羅漢寺山・兜山・棚横手山
年度末の金曜日に休暇を取り、週末と合わせ2泊3日で石和(いさわ)温泉に宿泊して、周辺の山梨百名山3座に登ってきました。
御岳昇仙峡〜羅漢寺山
温泉旅行初日の金曜日は、S&Sを車に乗せて横浜の実家からのんびり出発。相模原ICから圏央道、中央道を走って甲府昭和ICで高速を降りる。今日は御岳昇仙峡を探勝し、昇仙峡ロープウェイを上がって羅漢寺山に登る計画だ(なお、後で気付いたが、昇仙峡へ行くには双葉スマートICが最寄りだ)。昇仙峡は1982-1983年の年末年始で岩下温泉に宿泊した際に観光で訪れているが、大昔のことで記憶が薄いので、また行ってみることにした。
まず、昇仙峡入口の長潭(ながとろ)橋袂の渓水館というそば処に立ち寄って昼食を摂る。ここで昇仙峡の地図を貰い、渓谷沿いの車道を車で進む。この道は通常、車両の通行が規制されているが、今日は観光シーズン外の平日なので通行可。他に通る車は見ないが、歩いている人はそこそこ居て、外国人観光客の団体などともすれ違う。
一旦、グリーンラインに上がり、県営無料駐車場に車を置いて、徒歩で仙娥滝に向かう。ここから仙娥滝までが昇仙峡の中心部で、観光客もグッと増える。白い花崗岩の岩場を鏤めた羅漢寺山を仰ぎつつ、渓流沿いの道に戻る。
車道の終点から巨石が累積する渓流沿いの遊歩道に入る。右には天狗岩の岩壁が迫り、前方に覚円峰の岩峰が聳立する。昇仙峡の代表的な景観で、直に見るとなかなかの迫力。
石門を潜り、昇仙橋を渡ると、仙娥滝が現れる。大岩壁を割って深く広い釜に豊富な水量を落とし、豪快かつ優美な滝だ。
右岸の石段を登って滝上に出ると、水晶を売る土産物屋が建ち並ぶ。水晶も綺麗で目を引くが、何故かメタルクラフトのエイリアン像とプレデター像があり、良く出来ていて一番目を引かれる。
仙娥滝の上流は、ここまでとは打って変わって、穏やかな流れとなる。土産物街を歩いて昇仙峡ロープウェイの山麓駅(仙娥滝駅)に着き、往復の乗車券(1300円)を買って、ロープウェイに乗り込む。日中は20分間隔で運転しており、ちょうど14:00発の便に乗れた。乗客は10人程。車窓から振り返ると荒川ダムや、その奥にこんもりと盛り上がる中津森が眺められる。
ロープウェイの山頂駅はパノラマ台と呼ばれ、南面の甲府盆地に向かって展望が開ける。今日は霞がかかって、残念ながら富士山までは見えない。なお、すっかり記憶から消えていたが、記録によると前回もロープウェイでここまで来て、その時は富士山を眺めている。山梨百名山の羅漢寺山の標識が立っているが、最高点はここから15分程の距離にある弥三郎岳なので、往復して来よう。
所々に花崗岩が露出し、風化した白砂に覆われた稜線上の登山道を歩く。S&Sはお疲れなので、次の小ピーク(展望台)で引き返し、私だけ先に進む。弥三郎岳はちょっとした岩峰となり、短い梯子や階段で花崗岩の岩場を登る。お酒の神様を祀る弥三郎権現の小さな祠を過ぎ、岩場に刻まれたステップを登って、弥三郎岳頂上の岩頭の上に立つ。
頂上の先は昇仙峡に向かって切れ落ちて、なかなか高度感がある。眺めも良く、南には羅漢寺山から派生する白砂山、西面には台形に盛り上がる太刀岡山や、その奥の茅ヶ岳、曲岳、黒富士あたりの山々が眺められる。
一通り展望を楽しんだのち、パノラマ台駅に戻り、15:00発のロープウェイで下山。さらに往路の昇仙峡遊歩道を歩いて駐車場へ戻る。昇仙峡と羅漢寺山は観光地ではあるが、花崗岩の渓谷と岩峰の景観がなかなか見事で、楽しめた。
今回の宿は石和温泉にある「石和名湯館糸柳」。石和温泉駅に近く、田園の中に建つ近代的な宿だ。温泉へ浸かったのち、夕食のご馳走を頂く。メインの鯛のしゃぶしゃぶや和牛溶岩焼きの他に大変品数が多く、かつ、一つ一つがどれも美味しくて、食事を堪能した。
兜山
温泉旅行2日目。朝食のバイキングも、一回では制覇できないほど品数が多く、かつ美味しい。今まで泊まった宿の中でも、ピカイチに食事が美味しい宿と思う。
さて、今日は宿から近い兜山に登る。この山も岩下温泉に泊まったときに登っているのだが、トンと記憶にない(^^;)。当時はマイナーな山であったが、1997年に山梨百名山に選定されたこともあり、今では登山口に駐車場が設けられ、良い登山道が通じているらしい。
R140の旧道を北に向かい、「春日居小学校北」交差点を左折。R140のバイパスのガード下を潜り、果樹園が拓かれた斜面をジグザグに登って、春日居ゴルフ倶楽部の手前で右折。山腹をトラバースする林道に入る。既にだいぶ高度を稼いでいて、甲府盆地を見下ろす眺めが良い。尾根を回って谷に入ると、兜山登山口駐車場があり、ここに車を置く。既に車が5台程あり。WCや案内看板もあって、事前情報の通り、良く整備されている。
登山口から渓流に沿って未舗装の林道を辿る。今日は雲が多い天気で、谷間の道はちょっと薄暗くて寒々しい。途中で兜山に直登する山腹コースを右に分ける。このコースは急そうなので、復路で下りに使う予定にしている。なおも谷間の林道を緩く登る。この道は岩堂峠を越えて積翠寺に抜けるハイキングコースで、前回も歩いている。途中にはマツダランプの道標があり、古くから歩かれていることを偲ばせる。
再び山腹コースを右に分け、広い伐採斜面を見上げながら林道を辿る。やがて林道の終点に達し、岩堂峠への山道を左に分ける。兜山は右の山道へ。浅い窪を上がり、それから小尾根を辿ると稜線上に登り着く。
ここから稜線上の登山道を辿って兜山の頂上に向かう。ゆるゆると登ると露岩の多い稜線となり、標高990m地点を越える。このピークは兜山(標高913m)より高いが、樹林に覆われて展望はなく、標識の類もない。
稜線を緩く下り、左に夕狩沢に下る落ち葉に覆われた道を分ける。その先に少し進んだところが兜山の頂上だ。三角点標石のほか、山梨百名山の山名標柱とベンチがある。樹林に囲まれて展望はないが、すぐ先に展望台があるらしい。行ってみると南面の樹林が切り開かれて甲府盆地の眺めが広がる。ベンチもあるので、ここで休憩。昼食のパンを齧る。
帰りは最短コースをとって山腹コースを下る。露岩の多い小尾根の急降下は、階段が整備されているので歩き易いが、ここを登ったら一汗かくだろうな。ひとしきり下ると山腹をトラバースする道となり、程なく林道に出る。駐車場へは僅かな距離だ。
兜山の登頂は2回目であったが、再訪しても全然思い出さなくて、我ながらびっくり。まあ、それだけ地味な山ゆえということにしておこう(^^;)。その分、新鮮な感覚で山歩きができたのは良かった。
棚横手山
温泉旅行3日目の最終日は、どの山を歩こうか。山梨百名山で宿のすぐ近くにある大蔵経寺山は急そうだし、帯那山は林道が冬季通行止め。要害山は行程が軽過ぎる。いろいろ検討した結果、勝沼の東にある棚横手山に登ることにする。
R20を東進し、勝沼から扇状地の斜面を上がって、大滝不動尊奥宮への車道に入る。この車道はガードレールもなく急峻な山腹を大きく切り返して、グングン高度を上げる。予想以上に険しい山だ。ヤマレコで読んだ棚横手山のレポに、冬に登った際、この道の路面が凍結していて、行き帰りの運転が一番怖かった、というものがあった。さもありなむ。
大滝不動尊の駐車場には駐車が1台。WCあり。車道はこの先にゲートがあり、冬季通行止めとなっている。谷間に朱塗りの立派な山門(仁王門)が建ち、大滝山と記された扁額が掲げられている。
仁王門を潜ると、その奥には急傾斜の参道石段が一直線に続く。石段の脇はこれまた急な岩盤に一筋の水が流れる沢で、前滝と呼ばれている。石段を登ると、頭上に陽に照らされた大岩壁が現れ、その中央部を水が流れて帯状に黒く光る。これはなかなか凄い滝だ。この滝は雄滝(男滝)といい、落差140mと称している(甲州市観光協会HP)。石段を登り切ると、雄滝を背にして、大滝不動尊の新しく朱も鮮やかな本堂が建つ。雄滝は水量は少ないが、見上げるように高くて威圧感がある。これは一見の価値あり。
本堂右脇から沢を渡り、急斜面を登る登山道に入る。弁財天の鳥居の前を通り、御天狗橋という(多分、平成26年豪雪で)ひしゃげた鉄橋を渡る。橋の上流には岩壁を濡らしたような髪洗滝があり、滝の基部には僅かに雪が残っている。
急斜面のジグザグ登りは天狗堂の古びた堂までで、ここから山腹をトラバースするほぼ水平な山道となる。金界坊の新しい堂の前を通り、さらにトラバースすると未舗装の林道に出る。
林道を右に行けば甲州高尾山。棚横手山へは林道を左へ辿る。途中、杉林の切れ間から大滝不動尊を俯瞰して雄滝の全貌を拝めるビューポイントがある。
しばらく林道を辿り、道標にしたがって再び山道に入る。緩く登ると、カヤトとなって展望が開けた稜線に着く。S&Sはお疲れなので、この辺りで待つことになり、私だけ棚横手山を往復する。
このカヤトは、山火事跡地に広がったものとのことだが、開放的で気分が良い。行く手には、そう遠くないところに棚横手山の頂上が見える。展望を楽しみながら稜線を登る。振り返ると登ってきたカヤトの稜線の向こうに御坂山地が連なる。
途中、林道を横断して再び稜線上の山道を登る。左(西)には甲府盆地を俯瞰し、南アルプスを遠望する。
短い急坂を登って、山梨百名山の山名標柱の立つ棚横手山の頂上に着く。稜線の途中のような場所で、あまり頂らしくないが、展望は良い。御坂山地の向こうには頂を雲に隠した白い富士山が見える。数組のハイカーさんが休憩中で、なかなか人気のある山だ。
昼食のパンをササッと腹に入れたのち、引き返してS&Sに合流し、往路を駐車場に戻る。青空が広がり、雄滝に陽が当たっているので、また写真を撮る。いい滝を見ました。
帰りは勝沼ぶどうの丘に立ち寄る。甲府盆地で有数の観光地とあって、観光客で賑わっている。自分用の土産に2018年産の赤白のワイン(シャトー勝沼製)を1本ずつ買ったのち、横浜への帰途についた。
参考ガイド:アタック山梨百名山―実践コースガイド(2010年刊、山梨日日新聞社)