八海山

天気:のち
メンバー:T
行程:二合目 4:30 …四合目 5:30〜5:35 五合目 6:05 …千本檜小屋 8:40〜9:00 …大日岳 10:25〜10:45 …入道岳(1778m) 11:10〜12:00 …新開道分岐 12:40 …七合目(カッパ倉) 13:45 …稲荷清水 14:20〜14:40 …二合目 15:35
ルート地図 GPSのログ(往路:赤、復路:青)を地理院地図に重ねて表示します。

海の日三連休も二日目まで梅雨空が続いたが、最終日になって漸く晴れの予報が出た。特に新潟方面の天気が良さそうなので、八海山に登ろうかな。

八海山には、学生時代の夏休みに越後三山縦走(八海山→中ノ岳→駒ヶ岳)で登頂したことがある。そのときは城内口から屛風道を登るも五合目で雷雲に遭い、四合目まで撤退して緊急露営。翌朝、再度登るも寒冷前線が頭上を通過して、豪雨と至近距離の雷鳴の中、命からがら千本檜小屋に辿り着くという散々な目にあった。そのリベンジではないが、晴れたときに再度、屛風道を歩いてみたい。もちろん、八ッ峰の岩峰巡りも楽しみである。

という訳で、屛風道を往路、新開道を復路とする周回コースで八海山に登って来ました。

深夜2時に桐生を車で出発。関越道を六日町ICで降り、八海山山麓の山口の集落を過ぎて笹原の中の舗装道を上がると、城内口二合目に到着する。4時を少し過ぎたばかりの未明で、広い駐車場に他の車はなく、ひと気もなし。周囲の杉林の薄暗闇の中には、多数の霊神碑が何やら霊気を漂わせて建つ。木陰から仰ぐ夜空にはくっきりと三日月がかかり、天気は悪くなさそうだ。朝食のパンを齧りながら夜明けを待つ間に、車が1台やって来た。


城内口二合目


屛風沢の奥に八海山を仰ぐ

ヘッドランプの要らない薄明となったので出発。すぐに屛風沢の右岸に渡る。屛風沢の奥には「八本の乱杭歯をむきだして天にかみつく八海山」が聳える。沢には増水時に備えて籠渡しが架かるが、今日は飛び石伝いで楽に渡れる。

まだ薄暗い杉林の中を緩く登る。湿気が高く、すぐにジットリと汗をかく。やがて稲荷様を祀る大岩があり、三合目の標識がある。ここから登山道は山腹のトラバースとなり、幾つかの小沢を渡る。木立の切れ間から対岸の新開道が通る尾根や、八海山の頂上稜線を高く見上げる。上空は雲が多いが、天気が崩れる心配はなさそう。


屛風沢の籠渡し


まだ薄暗い杉林の中の道

ドウドウと流れる生金沢を渡り、しばらくこの沢の左岸に沿って登る。写真を撮っている間に、後続のハイカーさんに追い抜かれる。沢から離れて再び屛風沢の左岸沿いの道となる。屛風沢の奥に一筋の大滝が架かっているのが見えると、四合目は近い。


生金沢を渡る


四合目(清滝)付近

やがて、草叢に埋もれて「←五合目 四合目 水場→」という道標のある分岐に着く。水はまだ必要ないが、水場はすぐそこで清滝の不動尊があるはずだから寄ってみる。しかし、不動尊の周辺の様子は、前回の記憶から大きく変わっていた。以前は、大岩の岩屋の中に石像や石碑が祀られていたように覚えているが、現在は岩屋はなく、プレハブ小屋の中に不動尊が祀られている。水害か何かで、岩屋は崩壊してしまったのかな。


清滝の小屋


ブナ林を登る

分岐に戻り、五合目に向かう。ここから急登となり、ブナ林を抜けると低木と草藪に覆われたスラブ状の急斜面を、ところどころに張られた鎖に頼りながら登って、グングン高度を上げる。展望が開け、周囲の山肌はどこもスラブ状で急峻だ。振り返ると、屛風沢がもうずいぶん下で、山麓の山口の集落も眺められる。


登って来た急坂


五合目への登り

小さな岩稜を登って、立派な松のある小さなコブに着く。ここに岩に埋め込まれた五合目のプレートがある。急登+鎖場が連続し、加えて山歩きのブランクで足が鈍っているせいか、既に疲れて来た。ここで長めの休憩を取る。前回はテント泊の荷物(約15kg)を背負って、よくぞここを登ったもんだなあ。昔の自分に感心してしまう。


五合目から六合目を望む


六合目への登り

六合目へも一直線の急登と鎖場が続く。見上げれば、八ッ峰のギザギザの頂上稜線はまだまだ高い。岩稜上の小さな瘤をいくつか越えると、右側は屛風沢に向かって切れ落ちた大岩壁(屛風岩)となる。岩稜を登ると、倒れた石柱のある地点に着く。ここが七合目かな?この辺りから青空が広がって、八ッ峰の向こうから陽が射して来た。屛風沢はスラブとなって、大きな滝をかけている。


屛風岩の縁の岩稜を登る


屛風沢にかかる滝を俯瞰

登山道は岩壁基部の草付きをトラバースする。刈り払いはされているが、道は踏み跡程度で、滑らないように注意する。ルンゼ状の小沢に入り、赤ペンキに従って小沢を暫く登る。登山道が小沢から離れるところで、岩から滴る冷たい水を飲んで休憩。その間に、いずれも単独のハイカーさん3組に抜かれる。結構、登っている人が多い。


岩壁の基部をトラバース


ルンゼ状の小沢を登る

元気を取り戻して、再び登り始める。低木帯をジグザグに急登し、草付きの急斜面に差し掛かると、屛風道の最後の鎖場が現れる。


屛風道上部の急登


草付きの鎖場

この鎖場を登り切ると笹に覆われた緩やかな尾根に出て、行く手に千本檜小屋が見える。右手には八ッ峰の岩峰群が連なり、振り返れば魚沼平野が遥か下だ。屛風道の急登+鎖場の連続にすっかりくたびれて、千本檜小屋に登り着く。管理人さんから、早い(到着)ですね、と声を掛けられるが、いやー、もうヘロヘロです。この小屋は、前回、まる一日沈殿した懐かしい場所だ。中を覗いてみると、内装は新しくなっているが、八海山大神を祀る部屋の様子は前回のままだ。


千本檜小屋へ最後の登り


千本檜小屋

小屋の前のベンチで、まずは大休憩。水無川の渓谷を隔てて聳える駒ヶ岳には、谷底から湧き上がる雲が纏わり付いて、全貌は見えない。八海山ロープウェイから薬師岳を越えて来るコースからもハイカーさんが登って来るが、まだ時間が早いせいか、数はそう多くはない。隣りの単独行の人が缶ビールを美味そうに飲み始めて、こっちも飲みたい気分になるが、難所の八ッ峰が控えているから、ここはグッと我慢。


雲間に駒ヶ岳を望む


千本檜小屋と薬師岳(奥)

元気が回復したところで、いよいよ八ッ峰縦走に向かう。迂回路に入って直ぐの道標に従い、岩溝状の道を登って稜線にでる。地蔵岳は割愛。稜線を辿って不動岳の頂上に着く。

頂上には石祠と不動明王像、多数の石碑があり、行く手にはこれから辿る岩峰群が眺められる。水無川(東)側は相変わらず雲に覆われているが、西側はきれいに晴れて、登山口の山口の集落が遥か下に俯瞰される。

不動岳から鎖の架かる岩稜を伝い、キレット状の鞍部に下って登り返す。振り返ると、下って来た不動岳の岩稜が眺められる。結構険しく見えるが、実際にはそれ程でもない。


不動岳頂上


不動岳から続く岩峰群


山麓の山口の集落を俯瞰


不動岳を振り返る

登り着いた小ピークには、「五大岳」と刻まれた石碑が横倒しとなっている。ここから、小岩峰を連ねる岩稜歩きとなる。小さなキレットを鎖で通過。左側は雪渓をちりばめた急傾斜のスラブとなって水無川へ落ち込み、要所に鎖があっても、なかなか気が抜けない。


岩峰が続く


鎖場のトラバース

展望を楽しみながら岩稜上を小さく上下して進み、直登気味の鎖場(足場はあるので問題無し)を上がると白川岳の頂上に着く。行く手には摩利支岳の岩峰がにょっきりと突き立っている。摩利支岳の手前には斜めの長い鎖場があり、ちょうどハイカーさんが降りているのが見える。あそこが、ハイトスさんが目撃された転落事故の現場に違いない。


白川岳への登り


白川岳付近から摩利支岳

難所に備え、ちょっと長めの休憩をとってから先に進む。鞍部で迂回路への道を右に分け、ルンゼの中を梯子で登ると、件の鎖場となる。斜上する長い鎖場で、下は水無川へ向かって一直線のスラブである。落ちたらどこまで行くのやら。しかし、鎖場自体は注意して登れば特に危なくはない。登り着いたピークには「摩利支岳」の石碑が建ち、八ッ峰最高峰の大日岳は目前である。


迂回路への分岐


ルンゼを梯子で登る


摩利支岳への鎖場


摩利支岳から大日岳

鎖を伝ってギャップを越え、大日岳の岩稜に取り付く。頂上直下の鎖場は、下段にアルミ梯子が設置されている。ここは、前回来たときのことを良く覚えている所で、梯子がなかったために、鎖をゴボウ抜きの腕力頼りで登り切った。現在は梯子があるものの、その上も急傾斜なので、一息入れてから登る。


ギャップを越える


大日岳直下の梯子+鎖場

登り着いた大日岳には天照大神が祀られ、八海山大神の小さな銅像が建つ。ここで大休止。相変わらず水無川側の方は雲に遮られるが、その他の方向の展望は良い。これから向かう入道岳や、そこへ続く稜線もよく見える。入道岳へは、すぐに切り立った岩場を鎖で下ることになる。前回は、千本檜小屋の管理人さんの「大荷物の場合は迂回した方が良い」とのアドバイスにしたがって、迂回路で迂回した個所だ。なので、下れるかな?と思って見ていると、ハイカーさんが数名、先に下って行った。特に問題はなさそうである。


大日岳頂上
背景は入道岳


大日岳の先の鎖場(1)

充分に休んだ後、縦走を再開。鎖場を下り、次の小ピークを越えると、また急で長い鎖場がある。これを下ると、鎖場の基部には「キケン注意!これから先は鎖場の連続、非常に危険です。初心者・飲酒者・体力消耗者や雷雨強風時には迂回路をご利用下さい。転落すれば助かりません。健脚でも充分注意して下さい」との警告のプレートがある。ここから先、入道岳へは鎖場はないので、難所を越えて一安心である。

迂回路の分岐点を過ぎ、入道岳に向かって緩く登る。やがて左側が岩壁の岩尾根となり、岩壁の下には分厚い雪渓が残る。深いシュルンドがパックリと口を開けていて、見ていると怖くなる。周囲の草原にはニッコウキスゲの黄色い花がポツポツ咲いている。


大日岳の先の鎖場(2)


入道岳への登り

登り着いた入道岳の頂上は緩やかで、摩利支天大神の石碑や潰れた石祠、少し進んだ最高点には「凡ヶ岳」の石碑があり、アキアカネがたくさん飛び回っている。ここで昼食とし、缶ビールを解禁。ソーセージをボイルしてツマミにし、ラ王を作って食べる。生憎、ガスが巻いてすっきりした展望は得られないが、雲間から水無川の渓谷や五竜岳への稜線が眺められる。


入道岳頂上


雲巻く水無川の大渓谷

昼食後、往路を戻って迂回路に入る。急斜面に掛けられた長いアルミ梯子を下り、大日岳の岩峰の基部をトラバースすると、新開道の分岐に着く。


入道岳付近から八ツ峰の岩峰群


迂回路へ梯子を下る

新開道に入ると、急な草付き斜面をトラバースする道となる。踏み跡のような道で、足場はあまり良くない。尾根上に出ると、あとは比較的歩き易い登山道となり、眼下に山口の集落を眺めながらの下りとなる。しかし、ここからが長い。低木帯で展望が良い分、陽射しもまともに浴びて暑い。


新開道に入り急斜面をトラバース


新開道の尾根と山麓を俯瞰


入道岳を振り仰ぐ


低木帯の尾根を下る

グングン下り、カッパ倉へ少し登り返す。振り返るとギザギザの八ッ峰は既に高くて遠い。カッパ倉の頂上の少し先に七合目の標識があり、屛風沢付近が良く見渡される。今日はあの辺りを登って来た訳で、よくもまああんな険しい所に道を作ったものだ。


既にだいぶ下って八ッ峰が高い


七合目から屛風沢付近の展望

この先はブナ林に入って緩く下る。木陰で陽射しは避けられるが、標高が下がるに連れてどんどん気温があがる。ポリタンにはまだ水があるが、冷たい水が欲しい。ようやく、狛狐と石祠のある稲荷社に下り着く。山腹を2分程トラバースしたところにバンバン流れる水場があり、冷たい水をガブガブ飲む。いやー、生き返った。ここでも大休止とする。


樹林に入って緩く下る


稲荷清水

緑滴るブナ林を小さくジグザグを切って下る。三合目の石碑を過ぎると山麓の緩やかな道となり、伐採跡地の草叢を切り開いた道を下る。やがて、林道の終点に着く。下界は猛暑だ。林道を辿り、再び山道に入って下ると、車を置いた二合目に帰着した。やれやれ、新開道の下りはとにかく長くて、暑かった。


ブナ林を下る


三合目を過ぎて山麓の道


林道に出る(車は通行不可)


二合目の駐車場に戻る

新開道を前後して下っていたご夫婦のハイカーさんが、八海山ロープウェイの山麓駅に車を置いていると伺ったので、同乗頂いてお送りする。明日は十字峡から中ノ岳に登られるそうで、なかなかの健脚である。その後、六日町駅近くの日帰り温泉「湯らりあ」(400円)に立ち寄り、さっぱり汗を流した後、桐生への帰途につく。翌日、関東甲信地方は梅雨明けとなった。