相馬山

天気:
メンバー:T
行程:松之沢グラウンド駐車場 9:35 …磨墨峠 9:50 …右京の泣き堀 10:00 …黒髪山表口石碑 11:00 …相馬山(1411m) 13:10〜13:30 …磨墨峠 14:05 …松之沢グラウンド駐車場 14:40
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

文化の日を挟む3連休の3日目はどこに行こうか。1日目に長丁場を歩いて、足が軽く筋肉痛なので、3日目は近場かつ短めの行程の山歩きにしようと考え、以前から興味を持っていた相馬山の表登山道を登ることにする。かつては山岳信仰で栄えた登路だが、現在は廃道となっている。この辺りの歴史は、爺イ先生のブログの「相馬山表口について一言」の記事が詳しい。

表登山道(別称、黒髪尾根)をネットで調べると、最近の山行記録が多数見つかる。表登山道へのアプローチは、通常、県道高崎東吾妻線から黒岩と鷹ノ巣山の南面を通る林道を歩くことになるが、ヤマレコのMUSICA001氏の山行記録によると、磨墨峠から谷を下り、鷹ノ巣山の北側を通るルートがあるらしい。これは車道を歩かずにすむし、距離も短くなってイイ。という訳で、この記録をまるっと後追いさせて頂いて、歩いてきました。

今回は朝のんびり出発。R50、県道高崎東吾妻線を走り、松之沢峠を越えて、群馬県営松之沢グラウンドの駐車場に車を置く。今日は白い雲が浮かぶものの、青空が広がる絶好の山歩き日和。紅葉も見頃だ。ハイカーさんも大勢来ている。駐車場のWCには「冬期閉鎖中」の張り紙があるが、実際にはまだ使えた。準備を整えて出発、ゆうすげの道に入る。


松之沢グラウンド駐車場


ゆうすげの道

ススキの穂が光る枯れ草原の中の木道を歩く。ゆうすげの咲く夏も良いが、紅葉の秋も良い。磨墨(するす)岩や相馬山、榛名富士など、周囲の山々を眺めつつ草原を横断し、緩く登って磨墨峠に着く。ここに「←右京のムダ堀」という道標があり、これにしたがって南面に降りる。


磨墨岩を望む


榛名富士と蛇ヶ岳を望む


磨墨峠への道から相馬山を望む


磨墨峠にある道標

笹に覆われた浅い窪を、微かな踏み跡を辿って下ると、右側の少し奥まった所の岩壁の基部に横穴があり、1m四方の口からチョロチョロと水が流れ出している。これが「右京の泣き堀」だ。文字が消えかかった説明板が近くの梢に掛けられ、それによると右京の無駄堀、馬鹿堀とも呼ばれ、享保年間に引水を計画して掘られたが、村同士の水争い(享保の水論)のために、開通することがなかったとのこと。ヘッドランプで中を照らしても奥が分からない程深い。これだけ掘って完成しなければ、泣くしかない。


磨墨峠から南面へ下る


右京の泣き堀

先に進み、笹原の中の微かな踏み跡を辿る。左に寄って下ると、やがて山腹をトラバースする道型が現れる。この道型はだんだん明瞭になって、見失う心配はなくなる。幅も広くなり、黄色の「保安林」標識もあるから、元は林業か治山工事の作業道と思われる。


笹原を下る


道型がはっきりしてくる


周囲の紅葉


雑木林と植林の間の道

道型を辿ると、鷹ノ巣山の北で自然と尾根を跨いで、一つ東側の谷に入る。やがて渓流に近づくと、中洲の大岩の上や対岸に石碑が建っているのが見える。大岩の上の石碑は何かの線刻画のようだが、よく分からない。裏面の銘は明治六年十一月吉日と読み取れる。


尾根を越えて東の谷へ


線刻画が刻まれた石碑

ナメとなった渓流を渡ると、石碑が多数ある。まず最初は、ネットでよく見た「黒髪山表口」石碑だ。大きく深く刻まれた文字がくっきりとして美しい。側面には「明治十四辛巳年六月十日」と刻まれている。その隣りの「寛瀧靈神」石碑は沢に向いて建っている。


渓流を渡る


「黒髪山表口」石碑

ここから参道に沿って多数の石碑が建ち並ぶ。見た限りは文字碑で、不動尊や、矜迦羅童子、制吒迦童子、伊醯羅童子など三十六童子、伊綱神靈、黒髪山不動明王、摩利支天尊など、数えきれない。沢の中にも天山御嶽靈神の石碑がある。

石碑が尽きたところで右斜面を登り、すぐ上の作業道に出てこれを辿る。行く手には木立を透かして相馬山と南尾根のギザギザの稜線を高々と仰ぎ、登高意欲が刺激される。


三十六童子などの石碑群


作業道から相馬山を仰ぐ

やがて沢の中に砂防堰堤が現れ、堰堤と堰堤の間に如意輪観音の線刻画や「明?靈神」(?は読めない漢字)の石碑が建つ。ここで大ポカ。そのまま沢沿いに進み、堰堤をいくつか越えて涸れ沢を登り始めたところで、なーんかおかしいな、と思ってGPSで確認すると、黒髪尾根の取り付き点を過ぎていた。右岸に尾根が見えているので、末端まで戻ると何のことはない、先程の霊神碑が黒髪尾根の取り付きだった(^^;)。これで約15分のロス。


如意輪観音の線刻画


霊神碑(大正十一年十一月十五日)
この向こうが黒髪尾根

末端から黒髪尾根に取り付くと、尾根上には明瞭な踏み跡やテープがある。両側を谷に挟まれた細尾根をグングン登る。奥山の雰囲気があり、紅葉も見頃で、良いルートだなあと思わず頰が緩む。


黒髪尾根を登る


明瞭な踏み跡が続く

尾根の幅が少し広がってくると、木立に遮られて全貌は分からないが大きな岩壁が立ちはだかる。この辺りで一休み。昼食にする程には腹が減っていないので、DRY ZEROを飲んでレトルトパウチの鯖味噌煮をつまむ。ここでポカ発覚、箸を忘れた(^^;)。


この辺りで一休み


中腹の紅葉

この上の岩壁は目印のテープに従って右から巻き、尾根上に復帰する。この先からいよいよ鎖場が連続する核心部に入る。最初の鎖場は切り立った岩場だが、ホールド、スタンスとも大きいので楽勝。鎖は錆びているが太くて頑丈だ。鎖の上端は太い木に巻き付けられて、幹に食い込んでいる。


最初の鎖場


木の根元で太い鎖を固定

両側が切れ落ちた細尾根を辿り、岩場を登ると次の鎖場が現れ、泥と岩が混じった急斜面にロープと鎖が垂れ下がる。この急斜面は長く、途中で休めない。一気に登り、息を切らして尾根上の平坦地に着いて一休み。見上げる南尾根の岩峰群はかなり近づいてきた。


岩場を登る


次の鎖場は長い


鎖の銘板「(高)敬誠講」


登って来た鎖場を見おろす

3番目の鎖場には鉄梯子も架かっている。この鎖場も長い。しばらく登ると八合の標石と石祠の屋根がある。ここでまた一休み。長い鎖場を登る毎に休みが必要だ(^^;)。


3番目の鎖場と鉄梯子


八合

八合からは山腹をトラバースし、ザレた斜面を登って相馬山の南尾根の上に出る。ここから先は数えるのも面倒な程、鎖場の連続となる。しかし、一つ一つの鎖場はそう傾斜もなくて短いから、先程の2番目、3番目の鎖場に比べれば楽だ。グングン高度を稼ぐ。


急斜面を斜めに登る


南尾根の鎖場


鎖場が続く


鎖場がまだまだ続く

やがて見晴らしの良い岩場があり、登って来た黒髪尾根を俯瞰する。高度感が素晴らしい。中腹の紅葉も赤黄緑が混じって綺麗だ。このすぐ先に鉄門扉が付いた小さな岩室がある。中に何が祀られているかは分からない。


登って来た黒髪尾根を俯瞰


小さな岩室

多くの霊神碑が建ち並ぶ祭壇まで登ると、すぐ上が相馬山頂上で、人声が聞こえ、顔も覗く。赤鳥居を潜り、多くのハイカーさんが憩う頂上に登り着く。いやー、表登山道は実に面白かった。無事、登ることができて良かった。鳥居にある「この先危険箇所あり 立入及び下山を禁止します」との立て看板の言う通り、確かにここを下るのは危ない。私が登って来たのを見たおじさんから、ここにも登山道があるんですか、と尋ねられたので、いえ、エキスパート向けのコースです、と答えておく。


頂上直下の石碑群


表登山道終点の鳥居

相馬山に登るのは6年振り3回目。石像、石碑が建ち並ぶ頂上の様子は良く覚えている。黒髪山神社の中から、祝詞を唱える声が聞こえる。頂上からは関東平野の北部を一望し、前橋や高崎市街のビル群が眺められる。男性二人が「黒髪」の文字を見て髪の話をしているが、黒髪の由来は闇龗(くらおかみ)=雷雲なので、髪が生えるご利益はないと思うぞ、と心の中でツッコミを入れる。


相馬山頂上


関東平野を見渡す

2日前に比べると急に冷え込んで、季節の変化を実感する。しみチョコスナックを腹に入れたのち、西尾根を下る。後はハイキングコースで知った道なので、展望と紅葉を楽しみつつのんびり歩く。


西尾根を下る


西尾根の鉄梯子


霊神碑


ヤセオネ峠分岐の赤鳥居

磨墨峠からは磨墨岩に立ち寄って行こう。磨墨岩の天辺に祀られる烏天狗像は、山上に祀られた石像の中でも特に好きなものの一つだ。何度見てもホレボレする。


磨墨峠に向かって黄葉の中を下る


東屋から磨墨岩を望む


磨墨岩上の烏天狗


磨墨岩から相馬山を振り返る

磨墨岩からは松之沢峠に向かう。途中、南に向かって踏み跡があり、ジョーズ岩という小さな標識が架かっていた。南面に突き出た小岩峰がそれらしい。松之沢峠の向こうに見える1236m標高点ピークは通称、榛名旭岳というそうで、私はまだ登ったことがない。まあ、今日は表登山道でお腹いっぱいだから、登るのは次の機会だな。松之沢峠の車道に下り着き、ゆうすげの道を辿って駐車場に戻る。


松之沢峠へ稜線を辿る
行く手のピークが榛名旭岳


松之沢峠の車道に着く


紅葉の榛名富士を仰ぐ


ゆうすげの道を辿って駐車場へ

帰りは榛名湖畔のレークサイドゆうすげに入浴で立ち寄る。途中の榛名公園辺りは紅葉見物のドライブ客で大賑わい。温泉も激混みかと思ったが、そこまでではなく、良く温まる。松之沢峠を越え、往路の逆コースで帰桐した。