鐘原ヶ岳〜天狗山〜天目山〜三ッ峰山

天気:時々
メンバー:T
行程:駐車地点 9:20 …地蔵峠 9:55 …大鐘原ヶ岳(1252m) 10:30 …小鐘原ヶ岳(1225m) 10:45 …天狗山西峰(1179m) 11:15 …天狗山 11:30〜11:40 …鏡台山南峰(1073m) 12:15〜12:55 …随神門 13:20 …九折岩 13:40 …稜線に出る 14:20 …氷室山 14:35 …天目山(1303m) 15:00 …七曲峠 15:20 …三ッ峰山(1315m) 15:40〜15:50 …七曲峠 16:15
ルート地図 GPSのログ(赤:徒歩、青:自転車)を地理院地図に重ねて表示します。

桐生をのんびり7時に車で発って、R50、前橋を経由し、榛名山南麓から榛名湖畔の七曲峠に向かって県道榛名山箕郷線を登る。七曲峠の駐車スペースの隅っこに、車に積んで来た折り畳み自転車をデポ。立て看板の杭にチェーンで固定して鍵を掛ける。

車で県道を戻って、地蔵峠への登山道入口付近に駐車する。登山口から100mくらい県道を下がったところに、ちょうど良い1台分の駐車スペースがある。今日はここを起点として榛名山南面の山々を巡り歩き、最後は七曲峠から自転車でここまで下って戻って来ようという計画だ。自転車の区間は全編下りなので、圧倒的に楽というナイスなアイデアである。

さて出発。ふと対面の道端を見て、石仏があるのに気がつく。明和…の文字が見えるから、江戸時代中期のものだ。右…、左…の文字も見えるが、…の部分は読み取れない。


地蔵峠登山口付近の駐車地点


路傍にある石仏

「←榛名神社」の道標に導かれて、地蔵峠への登山道に入る。最初は緩やかな谷に通じる作業道を登る。やがて道は細くなり、笹原の中の微かな道型を辿って、植林と紅葉した雑木林の間を縫って登る。木立を透かして右側の旗矢岳(幡矢ヶ岳)を眺めると、覗岩が中腹ににょっきりと突き出しているのが見える。結構大きくて、迫力のある岩峰だ。


地蔵峠登山口


笹原の中の道型を辿る

緩い谷を詰め上がると、首が落ちた石仏が道端に置かれている。両手で抱え持っているのは宝珠かな。数枚のお賽銭が上がっているが、お供えされたのはかなり前のようだ。

石仏から斜面にジグザグに付けられた道型を登り上げて、地蔵峠に着く。峠の向こうには、木の間越しに掃部ヶ岳が眺められる。北風に乗って押し寄せた灰色の雲が上空を覆い、吹き付けて来る風が冷たい。寒いので、休憩せずに大鐘原ヶ岳へ向かおう。


首が落ちた石仏


地蔵峠

峠から左の急な稜線を登ると、すぐに大きな岩場に突き当たる。右側を巻き、古いロープを伝って岩場の背後の稜線に這い上がる。岩場の突端に立ち寄ってみると、絶好の展望台になっている。まず、登って来た谷を俯瞰すると、一面に敷き詰めたようなカラマツの黄葉が綺麗だ。左の山の中腹には覗岩の岩峰が突き立っているのが見える。


大鐘原ヶ岳へ向かう稜線を登る


展望岩場から山麓を振り返る
左には覗岩が見える

地蔵峠を隔てた正面には、左右に稜線を広げた旗矢岳が聳える。稜線直下には岩壁も見え、登ってみたくなる山だ。その左には、掃部ヶ岳から杏が岳(李ヶ嶽)にかけての山々が連なる。これらの山の中腹にも黄葉した樹林が緩やかに広がり、雲間から漏れる日差しに輝いて綺麗だ。谷間の中の緑に囲まれた大きな岩場のある一角が榛名神社の境内だ。


展望岩場から榛名神社と杏が岳を望む


展望岩場から旗矢岳を望む

展望の岩場からさらに痩せ尾根を急登。次の岩場も右から巻く。傾斜が緩むと、右から登って来る踏み跡を合わせる。ここには「室田村」と刻まれた標石がある(後日調べると、室田村は1905年に室田町となっているので、かなり古い標石だ)。

すぐ先が大鐘原ヶ岳の頂上で、県内の高校6校が合同で設置した道標が立つ。同種の道標は桐生の山にも立てられたが、ことごとく熊に齧られてしまった。こちらは無傷なので、熊はいないのかな。展望に乏しい山頂なので、立ち休みしただけで小鐘原ヶ岳に向かう。


大鐘原ヶ岳頂上


小鐘原ヶ岳への稜線

小鐘原ヶ岳への道は左側が急斜面の痩せ尾根となり、小さな登り降りが続く。雑木林に覆われ、ヤマツツジの小枝が少々被さるが、道ははっきりしている。緩やかな稜線となり笹原が現れると、小鐘原ヶ岳の頂上に着く。笹の中に三角点標石が設置され、道標が立つ。

頂上から稜線を少し先に進むと、数多くの石碑が点在する。石碑の銘を書き写すと、尾張・大物主命、三河・八千戈命、伊賀・金山彦命、國常立命、大己貴命、駿河・木花開耶姫命、摂津・中筒男命、山城・別雷命、志摩・玉柱屋姫命、伊勢・猿田彦命、和泉・日本武命、河内・天兒屋根命、上野・經津主命の計13基ある(爺イ先生の山日記ブログに全ての石碑の写真と神様の読み仮名が掲載されている)。刻まれた旧国名が、どれも群馬から程遠い近畿中京のものばかりなのは何故。誰がどんな経緯で建てたのか、謎だ。


小鐘原ヶ岳頂上


小鐘原ヶ岳頂上直下の石碑群

石碑群を探索した後、カラマツ林と笹原の中の踏み跡を下って、榛名神社から天狗山への登山道との丁字路に着く。ここから天狗山に往復しよう。左に登山道を辿り、ヤマツツジの株が多い小鞍部を通る。ここには「八合目 群馬県」と書かれた小さな杭が立っている。天狗山は人気があるようで、丁字路から少し歩いただけで数組のハイカーさんと行き会った。山腹の黄葉した林の中を斜めに登って、天狗山の稜線の上に出る。


天狗山分岐の道標
山水岳ってどこだろう


天狗山への登り

稜線上には九合目の杭と「←天狗山 天狗山西峰→」と記された道標が立つ。左の天狗山への道の入口には赤鳥居が建ち、何やら不思議な雰囲気を醸し出しているが、先に右の西峰を訪ねることにする。

西峰に向かうと、すぐに左手に古い木の鳥居が建ち、その奥に小広い整地された空き地がある。かつては神社の社殿とかがあったのかな。今は何もない。

九合目の分岐からほんの僅かの距離で西峰の頂上に着く、頂上は平坦で細長く、手前の端に道標、奥の端に「石尊山」の石祠と1基の石碑がある。木立を透かしてすぐ隣りの天狗山を眺めると大きな岩があり、その上に人がいるのが見える。次はあちらに行ってみよう。


天狗山九合目の道標


天狗山西峰頂上

九合目に戻って天狗山に向かう。件の赤鳥居は鉄製で、額束も赤く塗り潰されて何も読めない。そのすぐ脇には小さな赤鳥居が稲荷神社の千本鳥居の様にずらーっと並び、これがなにやら不思議な雰囲気がする源だ。

すぐに天狗山の道標があるが、岩場はその少し先だ。この周辺にも石碑が多い。祭神は日ノ大神、月ノ大神、摩利支天、大天狗・小天狗など、小鐘原ヶ岳の石碑群がある種統一されていたのに較べると多彩な感じだ。大天狗・小天狗の碑には天狗の像の線刻画があり、「昭和七年十一月小林」の銘が刻まれている。また一体だけだが石像もある。どれも昭和初期に建立されたもののようだ。


九合目鳥居


天狗山の石像

天狗山の岩場には十合目の杭があり、赤鳥居の奥に大天狗と小天狗を祀る2基の石祠が並ぶ。側面に「奉納 氏子会崇敬者一同 昭和四十七年十一月廿八日建立」と刻まれ、新しいものだが既に古びた感じがある。まあ、40年前だから当然か。

岩場からは北面を除く三方の眺めが良い。西隣りには天狗山西峰の台形の頂きがせり出し、南にかけて浅間山や倉渕の山々、妙義山のギザギザの稜線が並ぶ。南には関東平野が一望でき、東には赤城山の山裾が遠望される。手軽に登れてこの大展望なので、人気があるのも頷ける。南麓の大日陰から登る道もあり、種山と合わせてそちらから登るのもなかなか面白そうだ。


大岩のある天狗山頂上


天狗山頂上の赤鳥居と石祠


天狗山から南麓を俯瞰


天狗山から西峰を望む

天狗山からの展望に満足して、鐘原ヶ岳の分岐まで戻る。ここから鐘原ヶ岳の西面の急な山腹をトラバースして榛名神社に向かう。細い山道で、小さな登り降りが意外と多い。七合目、六合目、五合目と律儀に合目の杭が立てられている。


黄葉の中を往路を戻る


大鐘原ヶ岳西面のトラバース道

トラバース道が終わると、四合目の鏡台山コルに着く。正午を過ぎておなかが減って来たので、ここからすぐで見晴しの良い鏡台山南峰の頂上で昼食にしよう。

鏡台山は4年前の正月に登ったことがある(山行記録)。展望の良い露岩のある頂上は記憶に新しい。テラス状の平たい岩の上に陣取り、缶詰の鯖味噌煮をさかなに缶ビールを飲んだ後、鍋焼きうどんを食べる。毎度のメニューだが、寒い季節はこれが温まって美味い。


鏡台山コル


鏡台山南峰(展望ピーク)


鏡台山から杏が岳、掃部ヶ岳を望む


鏡台山から天狗山を望む

展望を楽しみながら昼食を摂ったのち、鏡台山コルに戻って榛名神社に向かう。涸れ沢に沿って下ると車道に出る。ここには「←天狗山」の道標があり、水場や祭壇らしきものもある。車道を下ると、途中で地蔵峠からの道を合わせる。そこから榛名神社の参道入口までは僅かの距離だ。


鏡台山コルからの下り


車道を下って榛名神社へ

随神門を通り、本殿へのお参りは(先日11月初めに参拝したばかりなので)省略して、途中で分岐する関東ふれあいの道に入る。この道は、榛名神社から榛名川に沿って榛名湖南岸稜線の天神峠付近に登る歩道で、以前から歩いてみたいと思っていたところだ。


随神門


関東ふれあいの道に入る

すぐに、対岸に落ちる瓶子(みすず)の滝を見る。この滝は榛名神社の参道からも眺められるが、より近いところから見上げることができる。滝を過ぎると榛名山番所跡があり、古びた門を潜る。脇の説明板によると、信州大戸通りの裏往還の通行を取り締まるために、1631〜1869年の間、番所が設けられていたとのこと。この道の長い歴史が分かる。


瓶子の滝


榛名山番所跡

番所の奥には大きな砂防堰堤が見える。練(ねり)石積の堰堤で、最近のコンクリート作りのものと較べると風格が感じられる。後日調べると、1955年に建設されたもので、歴史的建造物として登録有形文化財に指定されているそうだ。堰堤の上には、なにやら妙な形の大きな岩が見えている。歩道を進んで近寄ってみよう。

木の階段で砂防堰堤を越えると、対岸に件の岩が聳える。これが九折岩(つづらいわ)で、板状の岩は頂上付近が細くなってジグザグに折れ曲がり、鶏の頭のようにも見える。実に不思議な形をしており、榛名神社御神体の御姿岩(みすがたいわ)と同じように、これを祀る神社があってもおかしくない位。しかし、付近には説明板や標識の類すらないのもまた不思議だ。榛名神社からそう遠くないので、参拝のついでに一見の価値あり。


榛名川上流砂防堰堤


九折岩

歩道は穏やかな流れの榛名川に沿って右岸を登る。だいたいは山腹のトラバース道で歩き易いが、一部に設けられた木の階段の段差が高くて登るのが大変。通常の階段を一段抜かしで登っているみたいだ(^^;)

途中で作業道に引き込まれて、上部を通る県道渋川松井田線に出てしまったが、川沿いを通る歩道に戻る。榛名川は、この辺りから河原が広い荒れ気味の川となる。真新しい砂防堰堤が連続し、いささか風趣が損なわれている。


榛名川左岸を辿る


榛名川沿いに歩く

やがて常滑の滝という、これも真新しい道標が現れる。道標の指し示す先には優美に流れ落ちるナメ滝があるが、すぐ上流に砂防堰堤が白く見えているのが珠に傷。堰堤工事用のブル道が歩道を寸断し、道が少々わかりにくい。昔の歩道が残っている区間は趣きがあるんだけどなあ。そんな区間に丁目石が建っており、二十二丁と刻まれているのが読める。


常滑の滝


丁目石

紅葉が残る山腹をトラバースして登って行くと、砂防堰堤の工事現場に出る。工期は今年いっぱいのようだ。この先の関東ふれあいの道はブル道に拡張され、榛名湖南岸の稜線までブル道をジグザグに登る。登り着いた稜線は工事用のプレハブや建設資材が置かれた広場となっている。


稜線近くの関東ふれあいの道


最上流部では砂防堰堤工事中

様相の変わった古の峠に道案内の立派な石碑があり、「左善光寺 あがつま 右いかほ」と刻まれている。「牛に引かれて善光寺参り」と言うが、昔は善光寺信仰が本当に広まって盛んだったことが窺える。

ここからさらに関東ふれあいの道を辿って、氷室山に登る。小さな山だから楽勝と思いきや、標高差約100mの急坂に木の階段が直線的に続き、しかも一段の段差があるので、腿に乳酸が溜まりまくる感じ。登り着いた氷室山の頂上は狭く、樹林に覆われて展望にも乏しいが、水を飲んでしばらく休憩してしまう。


稜線上の古い道標


氷室山への登り口


木の階段が延々続く


氷室山頂上

氷室山から天目山との鞍部に向かう下りも急な木の階段が続き、嫌になる程グングン下る。稜線上の樹林は一部に紅葉を残すもの、ほとんど葉を落としており、木立を透かして榛名湖や湖岸の掃部ヶ岳や鬢櫛山、烏帽子ヶ岳、榛名富士が眺められる。日が陰り始めて、空気が急に冷たくなるなか、天目山の登りにかかる。痩せ尾根から笹原に覆われた稜線の登りとなり、天目山の頂上に登り着く。


稜線上から木の間越しに
榛名湖を望む


天目山頂上

頂上は小広く、ベンチもあって休憩適地だ。日差しが回復し、道標や木立の影が長く伸びて地面に落ちている。こちらも樹林に覆われているが、南から東にかけて樹林が切れて、今日、最後に登ろうとしている三ッ峰山の双耳峰がすっきりと眺められる。階段登降が応えてだいぶ疲れて来たが、日没まで充分時間があるし、この眺めを見たら、やはり計画を完遂して三ッ峰山まで行かなくては、と元気が出る。

天目山からは防火帯の幅広い尾根を木の階段で下る。良く整備された公園の中を歩いているようだ。正面には、相馬山の(しばしばイルカの頭と表現される)丸く突き出たピークを望む。ヤセオネ峠と沼ノ原を一直線に結ぶ県道も木の間に見え、メロディラインを走る車から「静かな湖畔」のメロディが風に乗って微かに聞こえて来る。


天目山から三ッ峰山を望む


天目山から防火帯の尾根を下る

防火帯の尾根を緩く下って、七曲峠に到着。車道を横断して、防火帯が続く稜線を緩く登る。ところどころにベンチもあり、万人向けの好ハイキングコースだ。しかし、今日は時刻が遅いせいもあり、誰とも行き会わない。


七曲峠


広く緩やかな尾根を辿る

程なく三ッ峰山への分岐に着く。「三ッ峰山↑25分↓15分」という道標が立つ。往復40分もかかるかなあ。まあ行ってみよう。

三ッ峰山へは整備されたハイキングコースではなく、樹林と笹原の中の微かな踏み跡を辿る。小さな笹原に出ると、行く手にこんもりと聳える三ッ峰山が眺められる。あとひと登りだ。最後の登りはなかなか急だ。途中で、降りて来たハイカーさんに会う。こんな時間に、とお互いビックリした感じで、短い挨拶だけですれ違う。急登から稜線に飛び出て、左に少し登ると三ッ峰山の頂上に着く。


三ッ峰山への分岐


三ッ峰山への急登

頂上は樹林に囲まれて展望はないが、背の低い笹原の小平地となって居心地が良い。片隅に立派な石祠があるのが、また好ましい。三ッ峰山の南西のピークもここと同じ位の標高があり、稜線上に山道も通じていて気になるところだが、今日は本峰に登れたということで大満足だ。日没も近いし、往路を七曲峠に戻ろう。


三ッ峰山頂上


三ッ峰山を振り返る

いよいよ日が傾いて夕暮れ近い尾根道を下り、七曲峠に着く。手袋を付け、デポした自転車に跨がって県道を下る。全く漕がなくても速い、速い。むしろスピードが出過ぎて恐い。ずっとブレーキをかけて行くが、下るにつれて効きが甘くなる感じで、ブレーキが壊れないか心配だ。駐車地点に着いて自転車を車に積もうとすると、なにやらゴムが焼ける臭い。案の定、後輪のドラムブレーキから白い煙が上がっていた。帰途につくが、焦げ臭いのでしばらく車の窓をあけて走る。


夕暮れ近い尾根道を下る


七曲峠の駐車場

帰りの途中で、箕郷温泉まねきの湯に立ち寄る(600円)。町中にあるレジャー施設を併設した日帰り温泉だが、設備は清潔で感じは良い。広い湯船にゆったり浸かってよく暖まったのち、とっぷり暮れた夜道を桐生に帰った。