伊豆大島・三原山

〜2013年1月2日(水)
メンバー:S,S,T

毎年恒例、正月の温泉&山歩き。2013年は伊豆大島に渡って三原山温泉・大島温泉ホテルに宿泊し、レンタカー利用の島内見所巡りと、三原山ハイキングを楽しんできました。大島を訪れるのは2度目ですが、前回は小学生の頃なので朧な記憶しかなく、実質的には初めてのようなものです。

12月31日
天気:
行程:久里浜港 9:30(東海汽船・高速ジェット船)→ 岡田港 10:30 → 乳ヶ崎 → 元町港 → 大宮神社 → 地層切断面 → 春日神社 → 波浮港・波浮比咩命神社 → 波浮港見晴台 → 筆島 → 大島温泉ホテル

横浜の実家を車で出発。東海汽船の大島行き高速ジェット船が出航する久里浜港に向かう。東海汽船の乗船窓口は、金谷行き東京湾フェリーのターミナルに間借りした形で設置されており、東海汽船のターミナルを探してもないので注意(ちょっと迷った)。東京湾フェリーターミナルの駐車場(1000円/日)に車を置く。ターミナルの玄関を入ってロビー右側のデスクが東海汽船の乗船窓口だ。乗客は結構多く、家族連れやサーフボードを抱えた人、釣り師など様々。東京竹芝ターミナルから定刻に大島行きの船が到着、乗船する。


久里浜港・東京湾フェリーターミナル


大島行き高速ジェット船

久里浜港を出港した高速ジェット船は、ジェットエンジンで海水を噴き出し、水中翼で揚力を得て船体を水面から浮かせて航行する。これは速い。揺れも少なく快適。大島近くで波が荒い海域では低速航行となったが、1時間ちょっとで大島の岡田港に到着する(なお、到着港は元町港と岡田港の二通りあり、どちらになるかは当日の天候によって決まる)。

岡田港で待ち受けていたレンタカー会社の係員から、予約していたレンタカーを借り受ける。冬休み中ということでレンタカーの客が多く、今回は通常より大きめ(値段も高め)のステーションワゴンしか予約できなかったが、たまにはこういう車もいい。

初日は大島を反時計周りに回って、見所巡りとする。観光マップを参考にして、最初は島北端の野田浜と乳ヶ崎へ。野田浜は夏は海水浴とダイビングのスポットだが、今日は海岸に打ち寄せる大波の向こうに伊豆半島を遠望するだけだ。

野田浜の駐車場からさらに進んで細い車道を上がると「乳ヶ崎→」の道標が立ち、山道が分岐する。近くの空き地に車を置いて、山道に入ってみる。笹藪を切り分けた山道を辿ると開けた平地に出て、三原山の眺めが良い。ここには「陸軍少佐福井寛君之碑」という慰霊碑が建つ。常緑樹がトンネルとなった藪っぽい山道を辿ると航空保安施設がある。その先の岬の突端は笹藪の中で、残念ながらすっきりした展望は得られない。ここはまあ、物好きのみ訪れるスポットですね(^^;)


野田浜より仰ぐ乳ヶ崎


山道を乳ヶ崎に向かう


常緑樹のトンネル


岬の突端より野田浜を俯瞰

そろそろ昼食の時間となったので、大島で一番栄えていそうな元町港に車で移動し、「おともだち」という食事処に入る。ここで大島名物の「ベッコウ丼」を食す。島唐辛子と醬油に浸け込んだ目鯛の切り身をご飯の上に乗せたもので、かなり美味しい。

食後、次のスポットの野増の大宮神社に向かう。三原山を仰ぎながら石段を上がり、背の低い石鳥居を潜ると、シイの大木が鬱蒼と群生する神さびた雰囲気の参道となる。このシイの森は「野増大宮の椎樹叢」として都天然記念物になっているとのこと。

社殿はシイの森の中にある。室町時代(1466年)に阿治古という三原山山中の集落からこの地に遷座したと言うから、大変に古い。社殿の周囲にはたくさんの石祠が祭られている。桐生近辺でよく見る流造ではなく切妻造で、中には小さな石鳥居を伴うものもある。石祠の祀り方にも文化の違いがあるようで興味深い。ここはお勧めスポット。


元町港の市街と三原山


大宮神社の参道入口


シイの大木に囲まれた参道


石鳥居付きの石祠

次のスポットは大島一周道路沿いにある「地層切断面」だ。火山の噴出物が幾重にも層を成している様子といい、色調といい、まさにバームクーヘン。これが数百mも続き、なかなか壮観。この辺りは伊豆諸島の展望も良く、利島や新島、神津島が見える。


大宮神社の社殿


仙波の地層切断面

お次は差木地の春日神社を訪問する。なんで神社ばかり訪ねているかというと、通常の観光施設は正月休み中なので、観光マップ記載のパワースポットを巡っているのであ〜る。

大島一周道路から集落の間の狭い路地に入り込み、少々迷ってなんとか参道入口に着く。参道の石段を上がると社殿があり、周囲にイヌマキとイヌクスの大木がある(春日神社のイヌマキ群叢として都天然記念物に指定)。ひと気はないが、参拝客を迎えるための提灯や焚火の準備が整っていた。明日は未明から初詣の参拝客で賑わうのだろう。大木からパワーを貰って、次のスポットに向かう。


春日神社


イヌマキの大木

神社巡りの三か所目は、波浮港に面した波浮比咩命神社。社殿の左側は海で、そちら側にも鳥居と石段があり、海からも参拝できるようになっているのが面白い。ここから眺める波浮港は周囲を切り立った山に囲まれて穏やかに澄んだ水を湛え、いい風景だ。


波浮比咩命神社


波浮港に面した鳥居


波浮港と波浮比咩命神社


見晴台から俯瞰する波浮港

大島一周道路に戻り、波浮港を見おろす「波浮港見晴台」に立ち寄ったのち、大島東岸のハイライトの筆島に向かう。太平洋の荒波に浸食された絶壁が続き、その沖合に一本岩が立っている。これがその名の通りの筆島で、火山の火道で固まった溶岩(火山岩頸)と言われている。風が猛烈で、波頭が千切れた霧に虹が架かっている。


筆島


大島温泉ホテル(翌日撮影)

これにて本日の観光旅行は終了。今晩の宿の大島温泉ホテルに向かう。このホテルは三原山の外輪山の山上に建ち、部屋の窓から三原山のカルデラと奥の中央火口丘が一望できる。また、左側には太平洋の海原も見える。いろいろな温泉旅館に泊まったが、この展望の素晴らしさはピカ一だ。早速、温泉へゴー。露天風呂からも三原山の大展望が楽しめて、素晴らしい。


大島温泉ホテルから三原山の展望


夕食のご馳走

夕食は椿油フォンデュと刺身を中心にヘルシーかつ美味しい。ご馳走を食べ、ビールと日本酒を飲んで布団でちょっと横になったら、そのまま気分良く寝入ってしまい、いつの間にか年を越す。うーむ、一昨年から同じパターンだ(^^;)

1月1日
天気:
行程:三原山頂上口 9:35 …三原神社 10:20 …火口展望場 10:30 …三原山山頂中央火孔 11:00 …温泉コース分岐 11:25 …(昼食) …大島温泉ホテル 12:35
ルート地図 GPSのログを地理院地図に重ねて表示します。

明けて新年。部屋の窓から初日の出を眺める。雲がかかって水平線から昇るところは見られなかったが、雲間から差し込む陽光を拝む。朝食はバイキングで、しっかり食べる。

今日は三原山に登る予定だ。宿の前の三原山温泉バス停から9:23発のバスに乗り、終点の三原山山頂口で下車する(330円)。丁度、ツアーバスの団体さんも到着して大賑わいだ。大島西岸の海岸線を俯瞰し、海原を隔てて伊豆半島と富士山を眺める。


初日の出


三原山山頂口より富士山遠望

団体さんの後について三原山に向かう。短い坂でカルデラに下ると、舗装された遊歩道がずっと続いている。中央火口丘と周囲の外輪山の雄大な景色を眺めながら歩く。ススキ原に舌のように侵入している黒々とした溶岩は1986年の噴火のものだ。やがて、中央火口丘の登りに差し掛かる。山腹をジグザグに登り、高度を上げるにつれて、背後のカルデラの荒野と外輪山の向こうに富士山が再び姿を現し、写真撮影のためにしばしば足を止める。


観光客で賑わう三原山山頂口


山頂口より三原山の中央火口丘


観光乗馬の馬


舗装された遊歩道を歩く


黒々とした溶岩原


伊豆半島と富士山を遠望

中央火口丘の一角に登り着いた地点には、特に大きな溶岩の塊がある。説明板によると、これはアグルチネート(噴火で吹き上げられた溶岩の飛沫が積み重なってくっついたもの)のかたまりだそうだ。

少し下がったところに三原神社の小さな社殿があり、団体さんが順番に参拝していた。我々もここに詣でる。1986年の大噴火の際、この社殿も溶岩流に飲み込まれそうになったが、直前で流れが二手に分かれたため焼け残ったそうだ。これは何やら霊験がありそう。


大型のアグルチネート


三原神社

初詣を済ませ、火口一周コースに入る前に火口見学道を辿って火孔(=火口内にできる穴)を覗きに行く。あちこちから水蒸気が上がる溶岩原を一登りすると、火孔を見下ろす展望場に着く。平らな溶岩原の真ん中に大きく深い竪穴がぽっかりと開いており、恐ろしげな眺めだ。


火口見学道


火口展望場からの火孔の眺め

見学道を戻り、火口一周コースに入る。舗装された遊歩道が終わって砂礫の登山道となるので、歩く人も足元が確かな人に限られて少なくなる。右手には外輪山に縁取られたカルデラを俯瞰し、その向こうには海原を眺める。雄大な景観だが、遮るものが全くないので風が強烈で寒い。


火口一周コース


カルデラの砂漠と外輪山

少し進むと、ホルニトと呼ばれる種類の溶岩の塚がある。説明板によると、流動性に富むバホイホイ溶岩が固まってトンネルとなり、その天井が破れたところからガスや溶岩が噴き出した際に出来た塚だそうだ。塚に開いた縦穴に手を翳すと、暖かい湯気が上がってくるのが感じられる。


ホルニト


表砂漠ルート分岐

表砂漠ルートを右に分け、最高地点(標高758m)の三原新山の肩に向かって緩く登る。右手には、大海原の中に利島や新島、神津島の島影を見る。三原新山の頂上は立ち入り禁止で、その直下を巻く。このすぐ先に火孔の展望ポイントがあり、巨大な火孔の底を覗き込むことができる。説明板によると、火孔の直径は300〜350m、深さは200mもある。また、火孔壁最上部の柱状節理の部分は、1896年の噴火の際の溶岩とのこと。その厚さから、噴火の際の溶岩の多さが分かる。


利島、新島、神津島を遠望


三原新山の肩に向かって登る


三原山山頂中央火孔


剣ヶ峰への稜線

左に火口、右に裏砂漠と外輪山の白石山を眺めながら、剣ヶ峰への稜線を辿る。短く緩い登りだが、この間の風が一番強く、深く被ったニット帽すら飛ばされそうになり、這々の体で剣ヶ峰の頂上に着く。稜線の僅かな高みの陰に入って風を凌げば、陽射しが当たって暖かい。眼前には溶岩と岩滓に覆われたカルデラの平原が広がり、その向こうに外輪山が堤防のように横たわる。外輪山の上には、大島温泉ホテルの建物が白く見える。ホテルまで、カルデラを突っ切って帰る予定だ。これは楽しそう。


剣ヶ峰から火口の眺め


剣ヶ峰からカルデラの眺め

剣ヶ峰から稜線を緩く下ると、1986年の割れ目噴火の際に生じた火口のすぐ上に着く。こちらの火口は幅はそれほどではないが、かなり深くてやはり恐ろしげ。火口に面した斜面からは、今も水蒸気が上がっている。


1986年B2火口


砂礫の道を下る

小ピークの左を巻いてザクザクの砂礫の道を下ると、右へ裏砂漠コースが分岐するので、そちらに入る。ススキの生えた広大な砂礫地を緩く下る。新しい溶岩原に入り、あちこちに溶岩のギザギザした尖塔を見る。右手には先程通った中央火口丘の稜線が高く、頂上付近から白い湯気が盛んに上がっている。

溶岩原の中の適当な窪みで風を避けて、パンとペットボトル飲料で軽い昼食を取る。昼食後、再び砂礫の道を辿ると、右にテキサスコースを分ける。この道は裏砂漠を経て、東岸の大島公園に至る。因に、国土地理院の地形図に記載された地名で砂漠が付いているのは、伊豆大島の裏砂漠と奥山砂漠の二か所だけである(電子国土ポータルの地名検索で確認できる)。


裏砂漠コースを辿る


大島温泉ホテルへ続く道

この分岐は左の温泉コースに入る。溶岩の間を縫って通り、一段下がると細かい砂礫地の中に一直線に道が通じている。ススキ原から徐々に常緑樹が増え、やがて密な林となる。溶岩原に植物が進出していく過程が良く分かる。緑のトンネルを抜け、外輪山の麓に着くと、大島温泉ホテルまでは舗装道をひと登りである。

なお、外輪山の麓にはつつじ園があり、山頂口まで3.25kmの鎧端(よろいばた)樹海トレースという新しい道(2007年2月公表)の道標もあった。この道を利用すれば、大島温泉ホテル→三原山山頂口→中央火口丘→裏砂漠コース→大島温泉ホテル、という全行程徒歩の周回コースも可能で、さらに面白そうである。


緑のトンネルを抜ける


外輪山の麓のつつじ園入口

ホテルに戻ったのが12時半と早かったので、車でちょっと移動して割れ目噴火口を見学に行く。三原山山頂口への車道の途中から分かれて、路面が荒れた車道を下ると、いくつもの火口が並んで開いている。1986年の噴火から年月が立っているので、火口の中には樹木が繁茂している。眼下には元町港の市街が広がり、噴火の際には危機一髪だったことが想像される(実際、溶岩流が町並みまで数百mのところまで迫ったという)。


割れ目噴火口(1)


割れ目噴火口(2)

変化に富んだいろいろな火山地形を堪能して、ホテルに戻る。風呂に入れるのは15時からなので、まずサッカー天皇杯決勝戦を観戦。その後、温泉に入って、三原山の今日一日歩き回ったあっちやこっちを眺めながらゆっくり浸かる。夕食は目鯛としゃぶしゃぶを中心にまたまたご馳走。満腹して、早い時間に就寝。ぐっすり眠る。

1月2日
天気:
行程:大島温泉ホテル → サクラ株 → 大島公園 →岡田港 11:40(東海汽船・高速ジェット船)→ 熱海港 12:25

最終日は14:40発の高速ジェット船で久里浜港に帰る予定である。それまでは島内観光にあてることにして、東岸の大島公園に行ってみることにする。

大島公園に向かう途中、特別天然記念物の「大島のサクラ株」に立ち寄る。樹齢800年のオオシマザクラの巨木で、倒れた太枝が根付いて3本の子株となって育ったものだそうだ。地を這ってのたうち回るような枝振りが珍しい。花が咲いているところも見たいな。


サクラ株入口


大島のサクラ株

大島公園には入場無料の動物園があり、正月休み中も開園しているので入ってみる。山の斜面に自然を生かして広々とした飼育場が設けられている。レッサーパンダやワオキツネザルをはじめ、いろいろな動物がいてかなり楽しめる。一番面白かったのはアルマジロだ。小さくてかわいいが、甲羅を纏って身を丸めた姿はダンゴ虫を連想させる(^^;)


マタコミツオビアルマジロ


溶岩を利用したサル島

動物園を一通り見終わった頃、突然に園内放送が入り、なんと帰りに乗船予定の高速ジェット船が欠航するとのこと。これは一大事。観光を切り上げて、岡田港に向かう。岡田港の乗船窓口で状況を問い合わせたところ、幸い11:40発の熱海行高速ジェット船は運行するとのことなので、これに便を変更する。

レンタカーを返却して、乗船。熱海からは新幹線で新横浜に行き、私だけ久里浜港に向かって車を回収し、実家に帰った。最後に船便の欠航というハプニングはあったが、離島の旅に独特ののんびりした雰囲気はとても良かった。大島は季節を変えて再訪したいし、伊豆諸島の他の島にも何れ行ってみたい。