滝富士・湯ノ岳・明神山

〜2015年1月2日(金)
メンバー:S,S,T

年末年始恒例の温泉旅行は福島県のいわき湯本温泉に2泊し、周辺の里山に登ってきました。この正月は強い冬型の気圧配置と寒気で日本海側を中心に大荒れの天気となったようですが、太平洋側のこの地域はそこそこ良い天気が続き、3日とも山歩きが楽しめました。

滝富士

2014年12月31日
天気:
行程:下滝バス停 12:30 …分岐三合目 12:45 …滝富士(306m) 13:25〜13:40 …分岐三合目 14:15 …芦ノ草登山口 14:25 …下滝バス停 14:40
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

桐生を8時過ぎに車で出発し、北関東道、常磐道を経由して、11時にJR常磐線湯本駅に到着。上野から特急で来たS&Sと合流する。旅行初日の今日は、滝富士というちょっと変わった名前の山に登る予定だ。今回の旅行では「いわき市観光情報サイト」を参考にさせて頂いて登る山を選んでいる。このサイトでは、滝富士は次のように紹介されている。

鮫川沿いにそびえ立つ滝富士は「親子3代で登れる山」として登山道が整備されている。1時間程度で登ることができるうえ、ふるさと富士百名山にも選ばれた山。

途中の蕎麦屋で昼食をとったのち、登山口の下滝バス停に到着。6〜7台分のハイカー用駐車場があり、滝富士登山案内の大きな看板が建っている。少し先の道角に「滝富士登山道」の道標があり、ここから脇道の車道に入る。直ぐに未舗装の林道となり、飼い犬がたくさん居る石材店の前を通る。

下滝バス停の駐車場
滝富士登山口

シダやアオキなどの緑が多い杉林の中の林道を緩く登る。道は少し泥濘んでいるが、新しい道標が要所にあって良く整備されている。三合目にも道標があり、右に芦ノ草集落への道を分ける。緩く登って下ると放擲されて湿地化した田畑の脇を通る。五合目の道標があるが、ここまでは登りらしい登りはなく、親子3代で登れる山との惹句は伊達ではない(^^)

緑の多い杉林を緩く登る
五合目

五合目を過ぎると少し起伏が出て来る。良く踏まれた道を辿ると、山腹をトラバースして道標のある八合目に着く。ここから伐採された斜面となり、九合目(道標あり)から左斜面が伐採された尾根を登ると滝富士頂上に着く。

杉林の斜面をトラバース
頂上直下の伐採地を登る

頂上は小広い草地となり、三角点標石と滝埜神社の石祠、丸太のベンチがある。東から北にかけて樹林が切れて眺めが開け、湯ノ岳から北に続く平坦な稜線が一望できる。また、南面は樹林の間からの展望となるが、勿来の市街地や工場、そして太平洋が眺められる。

滝富士頂上
北東方面の展望

穏やか日差しの下、ミカンを食べて一休みしたのち、往路を下山する。頂上直下の伐採地の下りからは西面の眺めが良く、延々と広がる低山の山波を見渡す。こちら側の山麓には鮫川が流れ、ダム湖(たかしば湖)があるはずだが、山の陰になっていて見えない。

三合目の分岐から芦ノ草へ向かい、谷戸の湿地の脇を通る。典型的な里山の風景に和む。

頂上直下の下り
芦ノ草への道

直ぐに車道に出、あとは民家が点在する山間の道を歩いて、駐車地点に戻った。

芦ノ草登山口
芦ノ草の集落

今回の宿はいわき湯本温泉「新つた」。早速、温泉に入って温まったのち、夕食を頂く。生ビールと熱燗で乾杯。蛸ワサビ、ナメタカレイ煮付け、お造りなどの海産物と牛すき焼きが美味しい。夕食のご馳走を頂いた後は、紅白が始まる前に即効で寝てしまった。

湯ノ岳

2015年1月1日
天気:
行程:〆張場 10:20 …藤原登山口 10:25 …湯ノ岳(593m) 11:55〜12:15 …〆張場 13:00
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、緑:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

明けて2015年元旦。天気は快晴だが風が強く、客室の窓から見える竹林が激しく揺れている。今日はいわき湯本の北西になだらかな山容を見せ、湯本温泉のシンボルとも言える湯ノ岳に登る予定である。

宿を車で出発。いわき湯本ICの前を通り、田場坂から藤原川沿いの車道に入って、湯ノ岳西麓の藤原登山口に向かう。この辺りから望む湯ノ岳は皿を伏せたような山容で、山というより丘というのが相応しい。しかし、この藤原川が流れる浅くて広い谷は、地形図で見ると非常に面白い地形となっている(ルート地図参照)。どういうことかというと、湯ノ岳の山腹をトラバースして川が流れているのである。こんな妙な地形は断層以外に有り得ないと思って、後日ネットで調べてみると、やはり湯ノ岳断層というものがあるらしい。

藤原川沿いの細い車道の最奥が藤原登山口で、「お山掛けコース 川上渓谷 湯ノ岳4.8km →」という道標があり、右に未舗装の荒れた林道(大滝線)が分岐する。左の車道を進んで坂を下ったところに数台分の駐車スペースがあり、ここに車を置く。この地点には「第一の木戸 〆張場 湯嶽観音別当三箱山法海寺」という標柱が建っている。ここから仰ぐ湯ノ岳は、平地から唐突に立ち上がる急峻な山肌を見せ、藤原川がV字谷(川上渓谷)を成して切れ込んでいる。丘のような山の懐にこんな険しい景観がある意外性がまた面白い。

南麓から望む湯ノ岳
〆張場

登山口から林道大滝線に入る。林道には大きな落石が散乱し、荒れている。崩壊した箇所もあるが、しっかりと迂回路があり、整備の手が入っている。渓谷には滝がかかり、豊富な水を落としている。ここには「第二の木戸 不動滝」という標柱が建つ。

荒れた林道を進む
不動滝

程なく林道は終点となり、支流を渡って御前坂と呼ばれる急斜面に取り付き、雑木林の中にジグザグに付けられた登山道を登ってグングン高度を上げる。

川上渓谷の支流を渡る
御前坂をジグザグに登る

御前坂を登り切ると、ブナなどに覆われた緩斜面を巻き気味に登る道となる。疎らな林に陽光が差し込んで明るく暖かい。小さな沢をいくつか渡ると、谷を見下ろす地点に「第五の木戸 毘沙門滝」という標柱が建つが、樹林に遮られて滝は見えない。水量の多い沢を渡り、笹原の中を緩く登ると「第六の木戸 姥様」という標柱が建つ。姥神の石像があるのかと期待して探してみたが、岩陰に凍った水場があるだけのようだ。

雑木林をトラバース
雑木林を緩く登る

姥様のすぐ上で林道を横断し、笹の下生えのある杉や松の林を登ると、今度は片側一車線の車道(湯ノ岳パノラマライン)に出る。この車道を左に辿る。車の通行量は、ドライブの車がたまに通るくらいで、殆どない。車道を進み、鳥居を潜って再び登山道に入る。

林道を横断
杉林と笹原の中を登る
湯ノ岳パノラマライン
鳥居を潜る

強風に煽られつつ、緩やかな稜線上の登山道を辿る。左に川平への道を分け、短い急坂を上ると、道脇に鳥居と「第七の木戸 三箱石」という標柱が建ち、三つの角ばった巨石が並んでいる。それぞれの石には正月らしく鏡餅がお供えされている。湯ノ岳は古くは三箱(さはこ)山と呼ばれていたそうで、この石もそれに所縁のものらしい。

緩やかな稜線を辿る
三箱石

この先で管理道路と合流すると、平地に電波塔が林立する湯ノ岳頂上に着く。「第八の木戸 経塚」という標柱の脇に三角点標石と山名を記した立て札があるのみ。杉林に囲まれて展望もなく、ちょっと味気ない頂上である。風を避けて陽だまりの枯れ草の上に腰を下ろし、パンとペットボトル飲料の軽い昼食をとる。

電波塔が林立する
湯ノ岳頂上

下山は、S&Sは御前坂の急降下が厳しそうなのでパノラマラインを下り、私だけ往路を戻って車でパノラマラインを上がり、途中までS&Sを迎えに行った。

宿への帰り道の途中、初詣ということで、白水阿弥陀堂に立ち寄る。福島県で唯一の国宝だそうで、これはお参りしなければなりますまい。白水阿弥陀堂に着くと、広い駐車場は初詣客の車でほぼ一杯。なかなか賑わっている。平安時代後期(1160年)に創建された阿弥陀堂を中心に池、中島を配し、周囲の山々を借景とした庭園を構成している。阿弥陀堂はシンプルだが重厚さと軽妙さが見事にバランスした建物で、一見の価値がある。

白水阿弥陀堂(国宝)
池面越しに阿弥陀堂を望む

宿に戻り、温泉に入ったのち、女子サッカー皇后杯をTV観戦。夕食は赤次(キンキ)の煮付け、タラバ蟹に、目光(メヒカリ)の天婦羅と鮟鱇鍋というご当地の名物が出されて、美味しい海の幸を堪能。生ビールと熱燗を飲んで、前夜に続いて即効で就寝と相成った。

明神山

2015年1月2日
天気:
行程:明神山登山口 10:30 …多祁神社里宮 10:35 …間明沢分岐 11:05 …多祁神社奥宮 11:30 …明神山(751m) 11:45〜12:10 …間明沢分岐 12:35 …明神山登山口 12:55
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

温泉旅行の最終日は、いわき市南西部にある明神山に登る。湯ノ岳と共に「うつくしま百名山」に選ばれており、いわき市観光情報サイトでは次のように紹介されている。

明神山は農耕の神として崇められている信仰の山で、多祁神社が祀られている。山頂近くには巨石「天狗の足跡」があり、大天狗が仏具山から飛んできて、明神山で一休みした時についた足跡があるという伝説がある。

宿をチェックアウトして出発。いわき市田人(たびと)町荷路夫(にちふ)に向かい、山間に通じる県道勿来浅川線を走る。今日はどんよりと曇り、路面に薄っすらと雪が積もった箇所もあって、寒々しい天気だ。

登山口は道端の色褪せた朱塗りの鳥居が目印で、「明神山入口→」と掠れた文字で書かれた標識もある。車3台分の駐車スペースがあり、ここに車を置く。既に2台の車があり、先行のハイカーさんがいるようだ。

ゼニゴケに覆われた石段を上ると、多祁(たき)神社里宮の社殿の前に出る。元日は里人が初詣に来たのだろう、社殿正面には真新しい注連縄が張られ、豆菓子や福島の地酒「奥の松」の一升瓶が供えられ、序でに熊手が1個3000円で無人販売されている。

明神山登山口
多祁神社里宮

社殿の左裏手から登山道に入る。入口には6頭の躍動感のある馬が浮き彫りにされた、なかなか見事な石像がある。平坦な小尾根上の道を辿ると、やがて稜線に向かって登り坂となるが、そう長くはなくて稜線上に登り着く。

馬の石像(明治18年)
緩い小尾根を辿る
稜線に向かって登る
深く抉れた道

稜線上には、いわき市が整備した新しい道標が建つ。稜線を左に辿ると間明沢(まんみょうざわ)、明神山は右に進む。杉林に覆われた稜線をゆるゆると登る。「明神山中間点」という道標のある大杉を通過すると、明神山頂上に向かって、やや急な登りとなる。

稜線上を緩く辿る
伐採地では薄っすらと雪
「中間点」標識と大杉
傾斜を増した稜線を登る

明神山頂上に直行する道を左に分けると(道標あり)、多祁神社奥宮に着く。小さいながらも立派な社殿で、こちらも里宮と同じように飾り付けやお供えがされている。社殿の前から、疎らな雑木林を透かして、山麓の集落を眺めることができる。周囲には杉やブナの大木があり、信仰の山らしい神さびた雰囲気がある。

多祁神社奥宮
奥宮からの展望

社殿の裏手から僅かに登り、ハイカーさんと入れ違いで頂上に着く。頂上の南面は大規模に伐採されて展望が開け、太平洋まで遠望することができる。三角点標石を囲んでベンチがあり、憩うにはもってこいの山頂だ。錆び付いた鉄製の見晴台もあるが、これだけ展望が良ければもう不要で、使われなくなって久しい感じがする。

頂上から50m程先に進むと、数個の苔むした巨石が点在し、「天狗の足跡」の標識が建つ。石の上に足跡のような凹みでもあるのかなと思ったが、それはどうもなさそうだ。

明神山頂上直下の登り
明神山頂上
明神山から太平洋を望む
天狗の足跡

ベンチで一休みして、パンで軽く昼食としたのち、往路を駐車地点に戻る。これにて温泉旅行の山歩きは終了。いずれも小さな山だったが、それぞれに特色があって、なかなか変化に富んだ山歩きが楽しめた。いわき湯本IC前の柏屋でお土産に饅頭を買い求めたのち、湯本駅でS&Sと別れて、桐生への帰途についた。