石尊山(足利)

天気:
メンバー:T
行程:石尊山登山口 9:40 …分岐点 9:50 …釈迦岩 10:25 …石尊山(461m) 10:40 …深高山(506m) 11:15〜11:55 …石尊山 12:30 …石尊山登山口 13:25
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

足利市小俣町の石尊山は、桐生の自宅から白葉(しらっぱ)峠を越えてすぐの近所にある馴染みの山である。かつては石尊信仰で栄えた山で、麓の叶花(かのうけ)から石尊宮のある頂上まで参道が通じ、道端には数多くの丁目石が置かれている。参道の上部は露岩の多い急な尾根を登る道となり、展望が楽しめる。

この尾根道の途中に釈迦岩展望という標識の立つ地点があり、石尊山南面の採石場に向かって突き出た稜線上に仏像に似た形の大岩が立っているのを望むことができる。この岩には以前から興味を惹かれていたが、石尊山には何度も登っているにもかかわらず、間近まで行って見たことはなかった。

また、地形図を見ると、参道を表す破線路の途中から分岐して石尊山南面を登り、釈迦岩を経て頂上に至るもう一本の破線路があることに気づく。この道も気になる。この週末、思い立ってこの破線を辿り、釈迦岩と石尊山を目指してみました。

車で叶花の石尊山登山口に着くと、すでに5台の駐車がある。残り僅かのスペースに車を置いて出発。後続の車が来て、スペースは一杯になった。いつ来てもハイカーさんがいる人気の山だ。

参道を辿ってすぐ左手の高台に麓の石尊宮があり、登り口に「三丁目」の標石がある。なお、「壹丁目」の標石が登山口の常夜灯の近くにあり、頂上が二十八丁目となる。


叶花の石尊山登山口


石尊宮

沢沿いに沿って杉林の中の参道を歩き、二つ程丁目石を過ぎると、「八丁目」の標石と天保二(1831)年造立の不動像がある。この周辺は以前は鬱蒼とした杉林であったが、近年、採石の範囲が広がって、不動像のすぐ後ろまで掘り出した土石が堆積している。


不動尊(八丁目)


石尊山への登山道

「十壱丁目」の標石のある地点で、参道から分かれて斜め右の踏み跡に入る。これが地形図の破線路だが、道型は判然としない。右側が低い土手となった窪に沿って登る。土手の向こうは広大な採石場だ。かつては谷の右斜面を成していた山が、採石でごっそり削られて、土手だけが残ったのだろう。

藪はごく薄いが踏み跡も薄く、そもそも道があったかのかどうかも怪しい。しかし、ぽつぽつと赤テープがあるので、稀に好事家が歩いているようだ。窪を登ると正面に岩場が現れるので、これは左へ巻く。


参道から分岐して
地形図の破線を辿る


この岩場は左へ巻く

巻いた岩場を右に見て杉林の急斜面を登る。頭上に稜線が見えてくると、ますます急登となる。ここで、上方からまさかの熊鈴の音。誰かが稜線上にいるらしい。最後は四つん這いで稜線に這い上がると、ハイカーさんが一人、歩き去るところだった。ハイカーさんを追う形で右の小ピークに登る。頂上は採石場に面して切れ落ちた岩場となり、南側の眺めが開ける。風が強く、採石場の裸地にときおり盛大な土煙が巻き起こっている。


稜線に向かって急登


小ピークから採石場を見下ろす

稜線は小ピークで右に折れ、採石場に向かって岩稜となって急角度で落ちている。岩稜上には踏み跡が続き、先程のハイカーさんはここを下ったようだ。隣には参道が通る尾根が眺められる。岩場が多くて、意外と険しそうに見える。尾根の向こうには御嶽山(姥穴山)や吾妻山、遠くには赤城山が眺められ、なかなか良い景観だ。


採石場へ急降下する岩稜


参道の尾根と赤城山遠望

小ピークから戻って石尊山に向かうと、稜線を塞ぐように釈迦岩が立ちはだかる。写真では大きく見えるが、実際に見ると予想したより小さな岩で、高さ3〜4mだろうか。3段にくびれた三角形で、仏像に見立てたのも頷ける。天辺付近には注連縄が巻かれ、近年も信仰の対象になっていることが窺える。


南側から見た釈迦岩


北側から見た釈迦岩

釈迦岩の左側を簡単に登って北側に抜け、ざらざらの岩屑を踏んで稜線を急登すると、僅かな距離で石尊山の頂上に着く。あらぬ方向から登り着いたので、居合わせた年配のハイカーさんに、どこから登って来たのか、と驚かれる。まずは頂上の石尊宮にお参りする。老朽化で表戸が外れており、中が丸見え。風雨が降り込んで老朽化が加速するのではないかと心配になる。

石尊宮の軒先には「石尊宮 桐生三省堂印房」と刻まれた扁額と平成十三(2001)年奉納の書き付けのある烏天狗・大天狗対の面が掲げられている。また、「至誠通神」の扁額もあり、「昭和…桐生織物同業組合…」と刻まれている。これらは古いものではないがなかなか立派で、石尊信仰を伝える貴重なものだと思う。

石尊宮の前は切れ落ちた斜面で、眼下に広大な採石場が広がる。手前には釈迦岩から落ちる岩稜も見えるが、かなりの急勾配だ。あそこを下るのはちょっと怖そう。


石尊宮


石尊宮から南面の眺め
向こうの山は彦谷湯殿山


烏天狗と大天狗の面
「石尊宮」の扁額


「至誠通神」の扁額

石尊山の頂上は芝生の広場となり、近年新調されたベンチもあって居心地が良い。しかし、昼食にはちょっと早いし、石尊山往復だけでは行程が軽すぎるので、深高山まで足を延ばすことにする。


石尊山頂上


石尊山三角点

とは言っても、深高山まで行っても大した行程ではない。ほぼ平坦な尾根を歩く。良く晴れているが、尾根を吹き抜ける風が強くて寒い。30分強で深高山の頂上に到着。ベンチに腰掛けて昼食とする。ここはうまい具合に風が遮られている。まず鯖味噌煮の缶詰と小さい缶ビールをあけ、鍋焼きうどんを作って食べる。温かいものを食べると暖まるな。


深高山への楽な尾根歩き


深高山頂上

尾根道を石尊山に戻り、下山はノーマルルートで参道を下る。展望が良く、小俣川沿いの集落を俯瞰し、白葉峠から仙人ヶ岳にかけての山稜や遠くの赤城山を望む。


石尊山の下りから白葉峠
吾妻山、赤城山の眺め


石尊山の下りから仙人ヶ岳の眺め

釈迦岩展望から、改めて釈迦岩を眺める。こちらからは背を向けた仏像のように見える。


釈迦岩展望


釈迦岩をズームアップ

参道を下り、女人禁制碑からちょっと枝道に入って、稜線上の踏み跡を辿る。パサパサと松の生えた小ピークに着くと、小さな石祠がある。側面には「小天狗叶花村 寛保…六月…」と刻まれている。小天狗があるということは、どこか近くに大天狗もありそうだ。それにしても風が強く、手震れしないように写真を撮るのに苦労する。


女人禁制碑(十三丁目)


小天狗の石祠


小天狗から石尊山を仰ぐ


麓の石尊宮の水垢離場の不動尊

参道を下り、車を置いた登山口に戻る。他の車はほとんど既に帰っている。短時間の軽い山歩きだったが、馴染みの山で新しい発見があり、なかなか満足して帰途についた。