剣の峰

天気:のち
メンバー:T
行程:地蔵峠 8:00 …山道入口 8:55 …三つ丸山(1044m) 9:50 …送電鉄塔 10:50 …三宝荒神(1316m) 11:40 …1384m標高点 12:05 …剣の峰(1430m) 12:25〜13:05 …1384m標高点 …三宝荒神 13:35 …送電鉄塔 13:55 …三つ丸山 14:35 …山道入口 15:10 …地蔵峠 15:45
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

少し前に『倉渕村誌』を手に取る機会があり、斜め読みしていて、三つ丸山という知らない名の山が掲載されていることに目が留まった。地形図にはこの山名はないが、剣の峰から東に延びる高崎・安中市界尾根上の1044m標高点のことらしい。この市界尾根上には破線路が続いており、これを辿って三つ丸山経由で剣の峰に登ることも出来そうである。

ネットで検索すると、実際にこの尾根(三つ丸尾根と呼ぶらしい)から剣の峰に登った山行記録(末尾参照)があった。緩いながらも距離が長く歩き応えがありそうで、歩く人も稀なマイナールートと来れば私の好みのタイプなので、出かけて来ました。

桐生を朝6時に車で出発。松井田妙義ICから県道渋川松井田線を走り、地蔵峠に向かう。地蔵峠から市界尾根上に付けられた地蔵峠林道に入ろうとしたが、事前情報の通り、入口のゲートが施錠されているので入れない。ゲート前の広いスペースに車を置く。3連休2日目の今日も良く晴れて、空気がキリッと冷たい。未舗装の路面には雪が薄く積もって、固く凍り付いている。峠からは、朝日を浴びる榛名山が一望できる。

峠の一角には二基の石祠、二体の地蔵と殉難碑が建つ。碑には次の文が刻まれている。

勘定奉行小栗忠順家臣塚本真彦の母ミツ 娘チカ(八才)この地に近き谷合に殉難す

両女は慶応四(1868)年閏四月六日 権田村における西軍暴挙の難を避け 七日市藩へ逃れる為地蔵峠を目指したるも 山中に道を失い遂に力尽き 同八日この地に近き谷間において自害せり 遠く悲しき歴史に思いを馳せこの地に祈念碑を建て永くその霊を悼む

小栗上野介の非業の最後と共に、家臣の子供までがこの寂しい山中で亡くなっていたとは、何とも悲しい話である。


地蔵峠から榛名山の展望


地蔵峠の地蔵二体

地蔵峠から、ほぼ平坦で展望のない単調な林道を歩く。道端には伐採された直径30cmくらいの丸太が堆く積み上げられている。盛んに森林整備が行われているようだが、今日は休日なので作業は全く行われていない。

途中で右に分岐して谷に下る林道があり、分岐点に殉難の地入口を示す道標が立つ。右の林道を下って約800mの地点がその場所とのこと。立ち寄るにはちょっと距離があるので、今回は割愛する。

地蔵峠からだらだらと林道を歩いて約1時間、林道が左に下り始めるので、ここから尾根上の山道に入る。


地蔵峠林道を歩く


三つ丸尾根の山道入口

この山道は、道型は一応続いているものの、杉の植林帯の中に消えたり、笹藪に覆われたりして、明確なものではない。また、作業道や獣道が錯綜し、うまく利用するとピークが巻けて効率的だが、うっかり引き込まれて尾根から離れてしまうこともあり、進路選定に気を使う。基本的には尾根をずっと辿る。樹林に覆われ、展望は木の間越しに限られる。


ところどころ笹藪の中の道


ところどころ杉林の中の道


雨ん坊主を遠望


笹藪の中に踏み跡が続く

笹藪に覆われた痩せ尾根を登って杉の植林帯に入ると、三つ丸山の頂上に着く。杉林に覆われて展望は全くなく、尾根道の一地点で、山頂という感じではない。ちょっと残念。

三つ丸山頂上から植林の中の作業道を下り、低木の小枝が煩い尾根を登り返す。薄く雪が積もっていて滑り易い。さらに進んで、笹藪と杉林の境界を急登する。こんな急坂があるとは、地形図からは読み取りにくい。


三つ丸山頂上


最初の急坂

もう一段、急坂があり、笹藪を避けて雪の斜面を登る。最近、登った人があるのか、雪の上に靴の足跡が続いている。急坂の上は広くて緩い尾根で、方向を右に変える。


二つ目の急坂


広くて緩い尾根に出る

雪を踏んでゆるゆる登ると送電鉄塔(西群馬幹線41)に着く。南側に展望が開けて、妙義山の眺めが良い。だいぶ雪が深くなって来たので、ここでスパッツを着ける。

送電鉄塔から少し進んだ辺りで、木立を透かして角落山や浅間隠山が眺められる。また、角落山の左には三宝荒神岩と呼ばれる乱杭歯のような岩峰群が見える。この岩の位置は遠くて判りにくいが、これから越える三宝荒神(1316m標高点)の中腹にあるらしい。


送電鉄塔から妙義山を遠望


三宝荒神岩と角落山(右)を望む

その三宝荒神に向かって雑木林の尾根を登る。尾根の左側は緩斜面だが、右側は相間川の谷に向かって意外と急な斜面となっている。


雑木林の尾根を登る


雨ん坊主を望む


笹藪が断続


三宝荒神への登り

断続的に笹藪が現れ、その中に雪が積もった白い帯となって踏み跡が続く。三宝荒神の緩やかなピークを越えると、木立の間に鼻曲山から剣の峰にかけての稜線が見え始める。


三宝荒神を越えて下る


広々とした尾根

鞍部から緩く登り返す。標高の高いこの辺りでは笹藪も背が低い。途中に見事な巨木が立つ。1384m標高点を越えると、笹藪の中に踏み跡が一直線の帯となって次のピークに延びているのが見える。剣の峰まではあと少しだ。


このコース一番の巨木


剣の峰に向かって延びる山道

笹原の中の踏み跡はやがて明瞭な山道となり、次のピークは左の山腹を巻く。そのまま山道を辿ると剣の峰も巻いてしまうので、踏み跡を登って稜線の上に出る。稜線の反対側は剣の峰北面の絶壁だ。頂上直下の急坂を滑らない様に気をつけて登る。


山腹を巻いて剣の峰に向かう


剣の峰頂上直下の登り

登り着いた剣の峰頂上は、東西に小さな弧を描く稜線からなる。ここに登るのは、1982年の正月に霧積温泉から登って以来、2回目だ。今日も、霧積温泉から登って来るハイカーさんがいるかな、と思っていたが、誰もいない。

雑木林に覆われているが、北面の絶壁の上に出張った所に立てば、角落山や浅間隠山、鼻曲山、浅間山の眺めが良い。また今日は良く晴れていて、上信越国境稜線の白銀の山々が遠望できる。しかし、下を見ると足元がすっぱり切れ落ちているので眼が眩む。雪で足を滑らせて転落しない様に注意。


剣の峰頂上


剣の峰から角落山(右)を望む


剣の峰から浅間隠山と上信国境稜線


剣の峰から鼻曲山と浅間山の眺め

雑木林の間の日溜まりに腰を下ろし、昼食とする。今日は穏やかな日和で、風を避ければ寒くない。サンマの缶詰を肴に小さな缶ビールをあけ、ペヤングソース焼きそばを作って食べる。

下山は往路を忠実に戻る。大部分が緩い尾根なので、下りは快速だ。途中、尾根を直角に左に曲がる所が送電鉄塔の前後の二か所にあり、うっかりすると尾根を直進して迷い易い。初めてでこの尾根を下るのは、読図にかなり自信がないと難しいと思う。

山道から林道に出て、ホッと一息。空はいつの間にか灰色の雲に覆われていた。明日は関東地方に大雪の予報が出ており、前触れの雪雲がやって来たようだ。林道を早足で歩き、16時少し前に駐車地点の地蔵峠に戻った。


地蔵峠に戻る


上増田温泉砦の湯

帰りは、上増田温泉砦の湯に立ち寄る(600円)。内湯の湯船からは褐色がかったお湯がざんざん溢れている。温めの湯にとっぷり浸かって、冷えた身体を温めるのは最高に気持ちが良い。露天風呂も鄙びた風情がある。連休中にも関わらず混んでいなくて、のんびり入れる。今日一日、思い通りの長丁場を歩いて凝った筋肉をほぐしたのち、桐生への帰途についた。

参考URL:計画の際、わっとの雑記帳の「大平から剣の峰」の記事を参考にさせて頂きました。