魚野川

2012年9月15日(土)〜17日(月)
メンバー:M,T

上信越国境山群の大渓谷の沢登りに情熱を傾けるMさんに同行して、これまでに白砂川清津川を遡行した。そのMさんが「この山域の大渓谷で最後に残った課題」と言うのが、魚野川である。

魚野川は、志賀高原奥の赤石山の北面を源流域とし、上信国境稜線と岩菅連峰の間を貫流して、渋沢ダム上流で野反湖を水源とする千沢に合流する渓谷だ。美渓で多くの遡行者を迎え、ネットで検索すれば多数の山行記録がある。また、岩魚が多く、釣り師にも知られる。下流は中津川と名を変え、切明温泉で雑魚川を合わせ、秘境秋山郷を流れ下って信濃川へ合流する。

この3連休、Mさんから魚野川の沢登りにお誘いを頂いたので、同行して出掛けて来ました。なお、沢内の滝等の名称はガイドによって違いがあるようですが、ここでは末尾の参考サイトに拠っています。

9月15日
天気:
行程:野反湖バス停 7:00 …地蔵峠 7:40 …入渓地点 10:40 …箱淵入口 11:15 …大ゼン 13:10 …ナマリ岩 14:10(テント泊)
ルート地図 GPSのログを地理院地図に重ねて表示します。

桐生を4時に車で出発し、下道を走って3時間弱で野反湖バス停の駐車場に到着する。早朝に関わらず既に10台近い駐車があり、ハイカーさんのグループが出発の準備をしている。まず間違いなく全員が、白砂山を目指すハイカーさんだろう。

準備を整えて出発。上空が灰色の雲に覆われるすっきりしない天気なのが気にかかる。40分程で地蔵峠に登り着き、一休み。我々はここで白砂山への登山道を右に見送って、左の切明・和山への山道に入る。この道は、六合村と秋山郷を結ぶ道として古くから開かれた道だ。今日歩くのはその半分だが、以前から歩きたかった道なので楽しみだ。

樹林の中の笹原を切り開いた山道を辿る。一旦下って水量豊富な北沢を渡ると、標高差約150mの山腹のジグザグ登りとなる。笹原とダケカンバに覆われた山腹をトラバースする道となり、一部で樹林が切れて、振り返るとガスに巻かれた野反湖が見える。まだあんまり離れていなくて、がっかり。この辺りの道を左京横手と称するらしい。

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白砂山登山口

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イタドリ沢付近

イタドリ沢を渡って山腹を緩く登ると、笹原のトラバース道となる。この辺りが大倉峠だろうか。ここで一本。Mさん差し入れのグレープフルーツが水気があって美味い。木立の間から岩菅連峰が眺められるが、稜線は白い雲の中だ。青空も覗いているので、天気はまあまあ回復傾向かな。振り返ると、まだ野反湖の湖面が小さく光って見える。

大倉峠からは、渋沢出合に向かって標高差約700mの大下りとなる。笹原とブナ林の緩い尾根を辿る。途中の大倉山は気づかずに通過。やがて急な下りとなる。尾根を絡んで綺麗にジグザグが切られているので歩き易いが、とにかく長い。

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大倉峠付近から岩菅山方面を望む

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大倉坂百八十曲がり

ようやく尾根の末端に降り着いて平坦な道となる。ここで秋山道から左に分れ、踏み跡を辿ると魚野川に突き当たる。釣り師が残したらしいトラロープを頼りに崖を下って、魚野川の河原に出た。泊まり場の跡があり、下流には渋沢ダムの堰堤が見えている。

Mさんによると、魚野川は水量が多いことで知られ、特に多い時はここで徒渉できないこともあるそうだ。しかし、関東甲信地方はここ数か月少雨が続いており(矢木沢ダムは貯水率6%台になってしまった)、魚野川も水はかなり少ない。少雨が幸いして穏やかな渓相なので、出だしの不安は少し和らぐ。

渓流タビに履き替え、遡行を開始する。最初は河原歩きで、ところどころで徒渉する。浅瀬のように見えるところでも、渡ってみると意外に水が深く、膝上まである。水が少なくてこれなので、通常の水嵩ならば大変だろう。しかし、今日はなんの困難もなく、日差しを浴びてピシャピシャと水の中を進むのは楽しい。

やがて、千沢との合流点に着く。千沢は困難な沢で、最近ようやく完全遡行がなされたと聞く。

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入渓地点

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千沢出合

右の魚野川に入ると、5分程で桂カマチと呼ばれる函となる。函の中は浅瀬で、水の中をパシャパシャ歩いて通過する。函を抜けると、左岸から桂ノ沢が滝を架けて出合う。

本流は深い淵を連ねたゴルジュとなる。ここが箱淵の入口のようだ。水量が少ないとはいえ、水線通しの突破は泳がないと難しそう。左岸の巻き道で高巻く。良く踏まれた巻き道はかなり長く続く。ようやく沢身に復帰した所には、釣り師が帰りの目印にするらしく、岩の上に×がマーキングされている。

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桂カマチ

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箱淵入口
左岸を高巻く

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左岸の高巻き道

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高巻き終了

本流には淵やナメ滝が続く。どれも深い釜を持ち、膝上までの徒渉を繰り返す。中を通過できない淵には、釣り師が使う巻き道がある。原生林に囲まれ、大岩や淵、釜など変化に富んだ渓流歩きが続く。

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不動コイデ

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深い釜をもつナメ滝

高沢の出合を過ぎると、本流最初の本格的な滝の大ゼンが現れる。落差はそれほどでもないが、深くて大きな釜をもち、ちょっと取り付けそうにない。左岸から高巻く。

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大ゼン

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原生林の中の渓谷を遡行

大ゼンの上流は穏やかな渓谷となり、淡々と進む。やがて、谷の真ん中に突き立つ黒い円筒形の大岩が現れる。今日の泊まり場のナマリ岩だ。天辺には盆栽のように木が生えていて、ちょっとユーモラスな岩だ。

ナマリ岩の傍らに、砂地で安全快適な幕営適地がある。テントを張って、まずはウィスキーで乾杯。それから焚き火に取りかかる。パラパラと雨粒が落ちて来るなかで、なんとか充分な量の流木を集める。木が湿気って火をつけるのに苦労したが、持てるノウハウをつぎ込んでようやく着火(^^;)。幸い雨も止んで、盛大に燃え始めた。こうなればシメタものだ。どんどん木をくべる。

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ナマリ岩

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テン場での焚き火

後から単独行の遡行者が到着して、少し上流の黒沢出合にタープを張った。かなり沢に慣れた人のようだ。今回、魚野川で出会ったのはこの人だけだった。

Mさんが焚き火で飯盒炊飯したご飯と麻婆春雨で夕食とする。夜の帳が降りた後も、焚き火を囲みながらウイスキーを飲んで宴会。眠くなったところで、テントに潜り込んで就寝する。夜中に一時、雨が降ったが、寝床が快適なので、気にせずにぐっすり眠れた。

9月16日
天気:時々
行程:ナマリ岩 5:40 …カギトリゼン 6:40 …燕ゼン 8:20 …庄九郎ゼン 9:05 …南ノ沢出合 11:30 …魚止滝 12:45 …縦走路に出る 15:05 …赤石山(2109m) 16:15 …大沼池湖畔 17:10(テント泊)
ルート地図 GPSのログを地理院地図に重ねて表示します。

翌朝、朝食に中華三昧を食べて出発する。雲が多いが、まあまあの天気だ。単独行の方に挨拶して先に進む。しばらくは穏やかな渓流を歩く。深い淵があり、腰まで浸かって通過する。水が少ないように見えて、意外と深い。

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黒沢出合

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深い淵

やがて、両岸がスラブとなり、谷幅一杯に岩盤を流れ落ちる滝が現れる。これがカギトリセンだ。Mさんが左のスラブから登ろうとしたが、つるつるで手掛かり足掛かりがない。直登は諦め、少し戻って左岸から高巻く。

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カギトリゼンが見えて来た

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カギトリゼン

ここから岩盤を洗うナメと滝が連続し、魚野川の核心部となる。次のイワスゴセンも幅広の滝だ。傾斜が緩いので一見登れそうだが、滑り落ちたら深い釜にドボンだ。左岸の草付きの壁を残置ロープで登り、落口にトラバースして高巻く。

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イワスゴゼン

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左岸を高巻く

谷幅一杯に流れる平ナメをピタピタと歩くと、スリバチセンだ。落差は3m程と低いが、それに比して釜が深い。これは傾斜がないので、簡単に越えられる。

次に現れるシンブチは、落差50cmくらいで滝とは言えないが、釜が物凄く深く、3〜4mはありそうだ。右側の水面下に岩棚が続いており、ここを伝って簡単に越える。

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スリバチゼン

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シンブチ

まだまだナメが続き、すっかり楽しくなってきた。次のヘリトリゼンは右から越える。

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ヘリトリゼン下流のナメ

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ヘリトリゼン

左岸から奥ゼン沢を合わせると、しばらく平凡な渓流歩きとなる。右岸から小ゼン沢を合わせるところで本流は右に曲がり、燕(つばくろ)ゼンを架けている。迸る様に流れ落ちる豪快な滝だ。右側から容易に越えられる。

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白い岩のナメが続く

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燕ゼン

本流はところどころにナメを散りばめた渓流となる。青空が広がって谷間にも日が射し込み、最高に快適な遡行となる。

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日差しを浴びるナメ

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深い淵を左から越える

両岸が高い崖となり、本流が左に曲がると庄九郎ゼンが現れる。ここは大きく高巻くので、メットを着用する。左岸のルンゼ状の窪を登り、左側の小尾根に出る。尾根上には明瞭な踏み跡があり、これを下ると容易に滝の上流に出られる。次の小滝はなんでもなさそうに見えて、釜が深くて取り付けない。右側の踏み跡を利用して越える。

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庄九郎ゼン

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小滝を右から高巻く

小滝を過ぎると、大岩が散積したゴーロとなる。ここを「上のゴート」または「ゴウトウ」と呼ぶらしい。延々と大岩のゴーロが続き、結構疲れる。

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上のゴート

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翡翠色の水を湛える淵

点々と現れる淵はどれも深く、翡翠色の水を満々と湛えて美しい。小滝はどれも容易に越えられ、沢登りの楽しさを満喫する。やがて谷が開けて、穏やかな流れとなる。水量もかなり減ったが、淵や釜はまだまだ深い。途中の右岸に笹を切り開いたビバーク地がある。緊急時に使える。

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小滝を左から越える

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谷が開ける

開けた谷を緩く登ると芝沢ノ滝が現れる。深い釜を水中スタンスを利用して右から回り込み、斜上するバンドを登る。いやー、簡単に登れる滝は楽しいな。

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芝沢ノ滝

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階段状の小滝

小滝と淵が連続する明るい渓谷を遡ると南ノ沢の出合に着く。ここにも笹を切り開いたビバーク地がある。パンを食べて昼食とする。

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翡翠色の水が美しい

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南ノ沢出合

北ノ沢に入ると水量は減るが、それでもまだまだ、釜は深い。小滝が連続し、次々に越えて行く。谷が浅く緩やかなので、現れる滝はどれも容易で気楽な遡行が続く。

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追詰ノ滝

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深く大きな釜をもつ小滝

最後の滝らしい滝の魚止滝は少し難しそうに見えるが、右から簡単に直登できる。この上流はさすがに水量が減って、針葉樹林の中をトロトロと流れる沢となる。もう源流部の雰囲気だ。

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魚止滝

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源流部

多くの支流が枝分かれする中、GPSを頼りに寺子屋山と赤石山を結ぶ稜線の最低鞍部に向かう沢を辿る。水流が細くなって、両側から早くも藪が被さって来る。そして遂に笹藪に突入。なるべく水流を辿るが、それもやがて絶えて、微かな窪を辿って笹藪を潜る。この笹は茎が太くて固く、突き刺さって来て、やっかいこの上ない。傾斜が緩いのは助かる。ようやく縦走路に出てホッとする。稜線はガスに巻かれて、今にも雨が降り出しそうだ。笹藪漕ぎの中で降られなくて良かった。

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そろそろ水が無くなりそう

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寺子屋山〜赤石山の縦走路に出る

稜線上にはテントが張れる余地はないので、赤石山に向かう。登山道を歩くのは楽だなあ。有り難みをしみじみ感じる。

大岩のある赤石山の頂上は、晴れていれば展望が良さそうだが、今はガスに包まれて薄暗い。ここもテントを張る余地はなし。暗くなるのと競争で、頑張って大沼池まで下る。

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赤石山頂上

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レストハウスのある大沼池湖畔

大沼池のレストハウスは閉鎖されており、人っ子一人いなくて、ひっそりとしている。湖畔の広場にはベンチやWCがあり、テント泊にピッタリだ。早速、設営して、餅入りワンタンで夕食とする。夜半から強い風雨となり、翌朝まで降り続いた。

9月17日
天気:のち
行程:大沼池湖畔 7:30 …大沼池入口バス停 8:30
ルート地図 GPSのログを地理院地図に重ねて表示します。

最終日の朝、小雨が降っているが、今日はバス停までの僅かな行程なので気楽だ。テントを撤収し、雨具を着て出発。大沼池を遊歩道で半周し、そこから林道を緩く下る。

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小雨の中を出発

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林道を辿る

大沼池入口バス停には雨が凌げる休憩舎とWCがあり、待ち合わせにはうってつけだ。WCで下着を着替えて、バスを待つ。9:15発のバスに乗車し、蓮池、白根火山でバスを乗り継いで草津温泉へ。ここで湯畑の隣りにある共同浴場の白旗の湯(無料)に入り、熱い温泉で3日間の汗を流す。さっぱりしたら、次は腹拵え。バスターミナル近くの食堂でジャンボなカツカレーをがっつり食べる。

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大沼池入口バス停

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草津温泉白旗の湯

草津温泉からJRバスで長野原草津口に出た後、野反湖行き13:30発のバスに乗って車を回収。浅間酒造に立ち寄って、土産に酒を買ったのち、桐生への帰途についた。

参考サイト:六合村周辺の山と渓の魚野川の地図と記事を参考にさせて頂きました。


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