針ノ木岳〜蓮華岳

2013年6月8日(土)〜9日(日)
メンバー:M,T
ルート地図 GPSのログ(赤:1日目、青:2日目)を地理院地図に重ねて表示します。

前の週末に常念岳に登ったMさんによると、この時期の北アは登山者が少なく、残雪は豊富で、梅雨の晴れ間を捉えればなかなか狙い目とのこと。北アには登りたい山が多いものの人が多そうで、なかなか気が向かなかったのだが、夏ではなく梅雨時に登るという発想はなかった。今度は針ノ木雪渓から針ノ木岳に登るというMさんの計画に乗っかって、幕営1泊2日の行程で出かけて来ました(Mさんの記事→針ノ木岳)。

6月8日
天気:時々
行程:扇沢 8:30 …雪渓末端 9:30 …針ノ木峠 12:10〜13:00 …針ノ木岳(2821m) 14:20〜14:40 …針ノ木峠 15:30(テント泊)

桐生を車で5時に出発。北関東道、上信越道を経由して更埴ICで高速を降り、長野市街から県道長野大町線を経由して大町に向かう。この県道は長野オリンピックの際に拡張整備された道で、快適に走行できる。途中の麻績から大町街道を走って大町市街に出る。安曇野を隔てて後立山連峰から裏銀座にかけての残雪の山々が連なり、山行への期待が高まる。

新緑が美しい籠川の闊達な渓谷を遡り、立山黒部アルペンルートの扇沢駅に到着。ここに来るのは、アルペンルート経由で立山を目指したとき以来、10年振りである。夏のハイシーズンには観光客と登山者で溢れかえる扇沢だが、まだ時期が早くて左程の混雑はなく、首尾よく無料駐車場に車を置くことができた。今年は黒部ダム完成50周年だそうで、バスターミナルには観光PRの大きな看板が掲げられている。今年の夏は益々賑わうだろうな。

幕営道具や防寒具等で結構重たいザックを背負って出発。駐車場の奥からバスターミナルの左手に出て、「針ノ木自然遊歩道/針ノ木岳登山道」の看板から登山道に入る。

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扇沢無料駐車場

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針ノ木自然遊歩道入口

登山道は新緑の樹林を抜け、車道を数回横切る。少し登ると、針ノ木雪渓を取り囲む山々が見えて来る。急峻な山肌にべっとりと雪を残し、ワクワクする眺めだ。車道を横断して続く登山道の入口を見落とし、車道を少し辿って籠川沿いの未舗装の作業道に入る。この作業道は結果的に雪渓への近道だった。

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針ノ木雪渓左岸の山々を望む

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籠川沿いの作業道に入る

作業道を辿って籠川の左岸から右岸に渡り、本流の砂防堰堤群を眺めながら小さなジグザグを切って登る。やがて作業道は消え、本流沿いの残雪をトラバースして登る。いくつかの砂防堰堤を左から越えて本流に降りると、針ノ木雪渓の末端に到着する。

広大な雪渓は最初は緩く見えるが、次第に傾斜を増して、白い雲が渦巻く稜線に駆け上がって行く。これは素晴らしい山岳景観だ。ここでアイゼンを履く。今回は雪の上を歩く距離が長くなるので、雪山用登山靴に12本爪アイゼンを装着。ピッケルも携えて、大雪渓の登りに踏み出す。

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砂防堰堤を越えて雪渓を目指す

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針ノ木雪渓の末端に着く

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雪渓を登る

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ノド付近から振り返った展望

雪渓はノドと呼ばれる谷が狭まった個所まで一直線に登って行く。両側の斜面は恐ろしく高く急峻で、支流の谷も残雪で覆い尽くされ、周囲の新緑とのコントラストが美しい。落石に注意を払って登る。

ノドの個所は傾斜が急で、登り切るのに一汗かく。ここで雪渓は少し左に曲がり、今まで見えなかった針ノ木峠まで見通せる様になる。

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雪渓から針ノ木峠を見通す

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マヤクボ沢出合付近

徐々に傾斜を増した雪渓を登り、右にマヤクボ沢の大きな雪渓を分ける。針ノ木峠へは正面の急な雪斜面に取り付く。先行パーティが登っているのが砂粒のように小さく見える。この急斜面の登りは高度感があり、雪も固いので滑落注意。アイゼンとピッケルを効かせてグングン高度を上げ、針ノ木峠に登り着く。

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スバリ岳を望む

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針ノ木峠直下の急登
(撮影:Mさん)

針ノ木峠の稜線南側直下には針ノ木小屋が建つ。オープンは7/1とのことで、まだ営業していない。テン場も豊富な残雪の下のようだ。小屋の回りには雪がなく、風も当たらないので、ここにテントを張る。ベンチもあり、真っ正面に針ノ木谷を隔てて裏銀座の稜線が眺められ、ロケーションは最高である。

小屋の陰で、真っ黒に日焼けした豪放磊落な如何にも山男っぽい人達が宴会をしていると思ったら、地元の大町山岳会の一行だった。これから蓮華岳を往復して来るとのこと。我々は針ノ木岳に向かうが、その前に昼食。雪を溶かしてお湯を沸かし、野菜入りラーメンを作って食べる。シャリばて気味だったので、とても美味い。

エネルギーを充填したのち、最小限の装備を持って針ノ木岳に向かう。居合わせた登山者に針ノ木岳の登りの様子を聞くと、急な雪の斜面があり、それはそれは恐ろしいらしい。大町山岳会の人によると、大雪渓を登って来られたのだから大丈夫だよ、とのことだが。因みに大丈夫と言った人は長靴履き。凄過ぎて参考にならない気が(^^;)

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針ノ木小屋の脇にテントを張る

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針ノ木岳への登り

稜線のハイマツを切り開いた登山道を登ると雪の上に出て、トレースを辿る。すぐに岩稜が現れ、それを巻いて急な雪斜面をトラバースする。ここは滑ったら止まらない。岩稜の基部のシュルンドに沿って歩く。雪が柔らかく、踏み抜くとシュルンドに落っこちそうで、ヒヤヒヤものである。急斜面を直上すると平坦な稜線に出て、ホッと一息つく。

頂上直下はとても急な雪斜面となり、ピッケルを深く差しながら一歩一歩登る。急斜面を登り切ると雪が消え、アイゼンを外す。ここまで、Mさんは4本爪アイゼンで登ってきたが、ちゃち過ぎて全然役に立たなかったそうである。しかし、それでも登ってしまうのは、Mさんくらいなものだろう。頂上までの最後の登りは、ほんの僅かの距離である。

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急斜面のトラバース

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針ノ木岳頂上から
黒部湖と立山を望む

頂上に着くと、眼下遥かに黒部湖の湖面が見おろされる。湖の向こうには立山の残雪を抱いた膨大な山容が横たわるが、頂上付近は残念ながら雲の中だ。湖面を走る遊覧船や、立山ロープウェイの黒部平駅も見える。北にはスバリ岳や赤沢岳、東には蓮華岳が眺められるが、いずれも雲が多い。

頂上は遮る物がなくて風が強く、標高2800mの高所だけあってさすがに寒い。大展望は明日の蓮華岳に期待しよう。休憩後、雪の急斜面を慎重に下って、針ノ木峠に戻る。

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針ノ木岳頂上から
スバリ岳〜赤沢岳の稜線

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針ノ木岳頂上から蓮華岳

テントに戻り、まずは担ぎ上げた缶ビールで乾杯。夕方になって天気が好転し、眺めが良くなって来た。正面には裏銀座南端の北葛岳から船窪岳、不動岳にかけての険しい山々が連なる。あそこは一度歩いてみたいが、アップダウンが多くて大変そうだ。裏銀座はそこからグーンと高度を増して、烏帽子岳から野口五郎岳へと連なっている。

そのうちに青空が広がって、黒部川源流域の赤牛岳や水晶岳の真っ白な高峰、そして槍ヶ岳の穂先まで見えて来た。北アの大展望を楽しみながらの宴会、至福のひとときである。

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北葛岳(左)と七倉岳に乾杯

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針ノ木小屋にて

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針ノ木雪渓と赤沢岳

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針ノ木小屋全景

この日の針ノ木峠には我々の他、2パーティが幕営。とても静かで快適である。夕食に餅入りスープを食べて就寝。上着を着込んでシュラフとシュラフカバーを引き被れば十分に暖かい。夜中に空を見上げたら、満点の星空だった。明け方には氷点下に冷え込んだようで、水を溜めて外に置いたコッヘルには薄氷が張っていた。

6月9日
天気:
行程:針ノ木峠 5:00 …蓮華岳(2799m) 6:15〜6:40 …針ノ木峠 7:20〜7:50 …大沢小屋 9:00 …扇沢 10:00

翌朝、4時半頃に起床。裏銀座から水晶岳、赤牛岳まで朝焼けの山々がくっきり見え、遠く八ヶ岳や富士山まで眺められる。朝食にラーメンを作っている間に朝焼けの色は消え、快晴の気持ち良い一日が始まった。

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朝焼けの槍ヶ岳を遠望

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水晶岳〜赤牛岳を遠望

今日はまず、蓮華岳をピストンする。他の2パーティは針ノ木岳に向かうようだ。朝の雪は固く締まっているが、蓮華岳の稜線には雪はないという話を前日に聞いていたので、アイゼン、ピッケルはなし。テントに不要な荷物を置き、サブザックに雨具と水、非常食だけを入れて出発する。

ハイマツを切り開いた登山道を登ると、背後に雪に覆われた針ノ木岳が姿を現す。登るに連れてますます展望が開け、赤沢山の稜線の向こうには剱岳が、そして爺ヶ岳から鹿島槍ヶ岳、白馬岳に連なる後立山連峰が見えて来る。

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蓮華岳への登りから
針ノ木岳を振り仰ぐ

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ハイマツの斜面を登る

やがて、砂礫に覆われたなだらかな稜線の登りとなる。この辺りの砂礫地は、夏にはコマクサで埋め尽くされるという。その時期にも訪れてみたいものである。小さなピークを越えると二重山稜のような窪みがあり、雪が残る。行く手の遠くに見える金字形のピークが蓮華岳の頂上かな。針ノ木岳と比べて登りが緩い代わりに、結構距離が長い。

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砂礫の緩斜面

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稜線の残雪

稜線左手の膨大な雪田を見ながら、緩い稜線を辿る。砂礫を踏んで次に登り着いたピークには石祠が祀られ、傍らに若一王子神社奥宮と刻まれた石柱が建つ(後日調べると、若一王子神社本社は大町にあり、創建849年の歴史ある神社のようだ)。蓮華岳の頂上はハイマツと砂礫の稜線を辿って一投足である。

頂上からの眺めは、素晴らしいの一言。南に続く稜線は大きく高度を落とした後、北葛岳、七倉岳の鋭峰を起こし、さらに大きなギャップへ落ち込んだ後にグングン高度を上げ、烏帽子岳、野口五郎岳へと連なる。その左には槍ヶ岳、大天井岳、燕岳など表銀座の山々が並び、右には水晶岳、赤牛岳と黒部川源流域の山々が白く輝く。

さらに右(西方)に目を転じると立山連峰の山々が勢揃い。カール地形が顕著な薬師岳、針ノ木岳を挟んで、膨大な山容の立山、岩と雪に覆われた剱岳の峻峰が続く。北方には後立山連峰を望む。東方には朝霧たなびく安曇野を俯瞰し、浅間山や四阿山に山影を遥かに認める。見える山を一つ一つ同定するのが楽しい。

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若一王子神社奥社

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蓮華岳から北葛岳〜七倉岳を望む

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蓮華岳から水晶岳〜赤牛岳を遠望

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蓮華岳から望む剱岳

大展望を堪能したのち、針ノ木峠に戻る。テントを撤収し、アイゼンを履いて針ノ木雪渓の下りにかかる。

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針ノ木峠を隔てて針ノ木岳

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針ノ木峠のテントに戻る

峠直下の斜面は傾斜がきつく、まだ朝早いので雪が固い。しかし、アイゼンがしっかり効いて、ガシガシ下る。こんなにアイゼン歩行を楽しんだ山行は初めてかも。天気が良いので、登山者が続々と雪渓を登って来る。中にはスキー板を担いだ人や、家族連れもいる(皆、アイゼン・ピッケル装備である)。

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針ノ木雪渓を下る

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針ノ木雪渓と爺ヶ岳(奥)

大雪渓の下りは早く、1時間程で雪渓末端に到着、アイゼンを外す。左岸に目印の赤テープを見つけて上がってみると、登山道が通っている。これを下ると、大沢小屋の前を通る。この小屋もまだ営業前で、固く戸締まりされている。

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針ノ木雪渓と飛行機雲

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大沢小屋

大沢小屋を過ぎると登山道は籠川本流から離れて、左岸の山腹をトラバースする。赤沢の広大な雪渓を渡ってブナ林を進むと、豊富な水が湧き出す沢の源流がある。ここの冷たい水を飲んで一息つく。

さらに鳴沢の大きな雪渓を横断し、ブナ林の中を下って行くと車道に出る。行きの作業道ルートに比べるとかなり遠回りだが、道が良いので軽ハイキングを楽しむハイカーさんと大勢行き会った。

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赤沢の広大な雪渓を渡る

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苔沢の湧き水

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サンカヨウ

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自然遊歩道から仰ぐ針ノ木岳(奥)

ところどころで車道を横切りつつ登山道を下って、扇沢の駐車場に戻る。今日は天気が良くて人出が多いのか、無料駐車場はほぼ満杯となっていた。

帰りは大町温泉薬師の湯に立ち寄る。営業開始の10時の直後に入ったにも関わらず、なかなかお客さんで賑わっている。露天風呂からは爺ヶ岳を望むことができ、登山の余韻に浸りつつ身体をほぐす。

入浴後、近くにある「酒の博物館」でご当地の日本酒を土産に買うと、そろそろお昼時。この辺りで美味いものと言えば蕎麦である。大町街道の途中、美麻にある「麻の館」という蕎麦処で美味い天ざるを食べ、大満足の山行を締めくくって桐生への帰途についた。


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