下田白根山

天気:のち
メンバー:M,T
行程:白根山登山口 7:35 …登山道入口 7:55 …山ノ神 8:10 …熊狩りの眺め場 9:10 …前白根 9:55 …白根山(918m) 10:15〜11:10 …前白根 11:40 …熊狩りの眺め場 12:10 …登山道入口 12:50 …白根山登山口 13:05
ルート地図 GPSのログ(往復なので往路のみ)を地理院地図に重ねて表示します。

白根と名の付く山は、全国に甲斐白根山(白峰三山)、日光白根山、草津白根山があり、いずれも超メジャーな山である。しかし、もう一つの白根山が下田(しただ)山塊にあることは、地元新潟県の岳人はともかく、県外の方はシラネーのではないかと思う。

以前、下田山塊の光明山に登ったおり、山麓の観光案内板で白根山(しらねやま)の存在と登山道が拓かれていることを知った。それ以来、登ってみたいと思っていたが、桐生から遠いので訪れる機会がなかなかなかった。今回、久し振りに新潟の山に登りたくなり、Mさんに同行頂いて遠路出かけてきました。

桐生を車で未明の4時に出発し、北関東道・太田藪塚ICから関越道を経て、北陸道・三条燕ICで高速を降りる。今日は晴天の予報だったが、夜明けを迎えても曇りがちで、粟ヶ岳や守門岳の上方にも高い雲が広がっている。

三条市街を抜けて五十嵐川を上流に向かうと農村風景が広がり、田植えが始まっている。屋敷林が立派な大谷地の集落を過ぎて笠堀ダムに向かうと、途中に白根山登山口の道標がある。左に分岐する舗装道に入ると、程なく舗装は切れて広場に出る。登山届のポストがあり、先客の軽が1台停まっている。車道はこの先にも続き、林道親沢線・起点の標識があるが、すぐ先にゲートがあって車は(地元車以外は)入れないので、ここに車を置く。

準備を整えて出発。下田山塊と言えば山蛭が多いことで有名だ。薄暗い杉林の中の湿った林道を注意して進む。しかし、今日はまだ時期が早いので、遭うことは幸いなさそうだ。


白根山登山口


杉林にひっそり咲くこの花は何?
(ウワミズザクラとご教示頂きました)

杉林を抜けると緑が深い谷に沿う林道となる。周囲の山は低く小さいが、雪崩に磨かれた山肌は急峻で、豪雪地帯の山地に特有の地形を示している。タニウツギがあちこちに群れて咲いているのが綺麗だ。


緑が深い谷間の林道を行く


タニウツギ

林道を20分程歩くと「白根山登山道入口」という標識があり、ここから左に分岐する山道に入る。小さな沢に沿って草深い道を登り、すぐに沢を渡る。沢の奥には雪のブロックが残っていた。


登山道入口
左の山道に入る


小さな沢に沿って登る

沢を渡ると樹林の中の登りとなり、坂の途中に山ノ神が祀られている。こ、このお供物は…(^^;)。一緒にお供えされていたお酒は五泉市の酒造の「越後杜氏」というものだった。旨い地酒かも知れないので( ..)φメモメモ。


樹林帯の登り


山ノ神

山ノ神を過ぎると緩傾斜地の放置された植林帯となり、道端にワラビが多い。再び樹林に入り、稜線に向かってぐんぐん登る。眺めは効かない代わりに、チゴユリやイワカガミ、キスミレ、ガマズミなどの花が目を楽しませてくれる。


ミヤマガマズミ


対岸に聳える烏帽子岳

標高が上がると、ようやく樹林の間から周囲の山々が眺められる。特に谷の対岸に聳える烏帽子岳は、鋭い稜線に向かって駆け上がるスラブが標高700m足らずの低山とは思えない険しさだ。谷底には雪渓が鈍く光り、冬の豪雪を物語る。

稜線に登り着くと、さらに粟ヶ岳や、白根山へ向かう尾根の展望が開ける。稜線上にはタムシバの白い花が群落をなして見事だ。Mさんも新潟の山らしいと喜んでカメラを向ける。

やがて熊狩りの眺め場という標識のある小ピークに着く。熊はどこにも見えないが、切れ落ちた谷を隔ててどっしりと聳える粟ヶ岳の眺めが素晴らしい。


タムシバ


熊狩りの眺め場より
粟ヶ岳を望む

標識には「山頂まで90分」と書いてあり、まだまだ先があるようだ。白根山へ向かってうねうねと伸びる稜線を辿る。小さなアップダウンや痩せた箇所、谷底へ薙ぎ落ちるスラブを見おろすポイントがあって、変化に富んだ尾根歩きだ。


ユキグニミツバツツジ


白根山へ向かう稜線


ガクウラジロヨウラク?の蕾
背景は粟ヶ岳


イワカガミ

登山道は樹林帯の中の一直線の急坂に差し掛かり、標高差約200mを一気に登り詰める。標高の割には結構登り応えるのある山だ。


前白根と粟ヶ岳(左奥)


前白根への長い急登

登り着いた小ピークには前白根という標識があり、「山頂まではもう一息」と書いてある。再び眺めが開けて、粟ヶ岳がますます近い。振り返ると、遠くに弥彦山が霞んで見える。稜線上には所々に雪が残っているので、ビニル袋に雪を入れて缶ビールを冷やす。


前白根の先の稜線には雪が残る


オオカメノキ

残雪の傍らに咲き揃うイワウチワをカメラに収めながら稜線を辿ると、白根山の頂上に到着した。

頂上は小広い平地となり、南側の一部が樹林に遮られている他は360度に近い展望が開ける。北から東にかけては粟ヶ岳、青里岳、矢筈岳へと下田山塊の主脈が連なる。青里岳の肩にちょっと頭を出しているのは一昨年に登った五剣谷岳のようだ。懐かしいなぁ。粟ヶ岳以外には登山道はなく、深い藪と険しい谷、スラブに囲まれて、残雪期以外に登ることは容易ではない。

南西には守門岳の一段と大きく白い山塊を望む。こちらからの守門岳は、爆裂火口の火口壁を見せて険しい山容だ。


イワウチワ


白根山頂上


粟ヶ岳を間近に仰ぐ


青里岳(左)と矢筈岳の展望

展望を楽しみながら、まずはキンキンに冷えた缶ビールで乾杯し、昼食とする。ラーメンを食べていると、ゴソゴソと笹藪を搔き分ける物音に驚く。地元のゼンマイ採りの方二人だった。背負っている大きなザックが満杯になっていた。

しばらくすると、単独行のハイカーさんが頂上に到着した。話を伺うと、白根山に3週連続で登っている常連の方で、ヒルが出るので今週が最後と思って登って来たそうだ。Mさんが「来週にはヒルが出るんですか」と尋ねると、「ヒル山だよ」との簡明直截なお答え(^^;)。特に沢を渡る辺りに多いらしい。

頂上に滞在するうちにだんだんと青空が広がって、のんびりしたいところだが、ハイカーさんから団体がもうすぐ来ると伺って、そろそろ下山にかかる。往路を戻り、前白根の手前で30人近い団体とすれ違う。稜線から最後の展望を楽しんだのち、林道に向かって急降下する。あとは林道をのんびり歩いて、車を置いた登山口に戻った。


袴腰山(中央)と弥彦山(奥)


烏帽子岳と守門岳(奥)

白根山登山のあと、余力があればヒメサユリ祭り開催中の高城城址にも登ろうかとも考えていたが、山歩きは既に十二分に満足したので、今回は見送る。ヒメサユリも今年は開花が遅れ、ようやく咲き始めたばかりのようだし、次の機会ということで。八木ヶ鼻のいい湯らてい(1時間まで500円)に立ち寄って汗を流し、桐生への帰途についた。