太白山・大倉山・二口峡谷

〜27日(月)
メンバー:S,S,T

GWに仙台の泉ヶ岳船形山に登り、関東とはまた異なる山の雰囲気が新鮮に感じられて気に入ったので、今度は3人で仙台の奥座敷と称される作並温泉、秋保温泉にそれぞれ一泊し、山渓の分県登山ガイドを参考にして、周辺の軽い山歩きを楽しんできました。

5月25日
天気:
行程:自然観察の森入口 13:40 …観察センター 13:45 …生出森八幡神社 14:35 …太白山(321m) 14:55〜15:00 …自然観察の森入口 15:55
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

初日は昼頃に仙台に到着するので、半日行程の軽い山歩きを計画。仙台市街に隣接し、仙台市の区名の一つにもなっている太白山(たいはくさん)に登ることにする。東北道を走ると、仙台南IC〜仙台宮城IC間で小さいながらもぽっこりと聳えているのが見え、以前からちょっと興味を惹かれていた山である。

小山から東北新幹線に乗車してS&Sと合流し、仙台で下車。駅前でレンタカーを借り出して発進する。山上にあってビックリするほど広大な東北大青葉山キャンパスを通り抜け、竜ノ口渓谷を八木山橋(ググると心霊スポットとして有名らしい^^;)で渡り、通りがかりに見つけた「蕎麦処初代伝五郎」という店に入って昼食とする。古民家を利用した店舗は風情があり、注文した「冷たい肉そば」もとても美味。満員盛況なのも合点がいく。

住宅街を外れて東北道の高架を潜り、太白山自然観察の森の入口に着く。30台程の駐車場があり、ここに車を停める。天気の良い土曜日なので、来訪者の車はそこそこ多い。


自然観察の森入口


「自然観察の森」の標識石碑

立派な標識石碑の脇を通って自然観察の森に入り、木道や石畳が良く整備された遊歩道を辿ると、すぐに自然観察センターがある。センターでWCをお借りして、自然観察の森のルートマップを頂く。スタッフの方が常駐していて、頼めばいろいろ解説してくれる。


遊歩道を辿る


自然観察センター

自然観察の森の中には主なルートが4つあり、そのうちの「やすらぎの道」を通って太白山に向かう。やすらぎの道は、ヒノキと雑木林に覆われた小尾根をゆるゆると登っており、心和む里山の風景が続く。咲いている花は少ないが、ツリバナやマルバダケブキが咲き始めている。短い急坂を木の階段で登ると背後になだらかな丘陵と住宅地が広がって、遠くには仙台市街が眺められる。


「やすらぎの道」を辿る


仙台市街方面を振り返る

「であいの道」と合流してなおも尾根道を辿ると、太白山が正面に見えてくる。小さいが、なかなか尖(とんが)った山である。鬱蒼とした杉林に入り、太白山の山腹を左にトラバースして行くと、生出森八幡神社の参道入口に着く。少し下った所には駐車場があり、ここを起点に太白山に登ることもできるようだ。


太白山の鋭峰を望む


生出森八幡神社の参道

石灯籠と狛犬を両脇に見つつ杉林の中の参道を登ると神楽殿が建つ。その上の少し開けた斜面の上には生出森八幡神社の社殿が垣間見える。大震災により鳥居は倒壊し、社殿に向かう石段は崩れて立ち入りが禁止されている。ここから岩が多い急坂となる。太い鎖やロープが架けられていて、頼りになる。


生出森八幡神社の下を通る


頂上直下の急登

急坂を登り切って鳥居を潜ると、積み上がった岩に覆われた太白山の頂上に着く。樹林に囲まれて、展望は木の間越しに限られる。中央に貴船神社の銅葺き屋根の祠を祀り、信仰の山らしい神さびた雰囲気のある頂上だ。岩の上に腰を降ろし、しばし休憩する。


太白山頂上


頂上からの展望

下山は往路を戻り、自然観察の森に入って「みはらしの道」を辿る。名前から期待される程の展望はないが、ところどころから山麓の団地が見えたり、周囲の緩やかな丘陵地帯が眺められる。緩く下って駐車場に到着。適度に運動したので、夕食のビールが美味いこと間違いなしだ。


頂上直下の急坂を下る


生出森八幡神社の神楽殿


「みはらしの道」を下る


山麓の太白団地を見晴らす

この日は作並温泉一の坊に宿泊。作並温泉は、仙台から山形へ通じるR48沿いの山あいに5軒程の旅館、ホテルが点在する。一の坊のお風呂では、広瀬川の渓流に面した露天風呂が特に素晴らしく、深さ120cmの立ち湯という珍しい風呂もある。夕食では生ビールで乾杯したのち、牛タンしゃぶしゃぶや鮑の刺身、銀がれいなどのご馳走を食べて大満足。満腹+酔いがまわって、バタンキューで就寝した。

5月26日
天気:
行程:駐車場 10:30 …桑沼入口 10:35(桑沼往復)11:10 …遊歩道入口 11:20 …大倉山(934m) 11:55〜12:15 …大倉川徒渉点 12:50 …遊歩道入口 14:25 …駐車場 14:50
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

2日目、バイキングの朝食をがっつり頂いて、宿をチェックアウト。今日がメインの山歩きで、泉ヶ岳の北にある桑沼という山上湖を探勝し、余裕があれば北泉ヶ岳と大倉山へ足を延ばす予定である。

GWに訪れた泉ヶ岳登山口の大駐車場を通り過ぎ、泉ヶ岳の急峻な東面をトラバースする車道に入る。スプリングバレー泉高原スキー場を過ぎると細い未舗装道となり、大きな凸凹を避けて車を走らせる。

やがて三叉路となり、15台分程の広さの駐車場がある。今日も晴れて、既にハイカーさんの車が数台。我々もここに車を置く。傍らの説明板によると、この周辺は縄文の森と称して遊歩道が整備されているとのこと。駐車場のすぐ脇には水場もあり、パイプから清水が迸っている。

駐車場から車道(種沢林道)を100m程進んだ所が桑沼入口となる。ここからも樹林を透かして桑沼の一部を見ることができるが、全貌はわからないので、沼を半周する遊歩道を歩いてみることにする。


桑沼手前の駐車場


桑沼入口

ブナの大木の林の中の遊歩道を辿ると、ところどころから湖面と対岸に屛風のように急崖を峙てた稜線(大倉尾根)が眺められる。神秘的で素晴らしい景観だ。

当初の計画では、桑沼から遊歩道で大倉尾根に上がり、北泉ヶ岳まで登る予定だったが、尾根直下の急斜面の崩落により遊歩道は通行不可とのことで、現在は桑沼の南端で通行止めとなっている。この時点で北泉ヶ岳の登頂は断念。桑沼入口に引き返して、別ルートから大倉山に向かう。


湖畔の遊歩道を辿る


桑沼と大倉尾根

種沢林道を先へ10分程歩くと、「縄文の森遊歩道」の案内看板があり、左に山道が分岐する。付近には数台分の駐車スペースがある。遊歩道に入るとシダが林床を覆う樹林帯の登りとなる。


縄文の森遊歩道入口


シダの生い茂る森を登る

やがて遅くまで雪が残っていたと思われる急斜面の登りとなる。一部にロープが架けられた急坂を登ると、唐突に平坦な尾根の上に登り着く。


急斜面をジグザグに登る


一部にロープ有り

笹藪を奇麗に切り開いた遊歩道を辿るとT字路となり、左は北泉ヶ岳、右は大倉山に通じる。右に進んで平坦で快適な尾根道を辿ると「大倉山東屋→」との道標があり、そのすぐ先に東屋が建つ。ここが大倉山の頂上で、東屋の裏手に三角点標石がある。

東屋のベンチに腰掛け、パンを齧って昼食とする。北側は崖となっているようで、条件が良ければ闊達な展望が得られそうだが、今日は気温が上がって霞がかかり、遠望は得られない。低く連なる山稜が見えるだけだ。しかし、奥深く静かな山という感じが好ましい。


平坦な尾根の上に出る


東屋が建つ大倉山頂上

休憩後、大倉山からさらに進んで、ブナ林の平坦な尾根を下る。地面を覆うマイヅルソウの緑の葉が奇麗だ。尾根道はだんだん傾斜を増し、根曲がりしたクロベの木も生える山腹をジグザグに下って谷底に向かう。谷を隔てて、稜線に僅かに雪を残した山がゆったりと聳えているのが望まれる。


ブナ林の尾根道


尾根から下り始める


クロベ林をジグザグに下る


三峰山(坊主岳)を望む

瀬音がだんだん大きくなり、水量が多い大倉川に降り着く。「←大倉山 氾濫原→」との道標があり、道は対岸に続いている。徒渉中、Sがひっくり返って服を濡らしてしまったが、今日は天気が良いからすぐに乾くだろう。ここで、単独行の若い女性とすれ違った。遊歩道があるとは言え、こんな山奥に一人で来ているのだから、山慣れた方とお見受けした。


大倉川に下り着く


大倉川の清冽な流れ

沢を下流に向かうと、一面のニリンソウとブナ林に覆われた平坦で広い河原となる。この辺りが氾濫原で、水流は分岐してあちらこちらを流れている。ニリンソウのお花畑の中にはシラネアオイが点々と咲き、新緑のブナ林に差し込む陽射しに照り映えて、えも言われぬ美しさ、心安らぐ原始境である。


ニリンソウ咲くブナ林を歩く


シラネアオイ(1)


ニリンソウ


新緑の原始境

道標や木の柵(整備されたのはかなり前のようで、少し荒れ気味)に沿って平坦な氾濫原を進む。もう一度、徒渉があり、沢の右岸を進む。この辺りもニリンソウのお花畑で、シラネアオイもあちこちに咲いている。


氾濫原


2回目の徒渉


浅い流れに沿って歩く


シラネアオイ(2)

水流は地下の隙間に吸い込まれて段々と細くなり、一跨ぎして渡った先で忽然と消えてしまう。最後は氾濫時に流されて来た枯れ葉や枯れ枝がフカフカに堆積した凹地となり、冷気が溜まっていてヒンヤリと涼しい。僅かだが雪も残っている。それにしても消えてしまった水は一体どこから出て行くのか、実に不思議な川だ。


水流が細くなると…


…忽然と消えてしまう

凹地から少し登って、小さな尾根を乗り越す。木の間から見上げると、岩壁と崖錐を連ねた大倉山が眺められる。平坦な山頂からは想像できない、険しい山容を見せている。


小尾根を乗り越す


大倉山を仰ぐ

遊歩道は一旦下り、急な山腹をトラバース気味に登って行く。もう一つ尾根を越えて山腹を下ると、種沢林道に降り着く。氾濫原からここまでは意外と距離があり、アップダウンも多くて歩きでがあった。あとは林道を歩いて駐車場に戻る。駐車場に着くと、ちょうど、大倉川ですれ違った単独行の女性も、車に戻って来たところだった。我々の逆コースを歩いたようだが、早いなあ。


山腹をトラバース


林道に出る

この日は、秋保温泉佐勘に宿泊する。秋保温泉は名取川の中流にあり、周囲は緩やかな丘陵で、群馬で言うと磯辺温泉に似た感じのロケーション。開放的な大浴場に露天風呂が付属している。夕食は生ビールで乾杯したのち、牛すき焼きや殻付ガゼウニ、氷のかまくらに入った刺身などのご馳走を食べて、大満足。追加で飲んだ日本酒「栗駒山」がさらっと飲める系統で美味い。そしてこの晩もバタンキューで就寝した。

5月27日
天気:

最終日も好天だが、山歩きは堪能したので、周辺のドライブ&見所巡りとする。訪れた景勝地はいずれも県立自然公園二口峡谷に含まれている。

磊々峡:宿からすぐの秋保・里センターに車を置き、覗橋の袂から磊々峡の遊歩道に入る。凝灰岩を穿って深く狭いゴルジュが続き、なかなか壮観である。真っ二つに断ち切られたような天斧岩(てんおのいわ)まで渓谷美を楽しんで歩く。


磊々峡入口


深く狭いゴルジュが続く


崩落した大岩


天斧岩

秋保大滝:名取川の上流に向かい、秋保大滝不動尊の駐車場に車を置く。不動尊の裏手に滝見台があり、秋保大滝の全景を俯瞰することができる。落差(公称55m)といい、水量といい豪快な名瀑である。滝見台から不動滝橋(こちらにも駐車場あり)を経由して滝壺に降りることもでき、さらに豪壮な景観が楽しめる。


秋保大滝不動尊


滝見台


滝見台からの秋保大滝


滝壺からの秋保大滝

二口峡谷・姉滝:名取川をさらに上流に向かう。行く手に、海坊主のような怪異な山容の大東岳(1366m)が眺められる。この山もいつか登りたいな。秋保ビジターセンターを過ぎて未舗装の林道に入る。途中、「姉滝」の看板を見かけて立ち寄る。歩道を下って姉滝の落口まで行くことができる。別名「穴滝」と呼ばれ、かつては落口に開いた穴から水が落ちていた珍しい滝であったが、昭和20年に落口の岩盤が崩れ、穴がなくなってしまったとのこと。隣りには妹滝がある。


二口渓谷・姉滝の落口


姉滝(手前)と妹滝(奥)

二口峡谷・磐司岩:姉滝からさらに林道を進むと「磐司」の看板があり、ここだけ林道を覆う樹林が切れて、磐司岩を見上げることができる。すごい高さの岩壁が帯状に連なり、見ていると恐ろしくなるほどである。この迫力を写真で伝えることはなかなかに難しい。


磐司岩(1)


磐司岩(2)

これにて見所巡りは終了。二口峡谷は原始的な自然環境が残されており、とても気に入った。また来たい。仙台駅に戻ってレンタカーを返却。駅ビルの土産物屋で豆打(ずんだ)餅と吟醸酒「栗駒山」を買い込み、仙台始発の新幹線に乗って帰宅の途についた。