塔ノ岳

天気:
メンバー:T
行程:大倉駐車場 8:20 …塔ノ岳(1491m) 10:55〜13:10 …大倉駐車場 15:10
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

親父からメールが来た。曰く、10日(土)に日産スタジアムで開催される横浜F・マリノスVSサガン鳥栖のチケットを貰ったから、一緒に見に行かないか、とのこと。J1を生で観戦したことはないし、中村俊輔は直に見たいかも。ということで、この週末は横浜の実家に帰り、サッカーを見に行く。生で見る試合はプレーが意外と間近に見えて迫力があり、応援もすごくて会場全体の盛り上がりが肌で感じられる。試合結果は1-2でマリノスは負けてしまったが、俊輔の素晴らしいミドルシュートによる得点が見られたのは良かった。

翌11日(日)は、せっかく帰省していることだし、桐生からは遠くて普段は行けないが、実家からは近い山に行くことを企てて、丹沢の塔ノ岳に大倉尾根を往復して登ることする。偏平足さんの記事「石仏321塔ノ岳(神奈川)」によると、塔ノ岳の山頂近くに黒尊仏という石像を祀る小岩峰があるそうで、以前から興味をもっていた。塔ノ岳は何度も登頂しているし、大倉尾根はかつて富士登山競走のトレーニングで走って登ったりしていた馴染みのコースであるが、久し振りなので懐かしいし、黒尊仏は見たことがないので良い機会だ。さらにネットで調べてみると、年に一度、塔ノ岳山頂で行われる尊仏祭がちょうど11日に開催されるとのこと。これは神仏のお導きか(^^)。行くしかないでしょう。

秦野中井ICで東名を降り、途中のコンビニで食料を仕入れて、登山口の大倉に向かう。今日は快晴で、青空に丹沢表尾根のスカイラインが高々と連なる。秦野戸川公園の大倉駐車場に車を置く。まだ営業時間(8:30〜18:00)の前だが、自動ゲートから問題なく入れる(普通車520円)。

歩き始めると、さすが首都圏でも有数の人気コース、前後を歩くハイカーさんが途切れることがない。大倉の集落を抜けて、大倉尾根に取り付く。大学生らしいグループもいて、ワイワイと賑やかだ。


大倉駐車場


大倉尾根の取り付き

尾根上に出て、新緑の樹林に覆われた登山道を登る。大倉尾根は山小屋が多く、早速、最初の見晴茶屋の前を通る。小屋の前の樹林が切れて、名の通り、秦野平野の眺めが良い。


見晴茶屋


新緑の尾根

踏まれて幅広くなった尾根道を登ると、次は駒止茶屋。単調な登りが続く。やがて傾斜が弛み、平坦になった辺りが堀山である。


駒止茶屋


堀山付近

少し下って登り返すと堀山の家があり、大勢のハイカーさんが木陰のベンチで休んでいる。こちらはノンストップで行くよー。傾斜が増し、木の階段が続く。この辺りはなかなかきつい。樹高が低くなり、明るくなった尾根を登る。幅広い階段を一直線に登ると花立山荘に着く。見晴らしが良く、表尾根の三ノ塔や大山、相模湾、富士山などが眺められる。ここのベンチで小休止。山荘で販売しているかき氷を食べているハイカーさんも多いが、持参のポリタンの水で我慢する。老若男女にトレランの人もいて、ほんと賑やか。


階段の急登


花立直下の登り


花立山荘


花立からの展望

花立を過ぎると、行く手に塔ノ岳の頂上や、丹沢山から蛭ヶ岳、檜洞丸へと続く丹沢主稜の山々が見えて来て、奥山の雰囲気が出てくる。この辺りの新緑は出端で瑞々しい。金冷しの痩せ尾根(桟道が設置されている)を通過し、鍋割山からの登山道を合わせ、最後にひと登りして塔ノ岳の頂上に到着する。


塔ノ岳(右)を望む


塔ノ岳頂上

塔ノ岳の頂上はだだっぴろく、土砂流出を防ぐため階段状に整地されている。中央に高い山名標識が建ち、その隣りの石垣の上に新しい石仏と石碑が建立されている。石碑には「祈登山安全 新世紀登頂記念 平成十三年五月十二日 狗留尊佛如来 丹沢山尊佛別當 東光院 秦野市山岳協会」と刻まれている。ここが尊仏祭の会場となるそうだ。


塔ノ岳頂上の山名標識


狗留尊仏如来

尊仏祭の開始は正午頃と聞いている。まだ11時で早いが昼飯にしよう。広い頂上も休憩中のハイカーさんがいっぱい。適当に空いた場所を見つけて、階段に腰を降ろす。まずはチーかまをツマミに缶ビールを飲む。今日は暑いのでビールがうめえ。展望を楽しみながら、ラーメンを作って食べる。塔ノ岳でこれだけ展望がきくのは初めてかも。富士山の右奥には南アの白い峰が連なり、檜洞丸と蛭ヶ岳の間には大菩薩連嶺の山影が見える。


塔ノ岳から富士山を遠望


塔ノ岳から檜洞丸(左)と蛭ヶ岳

守護札

昼食が終わってもまだ11時半なので、先に黒尊仏を探訪しようかな、と考えていたら、尊仏山荘から頭襟(ときん)を被った山伏さんが出て来て、山岳協会のスタッフ総出で尊仏祭の準備が始まった。狗留尊仏の周囲に竹串に挟んだ守護札を立て、お菓子や一升瓶の酒をお供えし、敷いた布の上に大量の塩を盛って護摩壇とする。周囲のハイカーさんに祭への参加を呼びかけて人が集まり、準備が出来たところで、尊仏祭が始まった。

まず、山岳協会の会長さんが挨拶し、尊仏祭の主旨について、丹沢山塊で亡くなった方の慰霊と登山の安全を祈念して始まった、とのお言葉があった。それから山伏(東光院の住職さん)が塩の上に井桁に組んだ細い薪に火をつけて護摩を焚き、九字の印を結びながら読経を行う。他に山伏さんがお二方。経を読み、時折、法螺貝を吹いて鐘を打ち鳴らす。護摩の煙が漂い、厳かな雰囲気の中に心を落ち着ける香りが立ちこめる。最後に参加者にお神酒が振る舞われ、12時前に祭は終了。守護札は参加者がお持ち帰り可とのことで、一つ頂く。


尊仏祭(1)


尊仏祭(2)

次は黒尊仏を探しに行こう。ネットで調べてはあるが、詳しい場所は分からない。丹沢山への縦走路に入り、尊仏山荘の裏手からすぐに登山道を離れて、左の笹原の斜面を下る。けもの道だろうか、微かな踏み跡が続く。マメザクラの群落があり、ちょうど見頃だ。


笹原の尾根を下る
背景は蛭ヶ岳


マメザクラ

笹原の小尾根を下ると、立ち木に赤テープがある。方向は間違っていないようだが、この先はかなりの急斜面で進むのは躊躇われるなあ、と思ったら、下方の斜面を降りて行く人影を発見。どうも同じ目的の先行者がいるらしい。私もさらに下ってみる。岩陰にはコイワザクラの群落があり、これもちょうど見頃を迎えて奇麗だ。


赤テープ発見


コイワザクラ

先行者に続いて下って行くと、急斜面の途中に突き出た小岩峰があり、その上に一基の文字塔と二体の石仏が祀られている。玄倉川源流域を隔てて丹沢主稜と対峙し、まさに丹沢の秘境だ。先行者と挨拶を交わすと山男らしい若い男性で、もしかして小屋関係者?おかげで何とか黒尊仏に辿り着けました。彼は写真を何枚か撮ったあと、先に帰って行った。

石仏はどちらも首がない坐像で、偏平足さんの記事によると阿弥陀如来像とのこと。文字塔には「尊佛」と刻まれている。尊仏祭の関係者が供えたのか(先行の彼ではないと聞いた)、祭のと同じ守護札が立てられている。「尊佛」の上に刻まれた種字?は、守護札の最上部の一字と同じである。


黒尊仏のある小岩峰


黒尊仏近影

尊仏祭参加と黒尊仏探訪という今回の山行の二つの目的を果たし、意気揚々と塔ノ岳山頂に戻る。何度も登った山でも、まだまだ知らないこと、新しい発見があるものである。大展望も得られたし、花も奇麗だったなあ。大満足で大倉尾根を下り、大倉駐車場に戻る。


大倉尾根を下る


大倉バス停

帰りに、尊仏祭でお神酒として振る舞われた地酒「丹沢山」を買って行こうと思い、渋沢駅周辺で数軒の酒屋に立ち寄る。取り扱っていそうな酒屋を紹介して頂き、片倉商店という店で首尾よくゲット。実家への土産に買い求めて帰った。