大津〜三ッ岩岳

天気:
メンバー:T
行程:烏帽子岳登山口 7:10 …大津入口 7:45 …広河原 8:15 …稜線鞍部 8:40 …中央峰(1053m) 9:05 …北西峰 9:20〜9:30 …中央峰 9:45 …大津(東峰)10:10〜10:25 …鞍部 11:20 …第一鞍部 11:35 …三ッ岩岳(1032m) 12:10〜12:20 …展望ピーク 12:40〜13:10 …竜王大権現 13:20 …三ッ岩岳登山口 13:50 …烏帽子岳登山口 14:00
ルート地図 GPSのログを地理院地図に重ねて表示します。

西上州の主要なピークはだいたい登っているが、三ッ岩岳にはまだ登ったことがない。アカヤシオ(ヒトツバナ)群落で有名な山なので、花が旬の時期に行きたいなー、と思いつつ、カタクリの三毳山と同じパターンで、毎春タイミングを逃していたためである。

この春は、先々週のヤシオ山、先週の仙人ヶ岳とアカヤシオを見に行って、2週連続で当たりだったので、今週末は三ッ岩岳で見頃かも、と思い至って登る気になった。西上州の山は久しぶりだし、天気も良さそうである。三ッ岩岳に行くなら、その奥の秘峰・大津も一緒に登りたい。ガイド本(群馬300山、薮岩魂)によると、大津〜三ッ岩岳の縦走にはロープが必要な箇所があるとのこと。懸垂下降の装備を携えて出かけてきました。

桐生を5時半に車で出発し、上信越道を下仁田ICで降りて、大仁田ダムに向かう。ダム下の三ッ岩岳登山口の駐車場はハイカーさんの車で既に8割方埋まっており、さすがこの時期に集中して人気の高い山である。ここではWCを借りるだけにして、少し先の烏帽子岳登山口の駐車場に車を置く。こちらは、チャーターと思しきタクシーが1台あるだけで(すぐにもう1台来たが、それでも比較的)空いている。


三ッ岩岳登山口と大仁田ダム


烏帽子岳登山口の駐車場

準備を整えて出発。少し戻り、大仁田ダム湖畔への車道に入る。途中で、ハイカーさんを乗せたマイクロバスに追い越される。きっと大津に向かうパーティーだろう。

ダムの天端(てんば)から三ッ岩岳を仰ぐと、頂上付近にはピンク色が点在し、遠目にもアカヤシオが咲いているのがわかる。やったね(^^)。ダム湖上流は両岸から峻険な岩峰によって狭められ、なかなかの景観。思わず、すごーい!と感嘆する。右の岩峰が目指す大津の東峰だ。岩峰の山腹にもアカヤシオが点々と咲いている。


大仁田ダムから三ッ岩岳を仰ぐ


大仁田ダムより大津(右)を望む

天端を渡り、ダム湖(大仁田湖)の左岸を奥に進む。烏帽子橋の袂に先程のマイクロバスが停まっていて、ハイカーさん達がザックをバケツリレー方式で手際よく車外に運び出している。大津の頂上は急峻な岩稜を見上げた奥高くにあり、威圧するように聳り立つ。


大仁田ダムより三ッ岩岳登山口を俯瞰


ダム湖畔より大津(右奥)を仰ぐ

烏帽子橋で大仁田川本流を右岸に渡り、廊下状の峡谷の中を歩く。両岸の岩壁にもヤシオツツジやミツバツツジが咲く。廊下を抜けると車道終点で、右岸の細い山道に入る。

(2017-05-18追記:『南牧村誌』では、この廊下状の峡谷を「橋の岩」と称している 。)


烏帽子橋を渡って峡谷に入る


車道終点

山道を辿って渓流を遡り、丸木橋で左岸に渡る。ハシリドコロが多数群生し、紫色の釣鐘形の花が葉の影に咲いている。


丸木橋で左岸に渡る


ハシリドコロ(有毒)

大仁田川に沿って左岸の山道を歩くと、程なく赤ペンキで「→」の印のある大石に着く。ここで右に大津へ向かう道が分岐するが、急登の連続と聞くし、渓谷沿いの山道の雰囲気が良いので、もうちょっと渓谷を遡ってみることにする。


大仁田川に沿って歩く


大津入口

この先も明瞭な山道が続き、大岩の下を過ぎると「馬頭観世音」の石碑が建つ。「慶應二丙寅(1866)年」の銘があり、江戸時代末期のものだ。この道は上信国境稜線を越える「大仁田越え」と呼ばれる古の峠道だったそうで、この石碑は往時の往来を偲ばせる。


大岩の下を通る


馬頭観世音碑

やがて川幅が広がり、ここが稜線への登り口で広河原とか中洲と呼ばれている地点だろう。右折して疎らな杉林の中のガレ沢というかガレ場を登る。道や踏み跡はないが、傾斜はさほどないので問題ない。やや左寄りに浅い窪を詰めて、稜線上の鞍部に登り着く。


広河原


ガレ沢を登る

鞍部から稜線を東(左)の大津方面へ辿る。冬枯れの雑木林に覆われて藪はなく、歩き易い。アカヤシオがポツリポツリと現れ始める。途中でソロのハイカーさんと交差。大津もマイナーながらハイカーさんが結構居るな。

登り着いた小ピークには山名標の類は何もないが、ここが1053m標高点の中央峰(薬師山)だ。群馬300山によると、ここから北西峰は約35分で往復できる。木立に隠れて北西峰は見えないが、そちらに延びる枝尾根には明瞭な踏み跡があるので、行ってみよう。


冬枯れの雑木林の稜線を辿る


中央峰から北西峰へ急降下

枝尾根を急降下すると、木立の間から急峻な岩峰が姿を表す。ちょっと見は垂直に切り立って、登れそうな感じがしない。岩峰の基部を退色した赤テープを目印に左に回り込み、垂直な岩場を立木を手がかりに高さ3m程攀じ登る。ここが一番の難所と思う。アカヤシオ咲く岩場を登ると、最後は傾斜が緩んで、北西峰の頂上に着く。


北西峰を仰ぐ


北西峰基部の岩場


アカヤシオ(1)


北西峰から三ッ岩岳を望む

狭い頂上は周囲が切れ落ちて360度の展望が開け、実に爽快。東に大津の北峰と東峰の岩峰を間近に眺め、目を左に転じて、ゴツゴツした稜線を広げる三ッ岩岳を望み、鹿岳から毛無岩、経塚山、立岩、兜岩山にかけての西上州の山並みを遠望する。西には大岩の岩峰が突き立つ。その左の高い鋭鋒はククリ岩(1355m三角点峰)で、未踏の気になる山だ。

大展望を楽しんでいると、中央峰の方からガヤガヤと人声が聞こえてきた。マイクロバスのハイカーさんグループが到着したようだ。そろそろ、次へ動くとしますか。


北西峰から東峰と北峰


北西峰から中央峰を望む

北西峰の下りはルートが分かれば問題ない。中央峰へ登り返す途中で、ハイカーさんグループが降ってくるのと出会う。ご年配の方の数十名のグループなので、北西峰を登って大丈夫かなと少し心配。結構怖いですよー、お気をつけて、と言葉を交わして見送る。

中央峰に戻り、次は北峰に向かう。北峰は稜線から僅かに外れたピークで、樹林に覆われた岩稜を渡って簡単に頂に立てる。こちらは北面に眺めが開け、さらに近寄った東峰の眺めと、先程登った北西峰の全貌の眺めが抜群である。北西峰の基部にはハイカーさんグループが見え、岩峰に取り付いているようである。


北峰から北西峰を望む
後方にククリ岩と大岩


北峰から東峰を望む

東峰に向かうと痩せ尾根となり、太いワイヤーが稜線に沿って架けられたまま残置されている。小岩峰を巻くとナイフリッジとなり、右側は切れ落ちた岩壁で緊張する。東峰の正面は岩壁で、その上までワイヤーが架かる。東峰基部を左に回り込み、トラロープがぶら下がった岩壁をロープを頼りにえいやっと登る。岩稜上に出れば傾斜も緩まり、あとは楽に東峰の頂上に着く。


残置ワイヤーのある岩稜


東峰基部の岩場

頂上は小広く、360度の展望が開ける。ここまで整備された登山道がないにもかかわらず、南牧村が設置した「大津 1053m」(実際の標高は1032m)の山名標がある。北西峰を眺めると、ハイカーさんグループの先頭は基部の岩壁を突破して、中段に上がったようだ。しかし、しばらく見ていても、頂上には人影は現れない。そのうち、北峰から痩せ尾根をこちらに向かうハイカーさんが現れて、どうやら北西峰の登頂は諦めたようだ。


大津(東峰)頂上


東峰から北西峰を望む
後方の鋭鋒はククリ岩

三ッ岩岳はもちろんバッチリ眺められる。東の谷を覗き込むと大仁田湖の深緑色の湖面が俯瞰でき、烏帽子橋に駐車しているマイクロバスも(写真では小さくてわかりにくいが)見える。小さい峰ながら高度感がある眺めで、真に気持ち良い。


東峰から三ッ岩岳を望む


東峰から大仁田ダムを俯瞰

大展望を堪能したのち、三ッ岩岳に向かう。予めハーネスを着用して、急峻な稜線の下降を開始する。最初は低木の間に明瞭な踏み跡があって簡単に下れるが、程なく切れ落ちた崖に突き当たる。覗き込むと7mくらいの段差だ。ここはロープを出し、立木を支点にして懸垂下降する。


懸垂下降地点


懸垂下降した岩場を見上げる

崖を下った後も急な岩稜が続くが、立木が疎らに生えているためか、あまり怖さは感じない。でも落ちたらただではすまないので慎重に。左にはアカヤシオを纏った北西峰の全容が現れる。あの天辺に登ったのは面白かったなあ。

やがて樹林に覆われた稜線となり、薄い踏み跡が再び現れる。これを辿って下ると、ホッとして油断したのか、いつの間にか西に進路が外れていることに気づく。しかし、下は樹林の生えたザレた斜面で、傾斜はそんなにない。斜面をトラバースし、ちょっと登り返して稜線上の鞍部に復帰する。これで今日の核心部(危ない区間)は無事終了。ハーネスをしまって一息入れる。


岩稜を下る


東峰を見上げる


北西峰を望む


鞍部に到着
稜線を見上げる

ここから雑木林と植林に覆われた緩やかな稜線を辿る。途中でご年配で単独のハイカーさんとすれ違う。大津に登るのかな(群馬300山では東峰を巻くルートが紹介されている)。木の間に三ッ岩岳周辺の岩峰が見えてくると、やがて第一鞍部で一般登山道と合流。ハイカーさんもすぐに数組見かける。


三ッ岩岳へ稜線を辿る


第一鞍部の古い道標

明るい雑木林の下のザレた斜面をジグザグに登って、稜線上の第二鞍部に出、小さなアップダウンを繰り返して稜線を辿る。三ッ岩岳の登りに取り付くと大きな岩場が現れ、左に回り込んで急坂を登る。頭上にはアカヤシオが咲いているが、これはまだ手始めだ。


第二鞍部への登り


第二鞍部


三ッ岩岳に近づく


アカヤシオ咲く急坂を登る

三ッ岩岳の頂上稜線に登り着くと、アカヤシオがトンネルをなしている。ハイカーさんも私も写真撮影に余念がない。竜王大権現コースの登山道を合わせ、アカヤシオに包まれた稜線を頂上に向かう。


アカヤシオのトンネル


アカヤシオに染まる頂上稜線

三ッ岩岳頂上はハイカーさんで混み合っているかと思ったら、意外と人が少ない。居合わせた女性ハイカーさんに尋ねたら、みんなもう下山して、烏帽子岳に向かったらしい。この方曰く、頂上周辺のアカヤシオは100%(満開)、一部120%とのこと。日当たりが良く、暖かい日が続いたので、一気に咲き始めたらしい。

頂上からの眺めは、西上州の主な山をぐるりと見渡して素晴らしいの一言。谷間には山村が散在する。頂上の北西の隣には中岩と呼ばれる岩峰があり、その天辺には首のない石仏が建っているのが見える。これは大変興味を惹かれて行ってみたくなるが、険しい岩峰なので今日はやめて、またの機会にしよう。


三ッ岩岳頂上


中岩(手前)と経塚山
立岩方面の展望

南を眺めれば、黒々とした三つの岩峰が並ぶ大津がよく見える。あちらの方が、三ッ岩の名称がしっくりくる気がする。正午を過ぎたので、頂上稜線のどこか邪魔にならないところで、アカヤシオを観賞しながら昼食にしよう。


三ッ岩岳から大津を望む


アカヤシオ(2)

頂上から戻って、竜王大権現コースにちょっと入る。先程のハイカーさんがいらして、ヒカゲツツジが咲いているとのこと。ヒカゲツツジの花は初めて見る。彼女は花を追いかけてあちこちの山に出かけているそうで、ヒカゲツツジなら「つぼやま」がすごいですよとお教え頂く(後日検索したら、山梨県上野原市の坪山という山らしい)。


ヒカゲツツジ


アカヤシオ(3)

休憩に良さそうな所はことごとくご夫婦のハイカーさんが休憩中で(^^;)、さらに下って登山道から少し外れた展望の良い小ピークを見つける。ここで昼食にしよう。レトルトパウチの鯖味噌煮を肴にDRY ZEROを飲む。今日は暑いからビール(味飲料)が美味い。それから、カップ麺の天ぷら蕎麦を食べる。晴天の下で花見をしながらの食事は(手抜きの物ながら)格別である。


展望ピークから頂上稜線の眺め


竜王大権現コースを下る

下山は竜王大権現コースをそのまま下る。最後のアカヤシオを見て小ピークの左を巻き、岩峰の手前で稜線を離れて杉林の急斜面をジグザグに下る。竜王大権現は岩壁の基部に祀られ、石垣の上に壊れかけた木の社と石祠がある。見上げる岩壁は恐ろしく高い。


杉林の急斜面をジグザグに下る


竜王大権現

なおも杉林の中をジグザグに下る。谷に下り着いて尾根コースの分岐を過ぎると、新しい砂防堰堤が連続する。H23年竣工なので、その前(H19)の台風被害の復旧でできたものらしい。砂防堰堤の横を下って、三ッ岩岳登山口に到着。大抵のハイカーさんは既にお帰りで、駐車場の車はかなり減っている。


砂防堰堤の横を下る


三ッ岩岳登山口と竜王の里宮

後は車道を歩いて烏帽子岳登山口の駐車場に戻る。途中の路側スペースにも駐車がちらほらあり。信濃屋嘉助と道の駅オアシスなんもくに立ち寄って、和菓子やジャム、ジュースを土産に買ったのち、桐生への帰途についた。