苗場山
13日からお盆休みが始まるものの、予報によると晴れるのはどうも初日だけになりそう。特に新潟方面の天気が良さそうなので、日帰りで苗場山に登ろうかな。
苗場山には、中学生の夏休みに家族で祓川(かぐらスキー場)から往復して登頂したことがある。そのときは途中から雨に降られて、頂上では展望に恵まれなかった。そのリベンジではないが、眺めを楽しみながら頂上の高層湿原をのんびり歩いてみたい。
という訳で、秋山郷から小赤沢コースを往復して苗場山に登って来ました。
桐生を午前3時過ぎに車で出発。関越道を石打塩沢ICで降り、秋山郷に向かういつものルートのR353を走ると、十二峠トンネルを抜けた先でなんと通行止め。この春に土砂崩れがあり、日中の時間限定で通行可能になっているらしい。早朝は時間外なので、止むなく迂回。県道当間塩沢線で大沢山トンネルを抜けて秋山郷に向かう(なお、帰りは時間内で通行可だった)。
小赤沢の集落から「←苗場山」の道標に従って舗装された林道を上がり、小赤沢コース三合目の駐車場(WCあり)に到着する。10台以上の車があるが、広い駐車場なのでガランとした印象だ。車の外に出ると、空気がヒンヤリと冷たい。標高が既に1300mあるので、さすがに涼しい。今日は良く晴れて、スラブを巡らせた鳥甲山も青空の下にくっきり見えている。ほぼ一か月振りの山歩きは、なかなか快適なものになりそうだ。
駐車場の奥に登山届のポストがあり、念のために記帳。ここから登山道に入る。ブナ林を緩く登り、小尾根上の登山道を辿る。両側に谷の瀬音を聞きながらゆるゆると登ると、30分程で四合目に着く。直ぐ近くにバンバン流れる水場がある。なおも尾根道を緩く登る。湿気って泥濘の多い道だが、輪切りの丸太が敷き詰められていて、良く整備されている。
ダケカンバやコメツガの林を登って行くと、やがて樹林が疎らになって、行く手にちょっと急な山肌が見えて来る。登山道は傾斜を増して、山肌を右にトラバースしながら登って行く。途中に水場(天狗の水?)があり、冷たい水を飲むことができて元気が出る。
道は段々急になり、ロープや鎖も現れるが、殆ど使わずに済む。ここで、先行していた数組のハイカーさんに追い付く。このところ天気が悪かったせいか、メジャーな山にしては人出が少なくて、ここまで静かに歩けている。振り返ると、樹海の遥か彼方に秋山郷の対岸の山々が横たわっているのが眺められる。(チョンボして三合目まで車で上がってますが)既にかなり標高を稼いだ。
クマザサに覆われた斜面を登り切ると、頂上台地の一角に到着して、展望が一気に開ける。この眺めは結構感動的。池塘をちりばめた広大な草原の果てに、鳥甲山や岩菅山、佐武流山などの上信越国境周辺の山々がぐるりと一望できる。
草原の中に通じる木道は、池塘を縫って一段上の苗場山頂上へ続いている。木道は老朽化しており、通行注意。現在改修中で、一部は新しく立派な木道に架け替わっている。
木道を辿り、草原の中で和山への道を右に分けると、一旦、オオシラビソの樹林帯に入る。樹林中の道は岩石累々で少々歩きにくい。樹林を抜けると、再び広大な草原に出る。この時期は花の種類が少な目だそうだが、それでもキンコウカやイワショウブが一面に群生し、モウセンゴケが池塘を赤く縁取っていて奇麗だ。
山岳信仰の山らしく、草原に埋もれた数基の石祠を見かけたほか、赤倉山への分岐を過ぎた辺りには多数の石碑の建つ。碑文を見ると、天照大神や大山祇神、猿田彦などが祀られているようだ。
草原の中の木道を辿って緩く登ると、苗場山頂ヒュッテの屋根が見えて来た。樹林の中に建つヒュッテに立ち寄ってみる。
ヒュッテ前のベンチでは、数組のハイカーさんがお湯を沸かしたりして寛いでいる。ヒュッテの玄関先から細い切り開き道を辿ると、一等三角点標石のある苗場山頂上に着く。オオシラビソに囲まれて展望は全くなく、あまり休憩適地ではない。樹林の中に大赤沢新道が分岐している。
頂上直下の草原の中を周回する木道の途中に広いデッキがあるので、そちらで大休止としよう。まずはお中元で貰ったちょい高級なソーセージをボイルして、缶ビールを開ける。それから、昼食には大分早いが、腹が減ったのでラ王を作って食べる。隣りに座っておにぎりを食べていたおじさんハイカーさんから、麺が美味そうですねー、と声を掛けられるが、お裾分けは残念ながら不可です(^^;)
昼食を終えた頃には雲が多くなり、湿原の上を白い霧が流れ始めた。下山は往路をそのまま戻る。下段の湿原で最後の展望を楽しんだのち、急坂を下る。湿った道は滑り易くて、神経を使う。水場で冷たい水を一口飲んで一息。あとは小尾根を緩く下って行く。四合目の水場でも冷たい水を飲み、ひと頑張りで三合目駐車場に戻った。休憩を入れて往復5時間ちょっとの手頃なコースだったが、下部のしっとりした樹林、上部の広闊な草原が気持ち良くて、なかなか楽しめた。
帰りは小赤沢集落の高台にある小赤沢♨楽養館に立ち寄る(500円)。ここの温泉は、茶褐色に濁る鉄錆そのものの泉質で、素晴らしい。ぬるいのでゆったり浸かる。風呂上がりに休憩室でアイスクリームを食べる。窓から吹き込む風は涼しく爽やかで、猛暑続きの桐生とは別天地である。秋山郷で避暑とかもいいなあ。
それから、小赤沢の福原商店で「とち餅大福」を土産に買い、酒まつりの幟に惹かれて立ち寄った津南醸造で純米吟醸「霧の塔」を買い込んだのち、桐生への帰途についた。