雨乞岳

天気:
メンバー:T
行程:雨乞岳登山口 6:45 …ホクギノ平(1600m) 8:35 …水晶薙分岐 9:20 …水晶薙 9:30〜9:55 …水晶薙分岐 10:05 …雨乞岳(2037m) 10:40〜12:00 …雨乞岳登山口 14:00
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

雨乞岳は、南ア甲斐駒山脈前衛の山だ。前衛といっても、主脈から離れて独立した山容をもち、2000mを少し越える標高がある。東麓の鳥原から登山道があり、頂上まで登り4時間を要す。なかなか登り応えありそうな山なので、以前から興味を持っていた。山梨百名山の一座でもある。近年、ヴィレッジ白州から新しい登山道が拓かれ、行程が短縮された。桐生からはちょっと遠い山ですが、GW中の好天の1日を利用して出かけて来ました。

桐生を未明の3時に車で出発。中部横断道・佐久南ICで高速を降り、八ヶ岳東麓をR141で南下する。山梨県に入って八ヶ岳南麓の田園地帯を下って行くと、行く手に残雪を戴く甲斐駒が高く聳える。素晴らしい山岳景観だ。

七里岩を下ってR20を経由し、サントリー白州工場の前を通って、鳥原集落奥の登山口に向かう。T字路の突き当たりに石尊神社の参道入口があり、左折して100m程のところに雨乞岳登山口の道標がある。路側に4台分程のスペースがあり、ここに駐車する。既に車が1台あり、先行のハイカーさんがいるようだ。神社入口の前の広場にも10台程駐車可能。

八ヶ岳南麓より仰ぐ甲斐駒
雨乞岳登山口

今日は良く晴れて暑い。最初からTシャツ1枚になって出発する。登山道は掘割状に深く抉れ、落ち葉がふかふかに積もっている。落ち葉に埋もれて段差の小さな丸太階段がずっと続いており、足元に気を使う。要所に道標が設置され、整備の手が良く入っているようだ。新登山道の開通後、こちらのルートは荒れ始めているという話も聞いていたが、そんなことは全然なくて、思ったよりもしっかりとした良い登山道だ。

掘割状の登山道
しっかりと道標あり

鮮やかな新緑に覆われた山腹を斜めに登って行く。ところどころに紫のツツジの花が咲いて、アクセントをつける。やがて尾根の上に出て、尾根を辿って緩く登る。相変わらず掘割状の道が続く。樹林に覆われて展望はなく、左方向の木の間越しに、頂上に白い薙をもつ日向山が見える位である。

新緑の中を登る
トウゴクミツバツツジ
木の間越しに日向山
スミレの仲間

単調な尾根の登りが続き、その後、傾斜が増した尾根をジグザグに絡んで登る。右方向の木の間から雨乞岳の頂上が遠くに眺められる。まだまだ先は長そうだ。

尾根を絡んでジグザグに登る
木の間越しに雨乞岳(左端)

やがて、カラマツの植林に覆われた平坦な頂きに登り着く。この辺りをホクギノ平と称するらしい。掠れた文字で「←三角点」と書かれた古い標識に従って、登山道から左の枝道に入ると、すぐに三角点標石がある。少し離れた所には、新しいプレハブの作業小屋も建つ。そこにあった標識によると、サントリーが森林管理のために設置した小屋らしい。

「←三角点」の標識
ホクギノ平頂上

ここからは細い山道となり、黄緑の新芽が美しいカラマツ林とササの緩い尾根を辿る。林を透かして、雨乞岳の頂上を仰ぐ。右側は黒木に覆われた深い谷に急斜面で落ち、谷筋には細く雪が残っている。途中、山道は黒木の針葉樹林帯を通り抜ける。この区間で、道の上に僅かに雪が残っていた。全行程を通して、登山道上に雪が残っていたのはここだけ。

カラマツとササの緩い尾根
右奥に雨乞岳
道を覆う雪はここのみ

カラマツ林のなだらかな山腹をトラバースすると、「←水晶ナギ 往復30分」と書かれた標識のある分岐に着く。水晶薙は景勝地らしいので、立ち寄ってみよう。

木の間越しに水晶薙と鋸岳
水晶薙分岐

尾根上の踏み跡を緩く下ると右斜面に小さな薙があり、雨乞岳の頂上が見える。さらに踏み跡を辿り、倒木を跨いで左の枝尾根を僅かに下ると、水晶薙の上に出る。風化した花崗岩の白砂に覆われた広大で急な崩落斜面が谷底まで続き、標高差は200m程もある。白砂に日光が反射して眩しい。

水晶薙からは南に向かって展望が開け、雁ヶ原と呼ばれる白い薙を戴く日向山(標高1660m)を手前に、奥秩父を遠くに望む。日向山から右に黒木に覆われた稜線が続き、高々と大岩山(標高2320m)を起こす。その奥にはさらに高く、鋸岳(標高2685m)が聳える。鋸岳は、白く残雪をちりばめたギザギザの稜線を連ね、かなりカッコいい。これは是非登らないといけないな。鋸岳の右には、高度を落としてなだらかな山稜が続く。地形図で見ると白岩岳(標高2267m)が見えているようだ。あちらの山も気になる。

水晶薙の入口
水晶薙から日向山を望む
水晶薙から大岩山(左)と
鋸岳(奥)を仰ぐ
水晶薙から白岩岳を望む

水晶薙の絶景と展望を堪能したのち、分岐に戻って雨乞岳に向かう。このコースはずっと緩い登りが続くが、最後に頂上への標高差200mの急登が待っている。カラマツの植林を一直線に急登し、林が切れてササ原が広がると、ようやく雨乞岳の頂上に登り着く。

雨乞岳は間近
頂上直下の急登

頂上はなだらかで、西と北は鬱蒼とした針葉樹林に覆われ、南東方面のみササ原の斜面で展望が開ける。数組のハイカーさんが休憩中で、マイナーなピークだと思っていたのに意外と賑やかだ。新登山道利用のハイカーさんが多いようだが、旧道からも後続のハイカーさんが数組登って来た。

頂上からの展望は素晴らしい。正面に登って来た尾根と釜無川流域の集落を俯瞰し、奥秩父や大菩薩連嶺を遠望する。右には日向山が見え、奥には白い富士山が浮かぶ。さらに鳳凰三山、甲斐駒を仰ぐ。鋸岳が樹林に遮られて見えないのは残念。

雨乞岳頂上
雨乞岳から鳳凰三山(左奥)と甲斐駒
登って来た尾根を俯瞰
日向山(左下)と富士山をズーム

時間は少し早いが、展望が楽しめる頂上で昼食とする。まずは、頂上の残雪で良く冷やした缶ビールを開ける。今日は暑いのでビールが美味い。ラーメンを食べ、1時間以上のんびり過ごしていたら、いつの間にか誰もいなくなった。私もそろそろ下るとしますか。

下山は往路を戻る。頂上の少し下で八ヶ岳と鋸岳も眺められる。展望はここで見納め。あとは樹林に覆われた尾根をひたすら下る。頂上直下の急斜面を降りれば、あとは緩い下りが続く。登りの倍くらいのスピードで快調に足を運ぶ。

雨乞岳直下から八ヶ岳
雨乞岳直下から甲斐駒と鋸岳
カラマツとササの緩い下り
落ち葉に埋もれた緩い下り

ホクギノ平を通過し、標高が下がるに連れてだんだんと濃くなる新緑を愛でながら歩く。登山口に戻ると、駐車は3台に増えていた(先に帰った人がいるので、最大4台)。

山麓近くの新緑
登山口に帰着

登山はこれで無事終了だが、折角なので石尊神社にも立ち寄ろう。参道入口までは歩いても僅かな距離。そこから石鳥居を潜って、幅広い石畳の参道に入る。アカマツの大木の並木があり、説明板によると樹高約30m、樹齢250〜300年で市指定天然記念物らしい。

石尊神社の参道入口
石畳の参道と松並木

石畳の終点に土俵、無人の社務所と二つ目の石鳥居があり、その先は物凄く急で長い石段となる。ひっくり返らないように手摺をしっかり握って登る。長丁場の山行の後のこの急登は、なかなか応える。

二つ目の鳥居
急な石段

石段の脇には多数の石像が建つ。中には力士っぽい像や半身で背中を見せる像があり(下の写真)、なかなか個性的だ。後日ネットで見つけた偏平足さんの「石仏471雨乞岳(山梨)」の記事によると、これらの石像は、やはりお馴染みの不動三十六童子だった。

石段脇の石像(伊醯羅童子)
石段脇の石像(不明)

石段を登り切ると、立派な狛犬に迎えられて、石尊神社本殿の建つ小広い境内に着く。境内には多数の石像が建ち、本殿脇には大きな不動明王像が二人の童子像を従えて建つ。説明板によると、この神社の創建は応永五(1398)年で、現在の社殿は江戸時代末期に復興されたものとのこと。大山祇神と日本武尊の二神を祀り、北関東に多い石尊神社(石尊、大天狗、小天狗を祀る)とは祭神が異なる。

石尊神社本殿
不動明王像

石尊神社の参拝を終え、車に戻る。帰りはR20で長野県に少し入った所にある道の駅「信州蔦木宿」の「つたの湯」に立ち寄る(600円)。GWとあって道の駅は大賑わいだが、温泉は混み合う程ではなく、ゆったりと浸かれる。露天風呂もあって、なかなか良い温泉だ。汗をさっぱり流し、道の駅でソフトクリームを食べたのち、桐生への帰途についた。