東谷山〜日白山
天気予報によると、この週末は土曜の一日間だけ晴れそう。越後湯沢にあって積雪期限定で登られている東谷山(ひがしやさん)と日白山(にっぱくさん)を周回する計画を立て、Mさんに同行頂いて出かけて来ました。
桐生を車で発ち、関越道月夜野ICからR17で三国峠を越えて、登山口の二居(ふたい)集落に到着。宿場の湯の向かいの駐車スペースに車を置く。天気予報に反して空は灰色の雲に覆われ、車外に出ると寒い。山中の雪は固そうなので、アイゼンとピッケルを携えて出発する(ピッケルは結局不使用)。地王堂川に架かる橋の上から、日白山の白い稜線が仰がれる。圧倒される程の標高差はないが、頂上は遠い。なかなか歩き応えがありそうだ。
旧三国街道の宿場で、現在はスキー客向けの旅館が建ち並ぶ二居の集落を通り抜け、二居峠に向かう。「二居峠→」の道標から右に分岐する坂道を上がって行くと、道端に御影石の新しい庚申塔と「元文二(1737)年丁巳十月吉日」の銘のある古い青面金剛像が建ち、古くから街道の往来で栄えた宿場の今昔を感じさせる。
集落の外れに「二居峠登口」の道標があり、ここから杉林の中の幅広い山道となって、山腹をジグザグに登る。これが旧三国街道で、現在は中部北陸自然歩道として整備されている。すぐに残雪が道を覆うが、道型がはっきりしていて辿るのは容易い。稜線直下の雪の斜面を登り切り、登り口から約30分で東屋のある二居峠に着く。
二居峠から尾根上に細く帯状に残る雪庇を辿る。最初の目標は送電鉄塔だ。数カ所で雪庇が切れて、僅かな距離だが密な笹藪を漕ぐ。ふと、左手の雪の消えた林間を見ると、送電線の巡視路が通じている。送電鉄塔まではこれを利用した方が楽だ。
巡視路は送電鉄塔で終点。この先はずっと雪が続きそうなので、12本爪アイゼンを着ける。このアイゼンは重いので、肩の荷がぐっと軽くなる。雪も固めで、アイゼンが良く効く。だんだん厚くなった雪庇を辿って稜線を登ると眺めが開けるが、相変わらず灰色の雲がたれ込めて、高い山の頂きは雲の中に隠れている。
やがて尾根が広がり、ブナが疎らに生えた緩斜面の登りとなる。先程までの尾根が細くて急な区間は山スキーでは辛そうだが、こういう場所ならば登りも滑りも楽しめそう。
さらにブナも疎らになり、開けた雪尾根となる。晴れていれば大展望が得られそうだが、今日は平標山の中腹から下が見える程度。それでも残雪の山は開放感があって、楽しい。
東谷山の頂上は幅広く平坦で、三角点のある地点は気づかずに通過。頂上稜線東端の最高点に着く。濃いガスに包まれて、周囲一面真っ白な世界となる。ジャケットを着込み、風を避けて小休止。テルモスのホットココアを飲んで暖をとる。
東谷山から少し急な雪尾根を鞍部へ下り、緩やかな小ピークを二つ程越える。ガスが少し薄れ、真っ白な日白山の頂上がようやく雲間に姿を表す。左側に、滑ったら気持ち良さそうな無木立の広い斜面が見える。幅広い雪尾根を登り、日白山の頂上に着く。
頂上は緩やかで広い。矮小なダケカンバの幹に、文字が掠れた山名標が掛けられている。360度の展望が得られるはずの頂上だが、残念ながらガスに覆われて何も見えない。風を少しでも避けるため、低木の陰に腰を降ろし、昼食とする。私はもやし入りラーメンを作って食べる。缶ビールも持って来ているが、この天気では寒くて飲む気になれない。
昼食を終える頃、ようやく雲が切れて青空が広がり始めた。谷川連峰はまだガスの中だが、登って来た東谷山からの尾根や、北のタカマタギ(1529m)へ続く尾根が見え始める。どちらを見てもどっさり雪が残って、一面白銀の世界。いい眺めである。
下山は稜線を少し南下した鞍部を経て、地王堂川の谷間を降りることにする。頂上からの下りは最初は急だが、雪が少し軟らかくなっていて、踵キックステップで快適に下る。谷川連峰は相変わらず雲の中だが、一瞬、平標山の頂上へ続く稜線が姿を現した。さすがに平標山は高くて雄大だ。平標山まで雪尾根を縦走するのも面白そうである。
途中で、山スキーの単独行の方とすれ違い、挨拶を交わす。この日に会った登山者はこの一人だけで、残雪期に人気の山にしては少ない。おかげで静かな山歩きが堪能できる。
鞍部に着く頃には晴れ間が広がって、振り返ると青空を背景に日白山の頂上が白く輝いている。頂上でこの天気だったら、缶ビールが飲めたなあ(帰りの運転があるから、もう飲めるタイミングではない)。
鞍部から谷間に向かって一直線に下る。急な雪斜面で、登りにはきつ過ぎるが、下りは快適。正面に苗場山を遠望しながら、ずんずんどこどこ下る。Mさんはつぼ足スキーでイメトレ中?谷底に近づいたら、ダケカンバやカラマツが疎らに生えた左岸の緩斜面を下る。
ところどころのテープ類に導かれて(なくても適当に下ってOK)杉の植林帯の緩斜面を下り、雪に埋もれた作業道を辿って地王堂川の右岸に渡る。水流があるが、まだ雪が繫がっていた。右岸にははっきりとした作業道が通じ、あとはこれを下るだけである。
作業道を下っている途中で、先刻の山スキーの方に追い抜かれる。さすが、スキーは速い。除雪終点に着いてアイゼンを脱ぎ、舗装道をてれてれ下って、二居の駐車地点に戻る。日白山への登りは3時間40分かかったが、下りはつぼ足でも半分以下の1時間35分だった。雪山の下りはホント速くて楽だ。
荷物を車に放り込み、着替えセットを持って、そのまま向かいの宿場の湯へ(600円)。超便利。今日はスキーシーズンも終盤のためか、お客さんも少な目。ゆったりと湯船に浸かってよく温まったのち、桐生への帰途についた。