に開け、期待以上に素晴らしい。まず目に飛び込んでくるのは富士山で、五合目辺りまで白く雪に覆われた玲瓏な姿を見せる。正午を過ぎて、少し霞がかかっているのが残念かな。前景には御正体山と鹿留山が黒々と盛り上がる。眼下には道坂峠越えの車道を俯瞰し、ときおりバイクの走行音が聞こえて来る。
目を右(西)に転じると、桂川の谷を隔てて三ッ峠山が稜線を広げ、その向こうに南アの白銀の山並を遠望する。さらに右には八ヶ岳を遠望し、南大菩薩の峰々を望む。北には奥多摩三山(三頭山、御前山、大岳山)や、奥秩父の飛龍山〜雲取山辺りの稜線を遠望する。振り返って東には今倉山を望み、その右には蛭ヶ岳の頂がちょっとだけ覗き、檜洞丸や畦ヶ丸から菰釣山にかけての丹沢主稜が横たわる。
眺望を堪能したのちに山頂を辞して、さらに西へなだらかな稜線を下る。冬枯れの雑木林にブナの巨木が点在し、明るい雰囲気の尾根歩きが続く。やがて木立を透かして、行手に端正な三角形の二十六夜山が見えてくる。
二十六夜山に近づくと、縦走路は稜線から左に離れ、木の階段や手摺のあるジグザグ道で急斜面を下って、舗装された立派な林道に出る。この林道は深い切り通しで稜線を越え、今倉山の北面をトラバースして北尾根の手前まで通じている(終点は登りで見た)。
切り通しから階段道で稜線に復帰し、尾根道をゆるゆる上がって二十六夜山の頂上に登り着く。小広い頂上には三角点標石や山名標柱があり、南北の眺めが開ける。南には富士山を望む。14時を回って逆光気味の陽光が反射して、雪面がテラテラと輝いている。
北には九鬼山を間近に望み、奥秩父を遠望する。九鬼山も未登の山梨百名山で、今回登る山の候補の一つだった(他には高川山)。次の機会に登りたい。
頂上の一角に「廿六夜」と大きく深く刻まれた石碑が建つ。説明板によると、この山頂で江戸時代に麓の村人によって盛んに行われた二十六夜の月待ち行事が山名の由来とのこと。また、花の百名山に選定され、4月下旬〜5月上旬にエイザンスミレが咲くらしい。
あとは温泉を目指して下る。引野田方面への下山路(通行困難との標識あり)を左へ分け、北に派生する尾根上の道を降りる。浅く窪んで落ち葉が積もる山道を快適に下り、一旦、傾斜が緩んだ踊り場から北東に向きを変えて、さらに急降下する。
やがて道標に従って尾根を離れ、右斜面を下る。かなりの急斜面だが、丁寧にジグザグを切って登山道が付けられているので、下るのは楽だ。涸れ沢を渡り、山腹をトラバースすると仙人水に着く。岩壁の小さな割れ目から渾々と清水が湧き出す不思議な水場だ。
仙人水のすぐ先で矢名沢の谷間に下り着く。ここには「かっちゃ石」という大岩があり、「かっちゃ坊 生活の跡地」という札がある。
あとは沢に沿って下る。青灰色の大石がゴロゴロと沢を埋め、山道も転石が多くて、少々歩きにくい。仙人水からの流水を合わせる個所には石祠が祀られている。新しい木橋(すぐ下流に流された橋の残骸がある)で右岸に渡り、杉植林帯を緩く下ると車道に出る。
舗装された車道を下ると上戸沢集落の外れに出て、正面に薄らと茜色に染まり始めた九鬼山を望む。集落に入って「至芭蕉月待ちの湯 約5分」の道標のあるT字路を右折。杉林を砂利道で抜けると芭蕉月待ちの湯への近道となっていて、温泉のすぐ下手に出る。温泉前の駐車場は車でいっぱいだ。
車に戻り、着替えを持って温泉へ(720円)。浴室はそう混んでいなくて、温めの湯にゆっくり浸かる。露天風呂もあり、夕陽に照らされた裏山を眺めながら湯船に浸かる。ただし、湯船の外は激寒(^^;)。内湯で温まり直したのちに温泉を出ると、既に日が落ちていた。帰りは中央道で渋滞に捕まったが、関越道と北関道は順調に走って帰桐した。