三境山・田黒山
Mさんの発案で、三境峠の草木側の峠道を探索しつつ、北面から三境山に登って来ました。メンバーはMさん、Kさんと私の3人。峠道は廃道化して久しく、跡形もなくなっていましたが、部分的に古い作業道が利用でき、道のない区間も藪が薄く、三境山の登路としてなかなか面白いルートでした。
早い時刻に下山したので、ついでにもう一座に登頂。草木湖の東岸に聳える田黒山(791.9m三角点峰)に、三境林道から往復して登って来ました。Kさんによる記事はこちら → 三境山・田黒山。
桐生を車で出発。草木湖を草木橋で渡り、サンレイク草木の前を通って三境林道に入る。三境林道が右に曲がって横川を離れるところで、左に分かれる林道に入る。分岐には「←演習林 桐生市→」という小さな道標がある。
舗装された林道を上がるとほどなくゲートがあり、「東京農工大学演習林 危険なので立入禁止」との看板が立つ。ゲート前の広い路側に車を置いて歩き始める。今日は快晴だが、11月も末ともなると風が冷たくて、手袋が欠かせない。
最初はゲートを越えて林道を上がるが、これはルート間違い。駐車地点に戻り、さらに少し下流で左岸から合流する沢に入る。Mさんによると、古い地形図ではこちらの沢に破線路が記載されており、これがかつての三境峠道ではないか、とのこと。
立入禁止の標識を横目にコンクリ橋で川に渡り、すぐ上流で出合う沢に入る。出合には古い木橋の残骸があり、峠道の痕跡とも思えるが、周辺に峠道らしき道型はない。沢を遡るのは転石で歩きにくいし、右側の山腹を見上げると作業道が通じているので、これを辿ることにする。
この作業道は斜面を直線的に削って作られており、昔の峠道という様子ではない。多分、演習林の歩道として作られたものだろう。最近、歩かれた気配はなく、落ち葉が厚く積もっている。一部には落ち葉が膝の高さまで積もって、ラッセルのように搔き分けて進む。
作業道はやがて杉林の中に入り、ちょろちょろ水が流れる沢を渡って左に曲がり、枝尾根の上に達して終点。ここから、この枝尾根を登る。傾斜はきついが、そこはかとなく踏み跡(たぶん、けもの道)があり、藪もほとんどなくて歩きやすい。急登をこなすと傾斜が緩まり、尾根の幅も広がって、のんびりした登りとなる。
ゆるゆると尾根を登ると、三境山西の平坦地に入る。大きく育ったヒノキの植林に覆われているが、林は疎らで日が差し込み、なかなか気持ちの良い場所だ。三境山付近にはかつて高禅寺という寺院(庵?)があったという伝説があり、Mさんはその遺構を探してこの辺を探索したことがあるそうだが、発見には至っていないとのこと。
平坦地を横切って、三境山頂上部の西側の急斜面に近づく。頂上部は巨岩がゴロゴロと山積し、桐生周辺の山の中では異質の景観で、三境山の別名の兜岩に相応しい。ここから右へ急斜面をトラバースする。地形図にはここを通る破線路が記載されているが、実際には踏み跡は全く見当たらない。
巨石が積み重なる斜面を横切って三境山南の稜線上に着くと、石を取り込んだような奇妙な形状の岩が寄り集まって在る。球状塊溶結凝灰岩とも呼ばれる全国的にも珍しいものだそうで、これについては、Mさんが執筆した三境山(高禅寺山)の記事に詳しい。
大岩が散在する尾根を登り、石祠と三角点標石のある三境山の頂上に着く。時刻は少し早いが、ここで昼食とする。今日は風が穏やかで、枯れ草の上に腰を下ろせば日差しが暖かい。缶ビールを分け合って乾杯。私は今回はカップ麺の「生姜とん汁うどん」というものを食べる。冬の定番のCOOP鍋焼きうどんに比べると、ちょっと味が落ちるな(^^;)
頂上で1時間程休憩したが、その間、誰も頂上に訪れない。この好天でもハイカーさんがいないとは、本当に静かな山だ。下山は、頂上の北の鞍部から農工大演習林を下るルートを取る。Mさんが30年前に歩いたときは良い道だったとのことだが、今はどうかな。
すっかり葉を落として明るい雑木林を下り、二つ目の鞍部から左の窪を下る。窪の中には道型はない。少し下ると、窪を横切る微かな踏み跡があるので、これを左に辿って山腹をトラバースして行く。これは演習林の中に設けられた歩道の一つらしい。しかし、最近は全く歩かれていないようで、急な山腹を横切る所では崩壊しかかっている個所があり、注意して通過する。
山腹を巻いて枝尾根の上に出る。ここまでは、稜線上から枝尾根通しに下って来た方が、通って来たトラバース道より歩き易いと思われる。しばらく、この枝尾根を下る。途中から道型がなくなるが、植林帯の中で藪はないので、そのまま下る。
尾根の末端近くまで降りると藪に突き当たるので、左の斜面を戻り気味に下って沢に降りる。この下りは急斜面だが、立ち木もあるので、そう困難ではない。
沢に沿って、明瞭な道型が続いている。これを辿って沢を下り、横板が朽ちかけた木橋を渡ると農工大演習林の貯木場に着く。
ここにはいくつかの小屋があり、その一つには「東京農工大学 草木演習林 横川小屋」という古い看板がかかっている。物置小屋ばかりで、宿泊施設の類いはないようだ。建物の前に貯木場の広いスペースがあり、その周辺には古い木材が僅かに積まれている。広場の一角に「フィールドミュージアム(FM)草木」という説明板があり、それによると、この辺りの沢にはシオジ、尾根にはイヌブナ、ミズナラの林があり、人工林では明治43年植栽のスギ、ヒノキ林がある、とのこと。
貯木場から車道を下ると、すぐに駐車地点のゲートに着く。今回のルートは三境山を北面から登るルートとして、なかなか面白かった。
まだ時間が早いので、Kさん・Mさんに、近くの791.9m三角点峰に登るのはどうでしょう、と提案する。地形図には山名がないが、Mさんによると田黒山というそうだ。さすが、生き字引。地形図を見ると、三境林道の途中から平坦な尾根を辿って簡単に往復できそうなので、衆議一決、行ってみることにする。
車で移動し、三境林道を桐生市方向に走る。この辺りは紅葉が見頃で、それを目当てでドライブの車と結構すれ違う。高い切り通しが田黒山へ続く尾根の入り口だ。少し先の路側に車を置き、切り通しの左側に取り付いて尾根に上がる。ここはいきなりの急坂だ。地形図を見る限りは田黒山まで平坦な尾根が続いていて、軽く登れると思っていたので、初手から予想が外れる。
這い上がった尾根も痩せていて、右側はなかなか切れ落ちている。ここから田黒山まで、地形図では分からない小さなピークの急な登降が続き、思ったより歩き応えがある。三境山を登ったあとに、もうちょっと歩きたかったかもー、などと余裕を見せていたKさんも、急坂の連続に、ここで待っている、などと言い出す程だ。頂上まで少しだから、と励まして先に進む。
登り着いた田黒山の頂上は、樹林に覆われてすっきりした展望はないが、西側は急な崖となって草木湖に落ち込み、木立を透かして湖面が俯瞰できる。崖に立ち入らないように、頂上稜線に沿って有刺鉄線が張られている。三角点標石の他には、R.K氏の標高プレートが木立に掲げられている。こんなマイナーなピークにまで足跡を印すとは、いやはやすごいお方だ。
往路を駐車地点まで戻る。山頂までの稜線は意外と険しく、往復1時間かかったので、ついでの山にしてはなかなか満足。桐生・みどり100山の候補になるねー、と皆の意見が一致する。
帰り道の途中、横川の集落で見事なモミジの木を見かけた。ドライブの途中で車を止めて写真を撮っている人が数人。我々も車を止めて、多分シーズン最後の紅葉を愛でる。
それから、草木ドライブインにも立ち寄って、草木湖を隔てて聳える田黒山を眺める。こちら側に土砂採石跡の崖を見せて切り立ち、なかなかの山容だ。後日調べると、草木ダムを建設する際に骨材を採取した原石山であった、とのことである。